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ベートーヴェン「マーモット(Marmotte, Op. 52, No. 7)」

Marmotte, Op. 52, No. 7
 マーモット

1.
Ich komme schon durch manche Land',
Avecque la marmotte,
Und immer was zu essen fand
Avecque la marmotte,
Avecque si, avecque la,
Avecque la marmotte.
 僕はすでにいろんな国を巡って来ました、
 マーモットと一緒に。
 そしていつでも食べる物は見つけてきました、
 マーモットと一緒に。
 こちらへ一緒、あちらへ一緒、
 マーモットと一緒に。

2.
Ich hab' gesehn gar manchen Herrn,
Avecque la marmotte,
Der hätt die Jungfern gar zu gern,
Avecque la marmotte,
Avecque si, avecque la,
Avecque la marmotte.
 僕は何人もの紳士を見てきました、
 マーモットと一緒に、
 その殿方たちは若い娘が大好きでした、
 マーモットと一緒に。
 こちらへ一緒、あちらへ一緒、
 マーモットと一緒に。

3.
Hab' auch gesehn die Jungfer schön,
Avecque la marmotte,
Die täte nach mir Kleinem sehn,
Avecque la marmotte,
Avecque si, avecque la,
Avecque la marmotte.
 僕は美しい娘さんも見ました、
 マーモットと一緒に。
 彼女は幼い僕に視線を送ったものでした、
 マーモットと一緒に。
 こちらへ一緒、あちらへ一緒、
 マーモットと一緒に。

4.
Nun laßt mich nicht so gehn, ihr Herrn,
Avecque la marmotte,
Die Burschen essen und trinken gern,
Avecque la marmotte,
Avecque si, avecque la,
Avecque la marmotte.
 さあ僕をこのまま行かせないでください、紳士の皆様、
 マーモットと一緒に。
 若者は食ったり飲んだりが大好きなのです、
 マーモットと一緒に。
 こちらへ一緒、あちらへ一緒、
 マーモットと一緒に。

詩:Johann Wolfgang von Goethe (1749-1832)
曲:Ludwig van Beethoven (1770-1827)

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ベートーヴェンの有名なゲーテ歌曲"Marmotte"のことを私はつい最近まで誤解していました。
"Marmotte"という単語を見て、辞書を確認することもせずに「モルモット」のことだと早合点していたのです。
実は、この"Marmotte"というのは、実験の動物としてイメージされる小さなモルモット(テンジクネズミ)とは全く別種の「マーモット」という動物だったのです。

La Marmotte - Documentaire Animalier

Wikipediaによると、「フランスサヴォワ地方ではアルプスマーモットに芸をしこんで旅をする風習がある。ゲーテがそうした旅芸人を題材とした詩をつくり、さらにルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンがゲーテの詩に曲をつけた歌曲「マーモット(旅芸人)」がある」とのことです。詩の各節第1,3行のみドイツ語で、他の行はフランス語なのも、そういう背景を反映しているのでしょう。

 こちら

私が幼かった頃に「山ねずみロッキーチャック」というアニメが放送されていて、そのキャラクターの描かれたコップを使っていたのを覚えているのですが、その主人公がマーモットだったようです。

ベートーヴェンが作曲したのは、ゲーテの「Das Jahrmarktsfest zu Plundersweilern」という芝居の中のテキストですが、ベートーヴェンは最初の6行しか記していないようです。
第1節しか歌わない歌手が多いのはそのためと思われます。
しかし、あまりにも短い為、有節歌曲として4節歌われることもあります。

なんとも言えない哀愁の漂う小品で、動画サイトで検索してみると分かると思いますが、ピアノ独奏や他の楽器にアレンジして演奏されることが非常に多いようです。
もともとピアノパートの右手は歌のパートをなぞったものなので、歌手がいなくても演奏は可能なわけです。

ちなみに、この作品、日本でも訳詞を付けて古くから歌われていたようで、ネット上でも様々な方が記事にしていました。
中でも「Beat!-Beet!-Beethoven!」というブログの記事はとても詳細な考察があり、勉強になりました。
ぜひご覧ください。

 こちら

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR) & ハルトムート・ヘル(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR) & Hartmut Höll(P)

全4節歌っています。80年代の録音で、肩の力の抜けた自然なディースカウの歌声が味わえます。

ヘルマン・プライ(BR) & ジェラルド・ムーア(P)
Hermann Prey(BR) & Gerald Moore(P)

1961年録音。第1節のみの歌唱。若き日の美声でしっとりと歌っています。

ペーター・シュライアー(T) & ヴァルター・オルベルツ(P)
Peter Schreier(T) & Walter Olbertz(P)

第1節のみの歌唱。ゆっくり目のテンポで哀愁たっぷりに歌うシュライアーも魅力的です。

マックス・ファン・エフモント(BR) & ヴィルヘルム・クルムバハ(Hammerfluegel)
Max van Egmond(BR) & Wilhelm Krumbach(Hammerfluegel)

第1節のみの歌唱。ハンマーフリューゲルの鄙びた響きが素敵な味わいを醸し出しています。オランダ人歌手のエフモントもとても良いです。

Das Jahrmarktsfest zu Plundersweilern

「マーモット」の詩が含まれたゲーテの芝居の上演紹介。すべての役を一人で演じるという2008年ケルンでの上演。

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