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新国立劇場/コルンゴルト作曲 オペラ「死の都」(2014年3月21日 新国立劇場 オペラパレス)

新国立劇場オペラ「死の都(Die tote Stadt)」

原作(Original):ジョルジュ・ローデンバック(Georges Rodenbach)
台本(Libretto):パウル・ショット(Paul Schott)(ユリウス・コルンゴルト(Julius Korngold)/エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト(Erich Wolfgang Korngold))
作曲(Music):エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト(Erich Wolfgang Korngold)

2014年3月21日(金・祝)14:00 新国立劇場 オペラパレス
(1幕:50分-休憩25分-2幕:50分-休憩25分-3幕:50分)

パウル:トルステン・ケール(Torsten Kerl)
マリエッタ/マリーの声:ミーガン・ミラー(Meagan Miller)
フランク/フリッツ:アントン・ケレミチェフ(Anton Keremidtchiev)
ブリギッタ:山下牧子(Yamashita Makiko)
ユリエッテ:平井香織(Hirai Kaori)
リュシエンヌ:小野美咲(Ono Misaki)
ガストン(声)/ヴィクトリン:小原啓楼(Ohara Keiroh)
アルバート伯爵:糸賀修平(Itoga Shuhei)
マリー(黙役):エマ・ハワード(Emma Howard)
ガストン(ダンサー):白鬚真二(Shirahige Shinji)

合唱:新国立劇場合唱団(New National Theatre Chorus)
児童合唱:世田谷ジュニア合唱団(Setagaya Junior Chorus)
管弦楽:東京交響楽団(Tokyo Symphony Orchestra)
指揮:ヤロスラフ・キズリング(Jaroslav Kyzlink)

演出:カスパー・ホルテン(Kasper Holten)

美術(Scenery Design):エス・デヴリン(Es Devlin)
衣裳(Costume Design):カトリーナ・リンゼイ(Katrina Lindsay)
照明(Lighting Design):ヴォルフガング・ゲッベル(Wolfgang Göbbel)
再演演出(Revival Director):アンナ・ケロ(Anna Kelo)
合唱指揮(Chorus Master):三澤洋史(Misawa Hirofumi)
舞台監督(Stage Manager):斉藤美穂(Saito Miho)
芸術監督(Artistic Director):尾高忠明(Otaka Tadaaki)

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コルンゴルトのオペラ「死の都」をはじめて見た。
なんでも数日前にびわ湖で上演されたのが舞台上演の日本初演だったそうで、こちらは数日遅れで初演の栄誉を逃してしまったことになる。
しかし、上演は美しい音楽と凝った舞台美術、さらに工夫された照明で楽しめ、最後にはなぜか感動までしてしまった。

妻を亡くした男パウルが街中で妻にうりふたつなマリエッタと出会い、家に招待する。
そこで亡き妻と、目の前の似姿たるマリエッタとの間で揺り動くパウルの心理を描いたオペラということになるだろうか。
結果から言うと、マリエッタと過ちを犯し、最後には絞殺してしまうというのはすべて夢でしたという落ちになっている。
今時は誰もやらない手法だろうが、この当時はまだこういう手法もありだったのかもしれない。
だが、煮え切らないように見えるパウルだが、結局妻だけを愛していて、その面影を見たマリエッタを本当に好きになったわけではないことは誰でも分かるだろう。
しかし、理屈どおりにいかないのが人間関係であり、その機微を描いた作品として、これまで上演されなかったのが不思議なほどだ。
なんでもコルンゴルト23歳ごろに完成した作品とのことで、台本も父親との共作らしく、なんとも早熟な天才だったのだろう。
たまにR.シュトラウスっぽいところもあるが、全く前衛的な要素はなく、全体的には素直に耳に入ってくる音楽で、後の映画音楽の片りんを感じさせるようなドラマティックな音楽も出てくる。
マリエッタのリュートの歌というのと、道化フリッツの歌が単独でも歌われる有名なナンバーらしく、確かに甘美で美しい。

今回はミニチュアハウスが散らばった部屋の中に亡き妻の思い出の品や写真が飾られているという設定で、中央にベッドがある。
そして死んだはずの妻が常に黙役で舞台上に出ずっぱりなのも演出家の工夫なのだろう。
確かにパウルにだけ見える存在として、部屋の中をさまよっているのはそれなりの効果があったように思う。
第3幕でマリエッタにもマリーの姿が見えて以降の"女の闘い"は時代を超えておそろしい...

第2幕では踊り子マリエッタの一座が登場してにぎやかになるが、主にパウルとマリエッタのやり取りが中心にあり、工夫次第で良くも悪くもなろう。
今回の演出は、舞台装置はほとんど同じで、照明や後景の変化で、単調にならないように工夫しているようだ。
だが、夢から覚めたパウルが妻の死を受け入れ、友フランクの誘いに乗って「死の都」ブリュージュから旅立つという最後が一番の見せ場だったような気がする。
もちろんそこに至るまでの様々な描写があってこそだが、最後にパウルが新たな一歩を踏み出すところは不思議な感銘があった。
演出のせいだろうか、音楽のためだろうか、とにかく珍しいオペラという以上のものが、この作品には宿っていることが分かり、充実した時間だった。

歌手では出ずっぱりのパウル役、トルステン・ケールが最後まで朗々たる声を聴かせ見事。
マリエッタ役のミーガン・ミラーも徐々に調子を上げて、初役とは思えない充実感があった。
天井桟敷ではっきり見えなかったのが残念だが、公式サイトのゲネプロビデオを見た限り、見た目も美しいようだ。
そして、黙ったまま舞台上で亡きマリーを演じたエマ・ハワードも可憐で目を引いた。
マリエッタとうりふたつという感じではなかったが。
召使いブリギッタ役の山下牧子も非常に充実した歌唱を響かせていたし、フランクとフリッツを兼ねたアントン・ケレミチェフも落ち着いた雰囲気が良かった。

キズリング指揮の東京交響楽団もよく音楽の美しさを引き出していたのではないか。
合唱団は今回必ずしも出番が多くはなかったが、いつも通りの安定した充実感はあった。

これから様々なプロダクションで上演されるようになることを祈ることにしたい。
なお、舞台のきれいな写真が掲載されているサイトをご紹介したい。
 こちら

Die_tote_stadt_201403_chirashi

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コメント

フランツさん、今晩は。このオペラご覧になったのですね。私は初日の天井桟敷と、18日の2階席と2回見ましたが、とても良かったと思います。ストーリイがわかりやすいので、素直に音楽に浸れて、アリアもきれいでした。舞台もよく工夫した作りになっていましたね。床に小道具が沢山あったりで、歌手の人たちは大変だったかも知れませんが・・。
「ぶらあぼ」のページ、画像が沢山あって、良かったです。おかげさまで、舞台を思い出して、楽しませていただきました。

投稿: Clara | 2014年3月22日 (土曜日) 21時30分

Claraさん、こんばんは。
Claraさんは2回ご覧になったそうですね。ストーリーが分かりやすいのは有難いことですね。2階席からは舞台がよく見えたのではないでしょうか。あらためてぶらあぼの記事で写真を見るとかなりカラフルだったことに気付かされます。こういう写真は思い出をよみがえらせてくれますね。

投稿: フランツ | 2014年3月23日 (日曜日) 02時54分

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