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アーメリングと共演した2人の指揮者

エリー・アーメリングが共演したことのある指揮者2人が最近相次いで亡くなりました。
アンドレ・プレヴィン、ミヒャエル・ギーレンがその2人です。

指揮者には疎い私ですが、アーメリングと共演したことのある指揮者が亡くなるのはやはり寂しいものです。
プレヴィンはアーメリングの他にも多くの歌手たちと共演し、ピアニストとしてもジャネット・ベイカーなどと共演していました。
ジャズピアニスト、作曲家、指揮者など、多くの才能をもった人だったようです。
●アンドレ・プレヴィン(André Previn: 1929年4月6日 - 2019年2月28日)
アーメリングの歌唱によるマーラーの交響曲第4番
Elly Ameling; "Sehr behaglich"; (Das himmlische Leben); Symphony No. 4 in G; Gustav Mahler
マーラーの交響曲第4番をアーメリングは2回商業録音していますが、これはその2回目(1978年)。プレヴィンとの録音はこれが唯一と思われます。
ジャネット・ベイカー(MS)の共演者としてブラームスの「4つの厳粛な歌」を演奏しているプレヴィン
Janet Baker: Vier ernste Gesänge [Previn] by Brahms
CDでこの録音を見つけるまで、プレヴィンが歌曲の伴奏を弾いているとは思っていなかったので、驚きました。もちろんピアニストとしても著名であることは知っていたのですが。
●ミヒャエル・ギーレン(Michael Gielen: 1927年7月20日 - 2019年3月8日)
1973年5~6月にオランダ各地でモーツァルトの「イドメネオ」のイリア役でアーメリングがオペラデビューした際の指揮者がギーレンでした。
 詳細はこちら
アーメリングの75歳記念ライヴ録音集「75 jaar」にこのころの録音からアリアが収録されています。
下記のリンク先のトラック3と4の左側の▶印をクリックすると、少し試聴出来ます。
プレヴィン、ギーレンのご冥福をお祈りいたします。

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歌曲のピアノパート聞き比べ(シューマン「昔の嫌な歌(Die alten, bösen Lieder)」)

これまで多くの歌曲の聞き比べをしてきましたが、どちらかというと歌手の比較が中心になっていた感があります。
歌とピアノの両者を聞いているつもりでいても、言葉で評価するのはやはり歌の方が容易であるように思います。
今回は、シューマンの歌曲集「詩人の恋」の終曲の長大なピアノ後奏を聞き比べたいと思います。
ちなみにハイネのテキストは以下のとおりです。


「詩人の恋(Dichterliebe)」第16曲:昔の嫌な歌

Die alten, bösen Lieder,
Die Träume bös' und arg,
Die laßt uns jetzt begraben;
Holt einen großen Sarg.
 昔の嫌な歌、
 嫌なひどい夢、
 そいつらを今こそ葬ってしまおう、
 でっかい棺をもってきておくれ。


Hinein leg' ich gar manches,
Doch sag' ich noch nicht, was;
Der Sarg muß sein noch größer,
Wie's Heidelberger Faß.
 その中にたくさん詰め込むのだ、
 だが何を入れるのかはまだ言うまい。
 棺はもっとでかくなくては、
 ハイデルベルクの樽よりもでかく。


Und holt eine Totenbahre
Und Bretter fest und dick;
Auch muß sie sein noch länger,
Als wie zu Mainz die Brück'.
 それから棺台と、
 頑丈な厚みのある板を持ってきてくれ。
 棺台ももっと長くなくちゃならない、
 マインツの橋よりも長く。


Und holt mir auch zwölf Riesen,
Die müssen noch stärker sein
Als wie der starke Christoph
Im Dom zu Köln am Rhein.
 それと十二人の巨人も連れてきてくれ、
 そいつらはもっと強くなければ駄目だ、
 ライン川のほとりのケルン大聖堂にいる
 力持ちのクリストフォロスよりもね。


Die sollen den Sarg forttragen
Und senken ins Meer hinab;
Denn solchem großen Sarge
Gebührt ein großes Grab.
 そいつらに棺を運ばせて
 海に沈めさせるのだ。
 なぜならこんなに大きな棺には
 大きい墓を用意するのが当然だから。


Wißt ihr, warum der Sarg wohl
So groß und schwer mag sein?
Ich senkt' auch meine Liebe
Und meinen Schmerz hinein.
 分かるかい、どうしてこの棺が
 こんなに大きくて重たいのかを?
 ぼくの恋も
 苦しみも中に沈めてしまったからさ。


詩:Heinrich Heine (1797-1856)
曲:Robert Schumann (1810-1856)

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ジェフリー・パーソンズ(P) (& オーラフ・ベーア(BR))
Geoffrey Parsons(P) (& Olaf Bär(BR))
2:44~ パーソンズは常に美しい音を響かせるピアニストでした。EMIの録音の良さもあるのかもしれませんが、ここでも非常に美しいタッチを保ちながら、自然な表情をもって、細部まで神経の行き届いた名演奏を聞かせてくれています。


ヴラジーミル・アシュケナージ(P) (& マティアス・ゲルネ(BR))
Vladimir Ashkenazy(P) (& Matthias Goerne(BR))
2:29~ 各フレーズがしっかりと聞き取れるほどしっかりしていながら、絡み合い、シューマンの音楽の綾を見事に紡いでいて、ただただ脱帽の演奏でした。アシュケナージの技術と音楽性の両方が融合した名演だと思います。


フーベルト・ギーセン(P) (& フリッツ・ヴンダーリヒ(T))
Hubert Giesen(P) (& Fritz Wunderlich(T))
2:36~ ギーセンはアルペッジョの付加やテンポの揺らし方など古き良き時代の巨匠の演奏の趣があって、とても魅力的でした。速めのテンポですが、味わいもあり、独自の魅力を持った演奏だと思います。


クリストフ・エッシェンバハ(P) (& ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR))
Christoph Eschenbach(P) (& Dietrich Fischer-Dieskau(BR))
2:43~ エッシェンバハは繊細このうえない好演です。核心に迫るような深みのあるタッチが素晴らしいです。


ジェラルド・ムーア(P) (& ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR))
Gerald Moore(P) (& Dietrich Fischer-Dieskau(BR))
3:09~ F=ディースカウはムーアと多くの録音を残しましたが、インテンポで演奏する印象が強いせいかシューマンではあまり共演しませんでした。しかし、ここでのフレーズの流れを意識したよく歌う演奏を聴けば、ムーアのシューマン演奏の素晴らしさがよく感じられると思います。


カール・エンゲル(P) (& ヘルマン・プライ(BR))
Karl Engel(P) (& Hermann Prey(BR))
2:57~ 1962年録音。エンゲルは決して派手なことはしていませんが、テンポもちょうどいいぐあいに揺らし、起伏もしっかり付けていて、気持ちいい演奏でした。1か所、出が早い箇所があるのは彼にしては珍しいです。

イェルク・デームス(P) (& ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR))
Jörg Demus(P) (& Dietrich Fischer-Dieskau(BR))
2:58~ デームスにしてはあまりテンポを揺らさず、しかし味わい深い語り口で、美しい表現でした。


ドルトン・ボールドウィン(P) (& ジェラール・スゼー(BR))
Dalton Baldwin(P) (& Gérard Souzay(BR))
3:08~ ボールドウィンは爽快なテンポ設定でくっきりとした明瞭な音を聞かせていながら、シューマネスクな響きも聞かせています。


ノーマン・シェトラー(P) (& ペーター・シュライアー(T))
Norman Shetler(P) (& Peter Schreier(T))
3:27~ シェトラーは微細なレベルでの表情の変化を聴かせ、一音一音を静かに美しく響かせています。


カミロ・ラディケ(P) (& ルネ・パーペ(BS))
Camillo Radicke(P) (& René Pape(BS))
2:44~ 映像で演奏する姿を見ることが出来ます。現役の伴奏者の中でも王道を歩んでいるラディケはちょっとした溜めや表情の付け方が巧妙、かつ自然で、シューマンの音楽の魅力を見事に表現していました。


アーウィン・ゲイジ(P) (& トム・クラウセ(BR))
Irwin Gage(P) (& Tom Krause(BR))
2:41~ たっぷりとした溜めとテンポの揺れ、アルペッジョなどで思い入れたっぷりの演奏です。ゲイジらしい雄弁さが感じられます。


アンナ・カルドナ(P)
Anna Cardona(P)
2:35~ ピアノパートのみの演奏。音量の繊細な加減で聞かせてくれます。

Die-alten-boesen-lieder-excerpt

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エリー・アーメリングのインタビュー動画(2019年5月ゼイスト国際歌曲フェスティヴァル)

オランダのゼイストで行われるリートフェスティヴァル(Internationaal Lied Festival Zeist)についてエリー・アーメリングが語っている動画がアップされています。
鮮やかなブルーのジャケットを着こなして、元気に語っています。
ILFZ Elly Ameling v2
上記の短縮版

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ヴォルフ/スペイン歌曲集全曲コンサート映像(2019年3月8日, Jensen Grand Concert Hall)

ヴォルフの「スペイン歌曲集」は、スペインの詩をもとにハイゼ、ガイベルがドイツ語に訳したテキストにヴォルフが作曲した歌曲集で、最初の10曲が「宗教的歌曲」、その後の34曲が「世俗的歌曲」からなっています。
「イタリア歌曲集」よりも規模が大きく、それゆえに全曲が一晩で演奏されることはなかなかないと思いますが、下記の動画では、全曲が演奏されています。
「イタリア歌曲集」同様、「スペイン歌曲集」でも演奏効果を考慮して、演奏者独自の曲順に並べ替えて演奏されることがありますが、このコンサートでは、ヴォルフのオリジナルの順序で演奏されています。
1時間53分46秒という長丁場の為、途中に2回インターバルを入れて3部構成で演奏されています。
ヴォルフがお好きな方は必聴です。

録音:2019年3月8日, Jensen Grand Concert Hall, Stephens Performing Arts Center

ISU (Idaho State University) Faculty Recital - Hugo Wolf's Spanish Songbook 3-8-2019
Diana Livingston Friedley(ダイアナ・リヴィングストン・フリードリー), soprano
Geoffrey Friedley(ジェフリー・フリードリー), tenor
Mark Neiwirth(マーク・ナイワース), Piano

埋め込み機能が使用不可の為、リンクを貼っておきます。
下記から動画をご覧ください。

 コンサート動画はこちら

 このコンサートについての紹介はこちら

●0:00-
Geistliche Lieder(宗教的歌曲)
1."Nun bin ich dein" (Juan Ruiz / Heyse) (S)
2."Die du Gott gebarst, du Reine" (Nicolas Nuñez / Heyse) (T)
3. Der helige Josphe singt "Nun wandre, Maria" (Ocaña / Heyse) (T)
4."Die ihr schwebet um diese Palmen" (Lope de Vega / Geibel) (S)
5."Führ mich, Kind, nach Bethlehem!" (Anon. / Heyse) (T)
6."Ach, des Knaben Augen sind mir so schön und klar" (Francisco López de Úbeda / Heyse) (S)
7."Mühvoll komm' ich und beladen" (Don Manuel del Rio / Geibel(?)) (S)
8."Ach, wie lang' die Seele schlummert!" (Anon. / Geibel) (T)
9."Herr, was trägt der Boden hier" (Anon. / Heyse) (T)
10."Wunden trägst du, mein Geliebter" (José de Valdivielso / Geibel) (S)

●36:16-
Weltliche Lieder(世俗的歌曲)
1."Klinge, klinge, mein Pandero" (Alvaro Fernandez de Almeida / Geibel) (S)
2."In dem Schatten meiner Locken" (Anon. / Heyse) (S)
3."Seltsam ist Juanas Weise" (Anon. / Geibel) (T)
4."Treibe nur mit Lieben Spott" (Anon. / Heyse) (T)
5."Auf dem grünen Balkon mein Mädchen schaut" (Anon. / Heyse) (T)
6."Wenn du zu den Blumen gehst" (Anon. / Heyse) (T)
7."Wer sein holdes Lieb verloren" (Anon. / Geibel) (T)
8."Ich fuhr über Meer, ich zog über Land" (Anon. / Heyse) (T)
9."Blindes Schauen, dunkle Leuchte" (Rodrigo Cota de Maguaque / Heyse) (T)
10."Eide, so die Liebe schwur" (Anon. / Heyse) (S)
11."Herz, verzage nicht geschwind" (Anon. / Heyse) (T)
12."Sagt, seid Ihr es, feiner Herr" (Anon. / Heyse) (S)
13."Mögen alle bösen Zungen immer sprechen, was beliebt" (Anon. / Geibel) (S)
14. Preciosas Sprüchlein gegen Kopfweh "Köpfchen, Köpfchen, nicht gewimmert" (Cervantes / Heyse) (S)
15."Sagt ihm, dass er zu mir komme" (Anon. / Heyse) (S)
16."Bitt' ihn, o Mutter, bitte den Knaben" (Anon. / Heyse) (S)

●1:10:30-
17."Liebe mir im Busen zündet einen Brand" (Anon. / Heyse) (S)
18."Schmerzliche Wonnen und wonnige Schmerzen" (Anon. / Geibel) (S)
19."Trau' nicht der Liebe, mein Liebster, gib acht!" (Anon. / Heyse) (S)
20."Ach, im Maien war's, im Maien" (Anon. / Heyse) (T)
21."Alle gingen, Herz, zur Ruh" (Anon. / Geibel) (T)
22."Dereinst, dereinst, Gedanke mein" (Cristobal de Castillejo / Geibel) (T)
23."Tief im Herzen trag' ich Pein" (Luís de Camões / Geibel) (T)
24."Komm', o Tod, von Nacht umgeben" (Comendador Escriva / Geibel) (T)
25."Ob auch finstre Blicke glitten" (Anon. / Heyse) (S)
26."Bedeckt mich mit Blumen" (Maria Doceo(?) / Geibel) (S)
27."Und schläfst du, mein Madchen" (Gil Vicente / Geibel) (T)
28."Sie blasen zum Abmarsch" (Anon. / Heyse) (S)
29."Weint nicht, ihr Äuglein!" (Lope de Vega / Heyse) (S)
30. Limusinisch "Wer tat deinem Füßlein weh?" (Anon. / Geibel) (S)
31."Deine Mutter, süsses Kind" (Don Luis el Chico / Heyse(?)) (T)
32."Da nur Leid und Leidenschaft" (Anon. / Heyse) (T)
33."Wehe der, die mir verstrickte meinen Geliebten!" (Gil Vicente / Heyse) (S)
34."Geh', Geliebter, geh' jetzt!" (Anon. / Geibel) (S)

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エリー・アーメリング(Elly Ameling)の"Aus Liebe"(「マタイ受難曲」より)1971年ライヴ

エリー・アーメリング(Elly Ameling)が1971年にソプラノソロで参加した「マタイ受難曲」から"Aus Liebe will mein Heiland sterben"のライヴ音源がアップされました。

共演者は
Philips' Philharmonisch Koor(フィリップス・フィルハーモニー合唱団)
Brabants Orkest(ブラバント管弦楽団)
Hein Jordans(ヘイン・ヨルダンス)指揮
と表記されています。

Ameling_bach_1971_brochure

説明文によると、
1971年3月26日, 's Hertogenbosch(セルトーヘンボス)
1971年3月27日, Eindhoven(エイントーフェン)
1971年4月6日, Breda(ブレダー)
で演奏されたそうで、この音源がこのうちのいつのものなのかは明記されていません。

実際に聞いてみると、アーメリングの声がやや硬質に感じられます。
1960年代のように声をどこまでも張って歌うというよりも、少し陰影を意識した歌い方になっているようにも感じられました。

●アーメリングの今後の予定

2019年6月19日ウィグモアホール(Wigmore Hall)で催されるLeeds Lieder Fundraising GalaにアーメリングもGuest of Honourとして出演するようです。

 Twitterのちらし

 詳細

その前日には"Leeds Lieder Young Artists Masterclass"と題したマスタークラスも催すようです。

 こちら

きっと若い歌曲演奏者にとって実りある時間になるのではないかと思います。

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