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シューベルト/「夜の明るさ」D892(テノール独唱&男声合唱&ピアノ)

Nachthelle, D 892, für Tenor, Männerchor und Klavier
 夜の明るさ

Die Nacht ist heiter und ist rein,
Im allerhellsten Glanz,
Die Häuser schau'n verwundert drein,
Steh'n übersilbert ganz.
 夜は晴れ渡り、澄みきっている、
 この上ない明るい輝きの中で。
 家々はいぶかしげな様子で
 すべてを銀色に染めて立っている。

In mir ist's hell so wunderbar,
So voll und übervoll,
Und waltet drinnen frei und klar,
Ganz ohne Leid und Groll.
 私の中は明るさで、これほど素晴らしく、
 これほど満ちあふれている。
 そしてその中は自由で澄んでいる、
 悩みも憤りも全くなく。

Ich fass' in meinem Herzenshaus
Nicht all' das reiche Licht,
Es will hinaus, es muss hinaus,
Die letzte Schranke bricht.
 私はわが心の家の中に
 豊かな光をすべて捕えているのではない。
 それは外へ行きたがり、外へ行かねばと
 最後の障壁を突き破るのだ。

詩:Johann Gabriel Seidl (1804-1875)
曲:Franz Peter Schubert (1797-1828)

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Zu-simolinさんのリクエストにお答えしてシューベルトの合唱曲「夜の明るさ」を聴いてみましょう。
テノール独唱と男性合唱が同じテキストを繰り返しながら交互に歌い進めていきます。
ピアノはちかちか点滅する光を表現しているようです。
第3節3~4行の月や星の光が心の外に出ようとしていると歌われる箇所でメロディーに動きが見られるのが聴きどころの一つと言えるでしょう。

ペーター・シュライアー(T)&Capella Bavariae&ヴォルフガング・サヴァリシュ(P)

早めのテンポで歌われるシュライアーの清澄な声の表現力に引き込まれます。合唱の素朴さも好ましいです。サヴァリシュのスマートなピアノの響きも印象的です。

マルクス・シェーファー(T)他&ウルリヒ・アイゼンローア(P)

M.シェーファーは美声でしっとりと歌い上げます。合唱は丁寧な歌いぶりです。アイゼンローアも光の点滅を美しく演奏しています。

ダニエレ・ベーレ(T)&RIASベルリン室内合唱団&Sveinung Bjelland(P)

まろやかな美声で歌われるベーレの歌声に惹きつけられます。合唱とピアノもよい演奏です。

ヤン・ペトリカ(T)&アルノルト・シェーンベルク合唱団&ピエール=ロラン・エマール(P)

ペトリカは合唱とよく溶け込んだ自然な歌唱を聴かせます。合唱も美しいです。エマールが細やかな表情を聴かせてくれます。

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二期会/ヴェルディ作曲 歌劇「リゴレット」(2015年2月21日 東京文化会館 大ホール)

《パルマ王立歌劇場との提携公演》
東京二期会オペラ劇場
リゴレット
オペラ全3幕
日本語字幕付き原語(イタリア語)上演
台本:フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ
作曲:ジュゼッペ・ヴェルディ

2015年2月21日(土)14:00 東京文化会館 大ホール

マントヴァ公爵:古橋郷平
リゴレット(公爵に仕えるせむしの道化):上江隼人
ジルダ(リゴレットの娘・16歳):佐藤優子
スパラフチーレ(ブルゴーニュ生まれの殺し屋):ジョン ハオ
マッダレーナ(スパラフチーレの妹):谷口睦美
ジョヴァンナ:与田朝子
チェプラーノ伯爵:原田勇雅
チェプラーノ伯爵夫人:杣友惠子
モンテローネ伯爵(チェプラーノ伯爵夫人の実父):長谷川 寛
マルッロ(公爵の廷臣):加藤史幸
マッテオ・ボルサ(公爵の廷臣):今尾 滋
マントヴァ公爵夫人の小姓:小倉牧子

合唱:二期会合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
指揮:アンドレア・バッティストーニ

演出:ピエール・ルイジ・サマリターニ/エリザベッタ・ブルーサ

美術:ピエール・ルイジ・サマリターニ
照明:アンドレア・ボレッリ

合唱指揮:佐藤 宏
演出助手:菊池裕美子

舞台監督:佐藤公紀
公演監督:直野 資

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二期会公演のヴェルディ作曲「リゴレット」を見てきた。

演出家は2人の名前がクレジットされているが、サマリターニ氏は随分昔にお亡くなりになっており、ブルーサ氏がサマリターニ氏の演出を引き継いだものということだろうか。
「リゴレット」はヴィクトル・ユゴーの原作を元にイタリア語版のリブレットに作曲された名作。
筋書きはドロドロしていて、登場人物の誰にも感情移入できないという印象を受けるが、オペラとしては優れた音楽に仕上がっていて、見る者を惹きつける要素は盛り沢山であるように思われる。
好きなオペラとして名前を第一に挙げるわけではないが、上演されれば足を運びたくなる作品という感じだ。

実際、感情移入出来ないはずの登場人物たちの怒りや喜びや悲しみの感情が歌手たちの優れた表現力で歌われた時の説得力の強さといったら、人物設定の特異さを超えて、胸を打つシーンも多かったほどである。

演出は読み替え一切なしのストレートなもの。
宴のシーンの廷臣、婦人たちの衣装から舞台装置まで、過去の名画を見ているかのようだった。
第2幕の奥行のあるセットも、第3幕の殺し屋の住居とその周辺の扱いなども、ぴったりはまっていたように思う。

歌手たちは若手から中堅、ベテランまで幅広いが、やはりリゴレット役の上江隼人の道化としての表現と、娘を思う親としての側面、そして娘を汚された相手である公爵への強い怒りの表現など、どのシーンも圧倒的な表現力で圧巻だった。
素晴らしい歌手である。
そして、その娘ジルダを演じた佐藤優子がまた良く伸びる芯のある美声(時折エディト・マティスを思い起こさせた)で、親への思いと、公爵への様々な感情の機微を丁寧に表現していて素晴らしかった。
マントヴァ公爵の古橋郷平は長身で舞台映えする容姿に恵まれ、しかも声の質もみずみずしく素晴らしく、第2幕で若干不安定になったのが惜しまれるが、いい歌を聴かせてくれたといえるのではないか。
殺し屋スパラフチーレを演じたジョン ハオの怪しい雰囲気に満ちた役作りや、その妹のマッダレーナを演じた谷口睦美の堂々たる歌唱なども聴きものだった。

アンドレア・バッティストーニ指揮の東京フィルハーモニー交響楽団が実に素晴らしく、劇的で起伏に富んだ雄弁な表現力で、ヴェルディのドラマを推進力をもって聴かせてくれた。
今回最も聴衆の拍手が大きかったのはバッティストーニに対してだった。

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エリー・アーメリング82歳の誕生日!

ソプラノのエリー・アーメリング(Elly Ameling)が本日(2015年2月8日)82歳の誕生日を迎えました!
おめでとうございます!!

さらに、彼女のマスタークラスの予定がネット上にあがっていました!

 こちら

イギリスのウィグモア・ホールで、2015年6月3日~4日にかけてマスタークラスを開くそうです。
相変わらずお元気に活動されていて頭が下がります。

そして、録音発売情報です!
アーメリングがルドルフ・ヤンセンと1987年7月2日にOMEGAレーベルにライヴ録音したシューベルト歌曲集(タングルウッド・ライヴ)がBrilliant Classicsから再発売されました。

試聴はこちら

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アルド・チッコリーニ逝去

ピアニストのアルド・チッコリーニ(Aldo Ciccolini)氏が2015年2月1日に89歳で亡くなったそうです。
晩年の過去2回の来日公演は私にとってかけがえのない思い出になりました。
レパートリーの広さも魅力でしたが、美しいタッチと快適なテンポ感が印象的でした。

そういえば彼はサティの歌曲全集の録音も残しており、さらにシュヴァルツコプフとの歌曲の夕べのライヴ録音もかつて出ていました。
万能型のピアニストだったのでしょうね。
合掌。

 ソース

サティ「ジムノペディ第1番」

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内藤明美&平島誠也/24のシェック歌曲

ぐらばー亭さんが、なんと2007年のシェック歌曲コンサートの録音もアップしてくださいました。

 こちら

シェックの歌曲をこれだけまとめて聴ける機会はなかなかありませんよ!
あらためて聴いてみると、スイス出身のシェックはドイツリートの伝統に則った、詩と音楽の緊密な結びつきを実現していたと思います。
それに若かりし頃の作品が集められたためかもしれませんが、とても聴きやすいです。
はじめて聴く方もきっとリートを聴く喜びを満喫していただけると思います。
動画は歌詞の日本語訳も表示されていますので、シェック歌曲に親しむのに最適です。

実は私が内藤明美さんと平島誠也さんの歌曲の夕べを初めて聴いたのが、このコンサートだったので、とりわけ思い出深いコンサートでした。
内藤さんの深く温かい声と、平島さんの清涼感あふれる美しいピアノが印象的でした。

ちなみにこのコンサートを聴いた時の感想は以下の記事をご覧ください。

 こちら

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