ペーター・レーゼル/シューマンの詩情を弾く(2013年11月16日 紀尾井ホール)
ドイツ・ロマン派 ピアノ音楽の諸相2013<協奏曲>
レーゼル シューマンの詩情を弾く
紀尾井シンフォニエッタ東京 第92回定期演奏会
2013年11月16日(土)14:00 紀尾井ホール
ペーター・レーゼル(Peter Rösel)(Piano)(シューマン)
紀尾井シンフォニエッタ東京(Kioi Sinfonietta Tokyo)
アントン・バラホフスキー(Anton Barakhovsky)(Guest Concertmaster)
イェルク=ペーター・ヴァイグレ(Jörg-Peter Weigle)(Conductor)
メンデルスゾーン(Mendelssohn-Bartholdy)/弦楽のためのシンフォニア第7番ニ短調
I. Allegro
II. Andante
III. Menuetto
IV. Allegro molto
シューマン(Schumann)/ピアノ協奏曲イ短調Op.54
I. Allegro affettuoso
II. Intermezzo: Andantino grazioso
III. Allegro vivace
~アンコール~
シューマン/「子供の情景」より~「トロイメライ」op.15-7(レーゼル独奏)
~休憩~
シューベルト(Schubert)/交響曲第5番変ロ長調D485
I. Allegro
II. Andante con molto
III. Menuetto: Allegro molto
IV. Allegro vivace
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ペーター・レーゼルの「ドイツ・ロマン派 ピアノ音楽の諸相2013」シリーズの一環として行われた、紀尾井シンフォニエッタ東京 第92回定期演奏会(2日目)を聴いた。
満席の会場で、今回レーゼルが演奏したのがシューマンのピアノ協奏曲。
レーゼルは同曲を録音しているが、日本でこの曲を演奏するのはおそらく今回がはじめて。
そういう意味でもとても楽しみにしていたが、相変わらずの安定した味わいと作品への敬意を感じさせる真摯な表現で、シューマンの魅力を楽しませてくれた。
レーゼルは決してピアノの独り舞台にしない。
オケとの協調によってひとつのまとまった響きを作り上げていく。
ピアノのパートが休みの時はほぼ例外なく、オケの方を向いて、その響きにじっと耳を傾ける。
決して華美ではない作品だが、硬質なタッチによる美しい響きで、聴き手をうっとりとさせた。
自分ひとりが駆け抜けたり、スタンドプレーに陥ることが一切ないから、良質の室内楽を聴くような一体感が生まれる。
そういう温かさとドイツ人らしいがっちりした感覚が相俟って、得も言えぬ満ち足りた時間をつくりあげていた。
コンチェルトの演奏後に何度もカーテンコールに呼び出された後、レーゼルのみによるアンコールとして「トロイメライ」が弾かれた。
その響きは決して甘美なものではなく、彼がドイツ人であることを思い出させる硬質な響きに満ちたものだったが、その孤高の響きがなんと胸に迫ってくることか。
この「トロイメライ」の演奏は決して忘れられないだろう。
レーゼル登場前には紀尾井シンフォニエッタ東京によってメンデルスゾーンのシンフォニア第7番が演奏されたが、作曲家12~13歳の時の作品とのこと。
メンデルスゾーンの早熟ぶりにあらためて驚かされる。
作品として立派なものであったし、弦のみによる響きが新鮮に感じられる曲だった。
そして後半はシューベルトの交響曲第5番。
モーツァルトのような簡素で軽快な曲調で、私のようなオケ曲に疎い者でも結構とっつきやすく感じる作品である。
生で聴いたのはおそらくはじめてだと思うが、各楽章がそれぞれの良さをもっていて聴きやすかった。
ヴァイグレ指揮の紀尾井シンフォニエッタ東京は非常に自発的で雄弁な演奏が素晴らしかった。
なお、紀尾井シンフォニエッタ東京のヴァイオリンにN響で見た顔があるなと思い、プログラムを見たらやはりそうで、大宮臨太郎さんという人だそうだ。
それにしてもこの紀尾井ホールはあらためて響きの素晴らしいホールだなぁと感じた。
真ん中より若干後ろよりの列の左端の席だったが、ピアノとオケが極めて美しく響いてきた。
来年でレーゼルの「ドイツ・ロマン派 ピアノ音楽の諸相2013」シリーズは最終回。
来年こそはソロとコンチェルトだけでなく、室内楽(ブラームスのピアノ五重奏曲)も聴こうと思うが、財布が大丈夫か?
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