« ベートーヴェン「女暴君(La tiranna, WoO. 125)」 | トップページ | ブラームス「恋人の誓い(Des Liebsten Schwur, Op. 69, No. 4)」を聴く »

エリー・アーメリングのブラームス歌曲集(Elly Ameling: Brahms Lieder)

エリー・アーメリング(Elly Ameling)のYouTube公式チャンネルで、今度はブラームス歌曲集がアップされました!アーメリングの歌うブラームスも最高なんです!!!

今回の録音はおそらく4種類のスタジオ録音(うち3種類はブラームス歌曲集として発売されたスタジオ録音)と1種類のライヴ音源と思われます。編集のThom Janssenは、歌詞のアルファベット順に配置したようです。おそらくアーメリング自身の書き込みの入った楽譜が表示されますので、ブラームス歌曲を勉強している方向けなのだと思いますが、私のような単なる音楽ファンにとっても嬉しいです。

全部が聴き所だと思いますが、個人的に好きなのは「湖上で」「黄昏は上方から降り来て」「リンデの木に霜がおり」「野の孤独」「別れはなければならないのか」「夢遊病者」「五月の夜」「使い」あたりでしょうか。もちろん他の録音も素晴らしいです。ヴィオラ助奏の「宗教的な子守歌」が彼女の歌で聴けるのは嬉しいですね。彼女のブラームスは、この作曲家の渋いイメージを払拭してくれるのではないでしょうか。いつも通りの細やかなアプローチが素晴らしいですが、ブラームスらしいメロディーラインもしっかり響かせています。そしてルドルフ・ヤンセン、ドルトン・ボールドウィン、ノーマン・シェトラーといった名手たちのピアノも素晴らしいです。ぜひお好きな曲だけでも楽しんでみて下さい。

1977年録音のボールドウィンとのLP録音は未だにB面の収録曲がほとんどCD化されていないので、今回期待したのですが、残念ながら収録されていませんでした。レコード会社に望むのは難しそうなので、こちらのチャンネルに期待したいです。

●1977年録音のDalton Baldwin共演盤の未CD化作品
Botschaft
Komm bald
Des Liebsten Schwur
Dein blaues Auge
Das Mädchen spricht
Von ewiger Liebe
Sandmännchen

特に「恋人の誓い(Des Liebsten Schwur)」はライヴなどの他音源も今のところありませんので、この曲だけでも復活希望です!(他の曲は別の時期の録音で聴くことが出来ます)


Elly Ameling; Brahms Lieder

00:00:05 Ach, wende diesen Blick (op 57/4) ¹ (ああ、この視線をそらして)
00:01:55 Am Sonntag Morgen, zierlich angetan (op 49/1) ⁵ (日曜日の朝に)
00:03:17 Auf die Nacht in der Spinnstub’n (op 107/5 Mädchenlied) ⁵ (娘の歌 "夜に糸紡ぎの部屋で")
00:05:09 Blauer Himmel (op 59/2 Auf dem See) ³ (湖上で)
00:08:09 Da unten in Tale läuft Wasser so trüb (WoO 33/6) ⁴ (あの谷底で)
00:10:57 Dämmrung senkte sich von oben (op 59/1) ³ (黄昏は上方から降り来て)
00:15:00 Dein blaues Auge (op 59/8) ¹ (あなたの青い目)
00:17:28 Der Mond steht über dem Berge (op 106/1 Ständchen) ⁵ (セレナード)
00:19:06 Die Blümelein sie schlafen (WoO 31/4 Sandmännchen) ² (眠りの精)
00:22:56 Die ihr schwebet um diese Palmen (op 91/2 Geistliches Wiegenlied) ⁴* (宗教的な子守歌)
00:29:11 Du milchjunger Knabe (op 86/1 Therese) ³ (テレーゼ)
00:31:01 Dunkel, wie dunkel (op 43/1 Von ewiger Liebe) (永遠の愛について)
00:35:36 Es hing der Reif im Lindenbaum (op 106/3) ¹ (リンデの木に霜がおり)
00:39:00 Es lockt und säusselt (op 6/2 Der Frühling) ⁴ (春)
00:41:40 Es steht ein Lind in jenem Tal (WoO 33/41) ⁵ (リンデが立っている)
00:44:26 Es träumte mir, ich sei dir teuer (op 57/3) ¹ (私は夢を見た)
00:47:58 Feinsliebchen, du sollst mir nicht barfuß gehn (WoO 33/12) ⁵ (美しい恋人よ、裸足で来ては駄目だよ)
00:51:10 Geuss’ nicht so laut (op 46/4 An Die Nachtigall) ³ (サヨナキドリに寄せて)
00:54:02 Guten Abend, gut’ Nacht (op 49/4 Wiegenlied) ⁴ (子守歌)
00:56:11 Guten Abend, mein Schatz (op 84/4 Vergebliches Ständchen) ¹ (甲斐なきセレナード)
00:57:59 Ich ruhe still, im hohen grünen Gras (op 86/2 Feldeinsamkeit) ³ (野の孤独)
01:02:13 Immer leiser wird mein Schlummer (op 105/2) ¹ (わが眠りはますます浅くなり)
01:06:24 In dem Schatten meiner Locken (op 6/1 Spanisches Lied) ⁴ (スペインの歌)
01:08:44 In stiller Nacht, zur ersten Wacht (WoO 33/42) ⁵ (静かな夜に)
01:11:39 Mei Mueter mag mi net (op 7/5 Die Trauerende) ⁴ (悲しむ娘)
01:13:28 Mein Lieb ist ein Jäger (op 95/4 Der Jäger) ⁴ (狩人)
01:14:38 Mein wundes Herz verlangt nach milder ruh (op 59/7) ³ (私の傷ついた心)
01:16:20 Meine Liebe ist grün (op 63/5) ³ (わが恋は緑)
01:17:53 Muss es eine Trennung geben (op 33/12) ³ (別れはなければならないのか)
01:21:30 O Frühlingsabenddämmerung (op 71/3 Geheimnis) ³ (秘密)
01:23:28 O kühler Wald, wo rauschest du (op 72/3) ³ (おお涼しい森よ)
01:25:42 O Nachtigall, dein süsser Schall (op 97/1 Nachtigall) ³ (サヨナキドリ)
01:28:16 O versenk’ dein Leid (op 3/1 Liebestreu) ³ (愛の誠)
01:31:08 O wüsst ich doch den Weg zurück (op 63/8) ¹ (おお帰り道を知っていたならば)
01:35:07 Och Modr, ich well en Ding han (WoO 33/33) ⁵ (おお お母さん、ほしいものがあるの)
01:36:49 Rosenzeit, wie schnell vorbei (op 59/5 Agnes) ⁴ (アグネス)
01:40:00 Ruhe, Süssliebchen (op 33/9 Ruhe, Süssliebchen) ³ (憩え、かわいい恋人よ)
01:46:27 Schwalbe, sag’ mir an (op 107/3 Das Mädchen spricht) ⁵ (娘は語る)
01:47:48 Schwesterlein, wann gehn wir nach Haus (WoO 33/15) ⁵ (お姉ちゃん)
01:50:42 Singe Mädchen, hell und klar (op 84/3 In Den Beeren) ⁴ (いちご畑で)
01:52:16 Störe nicht den leisen Schlummer (op 86/3 Nachtwandler) ³ (夢遊病者)
01:56:28 Unbewegte laue Luft (op 57/8) ¹ (そよがぬ生ぬるい風)
02:00:21 Voller, dichter tropft ums Dach da (op 58/2 Während des Regens) ⁵ (雨の間)
02:01:37 Von waldbekränzter Höhe (op 57/1) ⁴ (森に覆われた丘から)
02:04:01 Wann der silberne Mond (op 43/2 Die Mainacht) ³ (五月の夜)
02:07:23 Warum den warten von Tag zu Tag (op 97/3 Komm bald) ¹ (早くおいで)
02:10:03 Wehe, Lüftchen, lind und lieblich (op 47/1 Botschaft) ¹ (使い)
02:12:10 Wenn du nur zuweilen lächelst (op 57/2) ¹ (あなたがほんの時折でも微笑んでくれたら)
02:13:53 Wie Melodien zieht es mir (op 105/1) ¹ (メロディのように)
02:16:08 Wir wandelten, wir zwei zusammen (op 96/2) ¹ (私たちは歩き回った)

Elly Ameling
Rudolf Jansen (1983) ¹→おそらく5枚組CDボックス"80 jaar"に収録された1983年1月14日Concertgebouwでのライヴ録音と思われる。ただし「わが眠りはますます浅くなり」と「便り」は"80 jaar"では1978年10月3日Concertgebouw録音と記載されている。
Rudolf Jansen (1988) ²→おそらくPhilipsレーベルに録音した「歌の翼に」と題されたオムニバス歌曲集と同一音源
Rudolf Jansen (1990) ³→おそらくHyperionレーベルに録音した「ブラームス歌曲集」と同一音源
Dalton Baldwin (1977) ⁴→おそらくPhilipsレーベルに録音した「ブラームス歌曲集」と同一音源
Norman Shetler (1967) ⁵→おそらくHarmonia Mundiレーベルに録音した「ブラームス歌曲集」と同一音源
George Szende - viola *

Editing: Thom Janssen

| |

« ベートーヴェン「女暴君(La tiranna, WoO. 125)」 | トップページ | ブラームス「恋人の誓い(Des Liebsten Schwur, Op. 69, No. 4)」を聴く »

音楽」カテゴリの記事

エリー・アーメリング」カテゴリの記事

ブラームス」カテゴリの記事

ドルトン・ボールドウィン」カテゴリの記事

ルドルフ・ヤンセン」カテゴリの記事

ノーマン・シェトラー」カテゴリの記事

コメント

フランツさん、こんにちは。

フランツさんの、アメリングへの愛が満ち満ちている記事ですね。

これだけまとめて聞けるのは、ファンには嬉しいことですね。
楽しみに少しずつ聞いています(^^)

投稿: 真子 | 2021年7月 4日 (日曜日) 15時31分

真子さん、こんばんは。

有難うございます(^^)
真子さんにとってのプライが、私にとってはアーメリングなのだと思っています(もちろん私もプライは大好きですし、真子さんもアーメリングを聴いてくださっていますが)。
一生聴き続けると思います。

真子さんもこの録音を少しずつ聞いてくださっているとはとても嬉しいです!
有名曲もそうでない曲もバランスよく混ざっているので、ブラームス歌曲のいろいろな面を楽しんでいただけると思います。

投稿: フランツ | 2021年7月 5日 (月曜日) 18時44分

フランツさん、こんにちは。

〉真子さんにとってのプライが、私にとってはアーメリングなのだと思っています(もちろん私もプライは大好きですし、真子さんもアーメリングを聴いてくださっていますが)。
一生聴き続けると思います。
おっしゃるとおりです(^o^)
私もアメリング好きです。初めて彼女の声を聞いたのは、80年頃。
NHKで、流れていたシューベルトの「水の上で歌う」でした。あまりに美しいメロディとソプラノの響きに釘付けになりました。
流れていたテロップを急いでメモし、次の日レコード屋さんに走りました。
実はプライさんとの出会いより10年早かったんですよ。
元々は可憐なソプラノが好きで、男声はあまり聞いてなかったんです。
アメリングは、一番はじめに好きになった外国の声楽家でもあるんです。
同性から見てもチャーミングで、素敵です!
同じ合唱団にいた友人もアメリングが好きでした(^^)

フランツさんのアメリングさん、私のプライさんを互いに熱く語っていると、まるで恋バナをしているようで楽しいです(すみません。失礼な表現で^^;)。
私も、彼を一生聴き続けると思います。

最近読んだ下重暁子さんが、「ファンになるとは惚れ抜くこと」と、著書の中で書いておられました。
トキメキを持ち続けるのは素敵な事だと。

きっと、フランツさんもアメリングの演奏家のブブンだけに留まらず、エリー・アメリングと言う人丸ごとをお好きなんでしょうね。

私も、プライさんはそんな存在です。憧れそのものです。

アメリングさんも、プライさんも、声楽家の中にあっても、際立った美声を持っていますが、ただ声が美しいだけでは名歌手にはなれませんよね。
技術+聴くものの琴線に触れるものを持っているからこそ、長い間の鑑賞に耐えるのだと思います。(もちろん、他の名歌手たちもそうですが)

それでも、やはりこの美声は聴いているだけで、幸せになれます。
こうして、まとめて聴けるのはありがたいですね!


投稿: 真子 | 2021年7月 6日 (火曜日) 15時21分

真子さん、こんばんは。

真子さんにとってもアーメリングはお好きな歌手とこれまでも折に触れて話してくださっていますが、あらためて伺うと嬉しいです!たまたまNHKで知ってレコード屋に駆け込まれたなんてドラマみたいで素敵です!
プライより10年早く出逢われたのですね。
最初に好きになった外国の歌手というお話を伺うだけで嬉しいです(^^)

私は歌曲に興味を持った頃はレコード屋にアーメリング、プライ、F=ディースカウ、シュヴァルツコプフ、ホッター等のLPが沢山置いてあったのが幸運でした。
学生時代でお金も少なかったので、レコードを置いてある図書館に行ったりFMからエアチェックしたりして少しずつ録音を増やしていきました。
今のように多くの音源を一度に知ることは出来ませんでしたが、あの頃のことを思い出すと夢中で楽しんでいたなぁと思います。基本的に今も気持ちは同じつもりなんですけどね(笑)

>フランツさんのアメリングさん、私のプライさんを互いに熱く語っていると、まるで恋バナをしているようで楽しいです(すみません。失礼な表現で^^;)。
私も、彼を一生聴き続けると思います。

おっしゃるとおりですね。恋愛とファン心理は近いのだと思います。両方向を向いているか一方的に思っているかの違いだけで。でも一方的だとしても音楽家は聴く人がいてこそなので、そういう意味では双方向と言ってもいいのかもしれませんね。

下重暁子さんは寡聞にして存じ上げなかったのですが、NHKアナウンサー出身の方なのですね。真子さんも私も音楽や音楽家を「惚れぬいている」のでしょうね。

>きっと、フランツさんもアメリングの演奏家のブブンだけに留まらず、エリー・アメリングと言う人丸ごとをお好きなんでしょうね。

あまり意識したことはなかったのですが、そうなのだと思います。演奏と人柄は別と割り切る聴き方も出来ると思いますが、ここまでほれ込むのは人として彼女が好きなのかもしれません。言っていて恥ずかしいですが(笑)
真子さんのプライ愛は、歌を含めたプライその人に向けられていると私も感じます。「憧れ」いい言葉ですね(ドイツロマン派で「憧れ」というタイトルの詩や歌曲がとても多いですよね)。

>ただ声が美しいだけでは名歌手にはなれませんよね。

同感です。美声は魅力の一つですが、それだけではないですよね。美声を使った「表現」に惹かれるのだと思います。
プライやアーメリングのような名歌手たちは、2,3分で一つの世界を見せてくれますよね。ほんの短い間の心理や風景がすごい集中力の中で表現されるのを聴くのが好きなのだと思います。

投稿: フランツ | 2021年7月 6日 (火曜日) 20時12分

フランツさん、こんばんは。

〉両方向を向いているか一方的に思っているかの違いだけで。でも一方的だとしても音楽家は聴く人がいてこそなので、そういう意味では双方向と言ってもいいのかもしれませんね。

アメリングがかつて、こんな事を言われていました。
「コンサートは、私一人でできるものではありません。聴いて下さる方々と作るものです。」
全く同じ文言でないかもしれませんが、このような内容でした。
レコードを通して聴いているファンにも同じお気持ちだったと思います。

また、プライさんも自伝の、12章 ベートーヴェンの「はるかな恋人に」の中で『〈この歌を受け取ってほしい、愛するひときみのためにうたった歌を〉ーリート歌手としての私の願望を端的に要約したような詩行である。(P258)』
と、書いています。
初めてこれを読んだとき狂喜しました。彼は又、よく「私の聴衆」と言う表現をします。
演奏家とファンはたとえ個人的な知り合いでなくても、相思相愛なのだと思います。こっ恥ずかしい表現ですが(^_^;)
ここまで好きになれる演奏家と出会えたのは、幸せなことだと思います(^^)
私は、プライさんが批判されることも覚悟の上で、いろんな事に挑戦する姿にはげまされ、背中を押され、自分も思いきって一歩を踏み出す勇気を度々貰いました。
「、、、非難されるでしょう。でも、やりましょう!」と言う彼の言葉がすきです。

今は溢れるばかりに様々な音源が聴けて、幸せな時代ですよね。
私も、限りあるおこづかいで、どのレコードを買うかあれこれ迷ったのを覚えています。
買ったレコードは、擦り切れるのが嫌で、カセットテープに録って聴いたものです。
ちょっと奮発してメタルテープを買っていました。今でも何本か残っていて、きれいな音を聴かせてくれます。

投稿: | 2021年7月 6日 (火曜日) 21時00分

真子さん、こんばんは。

アーメリングのその言葉、引退公演のために来日した際に「音楽の友」に掲載されたインタビューですね。
私も実は「聴く人がいてこそ」という前回のコメントを書いた時にそのことを思っていました。
真子さんに心が読まれたのかとちょっとびっくりしました。
アーメリングがファンの人がいてこそということをおっしゃってくれたのはとても嬉しかったです。

プライの自伝の言葉も含蓄がありますね。やはり一人対大勢という関係であろうとも、アーティストは聴衆に気持ちをこめて歌ってくれているのでしょうね。有難いことです(^^)

批判されることを分かっていながらチャレンジするというプライの姿勢は音楽家として素晴らしいですね。おそらく『冬の旅』のオーケストラ版のことだと思いますが、新しいことを切り開いていった人たちは常にそういう闘いを経てきたのでしょうね。

レコードが擦り切れるのが嫌でカセットに録音したというお話、すごくよく分かります!私も新品のレコードを買ったらまずカセットにダビングしました。真子さんと共通点多いですね。メタルテープは特別な時用に奮発して買いましたよね。私も少しずつカセットの中身をデータ化して聞き直してみたいと思っています。

投稿: フランツ | 2021年7月 7日 (水曜日) 19時49分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ベートーヴェン「女暴君(La tiranna, WoO. 125)」 | トップページ | ブラームス「恋人の誓い(Des Liebsten Schwur, Op. 69, No. 4)」を聴く »