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ベートーヴェン最初期の歌曲「乳児に寄せて(An einen Säugling, WoO 108)」

An einen Säugling, WoO 108
 乳児に寄せて

Noch weißt du nicht wes Kind du bist,
Wer dir die Windeln schenket,
Wer um dich wacht, und wer sie ist,
Die dich erwärmt und tränket.
 まだ分からないでしょうね、あなたが誰の子なのか、
 誰があなたにおしめを付けてくれるのか、
 誰があなたを見守っているのか、その人は誰なのか、
 あなたを温めたりミルクを飲ませてくれる人は。

Geneuß indes mit frommem Sinn,
Geneuß! Nach wenig Jahren
Wird sich in deiner Pflegerin
Die Mutter offenbaren.
 その間優しい心で楽しみなさい!
 楽しむのです!ほんの数年も経てば
 あなたをお守りしていたのは
 お母さんだったと分かるでしょう。

So hegt und pflegt uns alle hier,
Auf gleich verborgne Weise,
Ein Geber, Dank sei ihm dafür!
Mit Gütern, Trank und Speise.
 このようにここにいる私たちみんなを面倒見て、世話してくれます、
 等しく人知れぬやりかたで、
 施してくださる方に感謝を!
 その方は財産、飲み物、食べ物を下さるのです。

Zwar faßt ihn nicht mein dunkler Sinn,
Allein nach wenig Jahren,
Wird wenn ich fromm und gläubig bin,
Er mir sich offenbaren.
 確かに私の暗い心ではこの方のことが分かりませんが、
 ほんの数年の後に
 私が敬虔で信心深ければ
 この方のことが私に分かるでしょう。

詩:Johann von Döring, Drost zu Wolfenbüttel (1741-1818)
曲:Ludwig van Beethoven (1770-1827)

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ヨーハン・フォン・デーリングという代官でもあった人のテキストによる4節の有節歌曲です。この曲も1783/84年、ベートーヴェン13-14歳の作品で、楽譜は歌声部が分かれておらず、ピアノ右手パートの高声部を歌うようになっています。 つまり、ピアノ右手の低声部も別の人が歌えば重唱や合唱も可能ということですね。
詩は全4節からなり、前半2節はある乳飲み子への母親の問いかけですが、後半2節は"ein Geber(供給者)"という男性が登場し、主人公が数年後に敬虔で信心深ければこの供給者が誰なのか分かるでしょうとあり、おそらく救世主のことを言っているのではないかと思います。

前奏9小節、後奏4小節
イ長調
3/4拍子
29小節(テキスト1節分)
Arioso
最高音:2点イ音
最低音:イ音

●アデーレ・シュトルテ(S) & ヴァルター・オルベルツ(P)
Adele Stolte(S) & Walter Olbertz(P)

第1-2節。シュトルテは訓練されたしっかりした声で美しいフレーズを聞かせてくれます。ピアノ右手高声部のトリル箇所はトリルを付けずに歌っています。

●カレン・ヴィエルツバ(S), ナタリー・ペレス(MS), ジャン=ピエール・アルマンゴー(P)
Karen Wierzba(S), Natalie Pérez(MS), Jean-Pierre Armengaud(P)

第1-4節。ピアノの右手を二重唱で歌っています。二人のハーモニーがとても美しいです。

●ハイディ・ブルナー(MS) & クリスティン・オーカーランド(P)
Heidi Brunner(MS) & Kristin Okerlund(P)

第1-4節。すべての節でピアノ前奏を律儀に繰り返しています。

●ベルリン・ハインリヒ・シュッツ・クライス & レナード・ホカンソン(P)
Heinrich Schütz Kreis, Berlin & Leonard Hokanson(P)

第1-4節。女声合唱による演奏で、とても澄んだ響きに心洗われます。ピアノ右手のトリル箇所はトリルを付けずに歌っています。ホカンソンの味のあるピアノもとてもいいです。

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コメント

フランツさん、こんばんは。

まず、シュトルツの声、美しいですね(*^^*)
ベートーベンは、器楽的な声楽曲を作ると思われ勝ちですが、実はかわいい曲、ロマンチックな曲も作っているんですよね。それも清潔感にあふれたロマンを感じます。

ヴィエルツバとペレスの二重唱、とても美しいですね。
ハモりやすい声質の二人なんですね(*^^*)

ブルナーの声の音色いいですね。好きな声です。メゾですが、軽やかで可憐で温かみがありますね。

最後の女声合唱も美しいですね。古き良き時代の女学生を思わせます。このCD、あまり聞いてなかったんですが、これを機会に聞いてみます。

投稿: 真子 | 2021年1月12日 (火曜日) 20時41分

真子さん、こんばんは。

シュトルテはシュライアーのベートーヴェン歌曲全集の女声用の曲をすべて担当している人で、去年9月に残念ながら亡くなったそうです。
芯のある美声歌手ですね。
おっしゃる通り、厳格なイメージのベートーヴェンですが、この曲は可愛らしいですよね。

ヴィエルツバとペレスは今回初めて聴く歌手だったのですが、声の相性が良くて美しく調和していますね。

ブルナーが真子さんのお好きな声とのこと、おっしゃるようにメゾでもあまり暗くない響きですね。

女声合唱、美しいですね。プライとコバーン、ホカンソンの全集はいくつかこの合唱団の演奏もあるようですね。

投稿: フランツ | 2021年1月13日 (水曜日) 20時59分

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