北村朋幹/ピアノ・エトワール・シリーズ アンコール!Vol.2(2014年3月15日 彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール)
ピアノ・エトワール・シリーズ アンコール!Vol.2
北村朋幹ピアノ・リサイタル
2014年3月15日(土)14:00 彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール
北村朋幹(Tomoki Kitamura)(Piano)
シューマン(Schumann)/4つのフーガ 作品72
1.速くなく
2.とても生き生きと
3.速くなく、とても表情豊かに
4.中庸のテンポで
ベリオ(Berio)/セクエンツァ IV
スクリャービン(Scriabin)/ソナタ第10番 作品70
~休憩~
ベートーヴェン(Beethoven)/ソナタ第29番変ロ長調 作品106 「ハンマークラヴィーア」
1.アレグロ
2.スケルツォ アッサイ・ヴィヴァーチェ
3.アダージョ・ソステヌート
4.ラルゴ-アレグロ・リソルート
~アンコール~
バッハ(Bach)/シンフォニア第11番ト短調 BWV797
ベートーヴェン/「11の新しいバガテル」より第11番 作品119-11
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彩の国さいたま芸術劇場で北村朋幹のリサイタルを聴いた。
このホールは初めて出かけたが、埼京線の与野本町駅から徒歩10分ぐらい。
案内には7分とあったが、それ以上は確実にかかったと思う。
目下ドイツ留学中の北村朋幹だが、今もたびたび帰国して演奏を聴かせてくれるのは嬉しいことだ。
見た目は相変わらずの細身だが、演奏は以前よりも成熟した印象を受けた。
拍手を受けてからピアノに向かうと、演奏に没入するところはいつも通りだが、その演奏姿勢は幾分落ち着いてきたように見えた。
冒頭のシューマンの「4つのフーガ」がまず素晴らしく、ひとつひとつの音が吟味されていて、胸に沁みわたる。
このフーガ、シューマン的な雰囲気も多少はあるものの、やはりバッハ的な印象が強い。
緩急緩急の4曲それぞれが異なる性格をもち、とても魅力的だ。
こういう珍しい作品を掘り起こす北村のプログラミングも見事だと思った。
ベリオとスクリャービンは楽譜を置き、譜めくりをしてもらいながらの演奏。
中断せずにこの2曲は続けて演奏された。
ベリオの作品はぽつっぽつっと和音を短く切りながら曲が始まるが、途中で盛り上がりも見せ、急速なパッセージも出てくる。
こちらも北村の没入ぶりがいい演奏につながっていたように感じられた。
スクリャービンのソナタ第10番は単一楽章の作品で10分強ほど。
こちらはゆったりめのテンポでたっぷり音に余裕を持たせながら、半音階のアンニュイな雰囲気やトリル、トレモロの響きなどを丁寧に聴かせていた。
後半はベートーヴェンの大作「ハンマークラヴィーア・ソナタ」。
これはいくら才能豊かな北村にとっても挑戦だったのではないか。
こればかりはさすがに成熟とはまだ言えないが、若さみなぎる演奏だった。
勢いのあるチャレンジングな姿勢が、彼の等身大の演奏となっていて、いさぎよかった。
今後演奏を重ねることでより練れていくのだろう。
今しか出せない力強さが感じられて、これはこれで十分満足できるよい演奏だったと思う。
そしてアンコール2曲は歌心あふれる演奏で温かい気持ちで帰路につけた。
ピアニストとしてよい演奏家に成長していることを確認できて、気持ちよいコンサートだった。
今後のさらなる研鑽に期待したい。
なお、北村朋幹がこのプログラムに寄せた文章はこちら
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