« 2021年7月 | トップページ | 2021年9月 »

ベートーヴェン「神の力と摂理(Gottes Macht und Vorsehung, Op. 48, No. 5)」(『ゲレルトの詩による6つの歌曲』より)

Gottes Macht und Vorsehung, Op. 48, No. 5
 神の力と摂理

1.
Gott ist mein Lied!
Er ist der Gott der Stärke,
Hehr ist sein Nam'
Und groß sind seine Werke,
Und alle Himmel sein Gebiet.
 神はわが歌だ!
 その方は強靭さの神であり、
 その御名は崇高であり、
 神の作品は偉大であり、
 そして天すべてが神の地である。

2.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Er will und spricht's;
So sind und leben Welten.
Und er gebeut;
so fallen durch sein Schelten
Die Himmel wieder in ihr Nichts.
 その方は望み、こう言われる:
 世界はかくあり、かく生きるのだ、
 そしてその方は命じた、
 その方の叱責により
 天は再び無に落ちた。

3.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Licht ist sein Kleid,
Und seine Wahl das Beste;
Er herrscht als Gott,
und seines Thrones Feste
Ist Wahrheit und Gerechtigkeit.
 光はその方の衣装で
 その方の選択は最良だ。
 その方は神として支配し、
 その玉座の要塞は
 真理と正義だ。 

4.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Unendlich reich,
Ein Meer von Seligkeiten,
Ohn Anfang Gott,
und Gott in ewgen Zeiten!
Herr aller Welt, wer ist dir gleich?
 無限に豊かだ、
 至福の海は。
 神に始まりなく、
 神は永遠の時におられる。
 あらゆる世界を統べる主よ、誰があなたにたとえられようか。

5.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Was ist und war,
In Himmel, Erd und Meere,
Das kennet Gott,
und seiner Werke Heere
Sind ewig vor ihm offenbar.
 何であり、何だったのか、
 天、地、海の中は、
 それを神は知っておられますように。
 そして神の創造物の群れは
 永遠に御前に明らかだ。

6.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Er ist um mich,
Schafft, daß ich sicher ruhe;
Er schafft, was ich
vor oder nachmals tue,
Und er erforschet mich und dich.
 その方は私のまわりにおられ、
 私が安心して休めるように創造された。
 その方は成し遂げられた、私が
 以前したこと、後にすることを、
 そして私やあなたのことを探られる。

7.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Er ist dir nah,
Du sitzest oder gehest;
Ob du ans Meer,
ob du gen Himmel flöhest:
So ist er allenthalben da.
 その方はあなたの近くにおられる、
 あなたが座っていようが歩いていようが、
 あなたが海に行こうが、
 天上にのぼっていこうが。
 その方はいたるところにおられる。

8.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Er kennt mein Flehn
Und allen Rat der Seele.
Er weiß, wie oft
ich Gutes tu und fehle,
Und eilt, mir gnädig beizustehn.
 その方は私の懇願と
 魂のあらゆる助言を知る。
 その方は、どれほど頻繁に
 私が善行をし、足りないかを知っていて、
 私に慈悲深くも助力しようと急ぐ。

9.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Er wog mir dar,
Was er mir geben wollte,
Schrieb auf sein Buch,
wie lang ich leben sollte,
Da ich noch unbereitet war.
 その方は私のために考えて
 私に与えようとしたものを
 自身の書物に書いた、
 どれほどの間私が生きられるかを、
 私がまだ心の準備が出来ていなかった為に。

10.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Nichts, nichts ist mein,
Das Gott nicht angehöre.
Herr, immerdar
soll deines Namens Ehre,
Dein Lob in meinem Munde sein!
 何も、何もない、
 神に属さない私のものは。
 主よ、永久に
 御身の名の栄誉にかけて
 わが口によって御身を賛美させてくださいますように!

11.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Wer kann die Pracht
Von deinen Wundern fassen?
Ein jeder Staub,
den du hast werden lassen,
Verkündigt seines Schöpfers Macht.
 誰が
 御身の奇跡の壮麗さを表現できようか。
 塵埃が、
 御身がのこした塵埃が、
 自分を創造した方の力を伝えるのだ。

12.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Der kleinste Halm
Ist deiner Weisheit Spiegel.
Du, Luft und Meer,
ihr Auen, Tal und Hügel,
Ihr seid sein Loblied und sein Psalm!
 一番小さな茎が
 御身の知恵の鑑である。
 御身、空気、海、
 緑野、谷、丘、
 きみたちはあの方の賛歌であり讃美歌である。

13.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Du tränkst das Land,
Führst uns auf grüne Weiden;
Und Nacht und Tag,
und Korn und Wein und Freud
Empfangen wir aus deiner Hand.
 御身は大地を享受し
 われわれを緑の牧草地に連れていく。
 そして夜に昼に
 穀物やワインや楽しいことを
 われわれは御身の手から受け取るのだろうか。

14.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Kein Sperling fällt,
Herr, ohne deinen Willen;
Sollt ich mein Herz
nicht mit dem Troste stillen,
Daß deine Hand mein Leben hält?
 雀は下降しない、
 主よ、御身の意思なしには。
 わが心を
 慰められないまま鎮めなければならないのか、
 御手が私の生命を守っておられるのに。

15.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Ist Gott mein Schutz,
Will Gott mein Retter werden:
So frag ich nichts
nach Himmel und nach Erden,
Und biete selbst der Hölle Trutz.
 神はわが庇護者なのか、
 神は私の救い主になろうとしているか、
 私は何も尋ねない、
 天にも地にも、
 そして私は自ら地獄に抵抗するのだ。

L. Beethoven sets stanza 1
Carl Loewe (1796 - 1869), "Gott ist mein Lied", 1826

詩:Christian Fürchtegott Gellert (1715-1769)
曲:Ludwig van Beethoven (1770-1827), "Gottes Macht und Vorsehung", op. 48 no. 5 (1803), stanza 1, from Sechs Lieder nach Gedichten von Gellert, no. 5

-------------

『ゲレルトの詩による6つの歌曲』から第5曲は「神の力と摂理」です。
神の威容と摂理について説く内容になっています。

全15節からなるゲレルトの詩の第1節のみにベートーヴェンは作曲しました。この曲の終わりにはダル・セーニョ記号も繰り返し記号もありませんが、他の節を繰り返して歌うことも可能で、そのような演奏もあります(下に引用した中ではプライ&サヴァリシュ、ゲルネ&リシエツキが追加していました)。

歌とピアノの右手が最初のうちユニゾンで演奏されていることもあり、曲の趣が、前曲の「自然における神の栄光」と似たものに感じられます。
f(フォルテ)とff(フォルティッシモ)のみが使われていて、ベートーヴェンがこの曲に力強さを求めていることが分かります。
短く奇をてらわない素朴な音楽が、偉大な存在への賛歌としてふさわしく感じられました。

2/2拍子
ハ長調(C-dur)
Mit Kraft und Feuer (力と熱気をもって)

なお、ゲレルト歌曲集の他の曲と同じテキストにC.P.E.バッハは作曲していましたが、このテキストには作曲しなかったようです。また、カール・レーヴェがこの詩に作曲していたようですが、残念ながら音源を見つけることが出来ませんでした。

●ジェスィー・ノーマン(S), ジェイムズ・レヴァイン(P)
Jessye Norman(S), James Levine(P)

神と民衆の仲立ちをする人の祈りの言葉のように聞こえました。朗々と響き渡るノーマンの歌は素晴らしいです。

●ヘルマン・プライ(BR), ヴォルフガング・サヴァリシュ(P)
Hermann Prey(BR), Wolfgang Sawallisch(P)

1,11,15節。プライのびんびん響く力強い歌唱が神への強い信頼を感じさせてくれました。サヴァリシュの明晰なピアノも聴きものです。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), イェルク・デームス(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Jörg Demus(P)

めりはりのきいたF=ディースカウらしい歌唱でした。

●マティアス・ゲルネ(BR), ヤン・リシエツキ(P)
Matthias Goerne(BR), Jan Lisiecki(P)

1,2,8,10,15節演奏。ゲルネは他の節も追加して軽快に神の摂理を説いていきます。

●ペーター・シュライアー(T), ヴァルター・オルベルツ(P)
Peter Schreier(T), Walter Olbertz(P)

シュライアーは宗教的な題材の歌曲を歌う時、ゆったりとしたテンポ設定で丁寧に歌うことが多いですね。伝えようという意思が感じられて聞き入ってしまいます。

●ロベルト・ホル(BSBR), デイヴィッド・ラッツ(P)
Robert Holl(BSBR), David Lutz(P)

ホルの重厚な歌唱は威厳のある曲の雰囲気にぴったりでした。

●ピアノパートのみ(Marco Santià (piano))
Sing with me - L. V. Beethoven - Gottes Macht und Vorsehung (high voice)

原調(ハ長調)での演奏です。ピアノの最高音が歌のパートをなぞっているので、歌がなくても曲を知ることが出来ます。

●リストによるピアノ独奏用編曲(Ian Yungwook Yoo (piano))
Beethoven - 6 Geistliche Lieder, S. 467/R. 122: No. 1, Gottes Macht und Vorsehung · Ian Yungwook Yoo

リストは、まずベートーヴェンの原曲にかなり忠実に若干和音の厚みを加えて通し、2回目にリストらしい技巧を盛り込んだ変奏を聞かせています。

●ハイドンによる作曲(Győr Girl's Choir, Miklós Szabó(C))
Joseph Haydn: Gottes Macht und Vorsehung, Hob XXVIIb:8

ハイドンはゲレルトの詩の最終節である第15節にカノンの形で作曲しています。軽快で喜ばしい雰囲気の作品ですね。

(参考)

The LiederNet Archive

Beethoven-Haus Bonn

「ゲレルトの詩による6つの歌(リート)」——伯爵夫人の死に際して出版された歌曲集

| | | コメント (2)

ベートーヴェン「自然における神の栄光(Die Ehre Gottes aus der Natur, Op. 48, No. 4)」(『ゲレルトの詩による6つの歌曲』より)

Die Ehre Gottes aus der Natur, Op. 48, No. 4
 自然における神の栄光

1.
Die Himmel rühmen des Ewigen Ehre;
Ihr Schall pflanzt seinen Namen fort.
Ihn rühmt der Erdkreis, ihn preisen die Meere;
Vernimm, o Mensch, ihr göttlich Wort!
 天は永遠なる者の栄光をたたえ、
 その響きはその者の名を伝える。
 全世界が彼をたたえ、海が彼をたたえる。
 聞け、おお人間よ、神の御言葉を!

2.
Wer trägt der Himmel unzählbare Sterne?
Wer führt die Sonn aus ihrem Zelt?
Sie kömmt und leuchtet und lacht uns von ferne
Und läuft den Weg gleich als ein Held.
 誰が天の無数の星を運んでいるのだ?
 誰が蒼穹から太陽を動かすのだ?
 太陽はやって来て輝き、遠くから我らに笑いかけ、
 さながら英雄のように道を進むのだ。

3.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Vernimm's, und siehe die Wunder der Werke,
Die die Natur dir aufgestellt!
Verkündigt Weisheit und Ordnung und Stärke
Dir nicht den Herrn, den Herrn der Welt?
 それを聞け、みわざの奇跡を見よ、
 自然があなたに提示する奇跡を!
 思慮と秩序と強靭さは
 あなたに主を、この世の主を告知しないだろうか。

4.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Kannst du der Wesen unzählbare Heere,
Den kleinsten Staub fühllos beschaun?
Durch wen ist alles? O gib ihm die Ehre!
Mir, ruft der Herr, sollst du vertraun.
 あなたは生き物の無数の群れを、
 もっとも小さな塵を無情に観察できるだろうか。
 万物があるのは誰によるのか。おおあの方に栄光を与えたまえ!
 私を、と主は叫ばれた、私を信用しなさい。

5.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Mein ist die Kraft, mein ist Himmel und Erde;
An meinen Werken kennst du mich.
Ich bin's, und werde sein, der ich sein werde,
Dein Gott und Vater ewiglich.
 力は私のもの、天地は私のものだ。
 わが行いを通じてあなたは私を知る。
 それは私であり、今後も私であるだろう、
 永遠にあなたの神であり父であるのは。

6.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Ich bin dein Schöpfer, bin Weisheit und Güte,
Ein Gott der Ordnung und dein Heil;
Ich bin's! Mich liebe von ganzem Gemüte,
Und nimm an meiner Gnade Teil.
 私はあなたの創造主であり、思慮や親切であり、
 秩序の神であり、あなたの安寧である。
 私がそうなのだ!私を心から愛しなさい、
 そしてわが恩寵の分け前を受け取りなさい。

L. Beethoven sets stanzas 1-2
Carl Philipp Emanuel Bach (1714-1788) sets stanzas 1, 4-6

詩:Christian Fürchtegott Gellert (1715-1769)
曲:Ludwig van Beethoven (1770-1827), "Die Ehre Gottes aus der Natur", op. 48 no. 4 (1803), stanzas 1-2, from Sechs Lieder nach Gedichten von Gellert, no. 4

-------------

『ゲレルトの詩による6つの歌曲』の第4曲は「自然における神の栄光」で、曲集中単独でも歌われる機会の多い有名な作品です。自然界の創造主である神の栄光を讃える内容です。

全6節からなるゲレルトの詩の第1-2節のみにベートーヴェンは作曲しました。この曲の終わりにはダル・セーニョ記号や繰り返し記号はありませんが、原詩の続きの節を繰り返して歌うことも可能でしょう(詩の2節分でひとまとまり)。

ベートーヴェンの曲は2小節のピアノ前奏がいきなりffで始まり、力強く和音を響かせます。歌が入ると、歌とピアノはまずユニゾンではじまり、途中から和音になります。強弱の指示が細かく、めりはりのついた力強い作品です。基本的に和音進行なので、合唱の形に編曲しやすいでしょうし、実際に合唱団のレパートリーにもなっているようです。

2/2拍子
ハ長調(C-dur)
Majestätisch und erhaben (堂々と崇高に)

●ヘルマン・プライ(BR), ヴォルフガング・サヴァリシュ(P)
Hermann Prey(BR), Wolfgang Sawallisch(P)

プライの力強い美声と引き締まったテンポ感に惹き込まれました。サヴァリシュのしっかりとしたタッチも魅力的です。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), イェルク・デームス(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Jörg Demus(P)

F=ディースカウの堂々たる歌いっぷりは説得力があります。

●ジェスィー・ノーマン(S), ジェイムズ・レヴァイン(P)
Jessye Norman(S), James Levine(P)

この曲の崇高さがノーマンの豊かな声で素晴らしく表現されています。

●ペーター・シュライアー(T), ヴァルター・オルベルツ(P)
Peter Schreier(T), Walter Olbertz(P)

ゆったりとしたテンポで始まり、徐々に盛り上げていく演奏の設計が素晴らしかったです!

●マティアス・ゲルネ(BR), ヤン・リシエツキ(P)
Matthias Goerne(BR), Jan Lisiecki(P)

ゲルネの包容力のある声が魅力的です。比較的テンポが軽快に設定されているので、推進力が感じられる演奏でした。

●フランツ・リストによるピアノ独奏編曲版(Andrew Yiangou (P))
Andrew Yiangou - Beethoven / Liszt - “Die Ehre Gottes aus der Natur, S467/6

リストは、かなり華麗な技巧を盛り込んで、原曲のモノトーンで力強い雰囲気に色合いを加えた印象です。

●カール・フィリプ・エマヌエル・バッハ作曲「自然における神の栄光」
C.P.E. Bach: Geistliche Oden und Lieder, Wq. 194, H. 686: No. 13, Die Ehre Gottes aus der Natur
ドロテー・ミールツ(S), ルドガー・レミー(Fortepiano)
Dorothee Mields(S), Ludger Rémy(Fortepiano)

C.P.E.バッハは、この詩の第1,4,5,6節に有節形式で作曲していて、ここでもその4つの節が演奏されています。明るく美しい作品ですが、歌手は高低の差が大きいので歌いにくいかもしれません。ミールツの清楚な美声はとても魅力的です。

(参考)

The LiederNet Archive

Beethoven-Haus Bonn

「ゲレルトの詩による6つの歌(リート)」——伯爵夫人の死に際して出版された歌曲集

| | | コメント (2)

ベートーヴェン「死について(Vom Tode, Op. 48, No. 3)」(『ゲレルトの詩による6つの歌曲』より)

Vom Tode
 死について

1.
Meine Lebenszeit verstreicht,
Stündlich eil ich zu dem Grabe,
Und was ist's, das ich vielleicht,
Das ich noch zu leben habe?
Denk, o Mensch, an deinen Tod!
Säume nicht, denn Eins ist Not!
 わが生涯は過ぎ去り
 刻々と墓へと急ぐ。
 そしてそれが何だというのだ、私がひょっとして
 まだ生きられるとしても?
 思い馳せよ、おお人間よ、死を思え!
 ぐずぐずするな、なぜならひとつのことが差し迫っているからだ!

2.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Lebe, wie du, wenn du stirbst,
Wünschen wirst, gelebt zu haben.
Güter, die du hier erwirbst,
Würden, die dir Menschen gaben;
Nichts wird dich im Tod erfreun;
Diese Güter sind nicht dein.
 生きよ、あなたが死ぬときに
 こう生きたかったと望むように。
 あなたがここで得る宝、
 人間があなたに与えた位階など
 死ぬときには何の喜びにもならない、
 これらの宝はあなたのものではないのだ。

3.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Nur ein Herz, das Gutes liebt,
Nur ein ruhiges Gewissen,
Das vor Gott dir Zeugnis gibt,
Wird dir deinen Tod versüßen;
Dieses Herz, von Gott erneut,
Ist des Todes Freudigkeit.
 善きものを愛する心だけが、
 穏やかな良心、
 神の前であなたに証言する良心だけが、
 あなたの死を和らげる。
 神によって更新されたこの心は
 死の喜びである。

4.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Wenn in deiner letzten Not
Freunde hülflos um dich beben:
Dann wird über Welt und Tod
Dich dies reine Herz erheben;
Dann erschreckt dich kein Gericht;
Gott ist deine Zuversicht.
 あなたの最後の苦しみに際して
 友人たちが無力にあなたを心配するとき、
 この世と死を超えて
 あなたをこの澄んだ心が引き上げるだろう。
 審判があなたをおびえさせることはない。
 神はあなたの確信である。

5.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Daß du dieses Herz erwirbst,
Fürchte Gott, und bet und wache.
Sorge nicht, wie früh du stirbst;
Deine Zeit ist Gottes Sache.
Lern nicht nur den Tod nicht scheun,
Lern auch seiner dich erfreun.
 あなたがこの心を得るように、
 神を畏れよ、祈れ、目覚めよ。
 心配するな、どれほど早く死ぬことになっても。
 あなたの時間は神のみぞ知る。
 死をおそれないことを学ぶだけでなく
 死を享受することを学べ。

6.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Überwind ihn durch Vertraun,
Sprich: Ich weiß, an wen ich gläube,
Und ich weiß, ich werd ihn schaun
Einst in diesem meinem Leibe.
Er, der rief: Es ist vollbracht!
Nahm dem Tode seine Macht.
 信用してそれを乗り越えよ。
 こう語れ:私が誰を信仰しているのか知っており、
 私がその方を見ることを知っている、
 いつかこの私の肉体の中に。
 その方は、成し遂げられた!と叫び、
 死の力を奪った。

7.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Tritt im Geist zum Grab oft hin,
Siehe dein Gebein versenken;
Sprich: Herr, daß ich Erde bin,
Lehre du mich selbst bedenken;
Lehre du mich's jeden Tag,
Daß ich weiser werden mag!
 心の中の墓へしばしば歩み出よ、
 御身の全身が沈むのを見よ、
 こう語れ:主よ、私が地上にいたことを
 私自身が考えるように教えたまえ、
 私に毎日教えたまえ、
 私がより思慮深くなりたがっていることを!

L. Beethoven sets stanza 1
Carl Philipp Emanuel Bach (1714-1788) sets stanzas 1-4

詩:Christian Fürchtegott Gellert (1715-1769)
曲:Ludwig van Beethoven (1770-1827), "Vom Tode", op. 48 no. 3 (1803), stanza 1, from Sechs Lieder nach Gedichten von Gellert, no. 3

-------------

ベートーヴェン『ゲレルトの詩による6つの歌曲』の第3曲は「死について」です。古今東西、死は人にとって恐れる対象だったのでしょう。ゲレルトは死をおそれず、享受することを学びなさいと説きます。

全7節からなるゲレルトの詩の第1節のみにベートーヴェンは作曲しました。ただ、この曲も終わりにダル・セーニョ記号があり、歌を繰り返すように指示されていることから、第2節以降も歌うことを意図していたのかもしれませんし、第1節をもう一度繰り返すようにという意味かもしれません。

ベートーヴェンの音楽は半音進行や短2度の不協和音を使い、恐ろしい死を明確に音楽化しています。「長短」のリズムが執拗に繰り返され、同音反復が逃れられない確実な存在としての死を暗示しているかのようです。

ベートーヴェンは最終行を2回繰り返して歌うように作曲しており、この箇所を強調しているのが分かります。

3/4拍子
嬰ヘ短調(fis-moll)
Mässig und eher langsam als geschwind (中庸に、速いよりはむしろゆっくりめに)

●高橋大海(BS), 小林道夫(P)
Taikai Takahashi(BS), Michio Kobayashi(P)

何気なく聴いてみて驚きました!この深みは比類ないです!

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), イェルク・デームス(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Jörg Demus(P)

F=ディースカウはダイナミクスの幅が大きいので弱声の時にその魅力がより際立ちます。

●ヘルマン・プライ(BR), ヴォルフガング・サヴァリシュ(P)
Hermann Prey(BR), Wolfgang Sawallisch(P)

1,3,4節。厳しい表情のプライが聴けます。各節最後の高音を弱声で歌う箇所は吸い込まれるようです。

●ジェスィー・ノーマン(S), ジェイムズ・レヴァイン(P)
Jessye Norman(S), James Levine(P)

たっぷりしたテンポ設定で豊かな声を響かせるノーマンの歌唱は彼女ならではの魅力にあふれています。

●マティアス・ゲルネ(BR), ヤン・リシエツキ(P)
Matthias Goerne(BR), Jan Lisiecki(P)

1,6節。ゲルネはかなり抑制した表情で聴き手を惹き込みます。

●ペーター・シュライアー(T), ヴァルター・オルベルツ(P)
Peter Schreier(T), Walter Olbertz(P)

こういう重い深刻な曲をシュライアーのような高音歌手が真摯に歌っているととても胸に迫ってきます。

●ロデリック・ウィリアムズ(BR), イアン・バーンサイド(P)
Roderick Williams(BR), Iain Burnside(P)

1,6節。ウィリアムズの微に入り細を穿つ歌唱法はイギリス版F=ディースカウという印象です。

●1801 Version (1801年版)
ゲオルク・クリムバッハー(BR), ベルナデッテ・バルトス(P)
Georg Klimbacher(BR), Bernadette Bartos(P)

1801年版は、最終出版時の形とは随分異なりますが、長短のリズムはこの頃から引き継がれていたのですね。

●リスト:ピアノ独奏用編曲版(Ian Yungwook Yoo(P))
Beethoven - 6 Geistliche Lieder, S. 467/R. 122: No. 4, Vom Tode · Ian Yungwook Yoo

リストはベートーヴェンの音楽を1度ほぼ原曲に従って通し、その後にもう1度音数を増やして続けます。リスト編曲ものによく聞かれる技巧的なパッセージはこの曲には加えていないようです。

●カール・フィーリプ・エマヌエル・バッハ作曲「死について」
C.P.E. Bach: Geistliche Oden und Lieder, Wq. 194, H. 686: No. 28, Vom Tode
ドロテー・ミールツ(S), ルドガー・レミー(Fortepiano)
Dorothee Mields(S), Ludger Rémy(Fortepiano)

C.P.E.バッハによる曲で、彼の指示通り1-4節がここで演奏されています。ベートーヴェンとは異なり、随分穏やかな曲調ですね。ミールツの伸びやかな美声が心地よいです。

(参考)

The LiederNet Archive

Beethoven-Haus Bonn

「ゲレルトの詩による6つの歌(リート)」——伯爵夫人の死に際して出版された歌曲集

| | | コメント (10)

ベートーヴェン「隣人への愛(Die Liebe des Nächsten, Op. 48, No. 2)」(『ゲレルトの詩による6つの歌曲』より)

Die Liebe des Nächsten, Op. 48, No. 2
 隣人への愛

1.
So jemand spricht: Ich liebe Gott,
Und haßt doch seine Brüder,
Der treibt mit Gottes Wahrheit Spott
Und reißt sie ganz darnieder.
Gott ist die Lieb, und will, daß ich
Den Nächsten liebe, gleich als mich.
 誰かがこう言う:私は神を愛していますが、
 兄弟は嫌いです、と。
 そういう人は神の真理をあざ笑い
 引き落とす。
 神は愛であり、私が
 自分自身を愛するように隣人を愛することを望んでおられるのだ。

2.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Wer dieser Erden Güter hat,
Und sieht die Brüder leiden,
Und macht den Hungrigen nicht satt,
Läßt Nackende nicht kleiden;
Der ist ein Feind der ersten Pflicht,
Und hat die Liebe Gottes nicht.
 この世の財産を持つ者で
 兄弟が苦しむのをただ見て
 空腹な者の腹を満たすこともせず
 裸の者に服を着せもしない。
 そういう者は第一の義務の敵であり
 神に愛されない。

3.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Wer seines Nächsten Ehre schmäht,
Und gern sie schmähen höret;
Sich freut, wenn sich sein Feind vergeht,
Und nichts zum Besten kehret;
Nicht dem Verleumder widerspricht;
Der liebt auch seinen Bruder nicht.
 隣人の名誉をののしる者、
 名誉をののしるのを聞きたがる者、
 敵が死ぬときに喜ぶ者、
 よき方に向かない者、
 中傷する者に抗議しない者、
 そういう者は兄弟をも愛することはない。

4.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Wer zwar mit Rat, mit Trost und Schutz
Den Nächsten unterstützet,
Doch nur aus Stolz, aus Eigennutz,
Aus Weichlichkeit ihm nützet;
Nicht aus Gehorsam, nicht aus Pflicht;
Der liebt auch seinen Nächsten nicht.
 確かに忠告し、慰めて、保護して
 隣人を支援する者でも
 ただ高慢や利己心、
 軟弱さから隣人の役に立とうとし、
 従順さや義務からではない者、
 そういう者は隣人をも愛することはない。

5.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Wer harret, bis ihn anzuflehn,
Ein Dürftiger erst erscheinet,
Nicht eilt, dem Frommen beizustehn,
Der im Verborgnen weinet;
Nicht gütig forscht, ob's ihm gebricht;
Der liebt auch seinen Nächsten nicht.
 彼に嘆願しようと
 貧しい者がようやく現れるまで待ち、
 敬虔な者を助けようと急ぐことをせず、
 その敬虔な者はひそかに泣いている、
 彼が不足しているかどうか親切に調べようとしない者、
 そういう者は隣人をも愛することはない。

6.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Wer andre, wenn er sie beschirmt,
Mit Härt und Vorwurf quälet,
Und ohne Nachsicht straft und stürmt,
So bald sein Nächster fehlet;
Wie bleibt bei seinem Ungestüm
Die Liebe Gottes wohl in ihm?
 彼が彼女を庇護するとき、
 他人を非情に非難して苦しめる者、
 そして容赦なく罰し荒れ狂う者は
 すぐに隣人がいなくなる。
 彼が荒れ狂っているときに
 神の愛は彼の中でいかにあるのだろうか。

7.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Wer für der Armen Heil und Zucht
Mit Rat und Tat nicht wachet,
Dem Übel nicht zu wehren sucht,
Das oft sie dürftig machet;
Nur sorglos ihnen Gaben gibt;
Der hat sie wenig noch geliebt.
 貧しき者のために安寧と秩序を
 忠告と行為によって監視しようとしない者、
 災いを阻止しようとしない者、
 その災いはしばしば彼らを惨めにする。
 ただなげやりに彼らに施しを与える者、
 そういう者は彼らをほとんど愛していないのだ。

8.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Wahr ist es, du vermagst es nicht,
Stets durch die Tat zu lieben.
Doch bist du nur geneigt, die Pflicht
Getreulich auszuüben,
Und wünschest dir die Kraft dazu,
Und sorgst dafür: so liebest du.
 あなたが
 常に行いによって愛することが出来ないというのは真実だ。
 だがあなたはただ、義務を
 忠実に果たそうとして
 自身にさらなる力を望み、
 配慮する、このようにあなたは愛してみなさい。

9.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Ermattet dieser Trieb in dir:
So such ihn zu beleben.
Sprich oft: Gott ist die Lieb, und mir
Hat er sein Bild gegeben.
Denk oft: Gott, was ich bin, ist dein;
Sollt ich, gleich dir, nicht gütig sein?
 あなたの中のこの衝動が弱まるときには
 衝動を元気づけようとしなさい。
 しばしば言いなさい:神は愛であり、私に
 彼は自身の姿を与えたのだ。
 しばしば考えなさい:神よ、私はあなたのものだ、
 私はあなたのように慈悲深くあるべきなのか。

10.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Wir haben einen Gott und Herrn,
Sind eines Leibes Glieder;
Drum diene deinem Nächsten gern;
Denn wir sind alle Brüder.
Gott schuf die Welt nicht bloß für mich;
Mein Nächster ist sein Kind, wie ich.
 我らには主なる神がいて、
 我らは一つの身体の部分なのだ。
 だからあなたの隣人に喜んで奉仕せよ。
 というのも我らはみな兄弟だからだ。
 神はこの世界を私のためだけに創ったのではない、
 わが隣人も、私同様、神の子なのだ。

11.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Ein Heil ist unser aller Gut.
Ich sollte Brüder hassen,
Die Gott durch seines Sohnes Blut
So hoch erkaufen lassen?
Daß Gott mich schuf, und mich versühnt,
Hab ich dies mehr, als sie, verdient?
 安寧は我らのあらゆる良きことにある。
 私は兄弟を憎まなければならないのか、
 神が息子キリストの血により
 あまりに高い代償を払って得た兄弟を。
 神が私を創り、私と和解することで、
 私は兄弟より多くを得たのだろうか。

12.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Du schenkst mir täglich so viel Schuld,
Du Herr von meinen Tagen!
Ich aber sollte nicht Geduld
Mit meinen Brüdern tragen?
Dem nicht verzeihn, dem du vergibst,
Und den nicht lieben, den du liebst?
 御身は私に日々これほど多くの恩義を与えてくださる、
 わが日々の主よ!
 私はしかし
 わが兄弟に我慢せずにいられようか、
 御身が許した兄弟を許さず、
 御身が愛した兄弟を愛さないでいられようか。

13.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Was ich den Frommen hier getan,
Dem Kleinsten auch von diesen,
Das sieht Er, mein Erlöser, an,
Als hätt ich's ihm erwiesen.
Und ich, ich sollt ein Mensch noch sein,
Und Gott in Brüdern nicht erfreun?
 私が敬虔な者たちにここでしたことは
 ささいなことでもここから
 あの方が見ておられるのだ、わが救い主が、
 あたかも私があの方に示したかのように。
 そして私は、私はまだ人でいなければならない、
 そして兄弟の中にいる神を喜ばせられないのか。

14.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Ein unbarmherziges Gericht
Wird über den ergehen,
Der nicht barmherzig ist, der nicht
Die rettet, die ihn flehen.
Drum gib mir, Gott! durch deinen Geist
Ein Herz, das dich durch Liebe preist.
 無慈悲な裁きが
 下るだろう、
 慈悲深さがなく、
 懇願する者たちを救わない者には。
 だから私に与えたまえ、神よ!御身の精神により
 愛によって御身を讃える心を。

L. Beethoven sets stanza 1
Carl Philipp Emanuel Bach (1714-1788) sets stanzas 1, 9-10, 13

詩:Christian Fürchtegott Gellert (1715-1769)
曲:Ludwig van Beethoven (1770-1827), "Die Liebe des Nächsten", op. 48 no. 2 (1803), stanza 1, from Sechs Lieder nach Gedichten von Gellert, no. 2

-------------

ゲレルトの詩による6つの歌曲集の第2曲は「隣人への愛」です。神を愛していても隣人を嫌っていたら神には愛されないと歌われます。

全14節からなる原詩の第1節のみにベートーヴェンは作曲しました。ただ曲の終わりにダル・セーニョ記号があり、歌を繰り返すように指示されていることから、第2節以降も歌うことを意図していたのかもしれませんし、あるいは第1節をもう一度繰り返すという意味なのかもしれません(どちらのパターンも下記引用の演奏にあります)。ちなみに動画サイトにはありませんでしたが、ベートーヴェン歌曲全集を録音したコンスタンティン・グラーフ・フォン・ヴァルダードルフ(BR)&クリスティン・オーカーランド(P)は、「隣人への愛」も含むゲレルト歌曲集全曲で原詩をすべて復元していますので、この曲では14節すべて歌っていました。

ベートーヴェンの曲は軽快な趣で途中スタッカートも出てくるほどです。とはいえ、宗教的な内容ですので、ここでも基本はコラールのような進行です。ピアノの右手と左手でリズムをずらしたり、細かいパッセージを交互に配置したりという音楽的な工夫も興味深いです。

2/2拍子
変ホ長調(Es-dur)
Lebhaft doch nicht zu sehr (生き生きと、ただし極端になりすぎないように)

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), イェルク・デームス(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Jörg Demus(P)

歌が入る前のピアノの和音が省かれた版で歌っています(動画の楽譜はPeters版と記されています)。F=ディースカウは遅すぎず、かつ軽快になり過ぎないほどよいテンポでいつものように説得力のある歌唱を聞かせています。

●ヘルマン・プライ(BR), レナード・ホカンソン(P)
Hermann Prey(BR), Leonard Hokanson(P)

円熟期のプライの自然な表現が魅力的です。

●マティアス・ゲルネ(BR), ヤン・リシエツキ(P)
Matthias Goerne(BR), Jan Lisiecki(P)

第1節だけでなく、第3,4,14節を追加して有節形式で歌っています。ゲルネは軽快なテンポでさらっと歌っているのが魅力的です。

●ペーター・シュライアー(T), ヴァルター・オルベルツ(P)
Peter Schreier(T), Walter Olbertz(P)

シュライアーは厳かに人々に諭すかのように歌っています。オルベルツも丁寧に演奏しています。

●ジェスィー・ノーマン(S), ジェイムズ・レヴァイン(P)
Jessye Norman(S), James Levine(P)

神々しい美声がなんとも胸に響きます。第4行の「(兄弟を憎む者は)神の真理を引き落とす」というところで神妙な表情を聞かせてくれます。

●ロデリック・ウィリアムズ(BR), イアン・バーンサイド(P)
Roderick Williams(BR), Iain Burnside(P)

第1,13節を演奏しています。ウィリアムズは細やかな語り口と美声で詩の内容を伝えてくれます。

●エンゲルベルト・クッチェラ(BS), グレアム・ジョンソン(P)
Engelbert Kutschera(BS), Graham Johnson(P)

ポーランドのバス歌手クッチェラ(1930-2013)は、ここで第1節の後でもう1度第1節を繰り返して歌っています。

●リスト編曲ピアノ独奏版(Asagi Nakata: piano)
Asagi Nakata - Liszt / Beethoven - Die Liebe des Nächsten, S467/5

リストの編曲は比較的ベートーヴェンの原曲に忠実ですが、和音を若干変更し、後奏を少し拡大しているのが印象的です。

●カール・フィリプ・エマヌエル・バッハ作曲「隣人への愛」
C.P.E. Bach: Geistliche Oden und Lieder, Wq. 194, H. 686: No. 10, Die Liebe des Nächsten
ドロテー・ミールツ(S), ルドガー・レミー(Fortepiano)
Dorothee Mields(S), Ludger Rémy(Fortepiano)

C.P.E.バッハによるこの付曲は穏やかで一貫して美しいです。1,9,10,13節(C.P.E.バッハの選んだ節)を歌っています。ミールツは繊細な歌唱を聞かせ、節を進むにつれて装飾を入れて歌っています。

(参考)

The LiederNet Archive

Beethoven-Haus Bonn

「ゲレルトの詩による6つの歌(リート)」——伯爵夫人の死に際して出版された歌曲集

| | | コメント (4)

« 2021年7月 | トップページ | 2021年9月 »