« アーメリングの「エクスルターテ・ユビラーテ(踊れ、喜べ、幸いなる魂よ)」(1969年11月8日, アムステルダム・コンセルトヘバウ) | トップページ | フィッシャー=ディースカウの1989年来日公演より「さすらう若者の歌」第2曲、第4曲(2018.1.21.放映 NHK Eテレ クラシック音楽館) »

グンドゥラ・ヤノヴィツ・ラスト・コンサート・ライヴ(チャールズ・スペンサー:ピアノ)(1999年9月16日)

グンドゥラ・ヤノヴィツ(1937年8月2日生まれ)の70歳の誕生日を記念して、昨年、彼女のラスト・ライブのCDがリリースされました。
ギリシャで催されたこのコンサート、なんでもマリア・カラスの記念も兼ねているのだとか。
実は私はまだ入手していないのですが、先日何の気なしにYouTubeを見ていたら、このCDの発売元からプロモーションビデオがアップされていました。
おそらく音源だけのダイジェストだろうと思っていたら、なんと映像付きで、ヤノヴィツが歌っている姿が映っているのです。
どうやらプロモーション用に簡単に撮影されたようで、全部で12分ほど撮影したものを編集して使ったとのことです。
これほど素晴らしい出来ならば全部撮影してほしかったところですが、部分的でも、彼女の最後のリートリサイタルの映像が見れるだけでも有難いと思うべきなのでしょう。

この映像で見る限り、引退間際の歌手とはとても思えないほどの充実した美声です。
まだおそらく殆ど衰えを見せていないまま舞台を去ったのだと思います。
舞台人としての厳しい自覚が、一見早過ぎる引退を決意させたのではないでしょうか。

今回のレパートリーは、決して多いとは言えない彼女のリートのスタジオ録音でも聞けるものが多く含まれている一方で、おそらく一度もスタジオ録音を残さなかったシューマンが5曲も含まれているのが、ファンには嬉しいところです。
『冬の旅』を録音しなかった彼女の「ぼだいじゅ」がここで聞けるのも嬉しいです。

私が唯一彼女のライブを聞いたのは、神奈川県立音楽堂で催された歌曲の夕べで、小林道夫さんのピアノで、前半はブラームス、後半はヴォルフが歌われました。
全曲が彼女のレコーディングしていないレパートリーでした。
第一声を聞いて、あまりの声の美しさに驚嘆したことが昨日のことのように思い出されます。
もちろんレコードを通じて、その気品のある歌唱を知ってはいたものの、ここまで芯のあるぶれない美声だとは想像していなかったのです。

今回の動画を見ていても、落ち着いた気品に満ちた彼女の美声は堪能できます。
まだまだ現役として通用するほどの素晴らしい歌唱がここで披露されています。

共演のピアニストはイギリスのベテラン、チャールズ・スペンサー。
ヤノヴィツ晩年のシューベルト歌曲集の録音でも共演した名コンビです。

-----------

録音:1999年9月16日, Herodes Atticus Odeon, Athens, Greece

グンドゥラ・ヤノヴィツ(Gundula Janowitz) (S)
チャールズ・スペンサー(Charles Spencer) (P)

シューベルト:ギリシャの神々 D 677
シューベルト:イーピゲネイア D 573
シューベルト:竪琴に寄せて D 737
シューベルト:エレンの歌Ⅰ D 837
シューベルト:漁師の歌 D 881
シューベルト:流れ D 693
シューベルト:夕映えの中で D 799
シューベルト:ぼだいじゅ D 911-5
シューベルト:緑野の歌 D 917

シューマン:ズライカの歌 Op. 25-9
シューマン:松雪草 Op. 79-26
シューマン:はすの花 Op. 25-7
シューマン:私のばら Op. 90-2
シューマン:くるみの木 Op. 25-3

リヒャルト・シュトラウス:薔薇のリボン Op. 36-1
リヒャルト・シュトラウス:万霊節 Op. 10-8
リヒャルト・シュトラウス:明日! Op. 27-4
リヒャルト・シュトラウス:夜の散歩 Op. 29-3
リヒャルト・シュトラウス:解き放たれて Op. 39-4

シューベルト:ます D 550

| |

« アーメリングの「エクスルターテ・ユビラーテ(踊れ、喜べ、幸いなる魂よ)」(1969年11月8日, アムステルダム・コンセルトヘバウ) | トップページ | フィッシャー=ディースカウの1989年来日公演より「さすらう若者の歌」第2曲、第4曲(2018.1.21.放映 NHK Eテレ クラシック音楽館) »

音楽」カテゴリの記事

ソプラノ歌手 soprano」カテゴリの記事

CD」カテゴリの記事

ピアニスト pianist」カテゴリの記事

コメント

フランツさん、こんにちは。

動画拝見しました。
ヤノヴィッツは昔から好きな歌手でした。
「フィガロの結婚」での気品あふれる伯爵夫人は忘れられません。
やや硬質な声だったのが、ここでは美しい声はそのままに丸みをおびてとても情緒的な歌を聴かせてくれていますね。
彼女の二枚組のシューベルトを持っていますが、これは購入したいと思います。

シューベルトの「竪琴に寄せて」は、プライさんの男性的な歌で愛聴していますが、このような歌い方もあるのかと、目からウロコでした。
ドイツ語のウムラウトは、えも言われぬいい響きですね。
今年は体調があまりよくなく、少しずつ拝見させていただいています。
それもまた楽しみです(*^^*)

投稿: 真子 | 2018年9月 6日 (木曜日) 16時14分

真子さん、こんばんは。
体調があまり優れないとのこと、今年は体に酷な気候が続いていたような気がします。
どうぞお体の調子に合わせて少しずつご覧いただければと思います。
くれぐれもご無理のないようになさってくださいね。

ヤノヴィッツのコメント、有難うございます。
彼女の伯爵夫人は十八番ですね。ノーブルでありながら、可愛らしさもあり、さらに威厳もあるという稀有な存在の歌手でしたね。

彼女はDGに5枚組のシューベルト女声用歌曲集をゲイジと共に録音していますが、引退前にさらに1枚スペンサーとシューベルトの名歌を録音し、それで最後かと思いきやライブでこの録音を残してくれて、本当に嬉しく思います。
とはいいつつ、実は私もまだ入手していないのですが、今年中には入手して、彼女のリートを味わいたいと思っています。

「竪琴に寄せて」を女声が歌うとまた違った味わいがありますよね。
彼女のドイツ語は本当に美しいです。

入手されたら楽しんで下さいね(^^)

投稿: フランツ | 2018年9月 7日 (金曜日) 20時27分

フランツさん、こんばんは。

動画を拝見して素晴らしかったから、CDを注文しました😄
本当に引退間近と思えないお声ですね。
スポーツ選手にも、まだまだできるのに引退する人と、ボロボロになっても頑張る人がいます。
そこは、その人なりの美学があるのでしょうね。

ヤノヴッツは、グラモフォンにシューベルト5枚組も出していたのですね。私が持っているのはその抜粋盤だったのかもしれません。

ご紹介のCD.昨日注文しました。
届くのが楽しみです🎵

投稿: 真子 | 2018年9月 7日 (金曜日) 23時03分

真子さん、こんばんは。
真子さんはこのヤノヴィッツ最後のリサイタルを注文されたのですね。楽しみですね!
私はプライのヴォルフがamazonに掲載されたら一緒に注文しようかなと考えています。

引退に関しては、スポーツ選手もクラシックの歌手も、人それぞれの考え方があるので、ファンからしたら残念と思っても、本人にしか分からない引き際の美学というものがあるのでしょうね。

まぁそれにしても、このヤノヴィッツの動画を聞く限りでは、まだまだ現役バリバリの声ですよね。もったいない気もしますが、彼女の考えがきっとあるのでしょうね。

ヤノヴィッツのシューベルトはLP時代に5枚組でリリースされて、その後、日本盤として全曲がCD復活したのですが、海外盤では、2枚組の抜粋がまず出て、残りをさらに2枚組でリリースという形で全曲が揃いました。現在DGで出ているヤノヴィッツの録音をまとめたものには全曲入っているようです。

https://www.amazon.co.jp/Gundula-Janowitz/dp/B06XWPK59X

投稿: フランツ | 2018年9月 8日 (土曜日) 19時42分

フランツさん、こんにちは。

ヤノヴッツのCDのご紹介、ありがとうございます😃 CDが再販される場合、抜粋や他のものとコラボしたりするから、ややこしいですよね。

ヤノヴッツのこの動画をみていますと、確かにお年を召されたなあとは思いますが、全盛期変わらぬ美声で、勿体ないなぁと思いますね。
思いをこめて歌ったであろうこのライブコンサート。届きましたら大切に聴こうと思います。

フランツさんは、プライさんのと一緒に注文されるのですね。
名歌手の名演は、どれだけ時間が経っても世に出し続けて欲しいですね。

投稿: 真子 | 2018年9月 9日 (日曜日) 14時23分

真子さん、こんばんは。

ヤノヴィッツのシューベルトのCD第2集は以下のアドレスにあります。

https://www.amazon.co.jp/Schubert-Lieder-2-Janowitz/dp/B000025JX5/ref=sr_1_3?s=music&ie=UTF8&qid=1536481637&sr=1-3&keywords=janowitz+schubert

ただ、すでに中古扱いで1万円近くするので、前回のコメントでご紹介したヤノヴィッツのDG集大成の方が安価なようです。

また、国内盤の中古CDだと5775円で買えるようです。

https://www.amazon.co.jp/%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88-%E3%82%B2%E3%82%A4%E3%82%B8-%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%A6-%E3%83%A4%E3%83%8E%E3%83%93%E3%83%83%E3%83%84-%E3%82%B0%E3%83%B3%E3%83%89%E3%82%A5%E3%83%A9/dp/B00005FIVE/ref=sr_1_4?s=music&ie=UTF8&qid=1536482014&sr=1-4&keywords=%E5%A5%B3%E5%A3%B0%E3%80%80%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88

歌詞対訳も付いていますし、オリジナルの曲順で収録されているので、もしヤノヴィッツのシューベルト全曲をいつか揃えたいというのでしたら、こちらが一番お買い得かもしれません。参考までに。

真子さんはこのラストコンサートを注文されたとのことですので、まずはそちらを楽しんで下さいね!

投稿: フランツ | 2018年9月 9日 (日曜日) 17時39分

フランツさん、こんばんは。

詳しいヤノヴッツのCD情報をありがとうございます😃
歌詞がついている日本盤のほうが安めなのはありがたいですね。
また少しずつ楽しみで買いたして行きたいです。
いつもご丁寧にありがとうございます!

投稿: 真子 | 2018年9月10日 (月曜日) 18時27分

真子さん、こんばんは。

いえいえお役に立てたなら嬉しいです😃
あくまで参考までにということですので、ご無理のないようにして下さいね。
1枚ずつ買ってじっくり聴きこむというのが本当は理想なのかもしれませんね。

投稿: フランツ | 2018年9月10日 (月曜日) 21時18分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: グンドゥラ・ヤノヴィツ・ラスト・コンサート・ライヴ(チャールズ・スペンサー:ピアノ)(1999年9月16日):

« アーメリングの「エクスルターテ・ユビラーテ(踊れ、喜べ、幸いなる魂よ)」(1969年11月8日, アムステルダム・コンセルトヘバウ) | トップページ | フィッシャー=ディースカウの1989年来日公演より「さすらう若者の歌」第2曲、第4曲(2018.1.21.放映 NHK Eテレ クラシック音楽館) »