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ペーター・シュライアーのドキュメンタリー(Peter Schreier - Zwischentöne, 1995)

ペーター・シュライアーが1995年、彼の60歳を記念したテレビ番組(mdr)を放送したようで、その時の映像がアップされていましたので、ご紹介します(部分的にアップロードした方によってカットされているようです)。
インタビューの合間に演奏が挿入される形です。
基本的に演奏シーンは抜粋ですが、ヴァルター・オルベルツとのメンデルスゾーンの歌曲2曲やエッシェンバハとの『冬の旅』からの「氷結」はカットなしにまるまる聴くことが出来るのが嬉しいです。
また、ブラームスのマゲローネのロマンスのリハーサルシーン(オルベルツの肉声が聞けるのは珍しい)や、シュライアーがマスタークラスで指導している姿など貴重な映像が見られます。
どこまでも清冽な美声のシュライアーの貴重な映像をお楽しみ下さい。

Peter Schreier - Zwischentöne 1995

(mdr Fernsehen)

0:00- (抜粋)
Händel: Giulio Cesare, HWV 17 (excerpts)
ヘンデル:『ジュリアス・シーザー』より
Peter Schreier(T)
Theo Adam(BSBR)
Helmut Koch(C)

2:55-3:29 (抜粋)
C.Ph.E.Bach: Sinfonie Es-Dur (excerpts)
C.Ph.E.バッハ:交響曲変ホ長調より
Helmut Koch(C)

3:29-4:48 (抜粋)
Mozart: "Così fan tutte, KV. 588: Ferrando's aria "Un aura amorosa"(excerpts)
モーツァルト:『コジ・ファン・トゥッテ』~愛の吐息
Peter Schreier(T)

8:36-10:43
Mendelssohn: Im Frühling, Op. 9-4
メンデルスゾーン:春に
Peter Schreier(T)
Walter Olbertz(P)

10:44-12:53 (リハーサル)
Brahms: Romanzen aus die schöne Magelone, Op. 33 (excerpts)
ブラームス:『美しいマゲローネ』からのロマンス
6. Wie soll ich die Freude
どのようにしてこの悦びに
7. War es dir, dem diese Lippen bebten
この唇をふるわせていたお前なのに
Peter Schreier(T)
Klaus-Maria Brandauer(Narrator)
Walter Olbertz(P)

14:21-16:14
Mendelssohn: Gruß, Op. 19a-5
メンデルスゾーン:挨拶
Peter Schreier(T)
Walter Olbertz(P)

16:28-20:23
Meisterklasse
Wolf: Ich esse nun mein Brot nicht trocken mehr
ヴォルフ:私はもう乾いたパンを食べることはありません
Mozart: Als Luise die Briefe ihres ungetreuen Liebhabers verbrannte, KV. 520
モーツァルト:ルイーゼが不実な恋人の手紙を焼いたとき

27:32-30:13 (インタビューに前奏がかぶる)
Schubert: Winterreise, D 911: 4. Erstarrung
シューベルト:『冬の旅』~氷結
Peter Schreier(T)
Christoph Eschenbach(P)

32:48-34:23 (インタビューに演奏がかぶる。抜粋)
Bach: Matthäus-Passion, BWV 244: Ich will bei meinem Jesu wachen
バッハ:『マタイ受難曲』~私はイエスのそばで目覚めていよう
テノール&合唱
Peter Schreier(T)

35:52-37:51 (インタビューに演奏がかぶる。抜粋)
Mozart: Haffner-Sinfonie, KV. 385
モーツァルト:ハフナー交響曲より
Peter Schreier(C)

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エリー・アーメリングが歌うモーツァルト『コジ・ファン・トゥッテ』抜粋(1958.2.2, Hilversum)

Mozart: "Così fan tutte, KV. 588" excerpts (Hilversum, 1958)

Recording from February 2, 1958 in Hilversum, Netherlands

Elly Ameling(エリー・アーメリング) (Fiordiligi)
Sophia van Sante(ソフィア・ファン・サンテ) (Dorabella)
Simon van der Geest(シモン・ファン・デア・ヘースト) (Ferrando)
Jan Derksen(ヤン・デルクセン) (Guglielmo/Don Alfonso)
Netherlands Radio Chamber Orchestra(オランダ放送室内管弦楽団)
Maurits van den Berg(マウリツ・ファン・デン・ベルフ) (C)

I. "Overture(序曲)"   0:00
II. "Ah guarda sorella(4.ねえ見て、妹)"(Fiordiligi/Dorabella)   4:55
III. "Non siate ritrosi(15.恥ずかしがらないで)"(Guglielmo)   9:50
IV. "Temerari.... Come scoglio(13.向こう見ずな人たちね…14.岩のように動かず)"(Fiordiligi)   11:12
V. "Soave sia il vento(10.風は優しく、波は穏やかに)"(Fiordiligi/Dorabella/Don Alfonso)   17:00
VI. "Un aura amorosa(17.愛の吐息)"(Ferrando)   19:53
VII. "Ah scostati.... Smanie implacabili(10.あっち行って!…11.耐えがたい不安が)"(Dorabella)   24:04
VIII. "Fra gli amplessi(29.もうすこしすれば, いとしい婚約者の)"(Fiordiligi/Ferrando)   27:32

オランダのヒルファスムで1958年におそらく放送録音として収録されたモーツァルト『コジ・ファン・トゥッテ KV. 588』の抜粋がアップされていました。
ここで注目すべきなのがフィオルディリージ役のエリー・アーメリングです。
1972年のエド・ドゥ・ヴァールト指揮のよるモーツァルト・アリア集では"Temerari.... Come scoglio"を録音していますが、全曲盤のスタジオ録音に参加することはありませんでした。
1958年Hilversumでの録音が演奏会形式だったのか、それともオペラとして上演されたのかは分かりませんが、おそらく前者だったのではないかと想像しています。
彼女の75歳記念のCD(75 jaar)にIVとVIIIは収録されており、バリトンのヤン・デルクセンの80歳記念CDにはVが収録されています。
ここでアーメリングはII,IV,V,VIII番目の4曲を歌っています。
1933.2.8生まれのアーメリングにとって数日後に25歳を迎えるという若かりし頃の録音ということになります。
すでにテクニック的には完成されており、声もディクションも完璧で、すでに非凡さがはっきり分かります。
ぜひお聞き下さい!

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ヘルマン・プライ出演のグルックの歌劇『メルランの島または逆世界(Merlins Insel oder Die verkehrte Welt)』(1958年)

Gluck: "Merlins Insel oder Die verkehrte Welt"
グルック:歌劇『メルランの島または逆世界』

"Merlin's Island, or the World Upended", a comic opera (sung/spoken in German) conducted by Michael Gielen and broadcast over West German radio in 1958.

Merlin - Tom Brand
Argentine - Mimi Coertse
Diamantine - Dorothea Siebert
Hanif - Theo Altmeyer
Pierrot - Benno Kusch
Scapin - Hermann Prey
Philosopher - Helmut Krebs
Monseur de la Candeur - Martin Vantin
Hippocratine - Hannah Ludwig
Chevalier de Catonville - Peter Witsch
Monsieur Prudhomme - Heiner Horn
Speaker - Hilde Mikolic, Peter René Körner

Cologne Radio Symphony Orchestra
Michael Gielen, conductor

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1時間弱の台詞(男女のナレーターによる)と音楽によるグルックのオペラ『メルランの島または逆世界(Merlins Insel oder Die verkehrte Welt)』の音源がアップされていましたのでシェアしたいと思います。
1958年の放送録音とのことです。ドイツ語による歌唱です。

このオペラのあらすじは、アーメリングのディスコグラフィー・サイトを作っておられるSandmanさんが書いてくださっています(Vocal scoreの記述を訳されたのだと思われます。Sandmanさんに感謝いたします)。
 https://abendrot.at.webry.info/201412/article_5.html

ヘルマン・プライ(スカパン役)の歌声は6:10から聴けます(私の耳が間違っていなければ)。
あらすじによると、スカパン役は島に打ち上げられた遭難者という設定のようで、オペラの中で重要な役割を与えられているように思えます。

30歳直前のプライの美声を味わってみてください。
オペラ自身も肩のこらない楽しい内容のように感じられます。
プライがお好きな方には興味があるのではないでしょうか。
ぜひお聞き下さい。

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ブラームス(Brahms)「夏の夕べ(Sommerabend)」を聞く

Sommerabend, Op. 85 No. 1
 夏の夕べ

Dämmernd liegt der Sommerabend
Über Wald und grünen Wiesen;
Goldner Mond, im blauen Himmel,
Strahlt herunter, duftig labend.
 たそがれつつ、夏の夕べが
 森や緑の草地の上に横たわる。
 黄金の月は、青い空にかかり、
 輝き照らす、薄暗さに活力を取り戻して。

An dem Bache zirpt die Grille,
Und es regt sich in dem Wasser,
Und der Wandrer hört ein Plätschern,
Und ein Atmen in der Stille.
 小川のほとりでコオロギが鳴き、
 水中には動くものがある。
 旅人はぱちゃぱちゃいう水の音と、
 静寂の中の息遣いを聞く。

Dorten, an dem Bach alleine,
Badet sich die schöne Elfe;
Arm und Nacken, weiß und lieblich,
Schimmern in dem Mondenscheine.
 あそこの、小川のほとりで一人
 水浴びをしているのは美しい妖精だ。
 腕やうなじは、白く愛らしく、
 月光の中で光っている。

詩:Heinrich Heine (1797-1856)
曲:Johannes Brahms (1833-1897)

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ハインリヒ・ハイネの詩集『歌の本(Buch der Lieder)』の中の「帰郷(Die Heimkehr)」から85番目の詩にブラームスが作曲した歌曲が「夏の夕べ(Sommerabend)」です。4行からなる節が3節で出来ています。各節1行目と4行目が脚韻を踏み、2行目と3行目は母音のみを合わせています(最終節には該当しませんが)。第1節では森、草地、空を眺め、第2節で小川に移り、視点がぐっとフォーカスされます。そしてここで視覚に加えて聴覚が描かれます。"Plätschern(ぱちゃぱちゃと立つ水音)"という単語の響きは本当に意味のとおりに音を模しているような単語ですね。最終節では水浴びをする白いうなじの妖精が登場し、幻想的な風景が描かれています。

ブラームスの音楽は、4/4拍子、変ロ長調、Langsam(ゆっくりと)。A-B-Aの形式。
第1節(A)の歌唱旋律は下降音型が基本で、黄昏の光が降り注ぎ、月があらわれて輝き照らす様を暗示しているかのような美しいメロディーラインです。
ピアノは左手が歌声に呼応した旋律を奏で、右手は後打ちでリズムを刻みます。
第2節の部分(B)でぐっと焦点が近くなり、旅人が聞き、感じたことが歌われます。
音楽もここで何かを予感するような不安な雰囲気になります。
最終節(A)で再び第1節と同じ歌唱旋律が戻ってきますが、ピアノパートには変化があります。
第1節の時と異なり、左手だけでなく、両手で分散和音(三連符も登場する)とメロディアスな進行を奏で、第1節におけるリズムの刻みはここにはありません。テキストに呼応して第1節の"静"から妖精の登場する第3節の"動"にピアノパートを変化させているといえるのではないでしょうか。

ちなみに、ハイネの「帰郷」の次に置かれた詩(86番)にもブラームスは作曲しており、作品番号も「夏の夕べ」の次に置いています。この次の歌曲「月光(Mondenschein, Op. 85 No. 2)」では「夏の夕べ」のAと同じメロディーを途中で再び使用しています。この2曲はブラームスにとっては切り離せないセットとして想定していたのではないかと思います。

Florian Friedrichの詩の朗読

Margaret Price(S), James Lockhart(P)

マーガレット・プライスの弧を描くようなレガートの美しさにうっとり聞き惚れてしまいます。

Hans Hotter(BSBR), Gerald Moore(P)

この録音でこの曲をはじめて聞いただけに個人的に思い入れが深いです。ハンス・ホッターの深々とした歌声はすべてを包み込んでしまうような器の大きさを感じさせます。ムーアの演奏もホッターと共通する温かみがあります。

Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Jörg Demus(P) (Feb. 1957)

F=ディースカウはこのテキストの情景を目に見えるように鮮やかに描いています。デームスも歌に美しく呼応しています。

Deon van der Walt(T), Charles Spencer(P) (1995)

ファン・デア・ヴァルトの美声テノールで聞くと、爽やかな風が吹き渡るかのようです。スペンサーは後奏で思いのこもった演奏を聞かせています。

Matthias Goerne(BR), Christoph Eschenbach(P) (2016)

マティアス・ゲルネがゆったりとしたテンポで抑制した声で歌います。

Sommerabend in B flat - piano accompaniment only

ピアノパートのみです(楽譜など映像はありません)。ちょうどいいテンポで美しい演奏です。

Mischa Maisky(VLC), Pavel Gililov(P)

マイスキーがテキストを語っているかのように美しくチェロで歌っています。

出版時に「夏の夕べ」の次に置かれた「月光(Mondenschein, Op. 85 No. 2)」(「夏の夕べ」と同じメロディーが出てきます)
Hans Hotter(BSBR), Gerald Moore(P)

Mondenschein, Op. 85 No. 2
 月光

Nacht liegt auf den fremden Wegen,
Krankes Herz und müde Glieder; -
Ach, da fließt, wie stiller Segen,
Süßer Mond, dein Licht hernieder;
 夜が見知らぬ道々に横たわる、
 病んだ心、疲れた手足よ。
 ああ、そこに降り注ぐのは、静かな祝福のように、
 甘美な月よ、おまえの光だ。

Süßer Mond, mit deinen Strahlen
Scheuchest du das nächt'ge Grauen;
Es zerrinnen meine Qualen,
Und die Augen übertauen.
 甘美な月よ、おまえの光で
 夜の恐怖を追い払ってくれる。
 私の苦痛は溶けて消え、
 瞳から涙があふれるのだ。

詩:Heinrich Heine (1797-1856)
曲:Johannes Brahms (1833-1897)

スイスの作曲家シェック(Othmar Schoeck: 1886–1957)も「夏の夕べ」の詩に作曲しています。歌声部は比較的素朴ですが、ピアノパートがかなり描写的です。
Othmar Schoeck: Sommerabend, Op. 4-1
Juliane Banse(S), Wolfram Rieger(P)

Julius Burger(1897-1995)というヴィーン出身のアメリカの作曲家が同じテキストに作曲した珍しい歌曲です。第2節で突然激流が渦巻くかのような激しい表情に変化しますが、他は概して素朴なメロディです。
Julius Burger: Dämmernd liegt der Sommerabend
Ryan Hugh Ross(BR), Nicola Rose(P)

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エリー・アーメリングのYouTubeチャンネルにアルバン・ベルク「ワイン」登場!

エリー・アーメリングが今年に入ってYouTubeチャンネルを作り
演奏のヒントを語る動画を出してくれていますが、
最近、アルバン・ベルクのコンサート・アリア「ワイン(ぶどう酒)」がアップされました!
1973年12月2日コンセルトヘボウでのライヴ録音で
すでに商品化もされているのですが、
演奏に合わせて楽譜が表示されているので
ぜひ聞いてみて下さい。

私が過去にこの演奏について書いた記事(歌詞対訳も掲載しています)は
 こちら
です。

ベルク/コンサート・アリア「ワイン」
Alban Berg: Der Wein
Elly Ameling(S)
Royal Concertgebouw Orchestra
Erich Leinsdorf(C)
1973年12月2日コンセルトヘボウでのライヴ録音

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