ヘルムート・ドイチュ(Helmut Deutsch)の自伝 "Gesang auf Händen tragen: Mein Leben als Liedbegleiter"
かつて鮫島有美子さんと日本歌曲の膨大なアンソロジーを録音し、ヘルマン・プライとは来日公演や録音でしばしば共演を重ねてきた
名歌曲ピアニストのヘルムート・ドイチュ(Helmut Deutsch)がドイツで自伝を出版しました。
彼は以前日本の出版社の依頼で音楽雑誌に伴奏者としてのエッセーを連載し(訳はもちろん鮫島さん)、後にそれを一冊の本(『伴奏の芸術 ドイツリートの魅力』)にまとめたことがありました。
その時に、ジェラルド・ムーア以来久しぶりに伴奏の極意を論じ、共演した歌手たちのエピソードも織り交ぜて肩のこらない文体でリートファンを楽しませてくれたものでした。
それから年月が流れ、ドイチュは今やヨーロッパで最も活躍している歌曲ピアニストとして認識されています。
1945年12月生まれとのことですので、2019年6月現在ですでに73歳です。
ジェラルド・ムーアは67歳でコンサートから引退しました。
ドイチュはまだまだ現役ですが、あまりにも盛んに活動しているので70代になっていたとは全く気づきませんでした。
今年出版した彼の自伝のタイトルは"Gesang auf Händen tragen: Mein Leben als Liedbegleiter"です。
訳してみると『歌を両手で届けて:歌曲伴奏者としてのわが生涯』という感じでしょうか。
先日amazonで注文した本が届き、ぱらぱらとめくってみました。223頁からなるずっしりとした本です。
目次を見ると、彼の共演者たちの名前がそれぞれの章の見出しになっています。
序文はなんとアルフレート・ブレンデル(Alfred Brendel)!
見出しを日本語に訳してみます。
・アルフレート・ブレンデルの序文
・プロローグ
・ヘルマン・プライ。最初のコンサート
・「...そして至福の夢を見る」日本
・「我々はなんて夢のような仕事に就いたんだ!」ヘルマン・プライとの数年間
・カラヤンでさえ笑わずにはいられない。青少年時代
・適切なパートナー関係。歌曲伴奏者としての最初の数年間
・ヘルマン・プライ。冬の旅とちょっとしたお話
・鮫島有美子
・ヨーゼフ・プロチュカ
・オーラフ・ベーア
・ブリギッテ・ファスベンダー
・練習
・歌手との仕事
・ボー・スコウフス
・ベルント・ヴァイクル
・ペーター・シュライアー
・トーマス・クヴァストフ
・授業
・ユリアーネ・バンゼ
・ディートリヒ・ヘンシェル
・ヨナス・カウフマン
・シュテファニー・イラーニ
・マウロ・ペーター
・クラヴィーア(Klavier)とフリューゲル(Flügel)について
・コンサートの当日
・コンサート
・譜めくり
・コンサート終了後
・バーバラ・ボニー
・アンゲリカ・キルヒシュラーガー
・プログラム
・アンドレアス・シュミット
・レコーディング
・グレイス・バンブリー
・マティアス・ゲルネ
・評論
・作品への忠誠と自由
・ミヒャエル・フォレ
・ディアナ・ダムラウ
・コンクール
・ピョートル・ベチャワ
・カミラ・ニルンド
・歌手と伴奏者
・リーダーアーベント(歌曲の夕べ)。過去と将来
・エピローグ
・共演した歌手たち
・謝辞
・生い立ち
・ディスコグラフィー(抜粋)
・人名索引
・写真の出典
・文献
途中で16頁にも及ぶ歌手たちとの貴重な写真があり、ヘルムート・ドイチュの人望が伺えます。
中には1965年ザルツブルクでのカラヤン、ヤノヴィッツとのハイドン「天地創造」のリハーサル写真まであります。
共演した歌手たちの膨大なリストは、現役の殆どのリート歌手たちから引く手あまただったことが分かります。
ドイツ語の書籍なので、簡単には読み進められませんが、時間を見つけて少しずつつまみ読みしたいと思います。
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