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ベートーヴェン「祈願(Bitten, Op. 48, No. 1)」(『ゲレルトの詩による6つの歌曲』より)

Bitten, Op. 48, No. 1
 祈願

1.
Gott, deine Güte reicht so weit,
So weit die Wolken gehen,
Du krönst uns mit Barmherzigkeit
Und eilst, uns beizustehen.
Herr! Meine Burg, mein Fels, mein Hort,
Vernimm mein Flehn, merk auf mein Wort;
Denn ich will vor dir beten!
 神よ、御身の善意ははるかまで届く、
 雲が進むはるかまで。
 御身は慈悲によって我らに冠をかぶせて
 我らを助けようと急ぐ。
 主よ!わが城、わが岩、わが避難所、
 わが懇願を聞きたまえ、わが言葉に気を配りたまえ、
 なぜなら私は御身の前で祈りたいから!

2.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Ich bitte nicht um Überfluß
Und Schätze dieser Erden.
Laß mir, so viel ich haben muß,
Nach deiner Gnade werden.
Gib mir nur Weisheit und Verstand,
Dich, Gott, und den, den du gesandt,
Und mich selbst zu erkennen.
 私はあり余るほどのものや
 この地上の宝を請うわけではない。
 私が持たなければならないほどの量を
 御身の慈悲で私に与えたまえ、
 私にただ思慮と分別を与えたまえ、
 神である御身、そして御身が遣わした者、
 そして私自身を認識できるように。

3.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Ich bitte nicht um Ehr und Ruhm,
So sehr sie Menschen rühren;
Des guten Namens Eigentum
Laß mich nur nicht verlieren.
Mein wahrer Ruhm sei meine Pflicht,
Der Ruhm vor deinem Angesicht,
Und frommer Freunde Liebe.
 私は名誉や栄光を請うわけではない、
 それらは人々の心を動かすものだが。
 よき名声という財産を
 私から失くさないでおくれ、
 私の真の栄光は私の義務であれ、
 栄光は汝の顔の前にあり
 そして敬虔な友の愛だ。

4.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
So bitt ich dich, Herr Zebaoth,
Auch nicht um langes Leben.
Im Glücke Demut, Mut in Not,
Das wolltest du mir geben.
In deiner Hand steht meine Zeit;
Laß du mich nur Barmherzigkeit
Vor dir im Tode finden.
 こうして私は御身に請う、万軍よ、
 長生きを請うわけでもないが。
 幸福の中の謙遜、窮地の際の勇気、
 それを御身は私に与えようとした。
 御身の手の中にわが時はある。
 御身はただ慈悲を
 御身の前で死する時に私に見出させておくれ。

Carl Philipp Emanuel Bach (1714-1788) sets stanzas 1-2, 4
L. Beethoven sets stanza 1

詩:Christian Fürchtegott Gellert (1715-1769)
曲:Ludwig van Beethoven (1770-1827), "Bitten", op. 48 no. 1 (1803), stanza 1, from Sechs Lieder nach Gedichten von Gellert, no. 1

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ベートーヴェンは、1798年/1799年にかけての冬から1802年の3月までクリスティアン・フュルヒテゴット・ゲレルト(Christian Fürchtegott Gellert: 1715.7.4, Hainichen - 1769.12.13, Leipzig)の詩による6曲の歌曲を作曲し、1803年に『ゲレルトの6つの歌曲(Sechs Lieder von Gellert, Op. 48)』として出版されました。

ここで取り上げられたゲレルトの詩は、1757年に出版された「宗教的頌歌と歌曲(Geistliche Oden und Lieder)」から採られています。この詩集からカール・フィリプ・エマヌエル・バッハ(Carl Philipp Emanuel Bach: 1714.3.8, Weimar - 1788.12.14, Hamburg)が多くの歌曲を作曲しています。ベートーヴェンの作曲した詩とも5編が共通しています(C.P.E.バッハは「神の力と摂理」には作曲しませんでした)。

ベートーヴェンは6曲中最初の5曲ははじめの1節のみ、もしくは2節のみ(「自然における神の栄光」)に作曲して、それ以外の節は省略しました。
現在では演奏者によって元のゲレルトの詩を数節、または全節復活させて歌われることもあります。

余談ですが、詩人の名前の一部「フュルヒテゴット(Fürchtegott)」は「神を畏れよ(Fürchte Gott)」という意味で、名は体を表していますね。

歌曲集第1曲は「祈願(Bitten)」というタイトルで、全4節からなるゲレルトの詩の第1節のみにベートーヴェンは作曲しました。

歩行しているようなピアノの四分音符の進行とメロディアスな歌が美しく絡み合う作品です。曲の最後は歩みも止まり、静かに祈りにふけっているかのようです。

2/2拍子
ホ長調(E-dur)
Feierlich und mit Andacht (荘重に、そして敬虔に)

●ヘルマン・プライ(BR), ヴォルフガング・サヴァリシュ(P)
Hermann Prey(BR), Wolfgang Sawallisch(P)

1980年代前半の脂ののりきった頃のプライの録音と思われます。朗々と響く歌声が何とも温かいです。サヴァリシュの明晰なピアノも素晴らしいです。

●マティアス・ゲルネ(BR), ヤン・リシエツキ(P)
Matthias Goerne(BR), Jan Lisiecki(P)

第1節だけでなく、第2,4節を加えて歌っています。包み込むようなゲルネの声の響きが心地よいです。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), イェルク・デームス(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Jörg Demus(P)

F=ディースカウにしてはかなりゆっくりめのテンポで厳かに歌っているのが印象的でした。

●ペーター・シュライアー(T), ヴァルター・オルベルツ(P)
Peter Schreier(T), Walter Olbertz(P)

清澄なシュライアーの歌唱は宗教曲のアリアを真摯に歌っている時を思い起こさせます。

●ジェスィー・ノーマン(S), ジェイムズ・レヴァイン(P)
Jessye Norman(S), James Levine(P)

ノーマンの輝かしい声はこの曲から外に放射される魅力を引き出しているように感じました。

●カール・フィーリプ・エマヌエル・バッハ作曲「祈願」
C.P.E. Bach: Bitten, Wq. 194
ノルベルト・マイン(T), テレンス・チャールストン(P)
Norbert Meyn(T), Terence Charlston(Clavichord)

C.P.E.バッハは第1,2,4節に作曲したそうですが、ここでは第3節も加え、全4節を歌っています。ベートーヴェンの曲よりも深刻な響きですね。

●カール・フィーリプ・エマヌエル・バッハによる「祈願」
C.P.E. Bach: Bitten, Wq. 194
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), イェルク・デームス(Tangentenflügel)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Jörg Demus(Tangentenflügel)

ここでF=ディースカウは第1節のみを歌っています。

(参考)

Beethoven-Haus Bonn

The LiederNet Archive

「ゲレルトの詩による6つの歌(リート)」——伯爵夫人の死に際して出版された歌曲集(平野昭)

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エリー・アーメリング他(Ameling, Watkinson, Meens, Holl, Jansen, Brautigam)/ブラームス:四重唱曲、二重唱曲他 初出音源(1983年1月14日, アムステルダム・コンセルトヘバウ(live)他)

●ブラームス/四重唱曲、二重唱曲
Elly Ameling; Brahms Quartets and Duets

00:00 Der Gang zum Liebchen (op 31/3)
02:59 Sehnsucht (op 112/1)
06:08 Abendlied (op 92/3)
09:39 Warum (op 92/4)
12:20 Der Abend (op 64/2)
16:56 Es rauschet das Wasser (op 28/3)(Watkinson, Holl, Jansen)
20:43 Vor der Tür (op 28/2)(Watkinson, Holl, Jansen)
22:48 Vergebliches Ständchen (op 84/4)(Ameling, Meens, Jansen)
24:37 Die Schwestern (op 61/1)(Ameling, Watkinson, Jansen)
27:12 Zigeunerlieder 5 "Brauner Bursche führt zum Tanze" (op 103/5)
30:29 Zigeunerlieder 7 "Kommt dir manchmal in den Sinn" (op 103/7)
31:09 Zigeunerlieder 6 "Röslein dreie in der Reihe blühn so rot" (op 103/6)
32:01 Wenn so lind dein Augen * (Liebesliederwalzer, op 52/8)
34:06 Ein kleiner. Hübscher Vogel * (Liebesliederwalzer, op 52/6)

Elly Ameling - Soprano
Carolyn Watkinson - Mezzo soprano
Hein Meens - Tenor
Robert Holl - Bass
Rudolf Jansen - Piano
Rudolf Jansen & Ronald Brautigam - Piano *

Live recording Concertgebouw, 14-01-1983

エリー・アーメリング(Elly Ameling)のブラームス重唱曲の録音といえば、80歳を記念した放送録音集"80 jaar"に1曲だけ「夕暮れ(Der Abend, Op. 64/2)」が収録されていました。
今回アーメリングの公式チャンネルで、なんと同じ日のライヴ音源が初めて公開されました!!!
これはもうアーメリングからのサプライズプレゼントですね!
『ジプシーの歌』抜粋や『愛の歌』抜粋をアーメリングの歌で聴けるとは思ってもいなかったので狂喜乱舞しました(本当は全曲が良かったのですが贅沢は言わないことにします)。
共演者はメゾソプラノのキャロリン・ワトキンソン、テノールのヘイン・メーンス、バスのロベルト・ホル、ピアノはルドルフ・ヤンセン、『愛の歌』のピアノ連弾のみロナルト・ブラウティハムが参加しています。
ブラームスの重唱曲は『ジプシーの歌』『愛の歌』『新しい愛の歌』以外の単独の作品はこれまであまり馴染みがなかったのですが、こうして聞いてみるとどれもとても魅力的ですね。独唱曲として歌われることの多い「甲斐なきセレナーデ」をソプラノとテノールの掛け合いで聴くとより臨場感があって面白かったです。「憧れ(Sehnsucht)」という曲も趣があってとても魅力的な作品でした。
アーメリングはいつもながらの美声がなんとも心地よかったですが、コミカルな曲(「姉妹(Die Schwestern)」等)で会場をざわつかせるところは流石です!どんな表情で歌っていたのか想像しながら聴いてみるのも楽しいと思います。それからメゾのワトキンソンの歌声はとても温かみがあり惹きつけられました。

●ドビュッシー/『ステファヌ・マラルメの3つの詩』(ため息;ささやかな願い;扇)
Debussy Mallarme

Trois Poémes de Stéphane Mallarmé - Claude Debussy (1862-1918)

00:05 Soupir
03:02 Placet futile
05:06 Éventail

Elly Ameling - Soprano
Dalton Baldwin - Piano

もう1つアーメリング公式チャンネルからアップされていたのは、ドビュッシーの『ステファヌ・マラルメの3つの詩』です。これはおそらくEMIのドビュッシー歌曲全集からの音源と思われます。楽譜が表示されるので、歌を勉強されている方にもお勧めです。最初の2曲はラヴェルも作曲しているので、比較するのも興味深いと思います(こちらのリンク先でアーメリング&ヤンセン他によるラヴェルの演奏が聴けます)。

●サリエリ、モーツァルト・アリア集&R.シュトラウス:『4つの最後の歌』
ELLY AMELING: Mozart Concert Arias and Strauss Four Last Songs

Live broadcasts of Dutch soprano ELLY AMELING.

0:00- SALIERI: La fiera di Venezia: "Non temer che d'altri"
4:05- MOZART: "Voi avete un cor fedele" K.217

Elly Ameling(S)
Mostly Mozart Festival Orchestra
Gerard Schwarz(C)
(1985)

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12:18- STRAUSS: Four Last Songs
1. Frühling
2. September
3. Beim Schlafengehen
4. Im Abendrot

Rotterdam Philharmonic
Edo de Waart(C)
(1986)

上の2種類のライヴのうち、最初のサリエリとモーツァルトは以前別の方がアップした音源をご紹介したこちらの記事と同一音源ではないかと推測されます。

しかし!後半(12:18~)のエド・ドゥ・ヴァールト指揮ロッテルダム・フィルハーモニックとの『4つの最後の歌』は、ネット上で聴けるのは唯一の音源と思われます。
実はかなり昔にオランダのインターネットラジオ局Radio 4でアーメリングの特集が数回に分けて放送された際に、この音源の放送が予告されていたのですが、実際に放送されたのはサヴァリッシュ指揮コンセルトヘバウ管弦楽団との音源でした。
アップしていただいたこの音源、惜しむらくはおそらくテープの回転数が速くて、実際の音より高めなのが残念ですが、そこは想像力で補いながらこの貴重な音源を満喫したいと思います。

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クリスタ・ルートヴィヒ&ジェフリー・パーソンズ(Christa Ludwig and Geoffrey Parsons)/パリ・リサイタル(1977年11月9日, Salle Pleyel, Paris)

フランスのインターネットラジオ局francemusiqueに、クリスタ・ルートヴィヒ&ジェフリー・パーソンズの1977年11月9日、パリのサル・プレイエルでのライヴ音源がアップされていました!

https://www.francemusique.fr/emissions/les-tresors-de-france-musique/recital-de-christa-ludwig-a-la-salle-pleyel-une-archive-de-1977-95251

Christa Ludwig, mezzo-soprano
Geoffrey Parsons, piano
Enregistré le 9 novembre 1977, Salle Pleyel (Paris)

クリスタ・ルートヴィヒ(Christa Ludwig)(MS)
ジェフリー・パーソンズ(Geoffrey Parsons)(P)

シューベルト:
笑ったり泣いたり(Lachen und Weinen, D777)
悲しみ(Wehmut, D772)
ます(Die Forelle, D550)
死と乙女(Der Tod und das Mädchen, D531)
糸を紡ぐグレートヒェン(Gretchen am Spinnrade, D118)

ブラームス:
サッポー風頌歌(Sapphische Ode, Op. 94/4)
墓地で(Auf dem Kirchhofe, Op. 105/4)
セレナード(Ständchen, Op. 106/1)
娘の歌(Mädchenlied, Op. 106/5)
永遠の愛について(Von ewiger Liebe, Op. 43/1)

シューマン:
はすの花(Die Lotosblume, Op. 25/7)
私のばら(Meine Rose, Op. 90/2)
あなたは花のよう(Du bist wie eine Blume, Op. 25/24)
孤独な涙は何を望むのか(Was will die einsame Träne, Op. 25/21)
静かな涙(Stille Tränen, Op. 35/10)

ブラームス:歌曲集『ジプシーの歌(Zigeunerlieder, Op. 103)』

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このライヴ音源は私にとっては初めて聴くもので、とても惹き込まれました。シューベルト、シューマン、ブラームスといった王道リートプログラムですが、彼女が歌うと人生の喜びのようなものが感じられます。

ルートヴィヒの素晴らしいレガート、豊麗な深い響き、直接的な感情表現などをたっぷり味わえるライヴでした。
彼女はどの曲も比較的たっぷりとしたテンポ設定で歌い進めていくのですが、以前ムーアが著書内で言っていたように「少しおそめのテンポは、彼女の豊かな声に、まさにぴったり」でした。

そしてジェフリー・パーソンズのピアノの素晴らしさ!パーソンズはテクニシャンだと思います。テクニック面での不安が全くない為、歌をしっかり支えつつピアノパートの音色や表現の魅力を存分に響かせます。

よろしければぜひ聞いてみてください!

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ベートーヴェン「あなたを思う(Ich denke dein, WoO. 74)」(歌曲とピアノ四手のための6つの変奏曲)

Ich denke dein, WoO. 74
 あなたを思う

Ich denke dein, wenn mir der Sonne Schimmer
Von Meeren strahlt;
Ich denke dein, wenn sich des Mondes Flimmer
In Quellen mahlt.
 私はあなたを思います、太陽の微光が
 海から私に輝くとき。
 私はあなたを思います、月のきらめきが
 泉に浮かぶとき。

詩:Johann Wolfgang von Goethe (1749-1832), "Nähe des Geliebten", written 1795, first published 1795
曲:Ludwig van Beethoven (1770-1827)

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この独唱とピアノ連弾の為の作品「あなたを思う(Ich denke dein)」は、ゲーテの詩「恋人のそば(Nähe des Geliebten)」の冒頭に歌を付け、そのテーマによったピアノ連弾用の変奏曲を6つ続けるという面白い構成です。
作曲の経緯は平野昭氏の記事に詳しいですが、ピアノを教えていた貴族令嬢の姉妹のために記念に作曲したというのが何とも微笑ましいです。

1,2,5,6変奏が1799年初頭、3,4変奏が1803年8月/9月上旬の作曲だそうです。

歌のある最初の部分はピアノのprimo(高音の担当)はほとんど両手のユニゾンで歌の旋律をなぞり、最後の方だけ左手が分散和音になります。歌がなくてもピアニスト2人だけで作品として成立する為、ピアノ連弾曲として録音されることが多いようです。

4/4拍子-2/2拍子(第3変奏)-4/4拍子(第4変奏)-2/2拍子(第5変奏)-4/4拍子(第6変奏)
ニ長調(D-dur)-ニ短調(d-moll)(第5変奏)-ニ長調(D-dur)(第6変奏)
Andantino cantabile

ちなみにこのゲーテの詩「恋人のそば」には、後にシューベルトが美しい歌曲を作曲しています。

●マリア・フェランテ(S), ドミトリ・ラフマノフ(P), カラン・ブライアント(P)
Maria Ferrante(S), Dmitry Rachmanov(P), Cullan Bryant(P)

この曲はほとんどの録音がピアニスト2人のみの演奏によるので、この録音のように歌手が短い主題を歌う為だけに参加するのは非常に珍しいと思います。ベートーヴェンの楽譜通りの演奏を残響を伴った美しい演奏で聴けます。フェランテの歌はもっと聞いていたいと思うほど透きとおった美しい歌唱です。

●ペーター・シュライアー(T), ヴァルター・オルベルツ(P), ギーゼラ・フランケ(P)
Peter Schreier(T), Walter Olbertz(P), Gisela Franke(P)

シュライアーと2人のピアニストは最初の短い主題だけ演奏しています。この後の変奏曲もせっかくなのでオルベルツとフランケに録音してほしかったところです。シュライアーはいつも通り端正な歌唱です。

(参考)

The LiederNet Archive

Beethoven-Haus Bonn

「ゲーテの詩による歌曲《君を思う》による4手のための6つの変奏曲」——生徒であった2人の姉妹に贈った連弾曲

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ヘルマン・プライ(Hermann Prey)来日公演リンク集:生誕92周年に寄せて

ヘルマン・プライ(Hermann Prey)が1929年7月11日に誕生して今日で92年が経ちました。
プライほど歌曲、オペラ、オペレッタ、ポピュラーソングを分け隔てなく愛情をこめて歌った歌手は稀ではないかと思います。
クラシックのファンだけでなくドイツのテレビ番組にも出演して大衆的な人気も獲得していたようです。
こういうタイプのアーティストは後にも先にも彼だけなのかもしれません。
日本には14回来てくれて、歌曲やアリア、時にはオペラを披露しました。
私は1984年の五反田簡易保険ホールでのシューベルトのコンサートではじめて生のプライを体験しました。
それ以来、来日するたびに聴きに行き、今となってはとても懐かしいです。

過去にプライの来日公演プログラムを記事にしましたので、目次として下記にリンクを貼っておきます。
皆さんの思い出をよみがえらせる助けになれば幸いです。

プライ日本公演曲目1961年(初来日)

プライ日本公演曲目1971年(第2回来日)

プライ日本公演曲目1973年(第3回来日)

プライ日本公演曲目1978年(第4回来日)

プライ日本公演曲目1980年(第5回来日)

プライ日本公演曲目1984年(第6回&第7回来日)

プライ日本公演曲目1988年(第8回来日)

プライ日本公演曲目1990年(第9回来日)

プライ日本公演曲目1993年(第10回来日)

プライ日本公演曲目1994年(第11回来日)

プライ日本公演曲目1995年(第12回来日)

プライ日本公演曲目1997年(第13回&第14回来日)

おまけとして、プライの3種類の"Ich liebe dich"を貼っておきます。異なる3人の作曲家の愛の表現をプライがどう表現しているかお楽しみください。

ベートーヴェン:優しい愛(きみを愛す)
Beethoven: Zärtliche Liebe (Ich liebe dich)

グリーグ:きみを愛す:ヘルベルト・ハイネマン(P)
Grieg: Ich liebe dich: Herbert Heinemann(P)

R.シュトラウス:きみを愛す:ヴォルフガング・サヴァリシュ(P)
Richard Strauss: Ich liebe dich, Op.37-2: Wolfgang Sawallisch(P)

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ベートーヴェン「人は燃えあがる心を隠そうとするものだ(Man strebt die Flamme zu verhehlen, WoO. 120)」

Man strebt die Flamme zu verhehlen, WoO. 120
 人は燃えあがる心を隠そうとするものだ

Man strebt, die Flamme zu verhehlen,
Die bei gefühlvoll edlen Seelen
Sich unbemerkt ins Herze stiehlt;
Geheimnisvoll schließt man die Lippen,
Jedoch verrät sich bald mit Blicken,
Wie sehr man, ach, die Liebe fühlt.
 人は燃えあがる心を隠そうとするものだ、
 その心は、感情豊かで高潔な魂のそばで
 気づかれないまま心の中に忍び入る、
 いわくありげに唇を閉じるが
 すぐに視線で本心がばれる、
 人は、ああ、どれほど愛を感じるものなのだろう。

Ein Blick sagt mehr als tausend Worte,
Ein Blick entriegelt oft die Pforte
Der lang verhehlten Leidenschaft;
Er zeigt dem Teuren, den ich liebe,
Des Herzens reine, zarte Triebe
Und gibt ihm auszuharren Kraft.
 千の言葉よりも一瞥の方が雄弁だ、
 一瞥はしばしば
 長く秘めた情熱の門の閂(かんぬき)をはずす、
 一瞥は私の愛する人に
 心の純粋でやわな衝動を示し、
 待ち続ける力を与えるのだ。

詩:Anonymous
曲:Ludwig van Beethoven (1770-1827)

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この歌曲は、旧全集で初めて出版され「歌(フォン・ヴァイセントゥルン夫人のために)(Lied (für Frau von Weissenthurn))」というタイトルが付けられました。この曲が作曲されたいきさつは平野昭氏の文章に詳しいです。この女優ヨハンナ・フラヌル・フォン・ヴァイセントゥルン(Johanna Franul von Weissenthurn: 1773-1847)がブルク劇場での上演時に歌ったらしいことから上演日1800年5月12日より前に作曲されたとみなされています。
この詩は最新の研究によるとヴァイセントゥルン自身が書いた可能性があるそうです

千の言葉よりも一瞥の方が多くを語ると愛の力を歌っています。

2節の完全な有節形式で、各節後半の3行は繰り返されます。
恋の熱い気持ちを人は隠したがると歌う詩にふさわしく、平静さを装ったかのような穏やかな音楽です。

4/4拍子
ヘ長調(F-Dur)
Andante

●ナタリー・ペレス(MS) & ジャン=ピエール・アルマンゴー(P)
Natalie Pérez(MS) & Jean-Pierre Armengaud(P)

ペレスの深みと奥行きのある歌は素晴らしかったです。

●アデーレ・シュトルテ(S) & ヴァルター・オルベルツ(P)
Adele Stolte(S) & Walter Olbertz(P)

シュトルテの落ち着いた美しい声が心地よく感じられました。

●ヘルマン・プライ(BR) & レナード・ホカンソン(P)
Hermann Prey(BR) & Leonard Hokanson(P)

女性目線のテキストをプライが歌うのは珍しいように思います。いつも通り温かみのあるプライの語りかけは胸に沁みます。

●アンナ・ハーゼ(MS) & ノルベルト・グロー(P)
Anna Haase(MS) & Norbert Groh(P)

はじめて聴いた歌手ですが、伸びやかで細やかな歌いぶりがいいですね。

●ハイディ・ブルナー(MS) & クリスティン・オーカーランド(P)
Heidi Brunner(MS) & Kristin Okerlund(P)

ブルナーは素直な歌唱でした。

(参考)

The LiederNet Archive

Beethoven-Haus Bonn

The Complete Beethoven

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ブラームス「恋人の誓い(Des Liebsten Schwur, Op. 69, No. 4)」を聴く

Des Liebsten Schwur, Op. 69, No. 4
 恋人の誓い

Ei, schmollte mein Vater nicht wach und im Schlaf,
So sagt' ich ihm, wen ich im Gärtelein traf.
Und schmolle nur, Vater, und schmolle nur fort,
Ich traf den Geliebten im Gärtelein dort.
 ねえ、お父さんが起きているときも眠っているときもふてくされないのなら
 私はお父さんに言ったことでしょう、私が小さなお庭で誰と会っていたのかを。
 さあすねるがいいわ、さらにすねていなさい、
 私はあそこの小さなお庭で恋人と会っていたのよ。

Ei, zankte mein Vater nicht wieder sich ab,
So sagt' ich ihm, was der Geliebte mir gab.
Und zanke nur, Vater, mein Väterchen du,
Er gab mir ein Küßchen und eines dazu.
 ねえ、お父さんがもう言い争いをしないのなら
 私はお父さんに言ったことでしょう、恋人が何を私にくれたのかを。
 がみがみ言うがいいわ、お父さん、あたしのお父ちゃん、
 彼は私に一回キスしてくれて、さらにもう一回してくれたのよ。

Ei, klänge dem Vater nicht staunend das Ohr,
So sagt' ich ihm, was der Geliebte mir schwor.
Und staune nur, Vater, und staune noch mehr,
Du gibst mich doch einmal mit Freuden noch her.
 ねえ、お父さんが驚いてくしゃみをしたりしないのなら
 私はお父さんに言ったことでしょう、恋人が私に何を誓ったのかを。
 さあ驚くがいいわ、お父さん、さらに驚きなさいな、
 あなたは私を喜んで差し出すでしょう。

Mir schwor der Geliebte so fest und gewiß,
Bevor er aus meiner Umarmung sich riß:
Ich hätte am längsten zu Hause gesäumt,
Bis lustig im Felde die Weizensaat keimt.
 恋人は私に確かに誓ってくれたの、
 彼が私の抱擁から身をもぎ離す前に:
 私が家でぐずぐずできるのも長くて
 小麦の種が畑で元気に発芽するころまでだと。

詩:Josef Wenzig (1807-1876), "Des Liebsten Schwur", appears in Westslawischer Märchenschatz, Leipzig, first published 1857
曲:Johannes Brahms (1833-1897), "Des Liebsten Schwur", op. 69 (Neun Gesänge) no. 4 (1877), published 1877, first performed 1877 [voice and piano], Berlin, Simrock

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何故か分からないけれど大好きな曲というのがあります。
私は好きになる曲のパターンとして、第一印象ですぐに好きになる場合と何度も聴くうちにどんどんのめりこんでいく場合がありますが、このブラームスの「恋人の誓い」は前者だったと思います。
聴いてすぐに一耳惚れして以来、何度もリピートしてしまう曲の一つです。
快活な歌のメロディーも雄弁なピアノもわくわくしますが、歌とピアノの絡み方(特に最終節)がもう絶妙です!

この詩の主人公は思春期のうら若き女性と思われます。
父親と言い争っている時に、実は私には彼氏がいて結婚の約束までしているんだからとほくそ笑んでいるという感じでしょうか。

3/4拍子
ヘ長調(F-dur)
Sehr belebt und heimlich (非常に活気をもって、ひそやかに)

●ヘレン・ワッツ(CA) & ジェフリー・パーソンズ(P)
Helen Watts(CA) & Geoffrey Parsons(P)

宗教曲などでお馴染みのヘレン・ワッツは歌曲もとてもいいです。声の表情の豊かさと細やかさがこの録音でも感じられると思います。パーソンズのしっかりとした骨格のピアノもいつもながら素晴らしいです。

●ジェシー・ノーマン(S) & ダニエル・バレンボイム(P)
Jessye Norman(S) & Daniel Barenboim(P)

ノーマンはステージでの神々しさを忘れさせるぐらいの愛らしい表情を聞かせてくれます。

●モリカ・グロープ(MS) & アレクセイ・リュビモフ(P)
Monica Groop(MS) & Alexei Lubimov(P)

グロープは落ち着いた美声で伸びやかさと強さがある魅力的な歌唱です。

●シュテファニー・イラーニ(MS) & ヘルムート・ドイチュ(P)
Stefanie Irányi(MS) & Helmut Deutsch(P)

イラーニの声はとても心地よく、生き生きとした歌唱がいいですね。ドイチュの堅実で安定したピアノも魅力的です。

●エリカ・ケート(S) & ペーター・バックハウス(P)
Erika Köth(S) & Peter Backhaus(P)

ケートの可愛らしい声はこの詩の女性を魅力的に想起させてくれます。

●ルネ・フレミング(S) & ハルトムート・ヘル(P)
Renée Fleming(S) & Hartmut Höll(P)

フレミングは詩から感じられる若い娘というよりは成熟した女性が過去を回想しているように感じました。

●エレナ・ゲアハルト(MS) & ジェラルド・ムーア(P)
Elena Gerhardt(MS) & Gerald Moore(P)

歴史的な録音です。往年の歌曲の名人ゲアハルトの伸縮自在でありながら客観的な視点も併せ持っている歌唱は古さを感じさせません。生き生きとした歌がなんとも魅力的です。

●テオドア・キルヒナー(Theodor Kirchner: 1823-1903)によるピアノ独奏用の編曲版
Uriel Tsachor(P)

ブラームスやクラーラ・シューマン等とも親交を結んだ作曲家・ピアニスト・編曲家のキルヒナーによるピアノ編曲版です。原曲を生かした楽しい編曲ですね。

(参考)

The LiederNet Archive

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