マイアベーアの歌曲を聴く(その3)
マイアベーアの歌曲3回目は、「心の庭」「人間嫌い」の2曲を聴いてみます。
Der Garten des Herzens
心の庭
In meines Herzens Mitte blüht ein Gärtchen,
Verschlossen ist es durch ein kleines Pförtchen,
Zu dem den Schlüssel führt mein liebes Mädchen.
ぼくの心のまんなかには小さな庭が花を咲かせている、
そこは小さな門で閉じられている、
その鍵を使うのはぼくのいとしい娘だ。
Es ist April, komm, wolle dich nicht schämen,
Und pflücke dir heraus die liebsten Blumen,
Sie drängen sich entgegen deinen Händen.
四月だよ、おいで、恥ずかしがらないで、
一番好きな花々を摘みにおいでよ、
君の両手に向かって我先にと咲いているよ。
Je mehr du pflückst, je mehr sie wieder sprossen,
Doch willst du unberührt sie blühen lassen,
So werden sie vor ihrer Zeit vertrocknen.
君がたくさん摘むほど、花々も再びより多くの芽を出すのだよ、
でも君が手も触れずに花々の咲くのにまかせていたら
時を待たずに枯れてしまうだろう。
詩:Wilhelm Müller (1794-1827)
曲:Giacomo Meyerbeer (1791-1864)
マイアベーア作曲「心の庭」
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR)&カール・エンゲル(P)
テキストの作者は、シューベルト好きにはお馴染みのヴィルヘルム・ミュラーです。
軽快な小品で親しみやすい楽想が印象的です。
ピアノの独奏部分は男女が追いかけっこをしているかのようで微笑ましいですね。
各行の詩の強拍にピアノの和音を打ち、最後の単語のみ歌とピアノをずらしてアクセントを付けています。
詩のリズムを楽しんでいるような曲ですね。
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Menschenfeindlich
人間嫌い
Gegen mich selber in Haß entbrannt,
von vielen gemieden, von allen verkannt,
so sitz' ich den lieben, den sonnigen Tag
und lausche des Herzens unwilligem Schlag.
So sitz' ich bei Mondes vertraulichem Schein
und starr' in die leuchtende Nacht hinein,
[bei Mondes vertraulichem Schein,
in die leuchtende Nacht hinein,]
allein!
おのれへの憎悪に燃え上がり、
大勢に避けられ、みなに誤解され、
俺は晴れ渡った日にこうして腰を下ろし
怒れる心の鼓動に耳を澄ます。
月の密やかな光のもと、こうして腰を下ろし
光降り注ぐ夜に目を凝らすのだ、
[月の密やかな光のもと、
光降り注ぐ夜に、]
ひとりぼっちで!
Nie gönnt mein Herz der Liebe Raum!
Ich hasse die Wirklichkeit, hasse den Traum,
den Sommer, den Winter, die Frühlingszeit,
was gestern ich haßte, das hass' ich auch heut';
so sitz' ich bei Mondes vertraulichem Schein
und starr' in die leuchtende Nacht hinein,
[bei Mondes vertraulichem Schein,
in die leuchtende Nacht hinein,]
allein!
俺の心には愛する余地など全くない!
俺は現実を憎み、夢を憎み、
夏を、冬を、春の時節を憎む。
昨日の憎しみ、今日も憎い。
月の密やかな光のもと、こうして腰を下ろし
光降り注ぐ夜に目を凝らすのだ、
[月の密やかな光のもと、
光降り注ぐ夜に、]
ひとりぼっちで!
詩:Michael Beer (1800-1833)
曲:Giacomo Meyerbeer (1791-1864)
マイアベーア作曲「人間嫌い」
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR)&カール・エンゲル(P)
テキストはマイアベーアの弟によるものです。
怒りに身を震わせながら、息を切らせて叫んでいるような歌です。
怒りのままに感情を露わにしながらも、月の光を見つめて心を落ち着かせているのでしょう。
テキスト各節の最後にある"allein(ひとりぼっちで)"という言葉をマイアベーアは何度も繰り返しています。
四面楚歌で味方のいない状況をこの"allein"という言葉にこめているのかもしれません。
なかなか強烈なインパクトを受ける作品です。
なお、以前「梅丘歌曲会館 詩と音楽」にこの曲を投稿しましたので、その時の訳を使わせていただきました。
こちら
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