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二期会/ヴェルディ作曲 オペラ「ドン・カルロ」(2014年2月22日 東京文化会館 大ホール)

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《ドイツ・フランクフルト歌劇場との提携公演》
東京二期会オペラ劇場
ジュゼッペ・ヴェルディ(Giuseppe Verdi)/「ドン・カルロ(Don Carlo)」
オペラ(イタリア語・5幕版)
日本語字幕付き原語上演
原作:ヨーハン・クリストフ・フリードリヒ・フォン・シラー「ドン・カルロス」
台本:フランソワ・ジョセフ・メリ、カミーユ・デュ・ロクル
イタリア語訳:アキッレ・デ・ロージェール

2014年2月22日(土)13:00 東京文化会館 大ホール
上演時間:約3時間45分(1-3幕:120分/休憩25分/4-5幕:80分)

フィリッポ2世(Filippo II):伊藤 純(Jun Ito)(BS)
ドン・カルロ(Don Carlo):福井 敬(Kei Fukui)(T)
ロドリーゴ(Rodrigo):成田博之(Hiroyuki Narita)(BR)
宗教裁判長(Il Grande Inquisitore):斉木健詞(Kenji Saiki)(BS)
エリザベッタ(Elisabetta di Valois):横山恵子(Keiko Yokoyama)(S)
エボリ公女(La principessa d'Eboli):谷口睦美(Mutsumi Taniguchi)(MS)
テバルド(Tebaldo):加賀ひとみ(Hitomi Kaga)(MS)
修道士(Un frate):三戸大久(Hirohisa San-nohe)(BSBR)
レルマ伯爵(Il Conte di Lerma):大槻孝志(Takashi Otsuki)(T)
天よりの声(Voce dal cielo):湯浅桃子(Momoko Yuasa)(S)
6人の代議士(6 deputati):岩田健志(Takeshi Iwata)(BR);勝村大城(Daiki Katsumura)(BR);佐藤 望(Nozomu Sato)(BR);野村光洋(Mitsuhiro Nomura)(BR);門間信樹(Nobuki Monma)(BR);湯澤直幹(Naoki Yuzawa)(BR)

合唱(Chorus):二期会合唱団(Nikikai Chorus Group)
合唱指揮(Chorus Master):佐藤 宏(Hiroshi Sato)
管弦楽(Orchestra):東京都交響楽団(Tokyo Metropolitan Symphony Orchestra)
指揮(Conductor):ガブリエーレ・フェッロ(Gabriele Ferro)

演出(Stage Director):デイヴィッド・マクヴィカー(David McVicar)

装置(Set Designer):ロバート・ジョーンズ(Robert Jones)
衣裳(Costume Designer):ブリギッテ・ライフェンシュトゥール(Brigitte Reiffenstuel)
照明(Lighting Designer):ヨアヒム・クライン(Joachim Klein)
振付(Choreographer):アンドリュー・ジョージ(Andrew George)
演出補(Associate Stage Director):カテリーナ・パンティ・リヴェロヴィッチ(Caterina Panti Liberovici)

舞台監督(Stage Manager):幸泉浩司(Hiroshi Koizumi)
公演監督(Production Director):大島幾雄(Ikuo Oshima)

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東京二期会によるヴェルディ「ドン・カルロ」を見た。
このオペラ、以前メットのライブビューイングで見たが、今回も複数ある版の中からイタリア語5幕版(モデナ版とのこと)で演奏された。
冒頭の民衆が登場する場面はなく、いきなりドン・カルロのフォンテーヌブローの森の場面で始まった。

セットは大理石を模した岩や泉のモノトーンの装置が重々しい雰囲気を作り、この装置が部分的に上下して他の幕での場面にも流用できるようになっていた。
演出はオーソドックスなもので、衣装も派手な色合いは使用されず、このオペラの苦悩を象徴したかのような暗さが一貫していた。
第2幕のエボリ公女と貴婦人たちがヴェールの歌を歌うのが、オペラ中唯一ともいってよい明るい場面だろうか。
そこでの簡単な振りも含めたエボリ公女とテバルド、そして貴婦人たちの歌はスペイン色も感じられる聴衆にとっての一服の息抜きであった。
他の場面では、不幸を背負った複数の登場人物たちが敵対し、嫉妬し、威圧しという負の感情が生々しく描かれる。
だが、そうした中でドン・カルロと王の腹心でもあるロドリーゴとの友情は強固で、強い絆を感じる。
結婚相手を父親に奪われて、なお元婚約者を思い続けるドン・カルロの人間的な弱さをフランドルの救済という方向に転換させようとするロドリーゴ。
その彼も友情ゆえに銃弾にすすんで倒れる。
そして、フランドルを託されたドン・カルロも最後には父親の家臣たちによって殺されてしまうのである。
このドラマに救いはない。
友人の犠牲も結果的には無駄になってしまった。
だが、その過程を通じて極めてどろどろした人間的な感情がヴェルディのドラマティックな音楽で生々しく描かれるところに現代でも色あせない魅力がある。
決して昔話ではなく、現代にも通じるさまざまな感情がそこかしこにあらわれる。
それぞれの立場における、それぞれの悩み、一方では自己中心的に思えても、別の面から見るとそこに至る事情がある。
歯車の合わない者同士の感情の行き違いが、実在の人物の名を借りて描かれる。
そこに我々は共感し、何かを感じ取るのだろう。

題名役の福井 敬は相変わらずの素晴らしさだった。
どこをとっても隙がなく、すべてがドン・カルロという人物に捧げられていた。
心の移ろい、弱さ、迷い、率直さといったものが福井 敬の歌唱と演技によって劇的に描かれていた。
そして、彼に劣らず素晴らしいと思ったのが、友人ロドリーゴ役の成田博之の歌唱だった。
彼の歌もまた真実味にあふれ、カルロの為に自己を犠牲にしようという覚悟が強く表現されていて感銘を受けた。
今回カーテンコールで一番拍手を受けていたようにも思えた。
そしてエリザベッタの横山恵子はよく通る声で恋心や苦悩の表情を強く押し出し、さすがである。
エボリ公女の谷口睦美も超絶技巧も難なくこなし、嫉妬と改心の心情の変化をたっぷりしたメゾの声で素晴らしく表現した。
宗教裁判長の斉木健詞は権威者の威厳と非情さをよく伸びる声で表現した。
フィリッポ2世の伊藤 純は、フランドルにとっての暴君というわりには声が穏やかでボリュームも必ずしも豊かではないが、激昂した時の表現はそのギャップゆえになかなかの効果があったと思った。
また、夫として父として孤立感を深める第4幕のアリアはよい味を出していた。
加賀ひとみや三戸大久も好演。

合唱団も抑制した響きが美しかった。
また、ガブリエーレ・フェッロ指揮の東京都交響楽団は後半に進むにつれて馬力を発揮し、実に雄弁に奏で、迫力に満ちて素晴らしかった。
このオペラは二期会で33年ぶりの上演とのこと。
もっと頻繁に上演する価値のある作品ではないだろうか。

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