髙橋節子&田代和久&平島誠也/ドイツ歌曲の夕べ ~シューマンとブラームス~(2014年03月13日 日暮里サニーホール コンサートサロン)
ドイツ歌曲の夕べ ~シューマンとブラームス~
Liederabend “Werke von Schumann und Brahms”
2014年03月13日(木)19:00 日暮里サニーホール コンサートサロン(全自由席)
髙橋節子(Setsuko TAKAHASHI)(ソプラノ)
田代和久(Kazuhisa TASHIRO)(パリトン)
平島誠也(Seiya HIRASHIMA)(ピアノ)
ブラームス(J.Brahms)/ドイツ民謡集より(Deutsche Volkslieder)
谷の底では(Da unten im Tale) WoO33-6(髙橋&田代)
どうしたら戸を開けて入れるのだ?(Wie komm ich denn zur Tür herein?) WoO33-34(髙橋&田代)
月が明るく照らなければ(Soll sich der Mond nicht heller scheinen) WoO33-35(1,3,4,5節)(髙橋&田代)
あるヴァイオリン弾き(Es wohnet ein Fiedler) WoO33-36(髙橋&田代)
ブラームス/ダウマーの詩による歌曲(Lieder nach Texten von Daumer)
便り(Botschaft)(田代)
私の女王様、あなたは何と(Wie bist du, meine Königin)(田代)
僕らはさまよい歩いた(Wir wandelten)(田代)
なまあたたかく大気は淀み(Unbewegte laue Luft)(田代)
シューマン(R.Schumann)/レーナウの6つの詩とレクイエム 作品90より(Sechs Gedichte von Nikolaus Lenau und Requiem Op.90)
私の薔薇(Meine Rose)(髙橋)
羊飼いの娘(Die Sennin)(髙橋)
孤独(Einsamkeit)(髙橋)
陰鬱な夕暮れ(Der schwere Abend)(髙橋)
レクイエム(Requiem)(髙橋)
~休憩~
シューマン/ゲーテのヴィルヘルムマイスターにもとづくリートと歌 作品98a(Lieder und Gesange aus "Wilhelm Meister" von Johann Wolfgang von Goethe Op.98a)
1.ご存知ですか、レモンの花が咲くあの国を(Kennst du das Land, wo die Zitronen blühn)(髙橋)
2.竪琴弾きのバラード(Ballade des Harfners)(田代)
3.ただ憧れを知る人だけが(Nur wer die Sehnsucht kennt)(髙橋)
4.涙と共にパンを食べたことのない者(Wie nie sein Brot mit Tränen aß)(田代)
5.語れと言わないで(Heiß mich nicht reden)(髙橋)
6.孤独に身を浸す者は(Wer sich der Einsamkeit ergibt)(田代)
7.悲しい調子で歌うのはやめて(Singet nicht in Trauertönen)(髙橋)
8.戸口にそっと歩み寄り(An die Türen will ich schleichen)(田代)
9.このままの姿でいさせてください(So laßt mich scheinen)(髙橋)
~アンコール~
シューマン/私はあなたを思う(Ich denke dein) Op.78-3(髙橋&田代)
ブラームス/静かな夜に(In stiller Nacht) WoO33-42(髙橋&田代)
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ソプラノの髙橋節子とバリトンの田代和久、そしてピアノの平島誠也による歌曲の夕べを聴くのは今回で2度目である。
いずれも安定した実力の持ち主だけあって、この日暮里の小さな空間がドイツロマン派の空気に染まったのだった。
男女の歌手が揃ってはじめて可能な選曲がここではなされていて、ブラームスの「ドイツ民謡集」の恋人同士のやりとりはまさにうってつけ。
一方でそれぞれの歌手の持ち味が生かされたソロ曲も披露され、田代さんはブラームスを、髙橋さんはシューマンを歌った。
ブラームスの4曲はいずれも有名な作品で、田代氏の充実した美声が遺憾なく発揮された。
一方のシューマンは名作との誉れ高い「レーナウの6つの詩とレクイエム」からの抜粋で、とりわけ「陰鬱な夕暮れ」は歌、ピアノともに極めて充実した演奏だった。
後半が意欲的な選曲で、シューマンがゲーテの「ヴィルヘルムマイスター」から選んで作曲した歌曲を出版した通りの順序で演奏するというものである。
これこそ名歌手2人が揃わないと実現できない企画であり、この選曲にブラヴォーである。
これまで竪琴弾きやミニョンのテキストによる歌曲で私が最初に思い浮かべるのはシューベルトやヴォルフによるもので、シューマンによるものではなかった。
だがこれらのシューマンの作品をじっくり聴いてみると、シューマンの心の闇が深く反映されているように感じられ、テキストに対するシューマンの感受性の豊かさを改めて思わずにはいられない。
この歌曲集、頭でっかちで、最初の2曲が長めで、その後はミニアチュールが続く。
だが、「このままの姿でいさせてください」で控えめに歌曲集を締めくくるなど、なんとも粋ではないか。
最後にクライマックスをもってくるだけがいいわけではないのである。
竪琴弾きの歌の中では「涙と共にパンを食べたことのない者」が非常にドラマティックで驚かされるが、他の2曲も感動的で、もっと演奏されてよいだろう。
シューベルトやヴォルフの「歌びと」と同じ歌詞の「竪琴弾きのバラード」をはじめ、他のどの作曲家にも増してピアノパートに「竪琴」の響きが頻出するのが興味深かった。
髙橋さんは声量が徐々に豊かさをもち、後半でその良さが最大に開花した。
ドイツ語の響きの美しさと、テキストの主人公になりきる歌唱は胸を打たれるものがあった。
田代さんはダンディでノーブルな声をもつ。
なんとも耳に心地よい声の質と表現力で聴き手を魅了した。
平島さんのピアノは、端正な中に歌手への深い気配りが感じられ、歌の呼吸に合わせて絶妙に伸縮するピアノは歌手にとって得難いものだろう。
後半のシューマンの演奏ではとりわけ魂がこもっていて、端正かつ美しく絡み合う響きで、シューマネスクな世界を形成していた。
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コメント
フランツさん、こんにちは。
素敵なリートの夕べを聴いて来られたようですね。
このお二人の歌手は、有名どころで言いますと、どなたに似た声をなさっていますか?
YouTubeに上がっていなかったのが残念です。
田代さんは美声バリトンのようですね。
気になります(*^^*)
投稿: 真子 | 2014年3月21日 (金曜日) 17時30分
真子さん、こんにちは。
とてもいいコンサートでした(^^)
お二人を他の歌手にたとえるのは難しいのですが、高橋さんは語り口のうまさと真摯な表現、田代さんは持ち前の心地よい美声と安定した表現が素晴らしく感じました。お二人ともバッハを歌うアンサンブルに所属しておられるようで、発声の素晴らしさも印象に残っています。
いつかCD録音をしてくれたらいいのですが。
投稿: フランツ | 2014年3月22日 (土曜日) 07時39分