ベートーヴェンの未完の「魔王(Erlkönig)」WoO. 131を聴く(ラインホルト・ベッカー補完版による)
ベートーヴェンがゲーテの詩による「魔王」を歌曲として作曲しようとしていたことは以前から知っていました。
しかし、歌声部のみの未完成のスケッチにとどまったこともあり、その音楽を実際に聴くことはないと思っていました。
ある時、たまたま動画サイトでこのベートーヴェンの「魔王」をReinhold Becker (1842-1924)という人が1897年に補完した版で演奏しているものを見つけました。
Unheard Beethoven : Erlkönig (Robert-John Edwards and Jon French)
これを聴くと、ベートーヴェンが詩の韻律に忠実に従っていることが分かり、おそらく完成していたらゲーテも満足していたのではないかと想像出来ます。
ピアノパートについては後世の人の創作なので何とも言えませんが、おそらくベートーヴェンもこのぐらいのドラマティックな要素は盛り込んだのではないかと想像します。
シューベルトの大胆さはないものの、ベートーヴェンが詩を生かしつつ、一人語りのドラマを目指そうとしていたのではないかと感じました。
ちなみに楽譜は次のページ(IMSLP)で閲覧可能です。
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コメント
フランツサん、ご無沙汰してます。貴重な動画、早速視聴させていただきました。シューベルトと違った感じですが、いいですね!
ベートーヴェンの「魔王」、完成していたら、きっといろいろな人が歌って、引き継がれていたことでしょう。
投稿: Clara | 2016年6月 6日 (月曜日) 11時36分
Claraさん、こんばんは。
コメントを有難うございます!
Claraさんもいいと思って下さったのですね。
私も単なる物珍しさを超えた魅力を感じましたので、気に入っていただけて嬉しいです(^O^)
ベートーヴェンは歌だけで和声は付けていないようですが、それでも完成していたら傑作になり得たように感じます。
無駄がなく、語り手が4人分を歌い分けられるように巧みに作られていると思います。
この補完版ももっと歌われてもいい魅力がありますよね。
投稿: フランツ | 2016年6月 6日 (月曜日) 21時26分
フランツさん、こんにちは。
ベートーヴェンに未完の「魔王」があったとは知りませんでした。
いいですね!
時々、曲中にシューベルトの魔王を感じました。
言葉や語感を生かして作るとそうなるということでしょうか。
ベートーベンは器楽的な歌曲を書く人だったようですので、もしピアノパートも完成させていたら、もっともっと劇的な表現が広がったかもしれませんね。
貴重な音源をありがとうございました(*^^*)
投稿: 真子 | 2016年6月 8日 (水曜日) 11時02分
真子さん、こんばんは。
私も音源が聞けるようになっていたとは最近まで気づきませんでした。
ベートーヴェンの「魔王」も役割ごとに声域を変えているのが興味深く、そこがシューベルトと共通しているように思います。
一方でシューベルトよりも詩の語りを重視しているように感じられます。
劇的でありながら、歌曲としての枠組みも守っているような印象です。
補完した人のピアノパートもなかなかいいですよね!ベートーヴェンがどのような伴奏を付けようとしていたのか想像するのも楽しいですね!
投稿: フランツ | 2016年6月 8日 (水曜日) 22時10分