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中村紘子さん逝去

ピアニストの中村紘子さんが2016年7月26日に亡くなった。
かねてから大腸がんの闘病をしながら復帰公演もしていたようだが、残念な結果となった。

私は中村さんの実演は学生時代に一度だけ聞いたことがある。
その時は学校に無料コンサートの形で来てくれて弾いてくれたのだと記憶している。
確かブラームスの「2つのラプソディー」などを弾いてくれたのではなかったか。

もちろん中村さんは私がまだクラシックに興味を持つか持たないかのうちに、すでにテレビなどでお馴染みの存在だった。
クラシックの演奏家がテレビCMに出演したはしりの一人ではないだろうか。
カレーのCMで大きなアクション付きで演奏していたりしたが、その後のインタビューで、あれはCM用にあえて派手な身振りをしたのだとか。
実際の彼女はあまり余計な動きをせずに、必要最低限の身振りで演奏に集中していたように思う。
彼女の打鍵は鋭く強いがために、演奏が荒いという評価もあったが、彼女の手の小ささをカバーする弾き方なのではないだろうか。
好き嫌いがあるのはそれだけ個性のはっきりした演奏だったということも言えるのではないだろうか。

教育テレビでピアノのレッスンの番組なども持っていたが、私がシューマンの「謝肉祭」などを知ったのも、その番組を通してだった。

ある番組ではスクリャービンの美しいピアノ曲を弾いていたが、あれも私の記憶の中では中村さんと結びついている。

彼女は一時N響アワーの司会をしていた時期もあった。
ヘルマン・プライがN響とシューベルトのオーケストラ編曲歌曲を歌ったのを放送する際に、本来ならばオーケストラ編曲もこんなに素晴らしいのですよと言うのが望まれたであろうところ、中村さんは「シューベルトのリートはピアノ伴奏が一番いいんですが」と正直なことをおっしゃって番組的に大丈夫なのだろうかと驚いたことがある。
それだけ音楽に対して嘘の付けない方だったのだろう。

文筆活動やコンクールの審査員などの仕事もこなし、マニア向けのクラシックを大衆に啓蒙したという意味で、彼女の果たした役割はとても大きかったのではないかと思われる。

ところで、とても珍しい貴重な動画をアップしてくださっている方がいた。
ショパンを弾いているのだが、出演しているのが、往年の歌謡曲の某名番組である。
お馴染みの司会のお二人の他に高田みづえやマッチの姿も見える。
アウェイ感たっぷりなこのような雰囲気でもマイペースに対応する中村さんの度胸も大したものである。
これを見て、中村紘子さんを追悼したいと思う。

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コメント

フランツさん、こんばんは。夜更かしついでに、あちこち散策して(猫の散歩みたいに訪問先がだいたい決まっております)こちらで、中村紘子さんの在りし日の姿にお目にかかりました。
このテレビ番組は、もう30年以上も前のものだと思いますが、私の贔屓番組で、いつも見ていました。
この時は、たまたま見損なっていたらしく、覚えがないのですが、気取らず、自然な感じの受け答え、すてきですね。
生演奏は、3回ほどしか聴いてませんが、数年前にサントリーホールで聴いたベートーヴェンの「皇帝」が、一番印象に残っています。
2階席右側で、彼女の顔を正面から見おろす位置だったので、曲に添って、微妙に変化する表情などがよく見え、生演奏ならではの魅力を堪能しました。
ガンを患っていることは、公表されてましたが、演奏活動は続けていらしたので、まだ聴きに行く機会があるだろうと思ってました。とても残念です。
「チャイコフスキイ・コンクール」などの著書もあり、若い音楽家達にも、中村さんの影響は大きかったのではないかと思いますが、ご冥福を祈りたいと思います。貴重な動画、有り難うございました。

投稿: Clara | 2016年8月15日 (月曜日) 01時27分

Claraさん、こんばんは。
静かな夜にサイトを散策するのは楽しいですよね。
私のサイトもClaraさんの散策コースに加わっていると知って、とても嬉しいです!

Claraさんは3回お聞きになったのですね。
サントリーホールはピアニストの表情が見える席がありますよね。Claraさんにとって中村さんの表情を見ながら視覚と聴覚で堪能されたというのは素敵な思い出ですね。

私も中村さんほどの人ならきっとまた病を克服して復帰するだろうと思っていたので、突然の訃報に驚きました。続々と昭和を盛り上げてくれた大物たちが旅立っていかれて、寂しい限りです。

夜のヒットスタジオ、Claraさんはよくご覧になっていたのですね。
私も歌番組は好きだったのですが、なぜか夜ヒットは大人向けというイメージがあったせいか、遅い時間帯だったからか、あまりちゃんと見ていなかったのです。
今は動画サイトで岩崎宏美とか高田みづえなどが出演している夜ヒットの動画を見て、この番組の凄さを感じているところです。
でも中村さんまで出演されていたとは!
本当に貴重な動画だと思います。
「チャイコフスキイ・コンクール」も話題になりましたよね。
この機会に読んでみようかと思います。
素敵なコメント、有難うございました。

投稿: フランツ | 2016年8月15日 (月曜日) 20時14分

ご無沙汰しております.
Sandmanです.
珍しい動画を紹介いただきありがとうございます.
フランツさんのブログに中村紘子さんが登場するとは思ってもみませんでした.
私が, 中村紘子さんの演奏を聞いたのは, ショパンの協奏曲第2番, モーツァルトの協奏曲「戴冠式」, プロコフィエフの協奏曲第5番など5回ほどしかないのですが, 一番感動したのは, 秋山和慶指揮の東京交響楽団との共演で聞いた, 矢代秋雄作曲のピアノ協奏曲です(1999.6.26). この曲を初演したのは彼女だそうで, この曲を完全に自分のものとしているように見えました. 彼女の本領を発揮できるのは, 本当はこのような曲ではないかとも思いました. また, 矢代秋雄という作曲者と出会えることができた貴重な体験でした. 7月30日の読売新聞での追悼の談で, ドナルド・キーンは, “現代的な難しい曲を弾いてもすごかった. 演奏会では, 一般の人に人気があるということで, ラフマニノフやチャイコフスキーの協奏曲をよく弾いたが, 彼女のとって同じような曲ばかりで退屈だったのではないか. でも, 決した退屈そうにみせなかった.” と語っています.
なお, YouTubeで, N響との共演で, 中村紘子さんが, 矢代の協奏曲を弾いている録音が聞けます. 全部聞くのは大変ですが, 少し聞いてみるとすごさが分かると思います.
以上, 私の勝手な意見の押し付けで申し訳ありません.

投稿: Sandman | 2016年8月16日 (火曜日) 21時36分

Sandmanさん、こんばんは。
お久しぶりですね。
コメントを有難うございます!
アーメリングのサイトはしばしばお邪魔していますよ!

私のブログに中村さんが登場したのはおそらくはじめてです。私も中村さんの記事を書く日が来るとは思いませんでした。
でも彼女の存在はクラシック音楽などまだ興味を持っていなかった頃から知っていました。
とかくマニアの狭い世界に閉じこもりがちなクラシック音楽の世界を広く一般の人たちに知らしめたという意味で彼女の存在はとても大きかったのではないかと今あらためて思います。

Sandmanさんは中村紘子さんを5回も聞かれたのですね。ショパンのコンチェルトは一度聴いてみたかったです。
矢代秋雄のピアノ協奏曲、YouTubeで今聞いていますが、特定のパッセージが繰り返し現れ、耳に残りますね。これは聞き込むとハマルかもしれません。
こういう曲も中村さんのレパートリーに含まれているとは知りませんでした。
聴き手もショパンばかりではなく、もっと日本人の作品に耳を向けないといけませんね。

Sandmanさんに教えていただけたおかげで、また新たな音楽の扉が開かれました。有難うございます!
中村さんの小気味よいリズム感が冴えた名演だと思います。

投稿: フランツ | 2016年8月17日 (水曜日) 19時54分

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