« 岡田博美/ピアノリサイタル2014~悪魔のささやき-ショパンとスクリャービン~(2014年12月13日 東京文化会館 小ホール) | トップページ | オランダのWebサイト"Beeld en Geluid"でのアーメリングの録音 »

R.シュトラウス「四つの最後の歌」

R.シュトラウス、アニバーサリーイヤーの最後にはやはり「四つの最後の歌」をお聴きいただきましょう。
R.シュトラウス最晩年の傑作「四つの最後の歌」は「春」「九月」「眠りにつく時」がヘルマン・ヘッセの詩、そして「夕映えの中で」がアイヒェンドルフの詩による作品です。
曲順については、作曲家の意図が分かるものが残っていないらしく、そもそも4曲をツィクルスにしようとしていたのかさえはっきりしていないようです。
従って、どれがオリジナルということは言えないようで、1950年の初演時もこの順序とは異なっていました(キルステン・フラグスタートの歌唱)。
成立過程などについては、音楽之友社発行の「四つの最後の歌」ミニチュア・スコアの広瀬大介氏の解説が詳しいです。
私はシュヴァルツコプフとヤノヴィッツの歌唱で、この作品のとりことなりましたが、今回はあえて珍しいアーメリングによる歌唱でお楽しみいただこうと思います。
彼女の声で聴くとオーケストラ歌曲の壮大さに親密さが加わるのが新鮮に感じられるのではないでしょうか。
演奏はアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団、指揮はヴォルフガング・サヴァリシュで、1983年(アーメリング50歳)の録音です。

Frühling
 春

In dämmrigen Grüften
Träumte ich lang
Von deinen Bäumen und blauen Lüften,
Von deinem Duft und Vogelsang.
 薄暗い墓穴で
 私は長いこと夢見ていた、
 おまえの木々や青い風のこと、
 おまえの香りや鳥の歌のことを。

Nun liegst du erschlossen
In Gleiß und Zier,
Von Licht übergossen
Wie ein Wunder vor mir.
 今おまえは姿をあらわし、
 輝きと装飾をまとい、
 光を注がれ、
 奇跡のように私の前にいるのだ。

Du kennst mich wieder;
Du lockst mich zart.
Es zittert durch all meine Glieder
Deine selige Gegenwart!
 おまえは再び私に気付き、
 やさしく私を誘う。
 私の全身に震えが走る、
 おまえがここにいる幸せに!

詩:Hermann Hesse (1877.7.2, Calw - 1962.8.9, Montagnola, Switzerland)
曲:Richard Strauss (1864.6.11, München - 1949.9.8, Garmisch-Partenkirchen, Germany)

--------------

September (aus "Vier letzte Lieder")
 九月

Der Garten trauert,
Kühl sinkt in die Blumen der Regen.
Der Sommer schauert
Still seinem Ende entgegen.
 庭は悲しみにくれ、
 冷たく花の中に雨が沈み落ちる。
 夏は身震いする、
 静かに最期の時に向かって。

Golden tropft Blatt um Blatt
Nieder vom hohen Akazienbaum.
Sommer lächelt erstaunt und matt
In den sterbenden Gartentraum.
 黄金色に一枚一枚、葉が滴り落ちる、
 高いアカシアの木から。
 夏は驚いて、力なく、
 死に行く庭の夢に微笑みかける。

Lange noch bei den Rosen
Bleibt er stehen, sehnt sich nach Ruh.
Langsam tut er die (großen)
Müdgewordnen Augen zu.
 さらに長いこと、バラのそばに
 夏はとどまり、休みたいと願う。
 ゆっくりと夏は、
 眠くなった目を閉じるのだ。

詩:Hermann Hesse (1877.7.2, Calw - 1962.8.9, Montagnola, Switzerland)
曲:Richard Strauss (1864.6.11, München - 1949.9.8, Garmisch-Partenkirchen, Germany)

--------------

Beim Schlafengehen
 眠りにつく時

Nun der Tag mich müd' gemacht,
Soll mein sehnliches Verlangen
Freundlich die gestirnte Nacht
Wie ein müdes Kind empfangen.
 いまや昼が私を疲れさせ、
 わが切なる焦がれる思いを
 親しげに星の夜が
 疲れた子供のように迎えいれてほしい。

Hände, laßt von allem Tun,
Stirn, vergiß du alles Denken,
Alle meine Sinne nun
Wollen sich in Schlummer senken.
 両手よ、行いをやめよ。
 額よ、あらゆる思考を忘れよ。
 あらゆるわが感覚がいま
 眠りに沈みたがっている。

Und die Seele unbewacht,
Will in freien Flügen schweben,
Um im Zauberkreis der Nacht
Tief und tausendfach zu leben.
 そして人目につかずに魂は
 自由な翼で漂おうとしている、
 夜の魔界の中で
 深く、千倍も生きるために。

詩:Hermann Hesse (1877.7.2, Calw - 1962.8.9, Montagnola, Switzerland)
曲:Richard Strauss (1864.6.11, München - 1949.9.8, Garmisch-Partenkirchen, Germany)

--------------

Im Abendrot
 夕映えの中で

Wir sind durch Not und Freude
Gegangen Hand in Hand;
Vom Wandern ruhen wir
Nun überm stillen Land.
 私たちは苦楽の中を
 手に手をとりあって歩んできた。
 旅はもう終わりにして
 静かなところで休もうではないか。

Rings sich die Täler neigen,
Es dunkelt schon die Luft,
Zwei Lerchen nur noch steigen
Nachträumend in den Duft.
 あたりでは、谷が傾き、
 すでに大気は暗くなっている。
 二羽のひばりはまだ
 香りたつ中、夢見心地で上っていく。

Tritt her und laß sie schwirren,
Bald ist es Schlafenszeit,
Daß wir uns nicht verirren
In dieser Einsamkeit.
 こちらへおいで、ひばりには飛ばせておけばいい、
 じきに眠る時間だ、
 私たちが道に迷わないように、
 この孤独の中で。

O weiter, stiller Friede!
So tief im Abendrot,
Wie sind wir wandermüde -
Ist dies etwa der Tod?
 おお広大で静かな平穏!
 夕映えの中でこんなに深く。
 私たちは旅することに疲れきった、
 もしやこれが死というものなのか?

詩:Josef Karl Benedikt von Eichendorff (1788.3.10, Schloß Lubowitz bei Ratibor - 1857.11.26, Neiße)
曲:Richard Strauss (1864.6.11, München - 1949.9.8, Garmisch-Partenkirchen)

| |

« 岡田博美/ピアノリサイタル2014~悪魔のささやき-ショパンとスクリャービン~(2014年12月13日 東京文化会館 小ホール) | トップページ | オランダのWebサイト"Beeld en Geluid"でのアーメリングの録音 »

音楽」カテゴリの記事

リヒャルト・シュトラウス Richard Strauss」カテゴリの記事

コメント

王子ホールのクリスティアーネ・カルク ドイツリートの夕べ
正統的で歌声そして表現力も素晴らしかったです。
今度の月曜も東京文化会館でリサイタルがあります。
最後の4つの歌は絶妙なマルティノーの伴奏も相まって本当に名演でした。
http://www.tomin-gekijo.or.jp/lineup/music/2016/03/000509.html
アンコールは「葵」と「あした」でした。
また5/20 にBSプレミアム クラシック倶楽部でも放映ありますのでお見逃しなく。

投稿: jun | 2016年3月12日 (土曜日) 21時11分

junさん、こんばんは。

クリスティアーネ・カルクのコンサート・レポートを有難うございました。
王子ホールのチケットは早々と完売になってしまい、私は聴けなかったので、どうだったのか気になっていました。
正統的な名演だったとのこと、頼もしい限りですね。今後もしばしば来日してほしいものです。
来週の月曜日のリサイタルは、残業さえなければ当日券で聴きたいと思っているので、もし聴けましたらブログの記事でご報告したいと思います。
「葵」はまだ生で聴いたことがないので、来週もアンコールで聴けるとなると楽しみです。
クラシック倶楽部も忘れずにチェックしますね!
貴重な情報を有難うございました!

投稿: フランツ | 2016年3月12日 (土曜日) 22時52分

junさん、再びこんばんは。

結局月曜日は仕事の都合でカルク、聴けませんでした・・・。
クラシック倶楽部を楽しみに待つことにしますね!

投稿: フランツ | 2016年3月15日 (火曜日) 20時13分

残念でしたね〜
私は王子すばらしかったので昨日も聴きに行きました。
彼女の歌声は時折ルチア・ポップを思い出させるところがあり、キュートなバーバラ・ボニーとは傾向は違うような気がします。
マルティノーも多彩な音色が素晴らしかったのでとても堪能致しました。
是非on Air楽しみにしてくださいね!

投稿: jun | 2016年3月15日 (火曜日) 23時38分

junさん、こんばんは。

junさんは上野も聴かれたのですね。
いいなぁ・・・。
ルチア・ポップの声に近いのですね。
ポップも一度だけ生で聴けたのがいい思い出です。
マーティノーはいいピアニストですよね。
彼の実演ももっと聴いてみたいものです。
これはクラシック倶楽部がますます楽しみになってきました!
レポート、有難うございました。

投稿: フランツ | 2016年3月17日 (木曜日) 20時30分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: R.シュトラウス「四つの最後の歌」:

« 岡田博美/ピアノリサイタル2014~悪魔のささやき-ショパンとスクリャービン~(2014年12月13日 東京文化会館 小ホール) | トップページ | オランダのWebサイト"Beeld en Geluid"でのアーメリングの録音 »