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シューベルト「夕映えの中でD799」を聴く

真子さんのご要望により、シューベルトの「夕映えの中でD799」を聴きたいと思います。

ラッペの詩によるシューベルトの歌曲で「孤独な男D800」と同様によく知られているのがこの「夕映えの中で」です。
夕日に映える世界の美しさを胸に抱くことで、嘆きやためらい、迷いに崩れそうな自分を奮い立たせようという告白でしょうか。
ピアノの幅広い和音の上を悠然と弧を描くメロディラインが感動的に歌い上げます。
この短い詩のそれぞれの詩句に絶妙に反応しながらも、統一感をもった音楽に仕上げたシューベルトの天才をあらためて感じずにはいられません。

かつて「詩と音楽 梅丘歌曲会館」に投稿した記事がありますので、ご参考までに。
 こちら

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Im Abendrot
 夕映えの中で

O wie schön ist deine Welt,
Vater,wenn sie golden strahlet!
Wenn dein Glanz herniederfällt
Und den Staub mit Schimmer malet,
Wenn das Rot,das in der Wolke blinkt,
In mein stilles Fenster sinkt!
 おお、なんと美しいのだ、御身の世界は、
 父よ、世界が金の光を放つ時!
 また、御身の輝きが降り注ぎ
 ほこりを微光で色づける時、
 雲の中でちらついている紅色が
 私の静かな窓辺に沈み込んでくる時!

Könnt ich klagen,könnt ich zagen?
Irre sein an dir und mir?
Nein,ich will im Busen tragen
Deinen Himmel schon allhier.
Und dies Herz,eh' es zusammenbricht,
Trinkt noch Glut und schlürft noch Licht.
 私は嘆き、ためらっているのだろうか?
 御身も自分も信じられないのだろうか?
 いや、私は胸に抱こう、
 すでにここにある御身の空を。
 そして、この心は、もろく崩れ落ちる前に
 さらに赤熱を飲み込み、光をすすり入れるのだ。

詩:Karl Gottlieb Lappe (1773 - 1843)
曲:Franz Peter Schubert (1797 - 1828)

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エリー・アーメリング(S)&ドルトン・ボールドウィン(P)

アーメリングのコントロールされたレガートの美しさ!溜息が出るほど素晴らしいです。ボールドウィンも静謐な中で見事に歌っています。

バーバラ・ボニー(S)&ジェフリー・パーソンズ(P)

大自然の雄大な広がりをボニーのよく伸びる美声が感じさせてくれます。パーソンズの安定感のある響きもきわめて美しいです。彼が一度もアルペッジョを使っていないのは、手が大きいからでしょう。

フリッツ・ヴンダーリヒ(T)&フーベルト・ギーゼン(P)

ヴンダーリヒのノーブルな美声は神聖な気分にさせてくれます。ギーゼンもいつも以上によく歌い、聴きごたえあります。

ヘルマン・プライ(BR)&ピアニスト(カール・エンゲル?)←真子さんに情報をいただきました。

抑えたプライの声がなんとも温かくて、心に沁みわたります。ピアニストはプライの解釈を完全に把握したサポートを聞かせます。

ハンス・ホッター(BSBR)&ジェラルド・ムーア(P)

ホッターの深々とした声は聴き手を優しく包み込みます。ムーアもホッターと同様の包容力を感じます。

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR)&ジェラルド・ムーア(P)

1:01:27から始まります(終わりから2曲目)。1957年のザルツブルク・ライヴで、ディースカウとムーアが内的な表現を見事に聴かせます。

マーガレット・プライス(S)&ヴォルフガング・サヴァリシュ(P)

4曲中最初の曲です(3:27頃まで)。M.プライスの滔々と流れる川のようなフレージングは素晴らしいです。サヴァリシュは手が小さいのでアルペッジョだらけですが、やはり彼の伴奏はうまいです。

クリスタ・ルートヴィヒ(MS)&アーウィン・ゲイジ(P)

ルートヴィヒは持前の深い声で母の懐のような安心感を感じさせてくれます。最後から2行目の"eh' es"は聴き慣れないメロディですが、こういう版があるのかもしれません。ゲイジはユニークな個性を発揮しています。

エルナ・ベルガー(S)&ピアニスト

往年の名ソプラノ、エルナ・ベルガーが80歳の時の動画です!彼女の歌っている姿を見られるだけでも貴重ですが、この年でこれだけ見事に歌うことにも驚きました。

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コメント

フランツさん、こんばんは。

「夕映えの中で」のアップありがとうございます(2曲同時は、大変でしたでしょうね)
この季節には、ことに聞きたくなる美しい曲です。
これだけの名歌手で聞き比べられるとは、なんという幸せ、ぜいたくでしょうか!
どの歌手も素晴らしく、ただただ聴き惚れました。

エルナ・ベルガーの貴重な動画を、よく見つけられましたね。ベルガーも好きでCDを持っているのですが、衰えぬ美声には本当に驚きました。

普段は、女声はレッジェーロ系ソプラノが好きなんですが、この曲に関してはルートヴィヒがとても好きです。
と言いつつ、やはりアメリング、ボニーは何度聴いてもうっとりします。

ヘルマン・プライさんの演奏は、1962年のロンドン盤ではないかと思います(多分ですが・・)。もしそうでしたら、(手元のCDによりますと)ピアニストは、カール・エンゲルです。
プライさんは、1995年の公演で、この曲を歌ってくれました。
その時ホールがあかね色に染め上げられたように私には感じられ、静かな感動に包まれました。
忘れられない体験です。


詩も大好きです。
キリスト教では、神のことを「父」とも呼びすので、あなたの世界は美しいというのは、神がお造りりになった世界が美しいと言っているのだと思います。
詩人が、具体的な悩みの中にあったのか、漠然とした、自分や神への疑問があったのか、詩からははっきりしませんが、最後は、すべてを神にゆだねようとしている祈りとして私は捉えています(私が持っている楽譜の註解では、Deinen Himmel は、あなた(神)の天国となっておりました)。

投稿: 真子 | 2013年10月27日 (日曜日) 18時57分

真子さん、こんばんは。
喜んでいただけてうれしいです!

確かにこの作品の雰囲気は秋にふさわしいかもしれませんね。

ヘルマン・プライの伴奏者、エンゲルだったのですね。教えてくださりありがとうございます!さすがですね。
真子さんはプライの実演でこの曲を聴かれたそうで、貴重な体験をされましたね。

エルナ・ベルガーの動画を発見した時は、こんな貴重なものが残っていることに驚いて、これはご紹介したいと思いました。真子さんもすでにCDで親しんでおられたのですね。彼女の声は他のどのソプラノよりも高くかわいらしいのですが、どこか浮世離れしたような感じもあって印象的です。

詩の解釈についてもご教示、ありがとうございました。確かに「父」を「神」と解釈すると、漠然としていた詩の意味がより明確になりますね。神にゆだねる心情を歌った歌とすると、シューベルトの音楽の神々しさも納得できます。

投稿: フランツ | 2013年10月27日 (日曜日) 19時58分

フランツさん、こんにちは。
『夕映えの中で』。まさに祈りの歌ですね。ムーのピアノもすばらしい。普段はこの曲を聴くときは、ボニーの歌唱を愛聴していますが、こうしてフランツさんのご努力におんぶに抱っこさせてもらいながら、はじめて聴く歌唱も多く、ベルガーなどもその一人でした。

それにしましても、この曲を聴くと(特にプライなどで)、あのミレーの「落穂ひろい」の情景が目に浮かび上がります。そして、その画の中で、祈りを奉げてたたずむ人々は、ひょっとしたら自然の収穫に感謝をささげているばかりではなく、人間的な色々な想いを祈って眼を閉じているのかもしれないなあ、と空想したりしてしまうのです。

投稿: Zu-Simolin | 2013年11月 4日 (月曜日) 15時38分

Zu-Simolinさん、こんばんは。
「夕映えの中で」は、テキストの内容もシューベルトの音楽もおっしゃるように祈りなのでしょうね。ボニーの歌唱は本当に感動的ですね!
ミレーの絵画を思い起こされるところはZu-Simolinさんの素晴らしいところで、私などは音楽から名画が思い浮かぶことはほとんどないので、Zu-Simolinさんの感性がうらやましい限りです。
「落穂拾い」の登場人物がどんなことを祈っていたのか、想像をしてみるのも面白そうですね。
エルナ・ベルガーについても喜んでいただけてうれしいです。これまで録音でしか知らなかった往年の演奏家の動画がアップされていたりするので、動画探索はやめられません。

投稿: フランツ | 2013年11月 4日 (月曜日) 21時38分

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