« ヘルマン・プライ(Hermann Prey)来日公演リンク集:生誕92周年に寄せて | トップページ | クリスタ・ルートヴィヒ&ジェフリー・パーソンズ(Christa Ludwig and Geoffrey Parsons)/パリ・リサイタル(1977年11月9日, Salle Pleyel, Paris) »

ベートーヴェン「あなたを思う(Ich denke dein, WoO. 74)」(歌曲とピアノ四手のための6つの変奏曲)

Ich denke dein, WoO. 74
 あなたを思う

Ich denke dein, wenn mir der Sonne Schimmer
Von Meeren strahlt;
Ich denke dein, wenn sich des Mondes Flimmer
In Quellen mahlt.
 私はあなたを思います、太陽の微光が
 海から私に輝くとき。
 私はあなたを思います、月のきらめきが
 泉に浮かぶとき。

詩:Johann Wolfgang von Goethe (1749-1832), "Nähe des Geliebten", written 1795, first published 1795
曲:Ludwig van Beethoven (1770-1827)

------------

この独唱とピアノ連弾の為の作品「あなたを思う(Ich denke dein)」は、ゲーテの詩「恋人のそば(Nähe des Geliebten)」の冒頭に歌を付け、そのテーマによったピアノ連弾用の変奏曲を6つ続けるという面白い構成です。
作曲の経緯は平野昭氏の記事に詳しいですが、ピアノを教えていた貴族令嬢の姉妹のために記念に作曲したというのが何とも微笑ましいです。

1,2,5,6変奏が1799年初頭、3,4変奏が1803年8月/9月上旬の作曲だそうです。

歌のある最初の部分はピアノのprimo(高音の担当)はほとんど両手のユニゾンで歌の旋律をなぞり、最後の方だけ左手が分散和音になります。歌がなくてもピアニスト2人だけで作品として成立する為、ピアノ連弾曲として録音されることが多いようです。

4/4拍子-2/2拍子(第3変奏)-4/4拍子(第4変奏)-2/2拍子(第5変奏)-4/4拍子(第6変奏)
ニ長調(D-dur)-ニ短調(d-moll)(第5変奏)-ニ長調(D-dur)(第6変奏)
Andantino cantabile

ちなみにこのゲーテの詩「恋人のそば」には、後にシューベルトが美しい歌曲を作曲しています。

●マリア・フェランテ(S), ドミトリ・ラフマノフ(P), カラン・ブライアント(P)
Maria Ferrante(S), Dmitry Rachmanov(P), Cullan Bryant(P)

この曲はほとんどの録音がピアニスト2人のみの演奏によるので、この録音のように歌手が短い主題を歌う為だけに参加するのは非常に珍しいと思います。ベートーヴェンの楽譜通りの演奏を残響を伴った美しい演奏で聴けます。フェランテの歌はもっと聞いていたいと思うほど透きとおった美しい歌唱です。

●ペーター・シュライアー(T), ヴァルター・オルベルツ(P), ギーゼラ・フランケ(P)
Peter Schreier(T), Walter Olbertz(P), Gisela Franke(P)

シュライアーと2人のピアニストは最初の短い主題だけ演奏しています。この後の変奏曲もせっかくなのでオルベルツとフランケに録音してほしかったところです。シュライアーはいつも通り端正な歌唱です。

(参考)

The LiederNet Archive

Beethoven-Haus Bonn

「ゲーテの詩による歌曲《君を思う》による4手のための6つの変奏曲」——生徒であった2人の姉妹に贈った連弾曲

| |

« ヘルマン・プライ(Hermann Prey)来日公演リンク集:生誕92周年に寄せて | トップページ | クリスタ・ルートヴィヒ&ジェフリー・パーソンズ(Christa Ludwig and Geoffrey Parsons)/パリ・リサイタル(1977年11月9日, Salle Pleyel, Paris) »

音楽」カテゴリの記事

」カテゴリの記事

ベートーヴェン」カテゴリの記事

コメント

フランツさん、こんばんは。

とても美しい歌曲ですね。
シューベルトのように有節歌曲にして、全部聴きたいですね。

フェランテの美しいソプラノ、
シュライヤーの端正な歌いぶり、共にこの曲にピッタリだと思いました。
二人とも、もっと聴いていたいです!

シューベルトの方も、聴いてみました。
有名な曲でなんども耳にしていますが、改めて聴くと繊細でやはり名曲だなあと。
同詩違曲の聴き比べもいいですね♪

投稿: 真子 | 2021年7月18日 (日曜日) 18時09分

真子さん、おはようございます。

美しい曲ですよね。
ピアノを教えていた姉妹への記念として作ったというのがなんとも愛らしいエピソードですが、歌曲とピアノ連弾曲を融合させているのはなかなか新しい試みのように思えます。
歌をもっと聞いていたいですよね。

フェランテ、美しい声ですよね。
彼女の歌ははじめて聞いたのですが、未知の素晴らしい歌手を知ることが出来て私自身もうれしかったです。

シュライアーは安定の素晴らしさですね。彼の端正な歌唱はどのようなタイプの作品にも対応できて凄いですよね。

シューベルトの「恋人のそば」も美しい作品ですね。あの記事を書いたのがもう8年前だとは時の経つ早さに身震いします(笑)

投稿: フランツ | 2021年7月19日 (月曜日) 07時56分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ヘルマン・プライ(Hermann Prey)来日公演リンク集:生誕92周年に寄せて | トップページ | クリスタ・ルートヴィヒ&ジェフリー・パーソンズ(Christa Ludwig and Geoffrey Parsons)/パリ・リサイタル(1977年11月9日, Salle Pleyel, Paris) »