« エリー・アーメリングのインタビュー動画(2019年5月ゼイスト国際歌曲フェスティヴァル) | トップページ | アーメリングと共演した2人の指揮者 »

歌曲のピアノパート聞き比べ(シューマン「昔の嫌な歌(Die alten, bösen Lieder)」)

これまで多くの歌曲の聞き比べをしてきましたが、どちらかというと歌手の比較が中心になっていた感があります。
歌とピアノの両者を聞いているつもりでいても、言葉で評価するのはやはり歌の方が容易であるように思います。
今回は、シューマンの歌曲集「詩人の恋」の終曲の長大なピアノ後奏を聞き比べたいと思います。
ちなみにハイネのテキストは以下のとおりです。


「詩人の恋(Dichterliebe)」第16曲:昔の嫌な歌

Die alten, bösen Lieder,
Die Träume bös' und arg,
Die laßt uns jetzt begraben;
Holt einen großen Sarg.
 昔の嫌な歌、
 嫌なひどい夢、
 そいつらを今こそ葬ってしまおう、
 でっかい棺をもってきておくれ。


Hinein leg' ich gar manches,
Doch sag' ich noch nicht, was;
Der Sarg muß sein noch größer,
Wie's Heidelberger Faß.
 その中にたくさん詰め込むのだ、
 だが何を入れるのかはまだ言うまい。
 棺はもっとでかくなくては、
 ハイデルベルクの樽よりもでかく。


Und holt eine Totenbahre
Und Bretter fest und dick;
Auch muß sie sein noch länger,
Als wie zu Mainz die Brück'.
 それから棺台と、
 頑丈な厚みのある板を持ってきてくれ。
 棺台ももっと長くなくちゃならない、
 マインツの橋よりも長く。


Und holt mir auch zwölf Riesen,
Die müssen noch stärker sein
Als wie der starke Christoph
Im Dom zu Köln am Rhein.
 それと十二人の巨人も連れてきてくれ、
 そいつらはもっと強くなければ駄目だ、
 ライン川のほとりのケルン大聖堂にいる
 力持ちのクリストフォロスよりもね。


Die sollen den Sarg forttragen
Und senken ins Meer hinab;
Denn solchem großen Sarge
Gebührt ein großes Grab.
 そいつらに棺を運ばせて
 海に沈めさせるのだ。
 なぜならこんなに大きな棺には
 大きい墓を用意するのが当然だから。


Wißt ihr, warum der Sarg wohl
So groß und schwer mag sein?
Ich senkt' auch meine Liebe
Und meinen Schmerz hinein.
 分かるかい、どうしてこの棺が
 こんなに大きくて重たいのかを?
 ぼくの恋も
 苦しみも中に沈めてしまったからさ。


詩:Heinrich Heine (1797-1856)
曲:Robert Schumann (1810-1856)

-----
ジェフリー・パーソンズ(P) (& オーラフ・ベーア(BR))
Geoffrey Parsons(P) (& Olaf Bär(BR))
2:44~ パーソンズは常に美しい音を響かせるピアニストでした。EMIの録音の良さもあるのかもしれませんが、ここでも非常に美しいタッチを保ちながら、自然な表情をもって、細部まで神経の行き届いた名演奏を聞かせてくれています。


ヴラジーミル・アシュケナージ(P) (& マティアス・ゲルネ(BR))
Vladimir Ashkenazy(P) (& Matthias Goerne(BR))
2:29~ 各フレーズがしっかりと聞き取れるほどしっかりしていながら、絡み合い、シューマンの音楽の綾を見事に紡いでいて、ただただ脱帽の演奏でした。アシュケナージの技術と音楽性の両方が融合した名演だと思います。


フーベルト・ギーセン(P) (& フリッツ・ヴンダーリヒ(T))
Hubert Giesen(P) (& Fritz Wunderlich(T))
2:36~ ギーセンはアルペッジョの付加やテンポの揺らし方など古き良き時代の巨匠の演奏の趣があって、とても魅力的でした。速めのテンポですが、味わいもあり、独自の魅力を持った演奏だと思います。


クリストフ・エッシェンバハ(P) (& ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR))
Christoph Eschenbach(P) (& Dietrich Fischer-Dieskau(BR))
2:43~ エッシェンバハは繊細このうえない好演です。核心に迫るような深みのあるタッチが素晴らしいです。


ジェラルド・ムーア(P) (& ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR))
Gerald Moore(P) (& Dietrich Fischer-Dieskau(BR))
3:09~ F=ディースカウはムーアと多くの録音を残しましたが、インテンポで演奏する印象が強いせいかシューマンではあまり共演しませんでした。しかし、ここでのフレーズの流れを意識したよく歌う演奏を聴けば、ムーアのシューマン演奏の素晴らしさがよく感じられると思います。


カール・エンゲル(P) (& ヘルマン・プライ(BR))
Karl Engel(P) (& Hermann Prey(BR))
2:57~ 1962年録音。エンゲルは決して派手なことはしていませんが、テンポもちょうどいいぐあいに揺らし、起伏もしっかり付けていて、気持ちいい演奏でした。1か所、出が早い箇所があるのは彼にしては珍しいです。

イェルク・デームス(P) (& ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR))
Jörg Demus(P) (& Dietrich Fischer-Dieskau(BR))
2:58~ デームスにしてはあまりテンポを揺らさず、しかし味わい深い語り口で、美しい表現でした。


ドルトン・ボールドウィン(P) (& ジェラール・スゼー(BR))
Dalton Baldwin(P) (& Gérard Souzay(BR))
3:08~ ボールドウィンは爽快なテンポ設定でくっきりとした明瞭な音を聞かせていながら、シューマネスクな響きも聞かせています。


ノーマン・シェトラー(P) (& ペーター・シュライアー(T))
Norman Shetler(P) (& Peter Schreier(T))
3:27~ シェトラーは微細なレベルでの表情の変化を聴かせ、一音一音を静かに美しく響かせています。


カミロ・ラディケ(P) (& ルネ・パーペ(BS))
Camillo Radicke(P) (& René Pape(BS))
2:44~ 映像で演奏する姿を見ることが出来ます。現役の伴奏者の中でも王道を歩んでいるラディケはちょっとした溜めや表情の付け方が巧妙、かつ自然で、シューマンの音楽の魅力を見事に表現していました。


アーウィン・ゲイジ(P) (& トム・クラウセ(BR))
Irwin Gage(P) (& Tom Krause(BR))
2:41~ たっぷりとした溜めとテンポの揺れ、アルペッジョなどで思い入れたっぷりの演奏です。ゲイジらしい雄弁さが感じられます。


アンナ・カルドナ(P)
Anna Cardona(P)
2:35~ ピアノパートのみの演奏。音量の繊細な加減で聞かせてくれます。

Die-alten-boesen-lieder-excerpt

|

« エリー・アーメリングのインタビュー動画(2019年5月ゼイスト国際歌曲フェスティヴァル) | トップページ | アーメリングと共演した2人の指揮者 »

音楽」カテゴリの記事

ピアニスト」カテゴリの記事

シューマン」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 歌曲のピアノパート聞き比べ(シューマン「昔の嫌な歌(Die alten, bösen Lieder)」):

« エリー・アーメリングのインタビュー動画(2019年5月ゼイスト国際歌曲フェスティヴァル) | トップページ | アーメリングと共演した2人の指揮者 »