東京バレエ団/「ザ・カブキ」(2013年12月14日 東京文化会館 大ホール)
東京バレエ団創立50周年記念シリーズⅠ
モーリス・ベジャール振付
「ザ・カブキ」(全2幕)
2013年12月14日(土)15:00 東京文化会館 大ホール
[第1幕] 15:00-16:15
[休憩] 20分
[第2幕] 16:35-17:20
プロローグ:現代の東京
第一場:兜改め
第二場:おかる、勘平
第三場:殿中松の間
第四場:判官切腹
第五場:城明け渡し
第六場:山崎街道
第七場:一力茶屋
第八場:雪の別れ
第九場:討ち入り
由良之助:柄本弾
直義:森川茉央
塩冶判官:梅澤紘貴
顔世御前:奈良春夏
力弥:吉田蓮
高師直:木村和夫
伴内:氷室友
勘平:入戸野伊織
おかる:沖香菜子
現代の勘平:松野乃知
現代のおかる:三雲友里加
石堂:杉山優一
薬師寺:永田雄大
定九郎:岡崎隼也
遊女:吉川留衣
与市兵衛:山田眞央
おかや:伝田陽美
お才:高木綾
ヴァリエーション1:岡崎隼也
ヴァリエーション2:梅澤紘貴
東京バレエ団
演出・振付:モーリス・ベジャール
音楽:黛敏郎
美術:ヌーノ・コルテ=レアル
※音楽は特別録音によるテープを使用
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東京バレエ団の「ザ・カブキ」をはじめて見た。
故モーリス・ベジャールが歌舞伎「仮名手本忠臣蔵」をもとに東京バレエ団のためにバレエ化した作品で、音楽は黛敏郎(「題名のない音楽会」の司会が懐かしい)である。
内容は誰もが知る「忠臣蔵」の話で、四十七士が仇討ちをして、最後に自決するまでを描いているが、本筋とは(おそらく)異なる脇のストーリーもあるので(歌舞伎を再現したためか?)、事前にあらすじをプログラムで読んでおかないと、何をあらわしているのか分かりにくい箇所もあった。
舞台は現代の東京から始まる。
若者たちが踊りに興じているうちに、リーダー(柄本弾)が刀を見つけ、それに触れることによって、過去にタイムスリップするという始まり方である。
第1幕では、有名な松の廊下での刃傷事件のほか、勘平とおかるの逢瀬の場から盗賊などに巻き込まれて勘平は切腹し、おかるは遊女に身をやつす話などが盛り込まれている。
塩冶判官の切腹の際にその場に居合わせた若者が、その瞬間から由良之助となり、四十七士のリーダーとして生きていくことになる。
第2幕は敵にさとられぬように酒色にふける由良之助が顔世御前の説得を受け、いよいよ仇討ちを決行し、本懐を遂げて集団で自決する場面で終わる。
西洋の文化であるバレエによって日本の古い話をどう表現するのかというのは興味深いところだが、結局のところ、無理に日本の様式で統一することはなく、バレエらしい箇所も残しつつ、日本の伝統芸能を取り入れた折衷的な作品になっていたような印象を受けた。
だが、それを欠点だとは思わない。
むしろ、両者を併置することで生まれるものもあるということをこの作品は示しているのではないだろうか。
西洋のバレエの表現と日本式の作法、身振りが作品を生かすためにうまく共存して、独自の魅力を得ることになったと思う。
遊女たちの艶やかな場面もあるが、主役はやはり四十七士、特にそのリーダーたる由良之助である。
由良之助を演じた柄本弾は、そのオーラたるや主役にふさわしく素晴らしかった。
テクニカルなことは分からないのだが、全く危なげなく自信に満ちて踊り、作品を引っ張っていった若武者といった感じである。
それからおかるを演じた沖香菜子が可憐であり、また妖艶でもあり、魅力にあふれていた。
ある場面では、由良之助とおかるが黒子を使って人形浄瑠璃のような動きをする箇所があり、ベジャールの勤勉さに感心した。
敵役、高師直を演じた木村和夫は、さすがにぴったり役になりきって、はまっていたと思う。
群舞もフォーメーションなどが美しく、力強さもあり、ベジャールの振付の魔力を感じた。
素晴らしい作品であり、東京バレエ団の財産として、今後も演じ続けていくのだろう。
それから黛敏郎の音楽も素晴らしい。
今回は東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団などの演奏をテープに録音した音源が使われていたが、一人、舞台上手にたびたびあらわれては、拍子木(?なんというのか分からずすみません)を叩く和装の方がいて、それがテープ音楽に新鮮なアクセントを与えていた。
最後の討ち入りから集団自決に至るまでの音楽は「涅槃交響曲」からの引用もあるそうだが、非常に効果的で胸が熱くなるのを感じた。
かつてオペラ「蝶々夫人」を見た時にも感じたのだが、日本をテーマにした作品を見ると、制作したのが外国の人であっても、何故か胸が熱くなり、時にはこみあげてくることさえあるのである(今回は大丈夫だったが)。
自分のDNAは紛れもなく日本人なのだなと、こういう作品を鑑賞するたびに感じるのである。
余談だが、現在歌舞伎座で「仮名手本忠臣蔵」が上演されているそうだ。どうやら今からチケットを入手するのは困難なようなので、また次の機会にはぜひ鑑賞してみたい。
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