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シューベルト/シラーの詩による「春に寄せて(An den Frühling)」を聞く

An den Frühling, D 283 (1815); D 587 (1817)
 春に寄せて

Willkommen schöner Jüngling!
Du Wonne der Natur!
Mit deinem Blumenkörbchen
Willkommen auf der Flur!
 ようこそ美しい若者よ!
 きみは自然の喜びだ!
 きみの花籠を
 野原で待ち望んでいたよ!

Ei! ei! Da bist ja wieder!
Und bist so lieb und schön!
Und freun wir uns so herzlich,
Entgegen dir zu gehn.
 やあ、やあ、また来てくれたんだね!
 きみはとても愛らしく美しい!
 そしてぼくらはこんなに心から喜んでいるのだ、
 きみのもとに向かうことを。

Denkst auch noch an mein Mädchen?
Ei lieber denke doch!
Dort liebte mich das Mädchen,
Und 's Mädchen liebt mich noch!
 ぼくの彼女のこともまだ思ってくれているかい?
 いやむしろ思っていておくれ!
 あそこで娘はぼくを愛していたけれど
 まだぼくのことを愛し続けているんだ!

Fürs Mädchen manches Blümchen
Erbat ich mir von dir -
Ich komm' und bitte wieder,
Und du? - du gibst es mir?
 あの娘のためにいくつもの花々を
 きみに頼んだものだったね。
 ぼくはまたお願いしに来たんだ。
 それできみは?きみはぼくに花々をくれるのかい?

詩:Friedrich von Schiller (1759 - 1805)
曲:Franz Peter Schubert (1797 - 1828)

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シューベルトは春をテーマにした歌曲を沢山作りましたが、このシラーのテキストによる作品も三回に渡って作曲しました。

・D283:1815年9月6日作曲。独唱とピアノ。Mässig, heiter。2節(詩の2つ分を1節にまとめて)の有節形式
・D338:1816年?作曲。テノール二声+バス二声。Etwas geschwind。4節(詩の節と音楽の節が同じ)の有節形式
・D587:1815年8月(第1稿:旧番号D245),1817年10月(第2稿)作曲。独唱とピアノ。両方の稿ともEtwas geschwind。第1稿は3節(詩の2つ分を1節にまとめて)の有節形式(第3節は第1節を繰り返す)。第2稿は2節の有節形式

●D283
ヘルマン・プライ(BR)&カール・エンゲル(P)

Hermann Prey · Karl Engel
プライは私の知る限りD587を録音しませんでしたが、一方F=ディースカウはD283を録音しませんでした。二人の個性がより引き立つ方を選んだということなのかもしれませんね。
プライの温かみのある美声は聞いていて本当に心地よいです。

●D283
ヘルマン・プライ(BR)&ジェラルド・ムーア(P)

Hermann Prey
Gerald Moore
Studio recording, Berlin-Zehlendorf, 16-18.I.1960
上記のエンゲル盤の前にプライはムーアとも録音していました。こちらは若い頃の甘美な声に魅了されますね。

●D338
ロバート・ショー・チェンバー・シンガーズ

Robert Shaw Chamber Singers conducted by Robert Shaw
男声四部合唱(無伴奏)。各節の最後にラ・ラ(la la)という部分を加えています。合唱ならではの各声部の呼応する様が爽やかな作品です。

●D587 (1st version)
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR)&ジェラルド・ムーア(P)

Dietrich Fischer-Dieskau--Baritone
Gerald Moore--Piano
1970
F=ディースカウが第2稿ではなく、あえてより素朴な第1稿を選んで録音したのが興味深いです。いつもながら説得力のある歌唱です。

●D587 (2nd version)
ヴォルフガング・ホルツマイア(BR)&ジェラール・ヴィス(P)

Wolfgang Holzmair & Gérard Wyss
ホルツマイアの柔らかい声が春の微風のように爽やかです。

●D587 (2nd version)
エリーザベト・シュヴァルツコプフ(S)&ミヒャエル・ラウハイゼン(P)

Elisabeth Schwarzkopf
Michael Raucheisen
Studio recording, 1940s
シュヴァルツコプフが若かりし頃はこの曲を歌っていたのですね。香り立つ気品が感じられる歌唱です。

●D587
ランヒル・クリスティナ・モッツフェルト(S)&トレヴィジ・ギター・トリオ

Ragnhild Kristina Motzfeldt · Trevigi Guitar Trio
ギター伴奏も味わいがあっていいですね。サロンで聞いているような雰囲気です。歌手はノルウェー出身のようです。

※英国のピアニスト、グレアム・ジョンソンによるハイペリオン・シューベルト歌曲全集では、D283をエリー・アーメリング、D587をジャネット・ベイカーが録音しています。
以下のリンク先で1分ほど試聴出来ます。

●D283: Elly Ameling(S), Graham Johnson(P)
https://www.hyperion-records.co.uk/dw.asp?dc=W2260_GBAJY9000716

●D587 (2nd version): Janet Baker(MS), Graham Johnson(P)
https://www.hyperion-records.co.uk/dw.asp?dc=W2417_GBAJY8800116

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コメント

フランツさん、こんにちは。

様々な春を感じさせてくれた聴き比べでした。
プライさんが二種あってテンションが上がりました\(^^)/

1970年代の彼の声には抗いがたい魔力があります。声そのものが芸術だと思っています!
このように民謡を思わせる曲を、草や土の匂いを残したまま香り高く歌える歌手なんだと、改めて思いました。
陽だまりの中にいるような演奏でした(*^^*)

若き日のプライさんは、あふれる思いを伸びやかな声に乗せて、まっすぐに伝えてきます。
そのあまりの初々しいまっすぐさにドキリとすることしばしばです。声も甘美ですが、歌い口も甘美ですよね。ちなみに、若き日のこの曲は、私のプライライブラリーにはないようです((T_T))

ディースカウさんの、言葉が立つ歯切れの良さは、小気味良くさえありますね。
思うに、プライさんがフレーズの中になめらかに言葉を入れて行くとしたら、ディースカウさんは、フレーズの上に言葉を効かせて行くといった感じでしょうか。

ホルツマイアーは、いつもながらのソフトボイスですね。おっしゃる通り、そよ風が目の前を通って行くかのようでした。

シュヴルツコップのこんなにチャーミングな歌は初めて聴きました。古き良き時代のモノクロ映画を思わせる演奏でした。

モルツァフェルトは初めて聴きました。ギターに乗って、少しおっとり歌われるこの曲を聴いていると、原っぱに寝転んで雲を眺めているような気分になりました。
ギター、いいですね!

アメリングとベイカーは、ハイベリオン全集から取り出して聴いてみます。最近蓋を開けていないものですから(^-^;

聴き比べは本当にたのしいですね。大変だと思いますが、次回も楽しみにしてます(*^^*)
いつもありがとうございます♪

投稿: 真子 | 2020年5月 7日 (木曜日) 17時29分

真子さん、こんにちは。

聴き比べの詳細なコメントを有難うございます!
毎回感想をいただけるので感謝しています^^

プライは2回録音していますが、1960年のムーアとの録音は旧EMI盤(今はWarnerに吸収されてしまいましたが)ですので、真子さんもお持ちではないかと思います。
以下のリンク先でご確認ください。

https://www.amazon.co.jp/Icon-Hermann-Prey-Life-Song/dp/B004HF0PBI

https://www.amazon.co.jp/%E3%82%B7%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%81%A8%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%86%E3%81%AE%E8%A9%A9%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88%E6%AD%8C%E6%9B%B2%E9%9B%86-%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%A4-%E3%83%98%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%83%B3/dp/B000GUK6K8

「抗いがたい魔力」をもってプライは真子さんを惹きつけてきたのですね。
分かります。
土や草の匂いを彼特有の温かいベールに包んで芸術に昇華してしまうということですね。
ドイツリートはもともと地方の音楽なので、民謡の香りは重要な要素なんだと思います。
その点プライは持って生まれた声の資質も相まって、土臭さと香り高さを両立することが出来るのだと思います。

F=ディースカウは言葉の切れがすごいですよね。彼は幼少の頃から両親にあきれられるほど朗読が好きだったそうです。
その頃から自然と語るということが訓練されてきたのでしょうね。

ホルツマイアのソフトな歌唱もシュヴァルツコプフの往年のモノクロな感じもおっしゃることがすごく共感できます。

ギター伴奏の歌唱は本当にのんびりとくつろいだ感じの歌声が魅力的ですね。

真子さんもハイペリオンのシューベルト全集のCDをお持ちなのですね。
アーメリングとベイカーの歌唱もチャーミングですのでお時間のある時にでも聞いてみて下さいね。

毎回素敵なコメントを有難うございます。
とても励みになります!

投稿: フランツ | 2020年5月 8日 (金曜日) 19時45分

フランツさん、こんばんは。

CDのご紹介ありがとうございます。単独のもイコンのボックスも持っています(^^)
60年代のものは、ビアニストがカール・エンゲルと勘違いしていました。お騒がせしました(^-^;(^-^;

私はプライさんの歌を聴いていて、恐らく、リート観賞としては邪道なのでしょうが、彼の声の「魔の力」にのめり込んでしまう瞬間があります。
「声の海」に身と心を浸している状態です。

〉F=ディースカウは言葉の切れがすごいですよね。彼は幼少の頃から両親にあきれられるほど朗読が好きだったそうです。
これをお聞きし、ストンと落ちました。「語る」ことが、氏の中で血肉となっており、もはや切り離すことのできないものになっていたのですね!
もはやそれは、本能の発露に近いものなのかもしれませんね。
いいお話をありがとうございました(^^)

ハイペリオン聴きましたよ♪
アメリングはまさに、澄んだ「春の声」ですね! こういうチャーミングな歌を、彼女ほどチャーミングに清々しく歌える歌手はいないと思います(チャーミングだけどあざとくないんですよね)。

ベイカーは、ソプラノよりの明るい響きで、外に向かった、やはり春の喜びを味わわせてくれる演奏でした。チャーミングなメゾソプラノは珍しいかもしれませんね。

聴き比べは本当に楽しいです。
昔はよく、家中のCDを出して来て同じ曲をカセットに入れて楽しんでいました。
でも、こうして感想を共有できますと、何倍も楽しいです(*^^*)

ハイペリオンですが、自分で歌手を選んで聴くのではなく、言葉は悪いですが「あてがいぶち的」に聴くのもいいものですね。


投稿: 真子 | 2020年5月10日 (日曜日) 17時59分

真子さん、こんにちは。

やはりプライ盤、お持ちでしたね。
ムーアファンの私は、プライとムーアのコンビ盤は思い入れが強いので、真子さんもきっとお持ちだと思っていました。

>リート観賞としては邪道なのでしょうが、...「声の海」に身と心を浸している状態です。

いえいえ、全く邪道ではないと思いますよ。
リートもオペラも、声の魅力に惹きつけられるという点では同じだと思います。
好きな歌手のアルバムを聴く時は、私も小難しいことは考えずにひたすら声を楽しみます。
でもそれは基本がしっかりしているからこそでもありますけれどね。
プライは生で聞いた時に、体から朗々と響き渡る声の帯がどこまでも豊かだったことが強く印象に残っています。
体から目には見えない声のかたまりがあふれるように湧き出てくるという感じでしょうか。
あれは生で聞いてはじめて感じた体験でした。
未だに忘れられません。
リートは言葉が確かに大切ですが、それもしっかり響かせつつ、声の響きの中に包まれるのは幸せなことだと思います。

F=ディースカウの時代でもすでに朗読の文化は若干衰退していたのかもしれませんね。
そういう中で彼が夢中で本を朗読するものだから親御さんもびっくりしたのでしょう。

アーメリングとベイカーのご感想を有難うございます!
嬉しく拝見しました。

アーメリングのチャーミングさに触れていただき、うれしく思います。
本当にこういう類の曲を歌ったら、うるさ型の批評家をも黙らせてしまうほどの普遍的な素晴らしさがあると思います。
あざとさを感じないのは彼女の歌に行き過ぎないコントロールが常に感じられることも無関係ではないと思います。
過度にならないちょうど良い程度をわきまえた歌というのでしょうか、そこも彼女の美質の一つだと思います。

ベイカーは温かみがあって明るくてすがすがしいメゾソプラノですよね。
彼女たちをそれぞれの曲にあてがったグレアム・ジョンソンの確かさも素晴らしいと思います。

ハイペリオンの全集はいろいろな聞き方が可能だと思います。

今回も聞き比べを真子さんと共有できて楽しい時間でした。
いつも有難うございます(^^)

投稿: フランツ | 2020年5月12日 (火曜日) 19時36分

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