« アントネッロ/モンテヴェルディ作曲 歌劇《ポッペアの戴冠》(2013年9月3日 川口総合文化センターリリア 音楽ホール) | トップページ | シューベルト「音楽に寄せてD547」を聴く »

シューベルト「ヘリオポリスよりⅡD754」を聴く

今回はシューベルトの情熱が迸る作品を聴いてみたいと思います。
彼の親友でもあったマイアホーファーの詩による「ヘリオポリスよりⅡD754」です。
ヘリオポリスとは古代エジプトの都市の名前で、ギリシャ語で「太陽の町」を意味していたそうです。
紀元前には宗教都市として名を残したそうです。
シューベルトは「ヘリオポリスより」と題した作品を2曲作りました。
第1曲は静かで抒情的な作品で、まさに「太陽の町」について歌っています。
一方、この第2曲は自然の猛威の中で詩人の生きざまを情熱的に歌い、曲はドラマティックに盛り上がっていきます。
詩は強弱強弱のメリハリのあるリズムで、単語も"F"や"W"の強い息が感じられる語で始まったり、選ばれている単語もかちっかちっとしたドイツ語の性格が強調されているように感じられます。
動画に詩の朗読が見つからなかったのが残念です。
なお、この第2曲のタイトルはマイアホーファー自身は「Im Hochgebirge(高山にて)」としているそうです。
フィッシャー=ディースカウのお得意の曲であり、ライヴも含めて、いくつもの録音を残しています。
私も彼の歌唱でこの曲を知り、大好きになりました。
今回は彼の異なる3つの演奏を聴いてみてください。

Aus Heliopolis II
 ヘリオポリスよりⅡ

Fels auf Felsen hingewälzet,
Fester Grund und treuer Halt;
Wasserfälle, Windesschauer,
Unbegriffene Gewalt.
 岩々が転がっているところ、
 安定した土台に確かな支え。
 滝、突然の突風、
 把握できない猛威。

Einsam auf Gebirges Zinne
Kloster - wie auch Burgruine:
Grab' sie der Erinn'rung ein!
Denn der Dichter lebt vom Sein.
 山地のぎざぎざの峰の上に寂しく立つ
 修道院や城の廃墟、
 それらを記憶に刻み込め!
 なぜなら詩人は存在によって生きるのだから。

Atme du den heil'gen Äther,
Schling' die Arme um die Welt;
Nur dem Würdigen, dem Großen
Bleibe mutig zugesellt.
 神聖な精気(エーテル)を吸いこめ、
 世界に腕を巻きつけろ、
 ただふさわしい者、偉大な者とのみ
 付き合う勇気をもて。

Laß die Leidenschaften sausen
Im metallenen Akkord;
Wenn die starken Stürme brausen,
Findest du das rechte Wort.
 激情を
 金属的な和音の中で響かせろ、
 強い嵐が吹き荒れるとき
 おまえはふさわしい言葉を見出すだろう。

詩:Johann Baptist Mayrhofer (1787 - 1836)
曲:Franz Peter Schubert (1797 - 1828)

------------------------

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR)&ジェラルド・ムーア(P)

13:23~(5曲目)が「ヘリオポリスよりⅡ」です。F=ディースカウの力強さと明晰な発音、ムーアの雄弁で完璧な土台と、言うことなしの名演です!

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR)&スヴャトスラフ・リヒテル(P)
こちら(埋め込みコードが正しくない為、リンクを貼りました)
59:05~(18曲目)が「ヘリオポリスよりⅡ」です。1977年ザルツブルクにて。ライヴならではの熱気が歌、ピアノともにひしひしと伝わってきます。

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR)&ハルトムート・ヘル(P)

F=ディースカウの演奏活動後期の演奏で、声からみずみずしさは失われつつありますが、そのめりはりのきいた設計は相変わらず見事です。ヘルはディースカウと互角に渡り合っています。

フラウケ・ヴィリムツィク(Frauke Willimczik)(MS)&ラルフ・ツェットラー(Ralph Zedler)(P)

女声でこれほど見事にこの曲を歌いこなすとは驚きです!声、語り口、表現力と見事に備わったメゾソプラノです。ツェットラーのピアノも情熱的に演奏していて、こちらも素晴らしいです。

ゲオルク・ハン(BSBR)&ミヒャエル・ラウハイゼン(P)

ハンは典型的な低声歌手で、この曲のキャラクターにふさわしい深々とした響きによる堂々たる歌唱です。ピアノ伴奏者の先駆的存在のラウハイゼンも立派に弾いています。1943年の古い録音ながら、価値は失われていません。

|

« アントネッロ/モンテヴェルディ作曲 歌劇《ポッペアの戴冠》(2013年9月3日 川口総合文化センターリリア 音楽ホール) | トップページ | シューベルト「音楽に寄せてD547」を聴く »

シューベルト」カテゴリの記事

」カテゴリの記事

音楽」カテゴリの記事

コメント

フランツさん、こんにちは。
このような曲があったんですね。
ディスカウさんは、600程あるシューベルトの歌曲のうち、女声用の歌曲を省いて、殆どをレコーディングしているのですよね。
まず、こうして世にシューベルトを残してくれたことに感謝したいと思います。
いくら、曲があっても、歌ってくれる人がいなかったら知しりようがないですものね。

そしてシューベルトですが、改めて彼のすごさに驚かされます。
どんなに天才的な作曲家でも、その人の色というものがありますが、シューベルトのこの多彩性!
だからこそ、「美しい水車小屋の娘」「冬の旅」といった曲数の多い、透明感のある歌曲集を作曲することができたんですね。
シューマンも「詩人の恋」はじめ、いくつも歌曲集を作曲していますが、やはりシューマン臭が致します(悪いということではなくて)。

フランツさんのこのブログで、こうして知らない曲を聴いたり、聴き比べたり、大変楽しませていただいています。
「海の静けさ」の時に少し話題になっていた「十字軍」。
私も大好きな曲です。
フランツさんのご負担にならなければ、ここでまた紹介してくださると嬉しいです。

投稿: 真子 | 2013年9月17日 (火曜日) 14時05分

真子さん、こんばんは。
今回の選曲はちょっとした冒険でした。私がはじめてフィッシャー=ディースカウの実演を聴いた時のプログラムの最後に歌われたのがこの曲で、それ以来私のお気に入りではあったのですが、あまり歌われる曲ではないですよね(プライも録音はしていないようですし)。ただ、音楽としてはとても優れていると思いますし、ご紹介する価値はあると判断して取り上げてみました。喜んでいただけたなら幸いです。それにしてもシューベルトの男声用歌曲のほとんどを録音してくれたディースカウとムーアにはただただ感謝するのみです。
シューベルトの「多彩性」について真子さんがおっしゃっていましたが、まさに私がこのシューベルトシリーズでお伝えしたいのがシューベルトの音楽の多彩さでした。
今後も硬軟取り混ぜてシューベルトの多彩な作品を聴いていけたらと思っております。「十字軍」もいずれ取り上げるつもりでしたので、いつになるかは分かりませんが気長にお待ちいただければと思います。

投稿: フランツ | 2013年9月18日 (水曜日) 01時25分

フランツさん、こんにちは。
この曲は、フランツさんにとって思い出深い曲だったんですね。
プライさんはこの曲を録音していませんので、初めて聴きました。
これからも、余り世に知られていない曲をご紹介ください。
素晴らしいシューベルトの世界が広がりそうで、楽しみにしています。

投稿: 真子 | 2013年9月18日 (水曜日) 12時08分

真子さん、こんばんは。
ご返事を有難うございます。
この曲をディースカウの実演で聴いた後に、知り合いの方にこの日のプログラムをシューベルト歌曲全集のレコードからカセットにダビングしてもらい、そのテープを繰り返し聴いて、ますます好きになっていきました。
知られていない曲の中にも宝石のような作品があるということをその時に知ったのだと思います。

投稿: フランツ | 2013年9月19日 (木曜日) 21時22分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/150976/58190711

この記事へのトラックバック一覧です: シューベルト「ヘリオポリスよりⅡD754」を聴く:

« アントネッロ/モンテヴェルディ作曲 歌劇《ポッペアの戴冠》(2013年9月3日 川口総合文化センターリリア 音楽ホール) | トップページ | シューベルト「音楽に寄せてD547」を聴く »