デジュー・ラーンキ/ピアノ・リサイタル(2015年7月8日 Hakuju Hall)
第16回 ワンダフルoneアワー
デジュー・ラーンキ ピアノ・リサイタル
2015年7月8日(水)15:00 Hakuju Hall
デジュー・ラーンキ(Dezső Ránki)(ピアノ)
ベートーヴェン(Beethoven)/ピアノ・ソナタ 第16番 ト長調 op.31-1
ショパン(Chopin)/24の前奏曲 op.28
アンコール
リスト(Liszt)/聖ドロテアをたたえて
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この日は休暇をとって、白寿ホールの休憩なしの1時間コンサート・シリーズ「ワンダフルoneアワー」の昼の部に出かけた。
デジュー・ラーンキは数年前関西旅行中に宗次ホールで聴いたリストの「ダンテを読んで」を聴いて衝撃を受けて以来、気になるピアニストの一人となった。
今回待望のソロリサイタルは久しぶりにその妙技を堪能できて大満足の一時間強だった。
久しぶりの白寿ホール、椅子の座るところと背もたれの両方が適度に柔らかい素材で出来ていて心地よい。
今回はラーンキのピアノの響きと、ラーンキのうなり声(!)と、客席のおじ様の気持ちよさそうな寝息が三重奏を奏でていた。
最初のベートーヴェンは、円熟味たっぷりの味わいあふれる演奏。
第1楽章の右手と左手のずれる効果も必要以上に強調せず、それでいて確実にずれは感じられるというコントロールの妙が感じられる演奏だった。
第2楽章も静かな歌心にあふれた演奏。ややゆっくりめのテンポながらだれることなく美しく端正に演奏された。
第3楽章の出だしはいつもモーツァルトの「トルコ行進曲」を思い出してしまう。この楽章の高音のパッセージの弱音の美しさと他の部分とのダイナミクスの違いが明確に感じられた演奏で素晴らしかった。
ショパンの「24の前奏曲」を実演で聴くのはおそらくはじめて。
「雨だれ」や太田胃散のCM曲など数曲はばらで知っているものの全曲を通して聴いたことがほとんどなかった。
だが、全曲通すことによって得られるまとまりが感じられた。
様々なキャラクターの作品が並置されているのだが、それぞれが大きなひとつの作品の構成要素として存在しているのを、ラーンキの豊かでみずみずしい響きの演奏を聴きながら感じた。
大きなものに包まれるような感触と、温かみのあるタッチ、それに自己に溺れることのないコントロールの行き届いたテンポ感覚で、ショパンの作品のありのままが提示されたような心地よさを感じた。
アンコールは以前のコンサートでも聴いたリストの「聖ドロテアをたたえて」。
余程ラーンキのお気に入りの作品なのだろう。
愛らしい小品である。
1時間のコンサートでも、これだけ密度の濃い充実した演奏を聴くと、それだけで満足して帰路につくことが出来る。
そんな素敵なコンサートだった。
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