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ドビュッシー「もう家のない子供たちのクリスマス(Noël des enfants qui n'ont plus de maison)」

ドビュッシーの没後100年に当たる今年(2018年)、優れた歌曲を多く書いた彼の作品をいくつか記事にしようかと思ったのですが、せっかく12月の暮れですので、彼の自作のテキストによるクリスマスに因んだ歌曲を取り上げたいと思います。

神聖なクリスマスそのものを美しい音楽とともに堪能するのは素晴らしいことです。
そういう時期にこの曲を紹介するのは若干気が引けたのですが、クリスマスをこのテキストのように過ごす子供たちがいなくなることを願いながらここで取り上げたいと思います。

このドビュッシーのクリスマス歌曲は、戦争ですべてを失った子供の言葉が歌われます。
第一次大戦でドイツ軍によって多くの犠牲者を出したフランスの悲しみ、怒り、といった感情をドビュッシーが弱者である子供の視点で歌わせることで、より一層戦争の理不尽さを浮き立たせているように思います。

「もう家のない子供たちのクリスマス(Noël des enfants qui n'ont plus de maison)」という曲です。
私はフランス語は出来ないので、下記のリンクから「詩と音楽」の藤井さんの訳を御覧ください。

  「詩と音楽」の藤井宏行さんの訳

藤井さんが解説で書かれていることで印象的なのが、「この詩に歌われているような憎しみの心が子供の心にも深く刻み込まれ、そして争いの歴史が永遠に繰り返される」という部分です。
思わずはっとしました。
ただ悲惨で辛いというだけでなく、心の傷を負った子供たちが憎しみという感情をもったまま次の悲劇を繰り返すかもしれないのです。
ドビュッシーのテキストの最後は「フランスの子供たちに勝利を与えてください」という言葉で締めくくられます。
敵国が負けることを望むということは、次の悲劇を生み出す感情がすでに芽生えているということでもあり、純粋な子供が歌うことで肌寒い気持ちにさせられます。

そういう悲惨な歴史の繰り返しが少しでも世の中から消えてほしいという思いを胸にこの歌曲に接してみたいと思います。

エリー・アーメリング(S) & ドルトン・ボールドウィン(P)
Elly Ameling(S) & Dalton Baldwin(P)

アーメリングの澄んだ声質が生かされた歌唱です。過剰になりすぎない程度に子供になりきって歌っているように思えます。楽譜も表示されているのがありがたいです。

Petits Chanteurs de Paris

1985年の少年たちの合唱です。歌曲とほぼ同じですが、少年が歌うことで、よりリアルに胸に迫ってきます。

ヴォーカロイド(さとうささら)

最近のヴォーカロイドは本当に優れていると思います。本来感情のないはずのヴォーカロイドが言葉にしっかり息吹を吹き込んでいるのは驚きです。日本語対訳も付いていてアップされた方のお仕事ぶりに感謝したいです。

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コメント

フランツさん、こんばんは。

ピアノパート部も声部も迫ってきますね。
言葉がわからなくても、アメリングの演奏が胸に刺さります。

今起きている争いも、結局は負の連鎖が引き起こしているんですね。
以前テレビで見たのですが、少年兵のほうが残酷になったりするんだそうです。
純粋で若い分だけ影響を受けやすいのでしょう。
少年の声で聴くと、そういう運命を負わされた悲しみが伝わってきました。

「天には栄え、
 地には平和」
という言葉が、新約聖書のキリスト誕生の記事の中に書かれています。
まさにクリスマスは、平和を願う日だと思います。
改めて考えさせてくださった記事をありがとうございました。
すべての人々の上に平和がありますように。

投稿: 真子 | 2018年12月25日 (火曜日) 19時13分

真子さん、こんにちは。
コメントいただき、有難うございます。

この曲はタイトルを見ただけで悲惨な状況が目に浮かびますが、ドビュッシーの音楽は子供にまず悲惨な状況をまくし立てるように歌わせ、後半では呆然とした状況になり、最後はフランスの子供たちの「勝利」を高らかに求めて締めくくります。
真子さんもおっしゃるように純粋無垢であるがゆえに、勝利が正義だと思い込んでしまうのでしょうね。だから勝利のため、味方のためなら残酷なことも進んでやるようになる。この連鎖を断ち切るのは難しいでしょうが、でも一縷の希望も持ちたいと思います。

「天には栄え、
 地には平和」
いい言葉ですね。
クリスチャンでなくとも、そうであってほしいと祈らずにいられません。
素敵な言葉を有難うございます!

投稿: フランツ | 2018年12月26日 (水曜日) 07時56分

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