O.F.C./合唱舞踊劇「カルミナ・ブラーナ」・「グロリア」(2013年10月29日 東京文化会館 大ホール)
O.F.C.合唱舞踊劇「カルミナ・ブラーナ」・「グロリア」
2013年10月29日(火)19:00 東京文化会館 大ホール
合唱舞踊劇「グロリア」(約20分)
音楽:F.プーランク(Francis Poulenc)作曲「グロリア(GLORIA)」
1.Gloria
2.Laudamus te
3.Domine Deus
4.Domine fili unigenite
5.Dominus Deus, Agnus Dei
6.Qui sedes ad dexteram Patris
~休憩~
合唱舞踊劇「カルミナ・ブラーナ」(約60分)
音楽:C.オルフ(Carl Orff)作曲「カルミナ・ブラーナ(CARMINA BURANA)」
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演出・振付:佐多達枝
指揮:西村 友
ソプラノ:山田英津子(「グロリア」&「カルミナ・ブラーナ」)
カウンターテノール:青木洋也(「カルミナ・ブラーナ」)
バリトン:駒田敏章(「カルミナ・ブラーナ」)
ダンサー
安藤明代 宇山たわ 坂田めぐみ
塩山紗也加 島田衣子 清水あゆみ
関口淳子 高木奈津子 田所いおり
樋田佳美 贄田麗帆 堀口聖楽
宮杉綾子 森田真希 穴吹 淳
石井竜一 小出顕太郎 後藤和雄
武石光嗣 堀内 充 三木雄馬
管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
児童合唱:すみだ少年少女合唱団(「カルミナ・ブラーナ」)
合唱・コロス: オルフ祝祭合唱団
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オルフの「カルミナ・ブラーナ」は、独唱、合唱、オケによる楽曲で、私の大好きな作品である。
もともと舞台形式での上演を意図して作られたとのことなので、今回のようにバレエダンサーを伴った上演は作曲家の希望に沿った形ということになるだろう。
以前新国立劇場バレエ団によるデイヴィッド・ビントレー振付のバレエ版で見たことがあるが、テキストを反映した面白さがあって、来年の再演もまた見たいと思っている。
佐多達枝の演出・振付による「カルミナ・ブラーナ」は1995年以来何度も上演を重ねてきたそうだが、今回はじめて見ることが出来て、音楽とダンスのパワーを感じてきた。
この上演の面白い点はコロスという立場の合唱団が歌いながら、手足を動かしたり、歩いたり、座ったりと、振りをつけていることである。
振りのつかない純粋な合唱団もいて、そちらはオケピットの横(ピットの中ではなく、ステージから突き出したあたり)にまとまり、振りのつくコロスはステージ両脇、つまりダンサーたちの脇に位置する。
独唱者は歌う曲の直前にステージ脇に登場して歌うことが多いが、時には後方の中央まで出て、そこから歌いながらステージを突っ切って前方に歩いてきたりもする。
前半はプーランクの「グロリア」の演奏にのせて、女性ダンサー(8人ぐらいだったか)が踊る。
このプーランクの作品、もちろん「グロリア」のラテン語の典礼文の歌詞が歌われるわけだが、音楽がいつものプーランク節全開で、知らずに聴いていたらあまり宗教曲とは感じないかもしれない。
もちろんソプラノ独唱の加わった箇所など真摯で感動的な音楽もあるのだが、全体的にはダンスが付けやすそうな親しみやすい(よい意味で)印象を受ける。
特に第2曲「Laudamus te」は"te"が高くあがって強調されて、コミカルですらあり、ダンサーのダンスも面白かった。
ソプラノの山田英津子は清澄な美声を心地よく響かせていた。
合唱は若干荒さの感じられるところもあったが、健闘していたのではないだろうか。
休憩後の「カルミナ・ブラーナ」は本当に終始わくわくする曲のオンパレードで、1時間がこんなにあっという間に感じられる曲もめったにない。
ボイレンの修道士や学生たちが中世に書いた歌集をテキストにとったこの作品は、俗世の人間の営みがあっけらかんと描かれていて、そのエネルギーをリズミカルに強烈にオルフが描き尽くしている。
特に打楽器とピアノがオケと共に大きな役割を果たしているように感じられる。
合唱団はプーランクよりも断然こちらの方が素晴らしかった。
ダンスはダンサーのソロあり、群舞ありで、曲の世界観をよく表現していたのではないだろうか(ダンスは門外漢なので詳しいレポートは出来ずすみません)。
独唱者ではとりわけバリトンの駒田敏章が素晴らしかった。
明晰な発音と若々しい声で、各曲のキャラクターを見事に歌い、声もよく通り、今後の活躍が楽しみな歌手である。
テノール用にはたった1曲(「昔は湖に住んでいた」)しか担当する曲がなく、オルフも贅沢な使い方をするものだと思うが、カウンターテノールの青木洋也は、丸焼きにされて食卓に出される白鳥の心情を丁寧に表現した。
カウンターテノール=古楽という印象が強いが、こういう現代曲で聴くのも興味深い。
前半でも登場したソプラノの山田英津子は衣装を替えて登場したが、清澄な響きはこちらでも生かされていた。
ただ23曲「この世で一番愛するひとよ」ではおそろしく高い音があり、その音の時はちょっと厳しそうだった(バリトン歌手の曲にも超高音はあるが、そちらはファルセットが使えるので、女声の方がより大変かもしれない)。
すみだ少年少女合唱団は澄んだ響きを聴かせて、さわやかな風を吹き込んだ。
西村 友指揮の東京シティ・フィルはダンスと呼吸を合わせつつもエネルギッシュに演奏していて、いい演奏だった。
最後の数曲では、独唱者も含め全員が舞台に登場し、ダンサー以外の全員がコロスと同じ振りをしていたのが印象的だった。
独唱者にまで振りをさせなくてもとは思ったが…。
この大作は聴き手にエネルギーを与えてくれる。
今回の上演でもそれを再認識させてくれるものだった。
カーテンコールで登場した演出・振付の佐多達枝はすでに80歳を超しておられるが、小柄でかわいらしい女性だった。
この団体の今後の活動に期待したい。
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