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長島剛子&梅本 実/リートデュオ・リサイタル<新ウィーン楽派の歌曲を集めて>(2013年10月31日 津田ホール)

長島剛子・梅本 実 リートデュオ・リサイタル
世紀末から20世紀へ Part XII
<新ウィーン楽派の歌曲を集めて>

2013年10月31日(木)19:00 津田ホール(全自由席)

長島剛子(Takeko Nagashima)(S)
梅本 実(Minoru Umemoto)(P)

アレクサンダー・フォン・ツェムリンスキー(Zemlinsky: 1871-1942)
 かわいいつばめ(Liebe Schwalbe) 作品6-1
 妖精の歌(Elfenlied) 作品22-4
 ふたり(Die Beiden)
 日曜日(Sonntag) 作品7-5
 太陽小路で(In der Sonnengasse)

アントン・ヴェーベルン(Webern: 1883-1945)/「5つの歌曲(Fünf Lieder)」作品3
 1.これがあの歌だ(Dies ist ein Lied)
 2.風の中で(Im Windesweben)
 3.小川の岸辺で(An Bachesranft)
 4.朝露(Im Morgentaun)
 5.葉の落ちた木が枝を伸ばす(Kahl reckt der Baum)

アルバン・ベルク(Berg: 1885-1935)/「4つの歌曲(Vier Lieder)」作品2
 1.眠るんだ、眠るんだ(Schlafen, schlafen)
 2.眠り込んだまま私は(Schlafend trägt man mich)
 3.私は最強の巨人を倒した(Nun ich der Riesen Stärksten überwand)
 4.大気は暖かい(Warm die Lüfte)

アルバン・ベルク/「7つの初期の歌(Sieben frühe Lieder)」より
 葦の歌(Schilflied)
 部屋の中で(Im Zimmer)
 夏の日々(Sommertage)

~休憩~

アルノルト・シェーンベルク(Schönberg: 1874-1951)/シュテファン・ゲオルゲの「架空庭園の書」による15の歌曲(15 Gedichte aus "Das Buch der Hängenden Gärten" von Stefan George) 作品15
 1.密生した木の葉に覆われた場所では
 2.この楽園の中の林苑では
 3.初めて私が貴方の領地に足を踏み入れた時
 4.私の口元がこわばり、そして燃えるので
 5.私に言って、どの小道を
 6.私はいかなる仕事も手に付かない
 7.不安と希望が交錯し私の心を締め付ける
 8.今日貴方の肉体に触れなければ
 9.幸せとはかくも厳しくつれないもの
 10.美しい花壇を私は待ち焦がれながら眺める
 11.私たちが花で飾られた入口の陰で
 12.深い褥の中で聖なる憩いのあいだ
 13.貴方は岸辺の柳に身をもたせ
 14.木の葉についてばかり語るのを止めよ
 15.私たちは夕暮れによく行ったものだ

~アンコール~
ヴェーベルン/似たもの同士(Gleich und gleich)
シェーンベルク/ギガルレッテ(Gigerlette)

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長島剛子・梅本 実リートデュオ・リサイタルを津田ホールで聴いた。
この2人は2001年6月から「世紀末から20世紀へ」というシリーズを始め、今回が12回目にあたる。
私はこのシリーズは今回はじめて聴いたのだが、お二人の演奏は以前川口リリアでシューマン歌曲集を聴いたことがある。
その時もリートの演奏者としての実力を感じたものだが、その彼らの本領とも言える20世紀歌曲を堪能してきた。

プログラムはシェーンベルクの師匠でもあったツェムリンスキーの歌曲5曲で始まり、ヴェーベルンの短い作品3の歌曲集、さらにアルバン・ベルクの作品2全曲と「7つの初期の歌」からの抜粋で前半を締め、後半はシェーンベルクの「「架空庭園の書」による15の歌曲」が演奏された。

この時代の歌曲も今となってはすでに古典と言ってもいいのだろうが、ロマン派中心の歌曲の聴き方をしている私のような者にとっては、馴染みが薄いというのが正直なところである。
今回のプログラムでもそれなりに知っていたのはアルバン・ベルクの歌曲ぐらいで、その他は直前にヴェーベルンの歌曲を予習したぐらい。
シェーンベルクの「架空庭園の書」は名前だけは知っていたが、ちゃんと聴いたこともなかった。

しかし配布されたパンフレットの懇切丁寧な解説と対訳(お二人による)を参照しながら、演奏される曲に耳を澄ますと、比較的親しみやすいツェムリンスキーやベルクだけではなく、ヴェーベルンもシェーンベルクも詩の韻律と音のリズムの対応関係は一致しており、歌とピアノの関係は耳に馴染みやすい響きではないものの、全く乖離しているわけでもなく、歌曲の伝統に連なっているように感じられた。
後は繰り返し聴くことで、これらの響きに慣れれば、もっと身近な存在になるのではないだろうか。
そんなことを思いながらシェーンベルク、ヴェーベルン、ベルクたちのメッセージに身を浸した一夜であった。

中でも印象に残っているのがベルクの「大気は暖かい(Warm die Lüfte)」。
「あの人はまだ来ない。ずいぶん待っているのに(Er kommt noch nicht. Er lässt mich warten)」と歌手が高音で叫びを思わせる切迫感で歌い、その後、ピアノが降下して鋭い低音を打ち付ける。
この箇所は緊迫感があり、訴えかけるものが強い。
さらに歌は「死ぬがよい(Stirb!)」と低音でつぶやくように続き、聴き手は戦慄を覚えるのである。

長島さんはじっくりと落ち着いたリート歌手という印象で、その安定した歌唱はこれらの歌曲に近づきやすくしてくれた。
特に声を張った時の響きの充実感が素晴らしかった。
曲の性格によるのだろうか、かなり語りを意識した歌い方だったようにも感じられた。

ご主人の梅本 実さんのピアノはまさにリート演奏の理想像とも言うべき充実したものであった。
テクニックの充実はもとより、テキストへの対応、響きのコントロールなど、どこをとっても隙がない。
歌曲の伴奏はこういう演奏で聴きたいと思わせる魅力があった。

アンコールの最後はシェーンベルクのキャバレーソングから「ギガルレッテ」。
歌う長島さんもここにいたって満面の笑顔で、解放感にあふれたように演じて魅せてくれた。

お二人の今後の活動を楽しみにしたい。

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