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ベートーヴェン「女暴君(La tiranna, WoO. 125)」

La tiranna (Canzonetta), WoO. 125
 女暴君 (カンツォネッタ)

Ah, grief to think! Ah, woe to name,
The doom that fate has destined mine!
Forbid to fan my wayward flame,
And, slave to silence, hopeless pine!
 ああ、思うのも悲しい!ああ、名前を言うのも辛い、
 運命の女神が私に予定していた運命!
 私の気まぐれな炎をあおるのを禁じよ、
 そして、沈黙の奴隷よ、絶望した切望よ!

Imperious fair! In fatal hour
I marked the vivid lightning's roll,
That gave to know thy ruthless power
And gleamed destruction on my soul.
 傲慢な美女よ!運命の時に
 私は鮮烈な稲妻の轟の跡をつけた、
 それで汝の無慈悲な力を知るようになり、
 わが魂に破滅が光を放った。

詩:William Wennington (?-?)
曲:Ludwig van Beethoven (1770-1827), "La tiranna", WoO. 125 (1798/9)

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もともとタイトルが示すようにイタリア語の詩で、ウィリアム・ウェニントンという1798年の終わりにウィーンにいた英国人が英語に訳したようです。しかしオリジナルのイタリア語詩は現在まで知られていません。

この曲は1798年下旬に作曲され、1799年12月12日にロンドンではじめて出版されました。

現在のところ楽譜を確認出来ていないのですが、比較的手の込んだ作風のように聞こえます。ピアノパートもなかなか雄弁です。第1節は穏やかに進みますが、第2節でドラマティックに展開するところが聞き所でしょうか。最終行の"destruction"を何度も繰り返しているのはベートーヴェンの思いがこの語に込められているのでしょう。最後に再び第1節を歌って締めくくります。

変ホ長調(Es-dur)

●ジョン・マーク・エインスリー(T) & イアン・バーンサイド(P)
John Mark Ainsley(T) & Iain Burnside(P)

エインスリーの美声と表現力、美しい英語のディクションが素晴らしいです。

●ペーター・シュライアー(T) & ヴァルター・オルベルツ(P)
Peter Schreier(T) & Walter Olbertz(P)

シュライアーが最初の"ah"を「エイ」のように発音しているのが興味深いです。当時の発音なのでしょうか。シュライアーはいつも通りの端正な歌を聴かせてくれています。

●パメラ・コバーン(S) & レナード・ホカンソン(P)
Pamela Coburn(S) & Leonard Hokanson(P)

ここでのコバーンの歌、メロディーが美しく響き素晴らしかったです。ホカンソンが味のある演奏をしています。

●ヴァンサン・リエーヴル=ピカール(T) & ジャン=ピエール・アルマンゴー(P)
Vincent Lièvre-Picard(T) & Jean-Pierre Armengaud(P)

リエーヴル=ピカールが爽やかな声で表情豊かに歌っています。

(参考)

Hyperion - La Tiranna, WoO125

Beethoven-Haus Bonn - La Tiranna

「女暴君(ラ・ティランナ La Tiranna)」——ベートーヴェン唯一の英語の詩にのせた歌曲(平野昭監修)

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コメント

フランツさん、こんにちは。

女暴君と言う題、詩を読めば納得ですが、いかにもイタリアらしいですね(笑)

前記事でもそうでしたが、リエーヴル=ピカールのテノール、爽やかな美声ですね。
エインスリーのテノールも美しいでししが、少しずつ違う声を楽しむのもいいですね。
私は声にすぐ耳が行ってしまいます。

英語は、やはりドイツ語と違うなめらかさがあるためか、メロディがより流麗に聴こえました。

コバーンは、いつもより可憐な響きで歌っているように感じましたが、詩を考えると私の今日の耳が変なのかもしれませんね。

シュライヤーの最初の「エイ」の発音、確かに不思議ですね。
シュライヤーが歌うとドイツ語ぽく聴こえました。発声も関係しているのかもしれません。

普段バリトンを聴く事が多いので、テノールの聴き比べも楽しかったです。

投稿: 真子 | 2021年6月27日 (日曜日) 15時37分

真子さん、こんばんは。

この詩は暴君の女性に従う下僕のような主人公の心情を歌っているという感じでしょうか。おっしゃるようにイタリア的な詩ですよね。

リエーヴル=ピカールとエインズリーの両テノール、美声ですが、味わいがそれぞれ異なるのが聞き比べの楽しいところですね。
品のあるエインズリーと丁寧に歌い上げるリエーヴル=ピカール。この二人と比べるとシュライアーは貫禄がありますね。ドイツ人の英語は彼に限らず"fan"の"a"のように「アとエの中間」と習う発音が少し「エ」に近く聞こえます。もしかしたら「フェン」と言っているのかもしれませんね。

コバーンは芯がありながらも清楚な感じもしますね。「暴君」に少し優しさを加えて歌っているのかなぁと思ったりもしました。

今回は奇しくも高音歌手の競演となりました。
楽しんでいただけたようで良かったです!

投稿: フランツ | 2021年6月28日 (月曜日) 18時16分

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