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ヘルマン・プライ&ジェラルド・ムーア/ヴォルフ&プフィッツナー、シュトラウス歌曲集 初CD化(DECCA)

DECCAレーベルの"MOST WANTED RECITALS"でプライ&クリーンの「白鳥の歌」ほか数々の名盤がCD化されたことは既述のとおりですが、このシリーズ中、日本でなぜか今のところ流通していない複数のCDの中にヘルマン・プライ&ジェラルド・ムーアの「ヴォルフ&プフィッツナー歌曲集」があります。
しかもボーナストラックとして同じコンビによるR.シュトラウス歌曲集も含まれているというお得な盤です。
amazonなどでいずれ扱うのかどうか不明ですが、メキシコのDECCAの企画とのことで、どうしてもすぐに欲しい方はPresto Classicalというイギリスのサイトからお求めになるのがいいかと思います。

私はこのプライ&ムーアの「ヴォルフ&プフィッツナー歌曲集」と「ホッター&パーソンズ/リサイタルVol.2」を注文しましたが、1週間も経たないうちに届きました。
さらに「スゼー&ボールドウィン/フランス歌曲集(これも初CD化)」も追加で注文しているので届くのが楽しみです。

このCDの購入については下の記事の追記をご覧ください。
 こちら

ではこのCDの中身をご紹介します。

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DECCA: 480 8172
MOST WANTED RECITALS 35

ヘルマン・プライ(Hermann Prey)(Baritone)
ジェラルド・ムーア(Gerald Moore)(Piano)

録音:1965年4月2-5日, Decca Studios, West Hampstead, London (1-19)
1963年6月4-7日, Decca Studios, West Hampstead, London (20-33)

ヴォルフ(Wolf)作曲/「メーリケ歌曲集」より
1.庭師
2.依頼
3.飽くことのない愛
4.出会い
5.狩人の歌
6.春だ!
7.散歩
8.旅路で
9.郷愁
10.祈り
11.隠棲
12.ヴァイラの歌
13.告白
14.鼓手

プフィッツナー(Pfitzner)作曲/「5つの歌曲」Op.9
15.庭師
16.孤独な娘
17.秋に
18.勇敢な男
19.別れ

R.シュトラウス(R.Strauss)作曲
20.献呈Op.10-1
21.何もOp.10-2
22.夜Op.10-3
23.ぼくの頭上に広げておくれOp.19-2
24.ぼくたち、隠しておいていいものだろうかOp.19-4
25.わが思いのすべてOp.21-1
26.あなた、わが心の冠よOp.21-2
27.ああ、恋人よ、もう別れなければならないOp.21-3
28.ああ辛い、俺はなんて不幸な男なんだOp.21-4
29.憩え、わが魂Op.27-1
30.明日Op.27-4
31.夜の散歩Op.29-3
32.親しげな幻影Op.48-1
33.あなたの青い瞳でOp.56-4

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すべて初CD化です。
録音年月日も今回明記されているのが有難いです。
1965年録音の「ヴォルフ&プフィッツナー歌曲集」全曲と、1963年録音の「R.シュトラウス歌曲集」(「白鳥の歌」のCDに含まれる3曲以外全曲)で構成されていますが、どちらも30代のプライの声の美しさ、張り、表現力、語り口は絶好調です!

ヴォルフの「メーリケ歌曲集」は全53曲からなるのですが、その中からプライの声やキャラクターに合った作品が慎重に選ばれているのが感じられます。
「庭師」では通りかかった王女様へのひそやかな愛の告白を実直なまでにストレートに歌い上げ、聴き手の気持ちを心地よく明るくしてくれます。
「依頼」では友人に好きな人の返事を代わりに聞いてもらう切迫した感じが"Warum schreibt Er aber nicht?(なぜ手紙をくれないのですか)"の歌いぶりによく表れていて、オペラの一場面のように楽しいです。
「飽くことのない愛」では"Je weher, desto besser!(痛ければ痛いほど気持ちがいいの)"の"besser"におけるプライのなんともいえないニュアンスが聴きどころです。
「春だ(あの季節だ)!」では春の到来の喜びを前半は抑制を利かせ、後半に爆発するその配分が素敵です。
「祈り」の厳かな歌唱や有名な「隠棲」での真摯で力強い歌いぶりも素晴らしいのですが、最後の「告白」「鼓手」のユーモアはまさにプライの独壇場でしょう。
「告白」では兄弟がいない為に母親から一心に期待を寄せられて重いよぉと嘆くさまが実にユーモラスに語られ、声のちょっとしたニュアンス付けなど芸達者なプライを満喫できます。
一方「鼓手」では、お母さんが魔法が使えたら酒保で働いてご馳走が食べられるのにと、「告白」とは逆の母親好きな少年を描いていて、そのプログラミングも絶妙と言えましょう。

プフィッツナーは作品番号9のアイヒェンドルフの詩による全5曲が演奏されていますが、第1曲のタイトルが「庭師」で、メーリケ歌曲集のプログラミングに合わせたとも考えられますね。
最後は「別れ」というタイトルですし、プライならではの凝った選曲&曲順ということがいえそうです。
哀愁漂う歌曲集で、プライの甘美な声が一層切なさを際立たせているように感じられます。

シュトラウスの歌曲集は作品番号順に並べられているのはプライの考えなのでしょうか。
有名で親しみやすい作品が選ばれていて魅力的な選曲です。
「献呈」での全霊を傾けた歌唱はプライの良さ全開です。
「憩え、わが魂」のような重めの作品でもプライが歌うとほのかな光が射すのがまた魅力です。
「あなたの青い瞳で」での素朴でストレートで甘美な歌はまさにプライの良さが集約されていますね。
こぼれおちそうなほど熟れたプライの美声が存分に味わえる素敵な歌曲集でした。

ムーアは60代半ばの脂の乗り切った円熟味がそのまろやかなタッチから感じられ、これまた耳を惹きつけて離しません。
「明日」など絶品です。
そしてディースカウと共演した時とは違ったプライ仕様の演奏になっているのが興味深いです。
例えばヴォルフの「出会い」をディースカウとは猛スピードで駆け抜ける風のように演奏していましたが、プライとは最初のうちややテンポをゆるやかにとり、恋人との逢瀬を歌う直前の間奏で恋の嵐を吹き荒れさせます。
そして、そのどちらにもムーアの個性が刻印されているのが素晴らしいところです。
ヴォルフの「春だ!」はF=ディースカウとのメーリケ歌曲(男声用)全集録音時に省かれてしまった為、ムーアファンにとっては、プライが録音してくれて感謝です!
ムーアの軽やかで味のあるタッチが魅力的です。

Prey_moore_wolf_lieder

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(2014年8月9日追記)

HMVでとうとう扱うようです。9月10日発売とのことです。
 こちら

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コメント

フランツさん、こんにちは。

待ちに待った、R・シュトラウスの復刻ですね。
ヴォルフとプフィッツナーまで!!
CDが届くまでの間、レコードを聴いています。
復刻された音質がどんな感じか、とても楽しみです。

曲名の和訳に加え、解説も書いてくださっているので、大変助かります(*^^*)

若き日のプライさんは、真っ直ぐに気持ちをぶつけて来ますね。
時々、そんなプライさんが眩しくて、ドギマギしてしまうことがあります。
30代の彼はまだまだ荒削りな部分もありますが、その魅力にとりつかれると離れられなくなってしまいます。

思えばムーアとは父と子ほどの年の差があったんですね。
おそらく若いプライさんはムーアから多くを学んだことでしょう。
ムーアの方でも、プライさんの若い瑞々しい感性に刺激を受けたことでしょうね。
ディースカウさん(既に完成されていたであろう)と、プライさんという、違う個性の歌手と組みながら、きっちりと個性を刻むとは、ムーアはやはりすごいピアニストですね!

投稿: 真子 | 2014年6月 9日 (月曜日) 15時23分

こんばんわ。情報が皆さんのお役にたてて何よりです。
ディースカウ&ムーアのR・シュトラウス全集は私の愛聴
盤でこれ以上の演奏って思えるほど究極ですが、本当にプライのはもっと自由に歌わせてあげてるっていう感じでさすがムーア懐が深い(・∀・)
歌手を育てる先見の目が鋭い人だったと思います。
EMIのDVDでベルガンサのリサイタルでは若々しい彼女の歌を暖かくサポートしている姿が観れて本当に素敵です!
この伝統はパーソンズやG.ジョンソンに受け継がれていると思
います。
プライの日本公演の水車小屋やカルミナとかNHKDVDで出してほしいですね。

投稿: jun | 2014年6月 9日 (月曜日) 20時25分

真子さん、おはようございます。
本当に待望のCD化です(^o^)
解説がお役に立ててうれしいです!

「真っ直ぐに気持ちをぶつけて来」るこの時期のプライさんならではの名唱でした。荒削りなところも魅力的ですね。
ヴォルフもシュトラウスもプライさんにぴったりな曲が選ばれていますが、哀愁漂うプフィッツナーの歌曲集がまた素晴らしいのです。プライさんでこの歌曲集を聴くと、悲しげなのですが、聴き手と一緒に悲しんでくれているような温かみもあってちょっとホッとさせられます。そこがプライさんのいいところだなぁと感じました。

プライさんとムーアは30歳差で一世代違うんですよね(ディースカウとも26歳差)。だからこそ真子さんもおっしゃるようにお互いに相手から得るものがあったのでしょうね。プライさんの若さ、ひたむきさと、ムーアの経験豊かな円熟味とが化学反応をおこして、ここで聴けるような優れた演奏が生まれたのでしょう。

CDが届いたら楽しんでくださいね。音もいいですよ。

投稿: フランツ | 2014年6月10日 (火曜日) 06時50分

junさん、おはようございます。
junさんのおかげで、CD化されたことすら知らなかったCDをこうして楽しんでいます。
本当に有難うございました!

ディースカウとムーアのシュトラウス歌曲集は偉大な仕事ですね。このコンビならではの素晴らしい演奏でした。
しかしプライは一般にそれほどシュトラウス歌手という印象は強くないかもしれませんが、実は最もシュトラウス歌曲と相性のいい一人だと私は思っています。プライ天性の体内から湧き上がるような太く朗々と響く声が、シュトラウス歌曲の感覚的なメロディラインとぴったり合っている気がするのです。そういう意味でもムーアとの歌曲集は待望のCD化です!

ムーアは本当に懐が深いピアニストですよね。彼のピアノで歌う歌手はみな気持ち良く歌っているように聞こえます。若かりしベルガンサとのファリャの映像は貴重な記録ですね。この2人が共演していたという事実を知ったとき、驚きとともにうれしくなったものでした。
パーソンズもジョンソンもムーアがいてこその存在だと思います。ムーアが彼の著書「Farewell Recital」で二人の名前を出しているのも偶然ではないでしょう。

プライの来日公演の中でも特にカルミナブラーナは映像化を希望したいですね。

投稿: フランツ | 2014年6月10日 (火曜日) 06時51分

フランツさんこんばんは。
プライのデッカ時代のヴォルフとプフィッツナー,それにシュトラウスの残りの曲が全部入っているのですね! 欲を言えば,シュトラウスはシュトラウスだけで1枚に収めてほしかったですが,贅沢は言いますまい。早速注文してみます。

投稿: 甲斐 | 2014年6月13日 (金曜日) 19時48分

甲斐さん、おはようございます。
お久しぶりですね。

プライ&ムーアのシュトラウス歌曲集はボーナストラック扱いなのが確かにちょっと残念なのですが、解説書の裏表紙にオリジナルジャケット写真も掲載されており、曲順も別CDの3曲を省いた形でオリジナルのまま収録されているのでDECCAもオリジナルに出来る範囲内で敬意を払ったということになるのでしょう。
プライの声と表現、若さがあふれ、とてもいいので、届いたら楽しんでくださいね。

投稿: フランツ | 2014年6月14日 (土曜日) 09時03分

フランツさん、こんにちは。

「ヴォルフ&シュトラウス」、昨日届いてから3回聴きました♪
貴重な情報を提供してくださったjunさん、代行購入してくださったフランツさん、本当にありがとうございました。
心から感謝しています。

さて、音質ですが、いいですね。
プライさんの甘く柔らかい中低音、張りのある輝かしい高音を堪能しました。
それにしても、本当に男性的な力強さと、優しさを兼ね備えていますね。

彼の30代の歌は、若い時にしかできない、いい意味で声に頼った歌だと思います。
もちろん、何も考えずに歌っているというのではありませんが、思うように声が出せる時だからこその爽快感があります。

「献呈」を始め、シュトラウスに特に顕著ですね。
実は今4回目を聴きながら書いています(笑)
この伸びやかさ、おおらかさ!!。
「ああ、いいなあ」と、もうそれだけです。

また、30代のプライさんは、殊に声に感情がこもりますね。
歌いまわしで感情表現するタイプではなく、感情を声に乗せて歌う(いわゆる「泣きが入る」)彼の若い日の歌にはカンツォーネの要素があると思います。
それが独特の甘さ(声の甘さ以外に)と、敬遠されがちなドイツリートに生き生きとした命を吹き込んでいるんだなあと、改めて思いました。

うまく表現できませんが、ムーアのピアノ、やはりいいですね。
この間、64年?のプライさんの「シラーとゲーテの詩によるシューベルト歌曲集」(EMI)を聴いていて、ピアノきれいだなあと思ったら、ムーアでした(*^^*)

junさんがおっしゃるように、NHKがもっている「カルミナ~」(←これは是非とも)や来日時のコンサートの映像を放映するか、DVDにしていただきたいです。
1997年の形見のようなシューベルト三大歌曲集は、テープが傷んでしまって見られない状況ですので、切に願います(;_;)

投稿: 真子 | 2014年6月16日 (月曜日) 10時45分

真子さん、こんばんは。

無事届いたようで良かったです。
すでに4度目を聴いておられるとのこと、喜んでいただけて嬉しいです!

プライさんの若かりし美声がしっかり再現された良い録音ですよね。この伸びやかな声を惜しげもなく響かせてくれて、聴き手はおっしゃるように「ああ、いいなあ」と感じているうちにあっという間に聴き終えてしまい、最初から再度繰り返して聴くことになるんですよね。

泣きが入っても決して違和感はなく、節度のある表情付けが見事だなぁと思います。この時期ならではのプライの素晴らしさが堪能できる名盤ですね。日本にも流通するといいのですが。

ムーアのピアノ、いいですよね。彼の音は派手ではないけれど、染みるんですよね。真子さんにも共感してもらえて嬉しいです(^^)

投稿: フランツ | 2014年6月16日 (月曜日) 23時29分

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