Mouvement perpétuel/エスプリとリリシズム プーランクの歌曲~没後50年に寄せて(2013年11月26日 ルーテル市ヶ谷ホール)
Mouvement perpétuel特別演奏会
エスプリとリリシズム
プーランクの歌曲~没後50年に寄せて
2013年11月26日(火)18:45 ルーテル市ヶ谷ホール(自由席)
上沼純子(soprano)
齋藤青麗(soprano)
原彩子(soprano)
新井田さゆり(soprano)
萩原雅子(soprano)
成川友希(soprano)
鳥海仁子(soprano)
島田裕里子(mezzo soprano)
池端歩(mezzo soprano)
武田正雄(ténor)
佐藤光政(bariton)
Ensemble du Mouvement perpetual (choeur)
白取晃司(pf)
室伏琴音(pf)
吉本悟子(pf)
田中健(pf)
--------------
●島田裕里子(mezzo soprano) 白取晃司(pf)
『動物詩集またはオルフェオのお供』(ギヨーム・アポリネール)
駱駝
チベットの山羊
蝗
海豚
ざりがに
鯉
『ギヨーム・アポリネールの四つの詩』
鰻
絵はがき
映画に行く前に
1904年
●上沼純子(soprano) 室伏琴音(pf)
『ルイーズ・ラランヌの三つの詩』
贈り物
歌
昨日
『変身』(ルイーズ・ド・ヴィルモラン)
カモメの女王
おまえはこんなふうだから
パガニーニ
●齋藤青麗(soprano) 白取晃司(pf)
『そんな日そんな夜』(ポール・エリュアール)
素晴らしい日
空の貝殻のかけら
失われた旗のような額
瓦礫に覆われた四輪馬車
全速力で
一本の哀れな草
私は君を愛したいだけだ
燃えるような野生の力の姿
私たちは夜を作った
●原彩子(soprano) 室伏琴音(pf)
『かりそめの婚約』(ルイーズ・ド・ヴィルモラン)
アンドレの貴婦人
草の中で
飛んでいるのだ
私の死骸は手袋のように柔らかい
ヴァイオリン
花
●新井田さゆり(soprano) 吉本悟子(pf)
『ルイ・アラゴンの二つの詩』
C.(セー)
雅やかな宴
ラ・グルヌイエール(ギヨーム・アポリネール)
モンパルナス(ギヨーム・アポリネール)
ハイドパーク(ギヨーム・アポリネール)
~休憩(Entr'acte)~
●萩原雅子(soprano) 吉本悟子(pf)
『カリグラム』(ギヨーム・アポリネール)
女スパイ
変異
南へ
雨が降る
追放された恩恵
蝉たちと同じ程度に
旅
●池端歩(mezzo soprano) 田中健(pf)
『画家の仕事』(ポール・エリュアール)
パブロ・ピカソ
マルク・シャガール
ジョルジュ・ブラック
フワン・グリス
ポール・クレー
フワン・ミロ
ジャック・ヴィヨン
●武田正雄(ténor) 田中健(pf)
いなくなった人(ロベール・デスノス)
平和の祈り(シャルル・ドルレアン)
やぐるまぎく(ギヨーム・アポリネール)
●佐藤光政(bariton) 白取晃司(pf)
『村人の歌』(モーリス・フォンブール)より
祭りに行く若者たち
乞食
●成川友希(soprano) 室伏琴音(pf)
モンテカルロの女(ジャン・コクトー)
●オペラ『カルメル派修道女の対話』第二幕第二場 第二の修道院長の祈り「わが娘たちよ」
リドワーヌ新修道院長:鳥海仁子(soprano)
受肉のマリー上級修道女:池端歩(mezzo soprano)
修道女たち:Ensemble du Mouvement perpétuel
新海華子・高橋季絵・牧優雅(sopranos 1)
鈴木亜矢子・出口佳子・長坂理絵(sopranos 2)
友光耀子・庄司由美・望月唯(altos)
田中健(pf)
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先週に引き続き、プーランクの没後50年を記念する歌曲コンサートがあったので、出かけてきた。
先週も出演していたテノールの武田正雄がおそらく中心になっているのであろうMouvement perpétuelという団体の特別演奏会である。
配布されたプログラムの挨拶として武田氏が書かれているところによると、レジーヌ・クレスパンの元夫Lou Bruder氏の話として紹介されていたことが特に興味深かった。
Bruder氏の詩にプーランクが作曲してクレスパンに捧げる計画があったそうだが、その矢先にプーランクが亡くなってしまったそうだ。
もう少しプーランクが長生きをしていたら、クレスパンに献呈した新しい歌曲が存在したであろうに残念だ。
今回も多くの歌手、ピアニストが出演して、プーランクの多彩な歌曲の花束が編まれた。
休憩15分をはさみ、9時5分ごろ終演で、正味2時間を超すボリュームたっぷりの内容であった。
今回もある歌曲集の全曲を特定の一人の歌手とピアニストが演奏して、それを次々に別の演奏者がリレーしていくという形が中心であり、最後にオペラの抜粋を合唱を加えて演奏した。
歌手陣は若手から中堅、ベテランまで幅広く、今後が楽しみな若々しい歌唱から、脂の乗り切った中堅の立派な歌唱、さらに経験豊かさが滲み出るベテランの味わい深い歌唱まで、それぞれの個性が際立つ歌の競演であった。
さらにピアニスト4人もそれぞれの個性がありながら、みなテクニックもしっかりしており、作品への把握も素晴らしく、大いにその妙技を楽しんだ。
みな素晴らしかったが、ひとつだけ挙げるとすると、先週のボールドウィンのコンサートにも出演した池端歩による『画家の仕事』が実に堂々たる歌唱で、メゾソプラノの深みと力強さがあり、特筆に値する素晴らしさだった。
そして彼女をサポートする田中健がピアニスティックな鋭利さで歌唱と互角に演奏していたのも印象に残った。
こうしてプーランクの歌曲をまとめて聴いてみると、フランスのエスプリというものがどんなものか、その雰囲気だけは感じられたような気がする。
ちょっと平たく私なりの印象で表現すると、プーランクの歌曲は「お茶目」ということになるのではないか。
真摯な中に遊び心がある、また真面目なテキストにちょっと軽さを加えてみたりする。
また、ピアノ後奏がとても充実して美しい作品が多い印象もある。
例えば『そんな日そんな夜』の終曲「私たちは夜を作った」や『カリグラム』の終曲「旅」の後奏など、惹きこまれる魅力がある。
また、私がスゼー&ボールドウィンで知って以来大好きな『村人の歌』は全曲ともに歌とピアノの結びつきが特に緊密で面白い。
本来は全曲で聴きたいところだったが、バリトンの佐藤氏は独特のオーラを発して、クラシックの枠を超えた歌唱と表情で、曲集中の2曲を披露していた。
それから「モンテカルロの女」という曲が長いモノローグで興味深かった。
企画したスタッフと演奏者の皆さんに拍手を贈りたい。
とても意義深い楽しいコンサートだった。
今年もあと1月を残すのみだが、プーランクの歌曲にますますはまってしまいそうな今日このごろである。
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