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ブラームス「知らせ(Botschaft)」を聴く

ご無沙汰しております。
すっかり投稿をさぼってしまい、すみませんでした。
気付いたら11月はまだ一度も記事を掲載しておりませんでした。
久しぶりに聴き比べをしたいと思います。

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Botschaft, Op. 47 no. 1
 知らせ

Wehe, Lüftchen, lind und lieblich
Um die Wange der Geliebten,
Spiele zart in ihrer Locke,
Eile nicht hinwegzufliehn!
Tut sie dann vielleicht die Frage,
Wie es um mich Armen stehe;
Sprich: »Unendlich war sein Wehe,
Höchst bedenklich seine Lage;
Aber jetzo kann er hoffen,
Wieder herrlich aufzuleben,
Denn du, Holde, denkst an ihn.«
 そよ吹け、風よ、優しく、心地よく
 あの女性(ひと)の頬をかすめて。
 彼女の巻き毛にそっと戯れておくれ、
 急いで逃げ去ってしまっては駄目だよ!
 すると彼女はもしかしたら尋ねるかもしれない、
 かわいそうな僕がどうしているかと。
 そうしたら言っておくれ、「彼の悲しみは果てしなく続いていました。
 状況はきわめて重大です。
 でも今彼は
 再びすっかり元気を取り戻すことが期待できます。
 なぜならいとしいあなたが彼のことを気にかけてくれるからです」と。

詩:Georg Friedrich Daumer (1800-1875)
曲:Johannes Brahms (1833-1897)

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私の大好きなブラームスの歌曲のひとつを取り上げることにしました。
一般的には「使い」「ことづて」「便り」などと訳されるこの曲ですが、ダウマーのテキストは、恋する女性へのメッセージをそよ風(Lüftchen)に言付けるという内容です。
この曲のピアノパートは右手で複数の音を同時に弾きながら、素早くレガートにそよ吹く風を表現しなければなりませんが、ジェラルド・ムーアが著書の中で、この曲を低く移調するととても弾きにくくなると書いていました。
そんなムーアが低く移調したホッターとの録音を残しているので、下の音源を聴いてみて下さい。
歌は愛らしく楽しげに進みますが、テキストの展開に応じて途中から深刻な表現も聴かせ、詩を生かしたなかなか良く出来た作品だと思います。
最後にピアノパートのリズムを変えて、盛り上げるところなども素晴らしいです。
あっという間に終わる短い作品ですが、誰もが微笑みたくなるような作品だと思います。
ぜひお聞きください!

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ハンス・ホッター(BSBR)&ジェラルド・ムーア(P) (1957)

ホッターの包み込むような温かい声と、その味わいを自身の音に反映させるムーアによって、胸に響く演奏になりました。

ジェシー・ノーマン(S)&ジェフリー・パーソンズ(P) (1980)

1:36~です。ノーマンの歌唱は恰幅がよく、力強さがある一方、繊細さも兼ね備えています。パーソンズがいつもながら上手いです。

ロッテ・レーマン(S)&エルヌー・バロック(P)

レーマンの歌は喜びにあふれ、つやつやして、表情豊かで今でも色あせない素晴らしさです。バロックの粒立ちのよいピアノも良かったです。

カスリーン・フェリア(A)&フィリス・スパー(P)

持ち前の温かみのある声が素晴らしいだけでなく、テキストの表情に対して丁寧に細やかに歌っているのが感じられて感銘を受けます。

ハインリヒ・シュルスヌス(BR)&ゼパスティアン・ペシュコ(P) (1937)

シュルスヌスの甘美で渋い美声に酔いしれることが出来ます。途中、ちょっとブラームスのメロディーとは違う歌い方をしているのも当時のおおらかさを感じさせます。

トマス・アレン(BR)&マルコム・マーティノー(P) (2001)

5:51~です。ライヴ映像。アレンの渋みのある声と、マーティノーのそよ風を模したさらさらとしたタッチが大人の趣を醸し出していると思います。

ペーター・アンダース(T)&ミヒャエル・ラウハイゼン(P) (1943)

オペラのヒーローが歌っているような趣ですが、輝かしい声は魅力的です。

ピアノ伴奏のみ

演奏が終わらないうちに次の楽譜に移ってしまいますが、ピアノパートだけでこの曲を聴くのも新鮮です。カラオケとしても使えます!

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