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日本カール・レーヴェ協会/レーヴェ&ドイツ歌曲のワンダーランド(2014年11月2日 王子ホール)

日本カール・レーヴェ協会コンサート2014(Nr.27)
レーヴェ&ドイツ歌曲のワンダーランド

2014年11月2日(日)14:00 王子ホール(全席自由)

楢崎誠広(バス・バリトン)佐藤文雄(ピアノ)
近藤京子(メゾ・ソプラノ)鈴木陽子(ピアノ)高井洋子(クラリネット)
櫻井利幸(バリトン)堀江明子(ピアノ)
西 義一(バリトン)平島誠也(ピアノ)
秋葉京子(メゾ・ソプラノ)梅澤直子(ピアノ)
佐藤征一郎(バス・バリトン)大須賀恵里(ピアノ)堀越みちこ(ヴァイオリン)

楢崎誠広(バス・バリトン)佐藤文雄(ピアノ)
ブラームス(Brahms)/月に寄せてOp.71-2
ブラームス/愛の女神は遠くの国からやってきたがOp.33-4
ブラームス/別れなければならないのか?Op.33-12
レーヴェ(Loewe)/詩人トムOp.135

近藤京子(メゾ・ソプラノ)鈴木陽子(ピアノ)高井洋子(クラリネット*)
レーヴェ/ネックOp.129-2
ブラームス/鎮められた憧れOp.91-1*
ブラームス/聖なる子守歌Op.91-2*

櫻井利幸(バリトン)堀江明子(ピアノ)
メンデルスゾーン(Mendelssohn)/あいさつOp.19-5
メンデルスゾーン/春のうたOp.19-1
メンデルスゾーン/冬のうたOp.19-3
メンデルスゾーン/旅のうたOp.34-6
レーヴェ/鐘のお迎えOp.20-30
レーヴェ/わたしの心は暗いOp.5-5

~休憩~

西 義一(バリトン)平島誠也(ピアノ)
R.シュトラウス(R.Strauss)/献呈Op.10-1
R.シュトラウス/万霊節Op.10-8
レーヴェ/アーチバルド・ダグラスOp.128

秋葉京子(メゾ・ソプラノ)梅澤直子(ピアノ)
レーヴェ/見はるかす山やまの峰しずか(「旅人の夜の歌」より)Op.9 H1-3a
レーヴェ/天より来たりて(「旅人の夜の歌」より)Op.9 H1-3b
R.シュトラウス/あしたOp.27-4
R.シュトラウス/解き放たれた心Op.39-4
R.シュトラウス/たそがれの夢Op.29-1

佐藤征一郎(バス・バリトン)大須賀恵里(ピアノ)堀越みちこ(ヴァイオリン*)
ゲーテの詩による「魔王」の作品比較演奏の試み
コローナ・シュレーター(Corona Schröter: 1751-1802)/魔王
ライヒャルト(Reichardt: 1752-1814)/魔王
シュポーア(Spohr: 1784-1859)/魔王Op.154-4*
レーヴェ/魔王Op.1-3

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バラードの大家カール・レーヴェの作品研究・演奏に人並みはずれた情熱を注いでいるバス・バリトンの佐藤征一郎氏が会長を務める日本カール・レーヴェ協会の第27回コンサートを聴いた。
14時に始まり、休憩15分をはさんで終演が16時半という大変ボリュームのある充実したコンサートだった。
6人の歌手と伴奏者が必ずレーヴェの作品を含めて、他の作曲家の作品も併せて歌うという趣向のようだ。
歌手は今回ソプラノとテノールがいない為、深みをもった声の方々の競演となった。
レーヴェの歌曲(バラードとリート)は普段めったにリートのコンサートで聴く機会がない。
それは本国ドイツでも似たような状態らしい。
佐藤征一郎さんはその長年のレーヴェに対する功績によって、国際カール・レーヴェ協会の名誉会員に外国人としてはじめて今年認定されたとのこと。
歌手としては、プライ、アダム、モル、ディースカウ、シュライアー、トレーケルに続いての認定とのことで、佐藤さんのレーヴェ演奏がいかに評価されているかの証だろう。
おめでとうございます!

演奏は若手の楢崎さん、近藤さんがういういしい歌唱を聴かせ、その後にベテランの方々の含蓄あふれる演奏が続いた。
ブラームスの作品91は普段ビオラ助奏だが、今回はクラリネット版での演奏で、貴重な機会だった(ブラームスのヴィオラ・ソナタもクラリネットで演奏されるし、両者は音色的に近いとされているのだろうか)。
櫻井さんのメンデルスゾーンはすがすがしく、「冬のうた」の悲しい表情も見事だった。
西さんのレーヴェ「アーチバルド・ダグラス」は10分以上の大作を明瞭な語り口で素晴らしく魅力的に聴かせてくれた。
秋葉さんが大好きとおっしゃるレーヴェの「旅人の夜の歌」2曲は、秋葉さんの深みが心に沁みた。

そして佐藤征一郎氏はゲーテの「魔王」による4人の作曲家による比較演奏という非常に興味深い試みを聴かせてくれた。
中でもコローナ・シュレーターは女優でもあり、「魔王」が劇中歌として歌われる芝居「漁師の娘」のヒロイン、ドルトヒェン役を演じた際に節を付けたものが楽譜として残っているようで、佐藤さんは簡素な有節歌曲にさすがのドラマを盛り込んで、聞き手の心をとらえ続けた。
ゲーテのお気に入り、ライヒャルトも簡素な作品で、そこから佐藤さんの迫真の声の演技が冴えわたっていた。
シュポーアの「魔王」はヴァイオリン助奏が加わり、ロマン派のなまめかしさも感じられた。
そして有名なレーヴェの「魔王」での佐藤氏の迫真の歌唱が聴けて大満足であった。
もう70代だそうだが、現役の素晴らしい歌いっぷりであった。

ピアニストは歌手ごとにそれぞれ異なる方々だったが、みな個性をもって歌曲の核心に触れたいい演奏を聴かせてくれた。
とりわけ平島誠也氏のシュトラウスでの雄弁かつ配慮に満ちた演奏がさすがだったし、「アーチバルド・ダグラス」のドラマを見事に構築していた。

レーヴェの普及において佐藤氏のこれまでに行ってきた活動や現在も継続中の活動がどれほど大きな意義をもっていることか。
私たちが将来もレーヴェのバラードやリートに接する機会が保たれるように、今後の協会の活動にも注目していきたい。

珍しい作品も有名な作品も様々な世代の演奏家たちで聴くことの出来た楽しいコンサートだった。
まさにリート好きにとっては「ワンダーランド」であった。

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コメント

わたしも昨日この演奏会を聴いておりました。狭い会場でしたのにお目にかかれず残念でした。わたしは平島さんのシュトラウスのピアノが一番感動的でしたが、仰るとおり、ベテラン歌手陣の歌は皆良かったですね。若手では近藤京子さんが素晴らしかったと思います。金曜日は内藤明美さんと平島さんの「架空庭園の書」を聴きに行かれますか? そちらでお会いできれば幸いです。

投稿: 甲斐 | 2014年11月 3日 (月曜日) 13時00分

フランツさん、こんにちは。

素晴らしく濃厚なリートコンサートにお出かけになったんですね!

まずは、佐藤征一郎さん、国際カール・レーヴェ協会の名誉会員認定おめでとうございます!
佐藤さんは、私が歌を始めた頃から日本の声楽界を牽引していく素晴らしいバスでした。初の外国人認定が日本人というのも嬉しいですね。

そしてすみません、プライさんにも反応しました(笑)彼が、国際カール・レーヴェ協会の名誉会員にもなってらっしゃったのは知らなかったです。実は、プライさんが、国際フランツ・シューベルト協会の名誉会員だったから、私も入会していて、投稿もさせていただいていたことがあります。
すみません、脱線して(^^;)

さて、「魔王」を4人の作品で聴き比べるコンサート等そうそうないですよね。
また、男声女声の低音系歌手だけのコンサートというのも、深まる秋に素敵な企画ですね♪
やはり、低音で聴くと音楽の中にじっくり身をゆだねる気分になりますものね。

クラシックファンの中でも声楽はあまりメジャーな立ち位置でなく、更にその中でもリートは地味扱いですが、日本人は世界でもリート好きな国民ではないかと思います。
このように素晴らしいリートを歌う日本人歌手の方々がいらっしゃることも嬉しいですね。

投稿: 真子 | 2014年11月 3日 (月曜日) 13時14分

甲斐さん、こんばんは。
昨日いらしていたのですね!
お会い出来ず残念です。
確かに平島さんのシュトラウス2曲での演奏には凄みを感じました。
音に魂がこもっていて、流れを気持ちに沿って揺らしながらも決してひとりよがりにならず、歌の間合いにぴったり寄り添ったものでした。
これこそ練達の技なのでしょうね。
若手の歌手お二人はこれからさらに良くなる余地はあったかと思いますが、ひたむきな歌いぶりが好感をもてましたし、将来が楽しみですね。
近藤さんは芯のある声が特徴的で、この個性を伸ばしていっていただきたいなぁと思いました。
内藤さんと平島さんのシェーンベルク、聴きたかったのですが、同日のシェックの「静謐な輝き」のコンサートに行く予定です(仕事が長引かなければいいのですが)。
そういうわけで平島さんのブログにも伺えない旨コメントしました。
内藤さんたちのコンサートを聴かれたら、ご感想も聞かせていただけたらうれしいです。
また何かリートのコンサートでお会いできるのを楽しみにしていますね。

投稿: フランツ | 2014年11月 3日 (月曜日) 18時40分

真子さん、こんばんは。
そうなんです。
密度の高いコンサートをたっぷり満喫してきました(^o^)

佐藤征一郎さんはオペラでのご活躍もきっと素晴らしかったのでしょうが、歌曲、特にレーヴェの全作品を演奏するシリーズを成し遂げたという凄い方ですね。
以前にもレーヴェの歌曲ばかりのガラ・コンサートを聴いたことがあり、今回久しぶりに聴きましたが、芸達者ぶりは相変わらず素晴らしかったですし、歌もまだまだ現役でした!

当日配布された分厚い資料によると、歌手の中で国際カール・レーヴェ協会の名誉会員に最初に認定されたのがプライなのだそうです。
そういえばプライは何枚もレーヴェ・アルバムを録音していますよね。
彼のレーヴェはいいですよね。

真子さんはシューベルト協会に加入されていたのですね。
どんなことを投稿されたのでしょう。
プライの存在が真子さんをシューベルト協会に導いたのですね。

「魔王」のテキストにはものすごい数の作曲家が作曲しているので、今回のような聴き比べは本当に興味深く、楽しかったです。
「魔王」ばかり集めたCDもかつて出ていました。
「魔王」の聴き比べの記事でもいつか書こうかな。

おっしゃるように日本人はリート好きが多いと思います。
この繊細な芸術は日本人と相性がいいのかもしれませんね。
日本人がこれからもリートを歌い続けていくことが、本国ドイツでの演奏家への刺激にもなるのではないかと思います。
そして日本人のリート伴奏者の層が厚いこともうれしいことです。いい伴奏家がたくさんいます。コンサートでそういう演奏家を知ることが出来るのも醍醐味です。

投稿: フランツ | 2014年11月 3日 (月曜日) 18時40分

フランツさん、こんにちは。

>「魔王」の聴き比べの記事でもいつか書こうかな。
ぜひぜひお願いします!!
今みたいにパソコンで、さっと聴けない時代でしたから、この企画は良かったですよね。
私はこのシリーズの「菩提樹」の方を持っています(ヒッシュを入れるなら、シュルスヌスも入れて欲しかったです。そして、「魔王」シリーズの中にプライさんがないのは、悲しいです・・・。)。

日本人演奏家や聴衆が、本国ドイツに刺激を与え続けていければいいですよね!
私は万年筆も大好きで、日常的に愛用していますが、ドイツのメーカーに「ペリカン」という会社があります。
「モンブラン万年筆」ほど有名ではありませんが、老舗メーカーです(この関係ちょっと、ディースカウさんとプライさんに似ていると思っています。高級路線のモンブランがディースカウさん、ちょっぴり庶民的なペリカン社がプライさん。余談ですが、71年来日公演時のパンフレットの挨拶文の筆跡が、万年筆だと思うのです。どんな万年筆をお使いだったか、すごく知りたいです(笑))。
このペリカン社の、廃番になったある万年筆が、特に日本人に愛好されていて、復刻希望の多さから本国ドイツが腰をあげたことがあるんです。限定もので、定番化はしませんでしたが。
このように、情熱が人や企業を動かすことあるんですよね。小さくても、情熱でもって、リートの火を少しでも大きくしたいですよね。

>「歌手の中で国際カール・レーヴェ協会の名誉会員に最初に認定されたのがプライなの」ですね。
わたし、友人にも気安くプライさんプライさんと言ってるので「知り合いのおじさんみたい」って笑われるんですが、実はすごい方なんですよね(笑)
ドイツ政府から功労賞もらったり、宮廷歌手だったり、ウィーン楽友協会の名誉会員だったり・・・。
バリトンの木村俊光さんが、プライさんを「雲の上の人」とおっしゃっていましたが、木村さん自身が私には「雲の上の人」です(笑)

シューベルト協会への投稿は、一つは、プライさんが亡くなった日の事を、当時の日記から転記しました(自分の書いたものですが今読んでも涙が出ます(;_;)。
もう一つは「シューベルトの音楽は、無色透明のダイヤモンドのようで、聴く人の心に反射して、何色にでも輝く」、「シューベルトの涙に隠された微笑み(この表現はプライさんから借用)」の音楽に魅了されている事などを書きました。
今もこの思いは変わっていません(*^^*)

投稿: 真子 | 2014年11月 4日 (火曜日) 10時59分

真子さん、こんにちは。

「魔王」の聴き比べは、まずは作曲家の違いで聞き比べてみようかなと思っています。
シューベルトの「魔王」の歴代の演奏をCD1枚に収録したものがありましたね。LP時代に2枚組で出ていたものを多少省いてCD化したものです。オリジナルのLPにはムーアの著書「歌手と伴奏者」の中の「魔王」の章がまるまる掲載されていました。
懐かしい企画LPです!
ただEMIの音源に限定されていたのでプライの演奏は残念ながら収録されませんでしたね。
「菩提樹」CDにシュルスヌスが含まれなかったのも同じ理由でしょう。

真子さんは万年筆を愛用されているのですね。私は進学のお祝いに親戚からいただいた記憶がありますが、宝の持ち腐れで殆ど使いませんでした。ディースカウとプライのたとえ、面白いですね(^^)
日本人の要望がドイツのメーカーを動かしてしまったとは凄いですね。
似たような話がレコードの生産についてもあって、かつてヴォルフ協会の歌曲集のまとまったレコードが計画されていたのですが、予約が足りなくておじゃんになりそうだったところ、日本人のファンが大量に予約して生産にこぎつけたそうです。
まだヴォルフなんて殆ど普及していなかった時代の話なので、日本人の好奇心の強さは誇らしいと思います。

木村俊光さんは昨年「フィデリオ」ではじめて聴けて感激しました(最後のシーンのわずかな時間でしたが)。どっしりした貫禄があって良かったです。

真子さんのシューベルト協会へのご投稿はきっとプライやシューベルトへの真子さんの深い思いのこもった内容なのでしょうね。読み返すと、当時のお気持ちが蘇ってくるのではないでしょうか。

投稿: フランツ | 2014年11月 5日 (水曜日) 12時46分

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