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ロベルト・ホル&みどり・オルトナー/ロベルト・ホル バス・バリトンリサイタル(2016年11月27日 川口リリア・音楽ホール)

ロベルト・ホル バス・バリトンリサイタル
シューベルト! ~自然を描く幻想画家

2016年11月27日(日)14:00 川口リリア・音楽ホール

ロベルト・ホル(Robert Holl)(バス・バリトン)
みどり・オルトナー(Midori Ortner)(ピアノ)

シューベルト(Schubert)作曲

戸外にて D880
花の便り D622
春に D882

愛らしい星 D861
星々 D939
夜のすみれ D752
しおれた花 D795-18(「美しき水車小屋の娘」より)

野ばら D257
羊飼いの嘆きの歌 D121
月に寄せて D296
魔王 D328

~休憩~

丘の上の少年 D702
秋 D945
夕べの画像 D650

菩提樹 D911-5(「冬の旅」より)

夕映え D690
月に寄せて D193
夜と夢 D827

冬の夕べ D938

~アンコール~

音楽に寄せて D547

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1年ぶりにロベルト・ホルとみどり・オルトナーが川口リリアに帰ってきてくれた。
彼らの川口でのリーダーアーベントを昨年聴いた時はオルトナーさんの解説が非常に分かりやすく、気さくなお人柄も感じられて、もちろん演奏も素晴らしく、このコンビのコンサートが再び聴けることを心待ちにしていたのである。

今回も客席はかなりの盛況で、熱心な歌曲ファンが集まった。
この日はオール・シューベルト・プログラムで、どうやら選曲はオルトナーさんがしたようだ。
四季の移り変わりや、夜、月、星、夢、花など、歌曲の重要なテーマを盛り込んだ選曲のようだ。

「羊飼いの嘆きの歌」はオルトナーさん自身の解説にもあったように、珍しい前奏付きの版で演奏された。

ホルは今回はトークに加わらず、オルトナーさんの解説の間は横の椅子に腰掛けていた。
オルトナーさんはご自分のことを「とても真面目なディスクジョッキー」というような言い方をしていたが、その解説は各曲に対する造詣の深さと愛着が強く感じられて、それぞれの曲を聴くうえでの大きな道しるべとなった。
いっそオルトナーさんによるシューベルト歌曲全曲の解説本を出してほしいほどだ。

ホルの声は相変わらず、地の底から響き渡るような朗々とした低音が素晴らしく、声の艶は見事に保たれていた。
各曲に対する表情の細やかさも素晴らしく、どの曲も血肉となった表現で聴かせてくれた。
歌曲に対する真摯な姿勢がどの作品からも感じられ、とても充実した音楽を聴いたという気持ちにさせてくれた。
右手を動かす癖も健在だったが、それが鑑賞を妨げるほどではない。
彼の「魔王」を聴いたのはおそらくはじめてだったが、4つの役を違和感なく聴かせる術はさすがベテランの貫禄であった。
ちなみに「魔王」についてオルトナーさんは「ピアニストにとって地獄の曲」と語って笑いを誘っていた。
オルトナーさんの「魔王」の演奏は左手を効果的に使って右手の連打を助けていたが、それが実に自然で、全く見事な「魔王」だった。

オルトナーさんのピアノは、蓋を全開にしていて、バランスはもちろん見事にコントロールされていたが、あたかもシューベルトの即興曲を聴いているかのようなコードの美しさ、内声の浮き上げ方、明瞭なタッチによる立体感、ホルを導くリズム感の見事さ、そしてよく歌うメロディなど、その美質を挙げだしたらきりがない。
オルトナーさんはホルのことを「巨匠」と呼んでいたが、オルトナーさんもすでに「巨匠」のような素晴らしい演奏を聞かせてくれた。
ホルが日本に他のピアニストを連れてこないのも納得である。

なお、事前にピアニストが立ち上がるまでは拍手をしないようにアナウンスがあったが、曲のつながりが重要な歌曲のコンサートでは、拍手のタイミングをあらかじめ指示してくれるのは有難い。

アンコールの「音楽に寄せて」は胸にしみた。

なお、このコンサートの後に、昨年同様公開レッスンが催されたが、私は都合により、そちらは聞けなかった。
きっと受講生にとっても聴衆にとってもためになるレッスンが繰り広げられたのではないだろうか。

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コメント

フランツさん、こんばんは。

ロベルト・ホルもベテランの域に入ってきたんですね。
昔レコ芸で「プライ型の声を持ち、ディースカウのような語り口」と称されていましたが、残念ながら実演に接したことはないんです。
このプラグラムはまた色とりどりで、ワクワクするような曲が並んでいますね!

ところで、以前お話した埼玉出身の、阪神タイガースの原口文仁選手の後援会に入ったのですが、そこの事務局さんとクラシックの話になり(最近聴き始められたとのことで)、ついついプライさんを勧めてしまいました(笑)
すると、図書館でプライさんの「冬の旅」のCDを借りてこられたようです。
1961年のEMI盤のようです。
嬉しかったのでご報告します(*^^*)
そのうち、ディースカウさんやアメリングなんかも聴いてくださるといいなあと思います。
関係ない話で済みません・・。

投稿: 真子 | 2016年12月19日 (月曜日) 21時25分

真子さん、こんばんは。

今年も残すところあとわずかになりましたね!

ロベルト・ホルのリサイタル、素晴らしかったですよ。
>「プライ型の声を持ち、ディースカウのような語り口」
彼はそのように評価されていたのですね。
確かに体の奥からぐわっと太い柱が湧き上がるような声の感覚はプライを生で聴いた時に感じたものに似ていました。
今回のプログラム、ピアノのオルトナーさんが選曲したようなのですが、彼女がホルに歌わせたい歌を選んだのではないかなぁと想像しています。
プログラミングもリサイタルの楽しみの一つですし、今回の歌の流れは本当にワクワクさせてもらいました。

埼玉出身の阪神の選手の後援会に入られたのですね。
真子さんに気に入られるとは、きっと素敵な選手なのでしょうね。
事務局の方にプライを勧められたとのこと、「冬の旅」をチョイスとはその方もなかなかセンスがありそうですね。
プライの輪がこうして広がっていけば楽しそうですよね。
そのうち、その原口選手にもプライの録音が渡ったりしたら面白いですね。

投稿: フランツ | 2016年12月20日 (火曜日) 20時06分

フランツさん、こんばんは。

この曲目を見ていますと、改めてシューベルトの音楽の多彩さにも驚かされますね。
ドイツリートは殿作曲家も好きですが、やはりシューベルトに帰ってくるんです。
隙あらばドイツリート、殊にシューベルトを人に勧めてしまいます(笑)
少しでもこのすばらしい世界を知って欲しいですね!

原口選手は何度かの怪我を乗り越えて今年大ブレークしたのですが、人気が出ても変わることなく、礼儀正しくとても誠実な選手です。
実はこの秋、スポーツ新聞社の原口選手の表彰式に当選し、直筆サイン入り特大タペストリーが当たり、握手もしてもらうという幸運な出来事がありました。
近くで見た原口選手は背が高く、澄んだ瞳が美しい青年でした。

そんなんですよ。打席に向かう時の登場曲に、プライさんの「セヴィリアの理髪師」のアリアを、原口選手が選んでくれないかなあなんて密かに思っています。

今年もあっという間にあと僅かになってしまいましたね。
フランツさんもどうぞご自愛くださいね。


投稿: 真子 | 2016年12月20日 (火曜日) 21時54分

真子さん、こんばんは。

私も真子さんと同じで、様々な作曲家の作品を聴いた後にシューベルトに戻ってくるとほっとするんです。

原口選手の表彰式でご本人とお会いしたのですか!
すごいですね!!
きっと神様からのご褒美ですね。
真子さんの気持ちが通じたのでしょうね。
もちろんプライへの思いも天国の本人に通じていることでしょう!

打席に向かう時にプライが流れたりしたら、真子さん、もう大興奮ですね^^
こちらも真子さんの気持ちが伝わるかもしれませんよ。

朝晩冷え込んできましたね。
真子さんもお体お気をつけくださいね。

投稿: フランツ | 2016年12月22日 (木曜日) 23時24分

フランツさん、こんばんは。

>きっと神様からのご褒美ですね。
ありがとうございます(*^^*)
この10年、いろんな病気をして手術したりしんどいことが多かったですが、こうしていい事も訪れるんですね。

さて、今、家庭クリスマスが終わったところです。
毎年の行事で、ロウソクの火だけで晩餐をするんです。
もうかれこれ20年は続いている我が家のクリスマス行事です。電気は消しますが「ヘルマンプライとともにクリスマスを」のビデオ(今はDVD)を流します。
この映像は本当に温かくて(風景は寒いスイスやドイツの冬ですが)素敵なんですよ。

「もちろんプライへの思いも天国の本人に通じていることでしょう!」
と言ってくださいましたが、今もずっとこうして聴いて(観て)いるのを天国から見てくれているでしょうか。
プライさん、ニコニコして見てくださってたら嬉しいです(*^^*)

明日はクリスマス礼拝に行こうかと思っています。
フランツさんもどうぞ、楽しいクリスマスの時をお迎えください。


投稿: 真子 | 2016年12月24日 (土曜日) 20時31分

真子さん、メリークリスマス!

ロウソクの火だけでの晩餐なんて素敵ですね。
しかもプライのクリスマスの映像も流れているのですね。
私はいつものクリスマスの食べ物を買って軽くいただいたぐらいです。
でも最近ドイツのシュトレンが普通の日本のお店でも売られているのがちょっと驚きでした。

真子さんは礼拝にも行かれて、キリストの生誕をお祝いされたのですね。
そのお祝いを盛り上げたのがプライの歌というのは真子さんらしくて素敵だと思います。

どうかお体に気をつけて、よい年末年始をお迎えください!

投稿: フランツ | 2016年12月25日 (日曜日) 23時01分

フランツさん、こんにちは。

思わずシュトーレンに反応しました(笑)
そうなんですよね。今から20年くらいまではシュトーレンと言っても、洋菓子屋さんも、パン屋さんも知らなくて・・。
プライさんに憧れてドイツかぶれになっていた私は、どうしてもシュトーレンが食べたかったんです。
今では数種類を買い込んで食べ比べています。お陰でちょっと太りました(^^;

アドベントに入ると、大阪のドイツクリスマス市が開催されますが年々盛況です。
開催者にプライさんのクリスマスCDを渡して「これ流して」と言いたくなってしまいます(笑)

投稿: 真子 | 2016年12月27日 (火曜日) 12時29分

真子さん、こんばんは。

真子さんはシュトレンを食べたことがあるのですね。
食べ比べをされたとは相当お詳しくなったのではないでしょうか^^
私はドイツでクリスマスの時期(Advent)に食べられるものということを聞きかじっていたぐらいで、残念ながらまだ食べていないのです。
せっかくなので先日見かけた時に買っておけばよかったのですが、もう遅いですね・・・。
来年には食べてみようと思います。

大阪ではドイツクリスマス市というものが催されるのですね。ドイツの気分が味わえそうですね。
BGMにプライが流れたら最高のクリスマスになりそうですね!

投稿: フランツ | 2016年12月28日 (水曜日) 23時11分

フランツさん、こんばんは。

そういえばフランツさんはドイツに行かれたことがありましたね。
来年はシュトーレンをぜひ食べてみてくださいね。
特に輸入ものは、ものすごーく美味しいかというと、普通のケーキのほうが美味しいんですが私は好きです。

大阪のドイツクリスマス市は、こじんまりはしていますが本格的なものです。
会場のツインタワーのビルにはドイツ大使館もあって、後援もしていますし、ドイツの方がたくさんドイツ風屋台で販売されています。

今年も素敵な記事で楽しませていただきありがとうございました。
来年もどうぞよろしくお願いいたします(明日はきっとパソコンを覗けないと思いますので、ちょっと早いですが・・)。

投稿: 真子 | 2016年12月29日 (木曜日) 19時22分

真子さん、こんばんは。

私は実はドイツは行ったことないんです…。
オーストリアには行ったのですが、ドイツに立ち寄ればよかったと後悔しています。
来年はシュトレン食べてみますね。

大阪のドイツクリスマス市、本格的とのこと、ドイツを味わえる貴重な機会ですね。

こちらこそ真子さんにはいつも素敵なコメントをお寄せいただき、毎回本当に励みになっています。
有難うございました。
年末年始はお忙しいですから、またお時間が出来た時にでものぞいてみて下さいね。
来年はもう少し更新できればいいのですが、最近さぼり癖がついてしまいました。

それではどうぞよいお年をお迎え下さい。
また来年もよろしくお願いいたします!

投稿: フランツ | 2016年12月29日 (木曜日) 23時28分

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