エリー・アーメリング最近の情報(2021年9月):「岩の上の羊飼い」1986年5月ライヴ音源他
●シューベルト/岩の上の羊飼い D 965
Elly Ameling; Schubert - Der Hirt auf dem Felsen, Op. 129, D 965
エリー・アーメリング(S), カール・ライスター(Cl), ルドルフ・ヤンセン(P)
Elly Ameling - soprano
Karl Leister - clarinet
Rudolf Jansen - piano
Mai-festival Rellinger Kirche 1986
アーメリングが演奏活動の初期から後期まで変わらず取り上げていた「岩の上の羊飼い」のライヴ音源が公式チャンネルにアップされていました。Sandmanさんの「Elly Ameling Discography」に掲載されている録音と同一と思われます。私はこのCDは入手できていないので、こうしてYouTubeでアップしてもらえて感激です!アーメリングの声のコンディションも良く、美しく収録されていました。一番最後の締めのところで、彼女のこれまでのどの録音にも聞かれなかったほどテンポをあげてころころと声を転がせるように上昇していく歌いぶりに驚きました。ここは聴きどころのひとつですね。この曲で彼女は今回のカール・ライスターのように名だたるクラリネット奏者と共演しているのですね(シューベルティアーデではザビーネ・マイアーとも共演したそうです)。ピアノは彼女が長いこと共演してきたオランダ出身のルドルフ・ヤンセンです。
●1980年4月30日
1980 "30 April 1980" Kant A
Klankreportage van abdicatie van Koningin Juliana en de huldiging van Koningin Beatrix in de Nieuwe Kerk te Amsterdam.
1980年4月30日にオランダのベアトリクス女王の即位式がアムステルダム新教会で行われました。その際にモーツァルトの「戴冠ミサK.317」のソプラノ独唱でアーメリングが歌った音源がこちらのLP(Sandmanさんのサイト)の音源にほんのわずかだけ記録されています。17:38からアーメリングの歌声が少しだけ流れます。
エリー・アーメリング(S), スィルヴィア・シュリューター(A), ヘイン・メーンス(T), リウヴェ・フィッサー(BS), ハーグ自由高等学校少年合唱団, アムステルダム室内管弦楽団, シャルル・ドゥ・ヴォルフ(C)
Elly Ameling(S), Sylvia Schlüter(A), Hein Meens(T), Lieuwe Visser(BS), Jeugdkoor Van De Vrije Hoge School Te Den Haag, Amsterdams Kamerorkest, Charles de Wolff(C)
また、Sandmanさんに教えていただいたのですが、ベアトリクス女王の即位式をおさめた下の3時間以上にも及ぶ動画の50分19秒からアーメリングたちの歌う映像が流れ、上述のLP音源よりも少し長く見ることが出来ます。こういう映像はなかなか見れないので貴重ですね。
●アーメリングの最新のマスタークラス
Podium Witteman
Zo 29 aug 18:20 - Seizoen 10 Afl. 1 - Podium Witteman Masterclass
こちらに動画を貼りつけることが出来ないようですので、このリンク先からご覧ください。
Paul Witteman ontvangt Elly Ameling in de Singelkerk in Amsterdam, waar zij bariton Vincent Kusters, sopraan Noëlle Drost en mezzosopraan Lucie Horsch de finesses van de liedkunst zal bijbrengen. Alle drie zijn jong, maar zitten elk in een andere fase van hun zangersloopbaan. Met Elly Ameling werken ze aan liederen van Schubert, Schumann, Debussy en Fauré. De begeleiding is in handen van pianist Hans Eijsackers.
2021年8月29日に放送されたアーメリングのマスタークラスの映像で、約1時間ほどの番組でエネルギッシュに指導しています。ピアノはオランダの名手ハンス・エイサッカース(Hans Eijsackers)が全員担当しています。
受講者と曲は下記の通りです。
7分頃~
Lucie Horsch (mezzo soprano)
シューマン:献呈
Schumann: Widmung, Op. 25-1
25分頃~
Noëlle Drost (soprano)
ドビュッシー:マンドリン
Debussy: Mandoline
43分頃~
Vincent Kusters (baritone)
フォレ:夢のあとで
Fauré: Après un rêve, Op. 7-1
シューマン:献呈
Schumann: Widmung, Op. 25-1
バリトン歌手のみ2曲披露しています。
アーメリングは88歳にしてこのエネルギッシュな指導、ただただ頭が下がります。芸術歌曲に一生を捧げた人だからこその指導だったと思います。
画面右下の歯車マークからOndertitelingをクリックしてNederlandsをクリックするとオランダ語の字幕を表示できます(英語訳の字幕はないですが、なんとなく字面だけでも多少は判断の助けになるので表示しておくといいと思います)。
●モーツァルト: コンサート・アリア「私は行く、だがどこへ」K 583
Mozart: Concert Aria, K 583: Vado, ma dove? Oh Dei!
エリー・アーメリング(S), バイエルン放送交響楽団, ズデニェク・マーカル(C)
Elly Ameling(S), Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks, Zdeněk Mácal(C)
2021年にリリースされた「Wolfgang Amadé Mozart: Imperial Hall Concerts」という6枚組CDに1曲アーメリングの初出ライヴ音源が収録されていて、すでに動画サイトにもアップされていました。
録音日はCDの解説書に記載されている可能性がありますが未入手の為今のところ分かりません(1980年代でしょうか?)(→2021/9/21追記:Sandmanさんから、この演奏が1973年録音であることを教えていただきました。有難うございます)。
アーメリングは日本では歌曲や宗教曲のイメージが強いと思いますが、実際にはオペラアリアやコンサートアリアも沢山歌っていたんですよね。この歌唱、レガートがとても素晴らしいです。
今回の記事の多くは「Elly Ameling Discography」の運営をされているSandmanから情報提供いただいたものです。あらためてお礼申し上げます。
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コメント
フランツさん、こんばんは。
岩の上の羊飼い、聞きました。
51歳の時でしょうか。まだまだ声は瑞々しいですね。
最後に向かうところ、圧巻でした。コロラトゥーラの技法ですよね。
アメリングは、実はとても多彩な面をお持ちだということを、90年代にテレビでクラシック以外の歌を聴いた時に知りました。
表現が豊か、と言うに留まらず、歌が上手い!と率直に思いました。「枯れ葉」等とても良かったです。ジャンルを何と言うのか分からないのですが。
アメリンゲは、フランス歌曲も歌っていますが、ショーソンは歌っていますか?「リラの花咲くころ」 等大好きです。
後のご紹介の音源も、また聴きますね(^^)
投稿: 真子 | 2021年9月20日 (月曜日) 20時51分
フランツさん
Sandmannです.
アーメリングに関する, 私の断片的な情報を整理して, 的確なコメントをつけて頂きありがとうございます.
モーツァルトのコンサート・アリア K.583は, フランツさんから教えてもらって, 早速CDを購入してしまいました. これによると, 録音は, 1973年です.
余談になりますが, この6枚組のCDは, ヴュルツブルク・モーツァルト音楽祭でのモーツァルトの色々な曲が収められているのですが, アーメリングの歌唱以外で私が気に入ったのが, セレナーデ2曲とディヴェルティメント2曲. また, 三重唱ノットゥルノのヴァイオリン, ヴィオラとフォルテピアノの編曲, 3曲も楽しめます. 購入して損はなかったと思っています.
投稿: Sandman | 2021年9月21日 (火曜日) 14時30分
真子さん、こんばんは。
「岩の上の羊飼い」は53歳の時の歌唱ですね。
若い頃のように声の力だけでなんとかなってしまう時期ではもはやないと思いますが、この超絶テクニックにあらためて驚かされました。もともと優れたテクニックを持っていることは実践素人の私でも感じていましたが、こんなに挑戦的なコロラトゥーラをこの年で、しかも実演で披露してしまうとはおそるべしです。
アーメリングは「枯葉」などのポピュラーソングを1980年代前半に録音していますし、来日公演でも披露していますが、これらも素晴らしいですよね。私はオリジナルのイヴ・モンタンのようなシャンソン歌手よりも先にアーメリングで「枯葉」を知ったこともあり、クラシックの時とは明らかに変えたアプローチにとても感銘を受けた記憶があります。真子さんとも共感できて嬉しく思います。
ショーソンの「リラの花咲くころ」録音していますよ。
https://www.youtube.com/watch?v=T_5FvTYhc8c
この最後の一節は音楽雑誌で絶賛されました。
コントロールした弱声が彼女は素晴らしいんですよね。
投稿: フランツ | 2021年9月21日 (火曜日) 20時32分
Sandmanさん、こんばんは。
いろいろ情報を共有していただき、有難うございました。お蔭様で一つ記事にまとめることが出来ました。
アーメリングのアリアの入った組物CD、入手されたのですね。1973年録音でしたか。有難うございます。
まさに全盛期ですね。
私はもう少しお財布に余裕が出来たら購入しようと思っていますが、とりあえずApple musicのサブスクで全部聴くことは出来ます。
Sandmanさんのお気に入り曲のご紹介有難うございます。ルチア・ポップのアリアなども入っていましたよね。三重唱ノットゥルノがあったのは気付きませんでした。後で聞いてみますね。
いつも有難うございます。
投稿: フランツ | 2021年9月21日 (火曜日) 20時33分
フランツさん、こんにちは。
アメリングの「リラの花咲くころ」をご紹介くださってありがとうございます。
素晴らしい!という一言では言い表せない程の歌唱でした。
情感が渦巻いていますね。
前コメントでも書いた通り、「枯葉」などのポピュラーソングの数々を聞いた時もあまりの上手さに驚きましたが、アメリングの清澄な声が、この曲においては凄みになっているように思いました。
そして、弱音!
歌手はえてして声量の有無を言われますが、~もちろんそれも重要で、ないよりあった方が良いに決まっていますが~、実は美しい弱音を持って
いるかいないかで、特に歌曲を上質なものにできるかどうか決まると言っても過言ではないと思います。
この「リラの花咲くころ」、しばらく繰り返し聴く事になりそうです。
話は変わりますが、最近、黒澤明子さんというソプラノを動画で聞いています。
YouTubeには、「初恋」「霧と話した」「早春賦」が上がっています。
タワーレコードには、「さくら横丁 日本叙情歌集」のCDの試聴サンプルが出ています。
数日悩んで、Amazonに出ていた、定価より結構高い値がついていた中古CDを注文しました。
関係ない話ですみませんm(__)m
投稿: 真子 | 2021年9月22日 (水曜日) 11時21分
真子さん、こんばんは。
アーメリングの「リラの花咲くころ」気にいっていただき嬉しく思います(^^)
>アメリングの清澄な声が、この曲においては凄みになっているように思いました。
そうなんです!!彼女の清冽な声があるからこそのギャップですよね。「凄み」という形容、まさにそのとおりだと思います。
彼女がいかにテキストを重視しているかはマスタークラスなどで十分分かっていましたが、明晰なディクションを維持しながら、声の色やコントロールでテキストの心情を掘り下げていく技はちょっと比類がないように思います。
弱声は彼女の魅力の最大の要素のように思えます。
ハイペリオンのシューベルト全集でシューベルトの「イーダより(Von Ida)」という短い歌曲を彼女は録音しているのですが、有節形式の各節最後の絞り込んだ歌声は鳥肌ものでした。
>美しい弱音を持って
いるかいないかで、特に歌曲を上質なものにできるかどうか決まると言っても過言ではないと思います。
本当に同感です!!
黒澤明子さんという方は聴いたことがなかったのですが、YouTubeで聴いたら私の好きなタイプの声でした(^^)
やはり真子さんと声の好みが似ていますね。
Amazonは稀少な中古は高い値段つけられていることが多いですよね。少し値段の設定を規制してほしいものです。
ちょっと調べてみたら新国立劇場合唱団のメンバーでもあるとのこと、知らずに聞いていたかもしれません。
彼女のリートも聴いてみたいと思いました。
投稿: フランツ | 2021年9月22日 (水曜日) 19時47分
フランツさん、こんにちは。
アメリングの「リラの花咲くころ」の感想について、誤単語を使っていました。
上から五行目、
「情感が渦巻いていますね。」
ではなく、
「情念が渦巻いていますね。」
と書こうとしたんです。
ショーソンの音楽に、(全てではありませんが)「情念」を感じます。
その情念は、アメリングが澄んだ清らかな声で歌う時、より凄みとして感じさせました。
シューベルトの「糸を紡ぐグレートヒェン」を、可憐な声で歌われた時に、狂気すら感じるのと似ているかもしれませんね。
もし、シューベルトが「リラの花咲くころ」に曲をつけたなら、かなわない思いを憧れに満ちて、泣きながら微笑むような曲をつけるのかなあ、なんて思いました。
投稿: 真子 | 2021年9月23日 (木曜日) 17時58分
真子さん、こんばんは。
>「情感が渦巻いていますね。」
ではなく、
「情念が渦巻いていますね。」
と書こうとしたんです。
文脈からそのように理解していました(^^)
>ショーソンの音楽に、(全てではありませんが)「情念」を感じます。
その情念は、アメリングが澄んだ清らかな声で歌う時、より凄みとして感じさせました。
本当に彼女の清楚な声だからこその凄みですよね。
津田ホールで「糸を紡ぐグレートヒェン」を聴いた時にまさにその体験をしました。
「リラの花咲くころ」を他の歌手でも聞いてみますね。
>もし、シューベルトが「リラの花咲くころ」に曲をつけたなら、かなわない思いを憧れに満ちて、泣きながら微笑むような曲をつけるのかなあ、なんて思いました。
さすが真子さん、シューベルトの本質をついたコメントですね。素晴らしいです!シューベルトの花を扱った歌曲は胸を締め付けられることが多いです。モーツァルトとは全く違う詩による「すみれ(Viola)」という10分以上かかる歌曲では本当につつましやかにすみれの切ない心情を伝えてくれていて、詩を読みながら聴くと目頭が熱くなります。
投稿: フランツ | 2021年9月23日 (木曜日) 19時21分
フランツさん、こんばんは。
YouTubeに上がっているか見つけられなかったのですが、私は川口聖加さんのCDで、ショーソン歌曲を知りました。この中に「リラの花咲くころ」も入っています。
彼女の歌うショーソンもとてもいいです。
以前、フランツさんから、川口さんはアメリングのお弟子さん(マスタークラスか何かの受講生?)とお聞きしたことがあります。
このCDは、ショーソンと日本歌曲のカップリングで、私の好きな「落葉松」「初恋」や、木下牧子歌曲集等が入っています。プーランクの「愛の小径」も。
この曲も、アメリングは歌っておられましたね。
これは、きちんと調べたことでなく私の感覚なんですが、明治期の日本の歌は、ドイツリートと親和性があり、近代日本歌曲は、フランス歌曲と響きが似ている気がします。
昔、合唱をしていた時きいたピアノパートの響きがフランス歌曲と似ているなあ、と。楽典は苦手なので、理論的にうまく説明できないのですが、、
もちろん、ドイツリートと一口に言っても、古典派からロマン派まで作風に幅はありますが。
日本歌曲に、高田敏子作詩、三善晃作曲の「林のなか」という作品があります。小品ながら、少しファンタスティックな不思議な感じのする歌曲で、とても好きなんです。秋が訪れると聞きたくなります。雨谷麻世さんの「日本のうた」のCDの中に入っています。
そういえば、アメリングは日本の歌も録音されていましたね。
日本人として嬉しい事です♪
投稿: 真子 | 2021年9月23日 (木曜日) 21時34分
真子さん、こんばんは。
>以前、フランツさんから、川口さんはアメリングのお弟子さん(マスタークラスか何かの受講生?)とお聞きしたことがあります。
昔はアーメリングで検索をかけると川口さんのWebサイトがヒットしたのですが、今はその時のサイトはないようです(新しいサイトが出来たようです)。マスタークラスで彼女の指導を受けたということのようですね。
YouTubeにいくつか音源がありましたが、ショーソンでは「静けさ」という曲を聞けました。素敵な曲ですね。川口さんのちょっとボーイソプラノふうの無垢な響きが素晴らしかったです。私はApple musicというサブスクリプション(定額制の配信サービス)に登録しているのですが、ここに彼女の歌う武満徹の歌を集めたCDがあったのでそれも聴いてみました。無理がなく自然な響きで心が洗われるようでした。それにしても武満徹って他のジャンルでは当時前衛ばりばりだったのに、なぜ歌曲だけこんなに機能和声に従順なのかとても不思議な気がします。どういう経緯で歌を作ったのだろうかなどと想像がふくらみます。
真子さんは日本歌曲や日本人の女声歌手にお詳しいですね。私は日本歌曲も日本人歌手も本当に疎いので、いつも有難く思っていますが、教えていただく日本人歌手がみな素晴らしいので驚いています。
日本歌曲は西欧に留学した作曲家たちがそこで習得した技を使っているということが大きいように思います。橋本國彦の「お菓子と娘」という曲のピアノパートなどとてもきらびやかで洋風な感じがするように思います。
Apple musicにはあまり日本人歌手のCDはなく(あっても様々な音源の寄せ集めのようなものが多いです)、amazonで調べても廃盤になっていることが多いですよね。意外と穴場なのがdisk unionのような中古CD屋さんで結構珍しい日本人歌手のCDが置いてあったりします。こういうお店で出会うCDも一期一会なのかなと思います。
三善晃作曲の「林のなか」という曲、YouTubeで検索したら女声合唱版がヒットしました。合唱とピアノがしっとりと絡み合って美しかったです。独唱版と同じメロディなのかは分かりませんが。真子さんは秋に聞きたくなるのですね。季節のイメージと結びついた音楽との関係というのもいいですよね。
アーメリングは日本歌曲では「からたちの花」「おやすみなさい」「たーんきぽーんき」などを歌っていました。「セレナータ」というタイトルのアルバムに入っている中田喜直の「髪」という曲がとても官能的で、それを素晴らしく自分のものにされているアーメリングに感銘を受けた記憶があります。
投稿: フランツ | 2021年9月24日 (金曜日) 19時22分
フランツさん、こんばんは。
中田喜直さんの「髪」は知らなかったので、聞いてみました。
本当に官能的な歌曲ですね。
髪は女の情念の象徴とも言えますが、それが余すところなく表現された曲だと思いました。
日本語で書かれたこの歌曲を、アメリングがご自分のものとされて歌われたとは、驚きです。聞いてみたいです。
ゾクっとする日本歌曲には、「曼珠沙華」なども。解釈も色々あるようです。
私はプライさんに出会ってドイツリートの魅力を知るまでは、リリカルな女声で日本歌曲を聞くのが好きでした。
日本語の繊細な響きがとても好きなんです。
特に、さ行の美しさは類を見ないように感じています。
「ささのはさらさら、
のきばに揺れる、、(七夕)」
素朴ですが、本当に美しいですよね。
藍川由実さんも、「日本語の美は何といっても、「かそけき」や「さやけき」といった言葉に象徴される繊細な子音の響きにある。」と書いておられます。(これでいいのか、にっぽんのうた 文春新書P124)
合唱で、よく「子音を立てて!」と指導されますが、やり過ぎると日本語の美が失われるし、母音しか聞こえないのも困りますし、舞台では加減の難しいところです。
藍川さんの、同じ書、同じページには、母音についても興味深い事が書かれていました。
「、、イタリア語の歌においては、音符の長さいっぱいに、母音の響きと密度が保たれることが多い。いわば水道の蛇口を全開にして、水を流しっぱなしにしたような状態である。それに対して、日本語の母音は、音を延ばしている間に、あたかも墨絵のような響きの濃淡をつけながら、言葉の微妙なニュアンスを醸し出す。」
「開母音という点で、日本語は、イタリア語と似ていると言われてきたが、二重母音が多いイタリア語と違う」と、述べておられます。
フランツさんは、ドイツ語の響きがとても、好きだと仰っていましたね。
私も、プライさんから、ドイツ語の美しさを教えてもらいました。
しかし、悲しいかな、音として感んじるだけで、勉強不足ゆえ、語感を感じるに至っていません。
若いころ、ベートーベンの第九に参加して、初めてドイツ語を歌った時は、なんてゴツゴツした言葉なんだ!と思いました。
ベートーベンの曲の付け方が器楽的だから、gegebenを、ゲーエ ゲーエ ベンなんて歌わせるものですから、なおのこと笑。
黒澤明子さんのCD、届きました。佐藤春夫作詩、大中恩作曲「秋の女よ」など、とても良かったです。自然な情感と叙情性が魅力的な方だなあ、と思います。
またまた長くなってすみません。
投稿: 真子 | 2021年9月25日 (土曜日) 21時43分
真子さん、こんばんは。
中田喜直の「髪」を聞いてくださったのですね。
私はこの曲を聴くと、和服をちょっと着崩した女性が和室の鏡台の前で長い髪をとかす様が目に浮かびます。ドビュッシーの「ビリティスの歌」の「髪」もそうなのですが、髪を扱った作品は官能的なことが多いように感じます。シューベルトの「耽溺(遊びに溺れて)」やヴォルフの「私の巻き毛の陰で」なども...。
「曼珠沙華」も激しい感情表現がとても印象的だと思います。
ちなみにアーメリング&ヤンセンによる「髪」の演奏はこちらで聴けます。
https://www.youtube.com/watch?v=-h-T3UVohfs
日本語は完璧ではないにしろ、かなりしっかり研究しているように思います。おそらく日本人に発音のアドバイスを受けたのではないかと思います。このように日本語特有の発音を表現できるのはネイティブのアドバイスなしには難しいでしょう。
他にYouTubeにあがっている中では次の音源がとても良かったです。
https://www.youtube.com/watch?v=HTKg9PXRjig
「ささのはさらさら」
日本語の「さ」行の響きはとても温かいですね。詩を味わう時は意味だけでなく音の響きも重要だとあらためて思います。
藍川由実さんの本のご紹介も有難うございます。興味深い内容ですね。水道の蛇口のたとえ、面白かったです。
私は第九を歌った経験がないのですが、ベートーヴェンはかなり器楽的に作曲しているといいますね。歌う方は大変だと思います。真子さんの体験談、興味深かったです。
黒澤明子さん、YouTubeで数曲聞いただけですがとても美しい声で魅力的ですよね。CD楽しんでくださいね。
投稿: フランツ | 2021年9月26日 (日曜日) 19時24分