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ベートーヴェン「優しい愛 "君を愛す"(Zärtliche Liebe "Ich liebe dich", WoO 123)」

Zärtliche Liebe "Ich liebe dich", WoO 123
 優しい愛 "君を愛す"

Ich liebe dich, so wie du mich,
Am Abend und am Morgen,
Noch war kein Tag, wo du und ich
Nicht teilten unsre Sorgen.
 ぼくは君を愛している、君がぼくを愛しているのと同じように、
 夕方も朝も
 君とぼくが
 ぼくたちの心配ごとを分かち合わない日などまだなかった。

Auch waren sie für dich und mich
Geteilt leicht zu ertragen;
Du tröstetest im Kummer mich,
Ich weint in deine Klagen.
 心配ごとも君とぼくで
 分かち合って容易に耐えられた。
 君はぼくが苦しんでいた時に慰めてくれて、
 ぼくは君が嘆き悲しんだ時に泣いたのだった。

Drum Gottes Segen über dir,
Du, meines Lebens Freude.
Gott schütze dich, erhalt dich mir,
Schütz und erhalt uns beide.
 だから君に神の祝福がありますように、
 君、ぼくの人生の喜びよ。
 君に神のご加護がありますように、いつまでもお元気で、
 ぼくら二人とも神のご加護があり、元気でいられますように。

詩:Karl Friedrich Wilhelm Herrosee (1764-1821), "Die Liebenden"
曲:Ludwig van Beethoven (1770-1827)

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ベートーヴェンの歌曲中「アデライーデ」と共に非常に親しまれている「優しい愛(君を愛す)」は1795年に作曲され、1803年に初版が出版されました(「別れ(La partenza, WoO 124)」と同時に)。

曲はA-B-A'の形式からなり、分散和音に乗って、素朴で流麗な歌のメロディーが印象的です。調も最初のト長調から途中で属調のニ長調になり、最後に再びト長調に戻るという平和な展開です。最後の節では歌は締めくくりに高く盛り上がります。静かに愛を語っていたら、感極まって最後は盛り上がってしまったという感じでしょうかね。楽譜を見るとこの短い2ページの作品の中に強弱の指示などが細かく書かれているので、ベートーヴェンの思いがこの小品に詰まっていると言ってもいいのではないでしょうか。

人気曲だけあって、動画サイトにはコンサートで演奏された時などの映像がたっぷりアップされていました。お気に入りの演奏を探してみるのもいいですね。

2/4拍子
ト長調(G-dur)
Andante

●フリッツ・ヴンダーリヒ(T) & フーベルト・ギーゼン(P)
Fritz Wunderlich(T) & Hubert Giesen(P)

チャンネル名:フリッツ・ヴンダーリヒ - トピック
ヴンダーリヒの歌声の響きは稀有のものだと思います。こんなに甘くて美しい声でこの曲を歌う人がいるとはベートーヴェンも想像していなかったのでは。

●ヘルマン・プライ(BR) & レナード・ホカンソン(P)
Hermann Prey(BR) & Leonard Hokanson(P)

チャンネル名:ヘルマン・プライ - トピック
神のご加護を願うところの歌い上げる感じがたまらなく素晴らしいです!

●ペーター・シュライアー(T) & ルドルフ・ブフビンダー(P)
Peter Schreier(T) & Rudolf Buchbinder(P)

チャンネル名:가곡듣자
一途な告白という感じですね。確か1970年代の映像だったと思います。シュライアー若いですね。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR) & ジェラルド・ムーア(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR) & Gerald Moore(P)

チャンネル名:SuperClassic Channel
ライヴ録音:1965/08/13, Mozarteum, Salzburg。F=ディースカウとは思えないほどゆったりテンポのロマンティックな歌唱に驚きました。こういう彼の歌唱は珍しいのでは?

●アーリーン・オージェ(S) & エリク・ヴェルバ(Hammerklavier)
Arleen Augér(S) & Erik Werba(Hammerklavier)

チャンネル名:Operazaile operazaile
1978年録音。ゆっくり目のテンポで思いをこめたオージェの透明な美声が心地よいです。ヴェルバは珍しくハンマークラヴィーアを演奏しています。

●エルンスト・ヘフリガー(T) & エリク・ヴェルバ(P)
Ernst Haefliger(T) & Erik Werba(P)

チャンネル名:エルンスト・ヘフリガー・トピック
誠実そのものといったヘフリガーの歌に胸をつかまれます。

●オーラフ・ベーア(BR) & ジェフリー・パーソンズ(P)
Olaf Bär(BR) & Geoffrey Parsons(P)

チャンネル名:オラフ・ベーア - トピック
ベーアの柔らかい歌唱は、繊細で夢見がちなロマンチストの歌というイメージが浮かびます。

●ピアノパートのみ(吉田幸央(P))
【ピアノ伴奏】君を愛す L.v.ベートーヴェン Ich liebe dich (Zärtliche Liebe) K.F.Herrosee/L.v.Beethoven "Piano Karaoke"

チャンネル名:ピアニスト吉田幸央Sachio Yoshida
吉田さんの演奏に合わせて一緒に歌ってみましょう!

<参考>
The LiederNet Archive

Beethoven-Haus Bonn

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コメント

フランツさん、こんにちは。

これ程有名なドイツリートも少ないでしょうね。確か、中学の音楽の教科書にも載っていますよね。

ヴンダーリヒの声は本当に美しいですね。私はハニーボイスと呼んでいます。

プライさんは歌い上げる箇所は、声に力がこもり(変な力が入るのではなく)聞く方も高揚感に包まれますね。それまでの、優しい歌いかたとの対比がいいです(^^)
また、Drum Gottes Segen über dir,の
Drum に入る前の休符感と入りかたが好きです。

シュライアーは、まるで宗教歌曲のように歌っていますね。
清潔な歌詞メロディに寄り添った歌唱だと感じました。

確かにディースカウさんのこのような歌いかたを聞く事はあまりない感じですね。歌手というのは基本的にロマンチストなんだと思います。でないと、恋愛歌なんて歌えませんものね。

オージェの声は素直で美しいですよね。彼女の美質とこの曲がマッチして、プラトニックな恋愛が浮かびます。

ヘフリガーの、常に真摯に音楽に向かう姿勢がとても好きです。その姿と歌詞がピッタリ合わさります。

ベーアのこのCD持っています。
ベーアの歌も好きなんですよね。ジャケット写真の雰囲気もいいですね。

フランツさんの「一緒に歌ってみましょう!」に誘われて歌ってみはました 笑
これも、レッスンを受けたので久し振りでした(^^)

投稿: 真子 | 2021年6月13日 (日曜日) 15時01分

真子さん、こんばんは。

確かにこの曲とても有名ですよね。
ストレートな歌詞のラブソングというところも好まれる一因なのかなと思ったりします。

ヴンダーリヒの限られた数の録音はどれもお宝ですね。「ハニーボイス」-まさにおっしゃる通りですね。

プライの高揚感、本当に自然に盛り上がっていく感じが素敵ですね。"Drum"に入る前の静寂と、入るタイミングはこの曲の聴きどころの一つですよね。直前の"Klagen"を弱めて、そっと"Drum"に入るところ、素晴らしいなぁと思いました。

シュライアーは本当に真摯でぐっと惹き込まれます。

F=ディースカウは概して速めのテンポでリズミカルに歌うイメージが強かったので、このライヴ録音でのたっぷりしたテンポ設定は珍しい気がしました。確かにドイツリートはおおむね愛の歌ですからロマンティックな要素をもっていない人は歌えないかもしれないですね。

オジェーの清楚な歌唱は確かにプラトニックな愛なのかもしれないですね。

ヘフリガーほど純朴で一途な雰囲気を醸し出す歌手は珍しいように思います。

ベーアの録音は真子さんもお持ちなのですね。若い頃のベーアは肖像画にでもなりそうな詩人っぽい雰囲気がありますよね。

真子さんもこの歌をレッスンで歌われたのですか!それは聴いてみたいです。

投稿: フランツ | 2021年6月14日 (月曜日) 19時43分

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