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シューベルト/「花の便り」を聴く

シューベルトは多くの花の歌をつくりましたが、中でも地味ながら、花に女性への恋心を託すという内容に作曲した慎ましやかな「花の便り」という歌曲は、リート愛好家の心にそっと寄り添う小品と言えるでしょう。

Der Blumenbrief, D622
 花の便り

Euch Blümlein will ich senden
Zur schönen Jungfrau dort,
Fleht sie mein Leid zu enden
Mit einem guten Wort.
 きみたち、花々をぼくは贈ろう、
 あそこの美しい娘さんに。
 彼女がぼくの苦しみを終わらせてくれるようにお願いしよう、
 やさしい言葉をかけてくれるように。

Du Rose kannst ihr sagen,
Wie ich in Lieb' erglüh',
Wie ich um sie muß klagen
Und weinen spät und früh.
 ばらよ、きみは彼女に伝えることができる、
 ぼくがどれほど愛に心を燃やしているかを。
 ぼくが彼女を思うあまりどれほど嘆き、
 泣いているのかを、朝晩問わずにね。

Du, Myrte, flüstre leise
Ihr meine Hoffnung zu,
Sag': auf des Lebens Reise
Glänzt ihm kein Stern als du.
 ねえ、ミルテよ、そっと彼女にささやいてよ、
 ぼくの望みを。
 こう言うんだ、人生の旅路において
 彼にはきみほど輝く星はないんだよと。

Du Ringelblume deute
Ihr der Verzweiflung Schmerz;
Sag' ihr: des Grabes Beute
Wird ohne dich sein Herz.
 きんせんかよ、きみは
 彼女に絶望の苦しみを示しておくれ。
 彼女に言っておくれ、お墓のえじきに
 なってしまうよ、きみがいないと、彼の心はと。

詩:Aloys Wilhelm Schreiber (1761?3 - 1841)
曲:Franz Peter Schubert (1797 - 1828)

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エリー・アーメリング(Elly Ameling)(S)&ドルトン・ボールドウィン(Dalton Baldwin)(P)

アーメリングのよく響く表情豊かな美声を聴いているだけでうっとりとしてしまいます。ボールドウィンも歌とぴったり一体となって見事です。

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(Dietrich Fischer-Dieskau)(BR)&ジェラルド・ムーア(Gerald Moore)(P)

F=ディースカウは知的な中にもロマンティックな歌い回しも聴かせ、素敵です。ムーアがまた愛らしい響きを作り出しています。

シビラ・ルーベンス(Sibylla Rubens)(S)&ウルリヒ・アイゼンロール(Ulrich Eisenlohr)(P)

2006年9月録音。ルーベンスの細みの可憐な歌声はなかなか魅力的です。アイゼンロールも声に配慮した演奏です。

ハインリヒ・シュルスヌス(Heinrich Schlusnus)(BR)&ゼバスティアン・ペシュコ(Sebastian Peschko)(P)

シュルスヌスの朗々と美声で歌い上げる歌唱もまた自由な広がりがあっていいですね。ペシュコもそんな歌を尊重した演奏ぶりです。

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コメント

フランツさん、こんにちは。

愛らしいこの曲もとても好きです。
可憐で清澄なアメリングにぴったりの曲ですね。
でも、美しい声だけに頼らないアメリングは素晴らしい歌手ですよね。

シビラ・ルーベンスは初めて聞く名前ですが、とても高いキーで歌っているんですね。初めて聞く調でしたが、好きな声です。

ディースカウさんは、いつもより甘く歌っているのでしょうか。優しい歌い口ですね。

シュルスヌスは、プライさんのお母様が大好きな歌手で、学校から帰ると、よくシュルスヌスがかかっていたそうです。プライ少年の心にシュルスヌスの歌は刻み込まれていたのでしょうね。後に歌手になってからも、シュルスヌスを尊敬していたようですね。

投稿: 真子 | 2015年4月 6日 (月曜日) 13時19分

そうですよね。確かに花を恋する女性への想いを託す歌がいくらもありますね。私の大好きな歌曲集『水車屋』でも花が哀しくも美しいですから。

ミルテはどんな花か、キンセンカは?
と、今更ながら検索してみました。
ドイツやオーストリアで、詠うバラは何色なのでしょう?
私は黄色のバラが好きですが。
庭に昔咲いていた深紅のバラも妖しいなあ。

投稿: Zu-Simolin | 2015年4月 6日 (月曜日) 18時31分

真子さん、こんにちは。

真子さんもこの曲お好きでしたか。
愛らしい作品ですよね。
このこじんまりとした中を魅力で満たしてしまうシューベルトの凄さをあらためて感じます。

興味深いご感想、有難うございます!
アーメリングの美声だけでない素晴らしさを真子さんと共有できて嬉しいです(^^)

ルーベンスは、オリジナルキーをさらに上げているんでしょうかね。高音がきらきらと輝いていますね。

ディースカウは世に思われている以上にロマンティックな歌い方も出来るのだと最近感じることが多く、この曲でも甘美な雰囲気をそこはかとなく漂わせていて、素敵でした。

シュルスヌスはプライの母親が好きだったのですね。シュルスヌスの没後の記念公演にプライが招聘されたのも縁を感じますね。

投稿: フランツ | 2015年4月 7日 (火曜日) 12時44分

Zu-Simolinさん、こんにちは。

動植物に伝言を依頼するのは、歌曲ではお馴染みのテーマですよね。
「水車屋」しかり「鳩の便り」しかり、青臭いくらいの純朴な感情が作曲家たちによって作品に昇華されるのは素晴らしいことだなと思ったりします。

「花」からいろいろと好奇心をふくらませておられるのは、文筆家のZu-Simolinさんらしいですね。
シューベルトの「野ばら」は赤ですよね。
ばらを歌った作品を調べてみるのも面白そうですね!

投稿: フランツ | 2015年4月 7日 (火曜日) 12時45分

フランツさん、こんにちは。

ディースカウさんを表する時に使われる「理知的。計算しつくされている。完璧」は、ご本人には時には本意でなかったかもしれませんね。
褒め言葉として書かれていたのでしょうけれど、
音楽、特に声楽には愛の歌が多いですし、声楽家はロマンチストでなければ務まらない気もしますので。
私も、音楽を先入観なく聞きたいと思うこのごろです。

もしお忙しくなければシューベルトの「春の想い」をリクエストしたいな、と思います。
Sabine Wüthrichというスイスのソプラノの人の声がとても可憐で、春を呼んで来てくれるようで素敵です(入手できる彼女のCDは1枚しかなく、「フランスのノエル」を先日やっとヤフオクで落札できました)

投稿: 真子 | 2015年4月10日 (金曜日) 18時45分

真子さん、こんばんは。

F=ディースカウに対する評価はある側面においてその通りとうなずけるところもある一方で、それだけではないという思いにさせられることもありますね。
私は聞き比べを続けてみて、ディースカウが思った以上にロマンティックでとろけるような表現を試みていることを知り、彼の特質は一言では言い表せない幅広さがあるなぁと思ったものでした。
真子さんのおっしゃるとおり、本当に先入観なしに音楽と接していきたいですね。

シューベルトの「春の想い」、私も大好きな作品です。昔はよく下手なピアノで伴奏パートを弾いて喜んでいたものでした。
Zu-Simolinさんからのリクエストの次にそちらの記事にとりかかりますね。
気長にお待ちください!

Sabine Wüthrichは動画サイトで聴きましたが、可憐で芯のある声が魅力的ですね。

投稿: フランツ | 2015年4月10日 (金曜日) 21時50分

フランツさん、こんにちは。

お忙しいのに、わがまま言ってすみません(^_^;)
楽しみにお待ちしています。
この曲のピアノパートを弾いておられたのですね♪
私もレッスンで歌った曲で、思い入れがあります。春になると歌いたくなる曲ですね(*^^*)

ディースカウさんの評への複雑なお気持ちよくわかります。
私もプライさんの評で同じ気持ちになりましたから。彼の歌は思われている以上に考えて練られて歌われたものだ、と。
フッシャー=ディースカウVSヘルマン・プライという対比を、ことさらに作ろうとしたのかもしれませんね。
聴き比べは楽しいし、好みはありますが、片方を貶めるようなことはしたくないですね(そういう思いにさせてくださったのはフランツさんなので感謝しています)。

投稿: 真子 | 2015年4月11日 (土曜日) 10時26分

真子さんのリクエスト、私も同乗させてください。
プレッシャーが2倍になりました?

投稿: Zu-Simolin | 2015年4月11日 (土曜日) 20時08分

真子さん、こんにちは。

いえいえ構いません。
真子さんは歌っておられたのですね。凄いです!
そんな思い出深い作品でしたら、記事にして楽しんでいただきたいです(^^)

ディースカウvsプライの構図は周りだけでなく、ご本人たちも意識せざるを得なかったようですね。
指揮者、ピアニストとして両者と共演したサヴァリッシュは、二人の違いについて「二人を比較することは、灘の酒と○(地名を忘れてしまいました)の酒を比べるようなものだ」と言ったそうです。つまり、どちらも味わいの異なる名人であり、優劣をつけることは意味がないと言いたかったのだと思います。

プライの歌が作りこまれたものであることは、彼の自伝を読めば明白ですよね。それをあれだけ自然に聞かせるのは彼のすごさだと思います。

投稿: フランツ | 2015年4月12日 (日曜日) 17時09分

Zu-Simolinさん、こんにちは。

真子さんのリクエストに同乗、もちろんお受けしますよ。
もう慣れましたのでプレッシャーには感じません(笑)
Zu-Simolinさんからの宿題の作品の次に「春の思い」にとりかかろうと思いますので、しばらくお待ちください。春が終わる前に投稿できればいいのですが(^-^;

投稿: フランツ | 2015年4月12日 (日曜日) 17時12分

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