ベートーヴェン「祈願(Bitten, Op. 48, No. 1)」(『ゲレルトの詩による6つの歌曲』より)
Bitten, Op. 48, No. 1
祈願
1.
Gott, deine Güte reicht so weit,
So weit die Wolken gehen,
Du krönst uns mit Barmherzigkeit
Und eilst, uns beizustehen.
Herr! Meine Burg, mein Fels, mein Hort,
Vernimm mein Flehn, merk auf mein Wort;
Denn ich will vor dir beten!
神よ、御身の善意ははるかまで届く、
雲が進むはるかまで。
御身は慈悲によって我らに冠をかぶせて
我らを助けようと急ぐ。
主よ!わが城、わが岩、わが避難所、
わが懇願を聞きたまえ、わが言葉に気を配りたまえ、
なぜなら私は御身の前で祈りたいから!
2.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Ich bitte nicht um Überfluß
Und Schätze dieser Erden.
Laß mir, so viel ich haben muß,
Nach deiner Gnade werden.
Gib mir nur Weisheit und Verstand,
Dich, Gott, und den, den du gesandt,
Und mich selbst zu erkennen.
私はあり余るほどのものや
この地上の宝を請うわけではない。
私が持たなければならないほどの量を
御身の慈悲で私に与えたまえ、
私にただ思慮と分別を与えたまえ、
神である御身、そして御身が遣わした者、
そして私自身を認識できるように。
3.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
Ich bitte nicht um Ehr und Ruhm,
So sehr sie Menschen rühren;
Des guten Namens Eigentum
Laß mich nur nicht verlieren.
Mein wahrer Ruhm sei meine Pflicht,
Der Ruhm vor deinem Angesicht,
Und frommer Freunde Liebe.
私は名誉や栄光を請うわけではない、
それらは人々の心を動かすものだが。
よき名声という財産を
私から失くさないでおくれ、
私の真の栄光は私の義務であれ、
栄光は汝の顔の前にあり
そして敬虔な友の愛だ。
4.(この節にはベートーヴェンは作曲していない)
So bitt ich dich, Herr Zebaoth,
Auch nicht um langes Leben.
Im Glücke Demut, Mut in Not,
Das wolltest du mir geben.
In deiner Hand steht meine Zeit;
Laß du mich nur Barmherzigkeit
Vor dir im Tode finden.
こうして私は御身に請う、万軍よ、
長生きを請うわけでもないが。
幸福の中の謙遜、窮地の際の勇気、
それを御身は私に与えようとした。
御身の手の中にわが時はある。
御身はただ慈悲を
御身の前で死する時に私に見出させておくれ。
Carl Philipp Emanuel Bach (1714-1788) sets stanzas 1-2, 4
L. Beethoven sets stanza 1
詩:Christian Fürchtegott Gellert (1715-1769)
曲:Ludwig van Beethoven (1770-1827), "Bitten", op. 48 no. 1 (1803), stanza 1, from Sechs Lieder nach Gedichten von Gellert, no. 1
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ベートーヴェンは、1798年/1799年にかけての冬から1802年の3月までクリスティアン・フュルヒテゴット・ゲレルト(Christian Fürchtegott Gellert: 1715.7.4, Hainichen - 1769.12.13, Leipzig)の詩による6曲の歌曲を作曲し、1803年に『ゲレルトの6つの歌曲(Sechs Lieder von Gellert, Op. 48)』として出版されました。
ここで取り上げられたゲレルトの詩は、1757年に出版された「宗教的頌歌と歌曲(Geistliche Oden und Lieder)」から採られています。この詩集からカール・フィリプ・エマヌエル・バッハ(Carl Philipp Emanuel Bach: 1714.3.8, Weimar - 1788.12.14, Hamburg)が多くの歌曲を作曲しています。ベートーヴェンの作曲した詩とも5編が共通しています(C.P.E.バッハは「神の力と摂理」には作曲しませんでした)。
ベートーヴェンは6曲中最初の5曲ははじめの1節のみ、もしくは2節のみ(「自然における神の栄光」)に作曲して、それ以外の節は省略しました。
現在では演奏者によって元のゲレルトの詩を数節、または全節復活させて歌われることもあります。
余談ですが、詩人の名前の一部「フュルヒテゴット(Fürchtegott)」は「神を畏れよ(Fürchte Gott)」という意味で、名は体を表していますね。
歌曲集第1曲は「祈願(Bitten)」というタイトルで、全4節からなるゲレルトの詩の第1節のみにベートーヴェンは作曲しました。
歩行しているようなピアノの四分音符の進行とメロディアスな歌が美しく絡み合う作品です。曲の最後は歩みも止まり、静かに祈りにふけっているかのようです。
2/2拍子
ホ長調(E-dur)
Feierlich und mit Andacht (荘重に、そして敬虔に)
●ヘルマン・プライ(BR), ヴォルフガング・サヴァリシュ(P)
Hermann Prey(BR), Wolfgang Sawallisch(P)
1980年代前半の脂ののりきった頃のプライの録音と思われます。朗々と響く歌声が何とも温かいです。サヴァリシュの明晰なピアノも素晴らしいです。
●マティアス・ゲルネ(BR), ヤン・リシエツキ(P)
Matthias Goerne(BR), Jan Lisiecki(P)
第1節だけでなく、第2,4節を加えて歌っています。包み込むようなゲルネの声の響きが心地よいです。
●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), イェルク・デームス(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Jörg Demus(P)
F=ディースカウにしてはかなりゆっくりめのテンポで厳かに歌っているのが印象的でした。
●ペーター・シュライアー(T), ヴァルター・オルベルツ(P)
Peter Schreier(T), Walter Olbertz(P)
清澄なシュライアーの歌唱は宗教曲のアリアを真摯に歌っている時を思い起こさせます。
●ジェスィー・ノーマン(S), ジェイムズ・レヴァイン(P)
Jessye Norman(S), James Levine(P)
ノーマンの輝かしい声はこの曲から外に放射される魅力を引き出しているように感じました。
●カール・フィーリプ・エマヌエル・バッハ作曲「祈願」
C.P.E. Bach: Bitten, Wq. 194
ノルベルト・マイン(T), テレンス・チャールストン(P)
Norbert Meyn(T), Terence Charlston(Clavichord)
C.P.E.バッハは第1,2,4節に作曲したそうですが、ここでは第3節も加え、全4節を歌っています。ベートーヴェンの曲よりも深刻な響きですね。
●カール・フィーリプ・エマヌエル・バッハによる「祈願」
C.P.E. Bach: Bitten, Wq. 194
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), イェルク・デームス(Tangentenflügel)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Jörg Demus(Tangentenflügel)
ここでF=ディースカウは第1節のみを歌っています。
(参考)

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