ブラームス/「目隠し鬼ごっこ(Blinde Kuh, Op. 58-1)」を聴く
Blinde Kuh, Op. 58, No. 1
目隠し鬼ごっこ
Im Finstern geh' ich suchen,
Mein Kind, wo steckst du wohl?
Ach, sie versteckt sich immer,
Daß ich verschmachten soll!
暗闇の中、ぼくは探しに行こう、
いとしい子よ、きみはどこに隠れているんだい?
ああ、彼女はいつも隠れてしまうんだ、
ぼくを苦しませようとしてね。
Im Finstern geh' ich suchen,
Mein Kind, wo steckst du wohl?
Ich, der den Ort nicht finde,
Ich irr' im Kreis umher!
暗闇の中、ぼくは探しに行こう、
いとしい子よ、きみはどこに隠れているんだい?
ぼくは、居場所を見つけられずに、
ぐるぐる回ってさまようのさ!
Wer um dich stirbt,
Der hat keine Ruh'!
Kindchen erbarm dich,
Und komm herzu!
Ja, komm herzu,
Herzu, herzu!
きみを思って焦がれ死ぬ奴に
安らぎはない!
娘さん、憐れんでおくれ、
こっちへ来てくれよ!
そう、こっちへおいで、
こっちへ、こっちへ!
詩:August Kopisch (1799-1853)
曲:Johannes Brahms (1833-1897)
-------------
ブラームスは謹厳実直なイメージが付いていますが、歌曲においてとても親しみやすい作品も書いています。その一つがこの「目隠し鬼ごっこ」です。このコーピッシュのテキストでは、主人公の男の子が暗闇に隠れている好きな女の子に向けて、「どこにいるんだい、ここにおいで」と語りかけるという内容になっています。ピアノパートのせわしなく動く様がその様をうまく描写して微笑ましいですね。
目隠し鬼ごっこのかわいらしい映像がありましたので貼っておきます。
Wir spielen blinde Kuh(ぼくらは目隠し鬼ごっこをしているよ)
エリーザベト・シュヴァルツコプフ(S) & ジェフリー・パーソンズ(P)
Elisabeth Schwarzkopf(S) & Geoffrey Parsons(P)
シュヴァルツコプフがDECCAの為に録音した最後のスタジオ録音より。この録音で初めてこの曲を聴いたので、思い出深いです。シュヴァルツコプフの「Komm herzu(おいで)」という表情の巧みさ、パーソンズの見事なまでの盛り上げ方等、大好きな録音です。
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR) & ダニエル・バレンボイム(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR) & Daniel Barenboim(P)
F=ディースカウはさすがにうまいですね。巧者バレンボイムはノリノリですが、ブラームスなのでもう少しスタイリッシュな方が個人的には好みです。
レベッカ・シュテーア(S) & トビアス・ハルトリープ(P)
Rebekka Stöhr(S) & Tobias Hartlieb(P)
シュテーアの素直な歌いぶりは好感がもてます。ピアノのハルトリープはノンレガートで見事に描写しています。
ヘルムート・クレープス(T) & ジェルジ・シェベーク(P)
Helmut Krebs(T) & György Sebők(P)
クレープスの爽やかなテノールで聞くのもいいですね。シュタルケルやグリュミオーといった著名な弦楽器奏者の共演者として知られているシェベークが歌曲を演奏している貴重な録音で、とてもいい演奏です。
エリーザベト・シューマン(S) & レオ・ローゼネク(P)
Elisabeth Schumann(S) & Leo Rosenek(P)
往年の名ソプラノ、E.シューマンのチャーミングな語り口も魅力的です。
| 固定リンク | 0
« エリー・アーメリング(Elly Ameling)のインタビュー(nrc.nl、2019.5.15付、Mischa Spelによるインタビュー) | トップページ | シューベルトの「ただ憧れを知る人だけが(Nur wer die Sehnsucht kennt)」の6種類の曲を聞く »
「音楽」カテゴリの記事
「詩」カテゴリの記事
「ブラームス」カテゴリの記事
- ブラームス:リートとゲザングOp.32(Brahms: Lieder und Gesänge, Op. 32)全曲(2023.12.08)
- ブラームス/「なんとあなたは、僕の女王よ(Wie bist du, meine Königin, Op. 32, No. 9)」を聞く(2023.12.02)
- ブラームス/「こうして僕らは立っている、僕と僕の喜びである彼女は(So stehn wir, ich und meine Weide, Op. 32, No. 8)」を聞く(2023.11.25)
- ブラームス/「きみは言う、僕が思い違いをしていたと(Du sprichst, daß ich mich täuschte, Op. 32, No. 6)」を聞く(2023.11.11)
コメント
フランツさん、こんにちは。
この曲は初めて聞きました。
ピアノパート部は、糸を紡ぐグレートヒェンを思い起こしました。
歯切れのいいディースカウさん、爽快ですね。
テノールで聞くと、この曲の持ち味が出てくるように思いました。詩からすると、少年ぽい気がしたものですから。
シュワルツコップやディースカウさんの上手さも魅力ですが、
シュテーアの真っ直ぐな歌いぶりにも惹かれます。
E・シューマンは本当にチャーミングですね♪ また違った意味で、この曲の良さを伝えてくれているように思いました。
プライさんなら、どんなふうに歌ったかなあ。
投稿: 真子 | 2019年5月23日 (木曜日) 18時07分
真子さん、こんにちは。
真子さんにとって新しい曲をご紹介出来て嬉しいです😊
プライもアーメリングもこの曲は録音していませんよね。ただ、声は脳裏に焼き付いているので、彼らが歌っているところを想像するのも面白いと思います。
決して知られた作品ではないですが、まだまだ眠ったままの宝石は沢山あると思います。そういう曲を少しでもこちらでご紹介出来たらと思っています。
ピアノの忙しない動きは確かに「グレートヒェン」を思わせるところがありますよね。ピアニストのテクニックが如実にあらわれると思います。
おっしゃるように低声よりもテノールで歌うと子供の無邪気さがより表現しやすいでしょうね。
シュテーアはブラームス以外では聞いたことのない歌手ですが、素直に丁寧に歌っていて好感が持てますよね。
E.シューマンは本当に表情豊かな歌を歌いますね!チャーミングという言葉がぴったりの名歌手だと思います。
今回も丁寧にコメント下さり有難うございました(^^)
投稿: フランツ | 2019年5月24日 (金曜日) 12時48分