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ベートーヴェン「自然における神の栄光(Die Ehre Gottes aus der Natur, Op. 48, No. 4)」(『ゲレルトの詩による6つの歌曲』より)

Die Ehre Gottes aus der Natur, Op. 48, No. 4
 自然における神の栄光

1.
Die Himmel rühmen des Ewigen Ehre;
Ihr Schall pflanzt seinen Namen fort.
Ihn rühmt der Erdkreis, ihn preisen die Meere;
Vernimm, o Mensch, ihr göttlich Wort!
 天は永遠なる者の栄光をたたえ、
 その響きはその者の名を伝える。
 全世界が彼をたたえ、海が彼をたたえる。
 聞け、おお人間よ、神の御言葉を!

2.
Wer trägt der Himmel unzählbare Sterne?
Wer führt die Sonn aus ihrem Zelt?
Sie kömmt und leuchtet und lacht uns von ferne
Und läuft den Weg gleich als ein Held.
 誰が天の無数の星を運んでいるのだ?
 誰が蒼穹から太陽を動かすのだ?
 太陽はやって来て輝き、遠くから我らに笑いかけ、
 さながら英雄のように道を進むのだ。

3.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Vernimm's, und siehe die Wunder der Werke,
Die die Natur dir aufgestellt!
Verkündigt Weisheit und Ordnung und Stärke
Dir nicht den Herrn, den Herrn der Welt?
 それを聞け、みわざの奇跡を見よ、
 自然があなたに提示する奇跡を!
 思慮と秩序と強靭さは
 あなたに主を、この世の主を告知しないだろうか。

4.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Kannst du der Wesen unzählbare Heere,
Den kleinsten Staub fühllos beschaun?
Durch wen ist alles? O gib ihm die Ehre!
Mir, ruft der Herr, sollst du vertraun.
 あなたは生き物の無数の群れを、
 もっとも小さな塵を無情に観察できるだろうか。
 万物があるのは誰によるのか。おおあの方に栄光を与えたまえ!
 私を、と主は叫ばれた、私を信用しなさい。

5.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Mein ist die Kraft, mein ist Himmel und Erde;
An meinen Werken kennst du mich.
Ich bin's, und werde sein, der ich sein werde,
Dein Gott und Vater ewiglich.
 力は私のもの、天地は私のものだ。
 わが行いを通じてあなたは私を知る。
 それは私であり、今後も私であるだろう、
 永遠にあなたの神であり父であるのは。

6.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Ich bin dein Schöpfer, bin Weisheit und Güte,
Ein Gott der Ordnung und dein Heil;
Ich bin's! Mich liebe von ganzem Gemüte,
Und nimm an meiner Gnade Teil.
 私はあなたの創造主であり、思慮や親切であり、
 秩序の神であり、あなたの安寧である。
 私がそうなのだ!私を心から愛しなさい、
 そしてわが恩寵の分け前を受け取りなさい。

L. Beethoven sets stanzas 1-2
Carl Philipp Emanuel Bach (1714-1788) sets stanzas 1, 4-6

詩:Christian Fürchtegott Gellert (1715-1769)
曲:Ludwig van Beethoven (1770-1827), "Die Ehre Gottes aus der Natur", op. 48 no. 4 (1803), stanzas 1-2, from Sechs Lieder nach Gedichten von Gellert, no. 4

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『ゲレルトの詩による6つの歌曲』の第4曲は「自然における神の栄光」で、曲集中単独でも歌われる機会の多い有名な作品です。自然界の創造主である神の栄光を讃える内容です。

全6節からなるゲレルトの詩の第1-2節のみにベートーヴェンは作曲しました。この曲の終わりにはダル・セーニョ記号や繰り返し記号はありませんが、原詩の続きの節を繰り返して歌うことも可能でしょう(詩の2節分でひとまとまり)。

ベートーヴェンの曲は2小節のピアノ前奏がいきなりffで始まり、力強く和音を響かせます。歌が入ると、歌とピアノはまずユニゾンではじまり、途中から和音になります。強弱の指示が細かく、めりはりのついた力強い作品です。基本的に和音進行なので、合唱の形に編曲しやすいでしょうし、実際に合唱団のレパートリーにもなっているようです。

2/2拍子
ハ長調(C-dur)
Majestätisch und erhaben (堂々と崇高に)

●ヘルマン・プライ(BR), ヴォルフガング・サヴァリシュ(P)
Hermann Prey(BR), Wolfgang Sawallisch(P)

プライの力強い美声と引き締まったテンポ感に惹き込まれました。サヴァリシュのしっかりとしたタッチも魅力的です。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), イェルク・デームス(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Jörg Demus(P)

F=ディースカウの堂々たる歌いっぷりは説得力があります。

●ジェスィー・ノーマン(S), ジェイムズ・レヴァイン(P)
Jessye Norman(S), James Levine(P)

この曲の崇高さがノーマンの豊かな声で素晴らしく表現されています。

●ペーター・シュライアー(T), ヴァルター・オルベルツ(P)
Peter Schreier(T), Walter Olbertz(P)

ゆったりとしたテンポで始まり、徐々に盛り上げていく演奏の設計が素晴らしかったです!

●マティアス・ゲルネ(BR), ヤン・リシエツキ(P)
Matthias Goerne(BR), Jan Lisiecki(P)

ゲルネの包容力のある声が魅力的です。比較的テンポが軽快に設定されているので、推進力が感じられる演奏でした。

●フランツ・リストによるピアノ独奏編曲版(Andrew Yiangou (P))
Andrew Yiangou - Beethoven / Liszt - “Die Ehre Gottes aus der Natur, S467/6

リストは、かなり華麗な技巧を盛り込んで、原曲のモノトーンで力強い雰囲気に色合いを加えた印象です。

●カール・フィリプ・エマヌエル・バッハ作曲「自然における神の栄光」
C.P.E. Bach: Geistliche Oden und Lieder, Wq. 194, H. 686: No. 13, Die Ehre Gottes aus der Natur
ドロテー・ミールツ(S), ルドガー・レミー(Fortepiano)
Dorothee Mields(S), Ludger Rémy(Fortepiano)

C.P.E.バッハは、この詩の第1,4,5,6節に有節形式で作曲していて、ここでもその4つの節が演奏されています。明るく美しい作品ですが、歌手は高低の差が大きいので歌いにくいかもしれません。ミールツの清楚な美声はとても魅力的です。

(参考)

The LiederNet Archive

Beethoven-Haus Bonn

「ゲレルトの詩による6つの歌(リート)」——伯爵夫人の死に際して出版された歌曲集

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コメント

フランツさん、こんにちは。

来ましたね!この曲はこの歌曲集の中で最も好きな曲なんです。

ゲルハルトは、旧約聖書詩編19章からインスピレーションを受けてこの詩を書いたと思われます。
また、「聖歌」689番に「諸天は神の尽きぬ栄え」として、この曲がおさめられています。私も聖歌隊で歌いましたが、爽快な気分になります♪

さて、50代に入ったプライさんの威厳を感じさせる声は、本当にこの歌曲とマッチしていると感じます。
彼は、1968年にもオケ版で合唱を伴った同曲を録音しています。
甘く男性的な美声で、オケと共演と言うことで、とてもスケールの大きな歌い方をしていて、こちらも魅力満載です(^^)

ディースカさんは、音色の変化、緩急、強弱の限りを尽くした技巧的なアプローチですね。各行の最後のフェルマータが印象的でした。

ノーマンの豊潤で輝かしいソプラノは、天上に煌めく数多の星を思わせました。ただパワフルなだけでない彼女の歌は素晴らしいですよね。

シュライアー、「徐々に盛り上げていく演奏の設計」とお書きになっていますが、本当にそうですね。この中で唯一のテノール。高音の張りが輝かしいです。

ゲルネは、速めのテンポを取って、グイグイ迫ってきますね。
「さながら英雄のように道を進むのだ。」という歌詞を読むと納得します。

リストは、間が空くと音を入れたくなっちゃうんですかね笑
荘厳と華麗が入り交じった聞き応えのある編曲でした。ピア二ストの方も素晴らしい!聞き惚れました!

C.P.E.バッハは、ベートーベンと全く違うアプローチですね。
確かに歌いずらい音の動きですが、ただ美声なだけでない、ミールツの技術を感じさせる曲でもありました。
タワーレコードから、彼女のC.P.E.バッハのCDが入ったと連絡がありましたので、取りに行って来ます。


投稿: 真子 | 2021年8月21日 (土曜日) 13時42分

真子さん、おはようございます!

真子さんのお好きな「自然における神の栄光」にようやく到達しました。真子さんも歌われたのですね!

旧約聖書詩編19章、調べてみましたが、おっしゃる通り似ていました。ゲレルトの詩はこの部分を翻案したのかもしれませんね。

「聖歌」689番の「諸天は神の尽きぬ栄え」を教えていただき有難うございました。YouTubeで聞いたらベートーヴェンの曲がそのまま聖歌に採用されているのですね。知りませんでした。「聖歌」って大昔の決まった宗教歌をずっと歌い継いでいるのかと思い込んでいたのですが、そういうものでもなさそうですね。

プライの1968年録音のオケ版の歌唱、おそらく私が学生時代に中古屋で入手したオムニバスのLPに入っていたような気がするのですが、はっきり覚えていません。いろんな編成で親しまれているのですね。

プライ、ディースカウ、ノーマン、シュライアー、ゲルネへのご感想を有難うございました(^^)いつも感想を共有いただいてうれしく拝見しています。おっしゃるようにプライの甘美で力強い歌唱が魅力的でした。ノーマンはパワフルなだけではないというのは、私もこのゲレルト歌曲集をじっくり聴いてあらためて気づかされました。

>リストは、間が空くと音を入れたくなっちゃうんですかね笑

本当同感です笑。リストは自分で演奏することも考慮していたでしょうから、やはり技巧をアピールする部分は入れ込みたくなるのでしょうね。

ミールツのC.P.E.バッハのCD、入荷されたそうですね。清楚で技術も確かで美声で素晴らしい録音だと思います。ぜひ楽しんでくださいね。

投稿: フランツ | 2021年8月22日 (日曜日) 09時53分

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