北村朋幹/Vol.2―室内楽(2014年10月8日 トッパンホール)
〈エスポワール シリーズ 10〉
北村朋幹(ピアノ) Vol.2―室内楽
2014年10月8日(水)19:00 トッパンホール
北村朋幹(Tomoki Kitamura)(ピアノ)
ダニエル・ゼペック(Daniel Sepec)(ヴァイオリン)
オリヴィエ・マロン(Olivier Marron)(チェロ)
ベートーヴェン(Beethoven)/ヴァイオリン・ソナタ第7番 ハ短調 Op.30-2
I Allegro con brio
II Adagio cantabile
III Scherzo. Allegro
IV Finale. Allegro
ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第4番 イ短調 Op.23
I Presto
II Andante scherzoso, più allegretto
III Allegro molto
~休憩~
ベートーヴェン/ピアノ三重奏曲第5番 二長調 Op.70-1《幽霊》
I Allegro vivace con brio
II Largo assai ed espressivo
III Presto
~アンコール~
フンメル(Hummel)/ピアノ三重奏曲 第4番 Op.65 第3楽章 ロンド ヴィヴァーチェ
ハイドン(Haydn)/ピアノ三重奏曲 ホ短調 Hob.XV-12 第2楽章 アンダンテ
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若き俊英、北村朋幹のトッパンホール、エスポワール シリーズの第2回を聴いた。
共演はアルカント・カルテットの公演で来日中のダニエル・ゼペック(VLN)とオリヴィエ・マロン(VLC)。
プログラムはオール・ベートーヴェンで、前半はゼペックとのヴァイオリン・ソナタ2曲、後半はマロンを加えた三重奏曲《幽霊》である。
ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタの中でも短調の2作品を選曲したのはどうやら北村ではなかったようだ(ちらしでのインタビューによる)。
だが、これらの2作品、隠れた名曲ではないか。
印象的な音楽が揃っている。
さすがベートーヴェン様という感じだ。
室内楽奏者としての北村のピアノは、ソロを弾く時と基本的には変わっていないように感じられる。
もちろんパートナーとの呼吸を合わすという基本はしっかり踏まえている。
その上でピアノとヴァイオリンが対等に対話をしながら進めていく。
そこによどみも躊躇もなく、積極的かつ爽快な響きが追求されていたように感じられた。
大音楽家を前にしても臆することなく、雄弁な音楽を奏でていた。
演奏に安定感があり、楽曲の構成感を失わずに丁寧に弾きこまれていた。
ペダリングもきっと細心の注意が払われていたのだろう。
音が濁らず明晰でいながら、必要なところではペダルを効果的に使っていたように感じた。
ゼペックのヴァイオリンは朗々と歌うというよりは、むしろ語りかけるような表現をしていたのが印象的だった。
後半ではチェロを加えた三重奏曲。
不気味な第2楽章では真摯な雰囲気が感じられたが、両端楽章は3人に生き生きとした躍動感があり、楽器間の掛け合いも見事だった。
私は弦楽器奏者には全く疎いのだが、ゼペックもマロンも必要以上にヴィブラートをかけていなかったように感じられた。
今の潮流なのか、それとも彼らの個性なのか、ベートーヴェンの作品に過度な思い入れがこめられ過ぎず、ちょうどよい塩梅だったように思えた。
それにしてもこの3人、すでに打ち解けているようでとても仲が好さそうだ。
中でもマロンはいたずらっ子といった感じだ。
拍手にこたえる北村がこれほど相好を崩して楽しげなのは珍しい。
演奏の成功にも影響しているのだろう。
北村のシリーズ、来年は小菅優とのピアノデュオとのこと。
こちらも楽しみにしたい。
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