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友野玲子&白岩貢&小木曽美津子/ヴォルフ「イタリア歌曲集」(2013年7月5日 杉並公会堂 小ホール)

友野玲子&白岩貢&小木曽美津子 リートリサイタル
歌で紡ぐ男と女の恋物語
2013年7月5日(金)19:00 杉並公会堂 小ホール(全自由席)

友野玲子(ともの れいこ)(S)
白岩貢(しらいわ みつぐ)(Br)
小木曽美津子(おぎそ みつこ)(P)

フーゴー・ヴォルフ(Hugo Wolf)/イタリア歌曲集(ITALIENISCHES LIEDERBUCH)(全曲)

1. 小さなものでも(S)
2. 遠くへ旅立つそうね(S)
3. 君は何よりも美しい(Br)
4. 祝福あれ、この世を作られた方に(Br)
39. 緑色に祝福を(S)
6. 誰があなたを呼んだの?(S)
44. ああ、お前は知っているか(Br)
7. 月は重い悲しみを引き摺って(Br)
24. もう乾いたパンを食べることはない(S)
11. どんなに長い間(S)
14. 仲間よ、僧衣をつけよう(Br)
12. いいえ、お若いかた(S)
9. お前の魅力が(Br)

10. あなたは細い一本の糸で(S)
13. いい気なもんだね、美しい娘さん(Br)
28. 私が高貴な出でないからといって(S)
30. 勝手にさせておけ(Br)
32. なぜ怒っているの(S)
20. 恋人が月明かりで歌っている(S)
22. セレナードを奏でるために(Br)
19. わたしたちは長いこと黙っていた(S)
8. さあ仲直りしよう(Br)
33. 花に覆われてわたしは死にたい(Br)
36. もしあなたが天に召されるなら(S)

~休憩~

23. どんな歌を君に歌ったらいいのか(Br)
15. 私のかわいい恋人(S)
5. 闇の世界に生きる人たちは幸せだ(Br)
25. 恋人がわたしを食事に招いた(S)
26. 色んな人が私に話してくれた(S)
27. 疲れた体をベッドに投げだして(Br)
21. 噂ではあなたのお母さんが(S)
17. 恋人の死を見たいなら(Br)
18. お前のブロンドの頭をあげて(Br)
29. 高貴なあなたのご身分はわかる(S)
34. あなたが朝早くに起きると(Br)
35. 亡き母に祝福あれ(Br)

16. 戦場へ行くお若い方々(S)
31. どうして私が陽気に笑えましょう(S)
37. ずいぶん時間を無駄にした!(Br)
40. ああ、あなたのお家がガラスのように(S)
38. 君が僕をちらりと見て(Br)
41. 昨夜僕が真夜中に目覚めたとき(Br)
45. 深い淵が恋人の小屋を(S)
42. もうこれ以上は歌えない(Br)
43. もう黙ったらどう!(S)
46. ペンナに私の恋人がいる(S)

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大好きなヴォルフの作品「イタリア歌曲集」が演奏されるというので、杉並公会堂の小ホールまで出かけた。
このホールは初めて来たが、荻窪駅から大きな通り沿いに7、8分歩いたところにあった。
建物の地下2階までエレベータで降りたところに小ホールはあり、当日券を買って左側の前の方の席に座った。

演奏されるお三方とも寡聞にしてはじめて聴く方ばかりだったが、結論から言うと、非常に充実した大人の演奏を堪能できた。
演奏に先立ってピアニストの小木曽美津子さんが登場して、曲目についてのプレトークがあったが、今回ヴォルフの出版順序のままではなく、独自の順番を決めたのが苦労されたとのこと。
その意気込みにまず拍手を贈りたい。
実際にテキストのつながりに配慮されながら、曲調が同じにならないような工夫も見られ、変化に富んだプログラミングとなったように感じられた。

歌手の2人は、その曲を歌う人がピアノの前に立ち、もう一人は右側の脇に立ったまま待機する形をとり、場所を入れ替えながら進行していく。

ソプラノの友野玲子さんは例えばエルナ・ベルガーやアーメリングにも共通する透明で清潔感のあるリリックな美声をもち、細やかな表現からドラマティックな迫力まで幅の広さのある歌い手だった。
ヴォルフが各曲にこめた微細な表情を見落とさず、しっかりと掬いあげる歌唱はリートを聴く醍醐味を満喫させてくれ、本当に素敵なソプラノであった。
一方のバリトン、白岩貢さんはダンディな伊達男を演じて見事に聴き手をその世界に引きずり込む魅力をもっており、特にコミカルな表情や直球のラブソングなどが際立っていた。
若干歌詞のミスなども聞かれたが、歌詞を別の言葉に置き換えて悟られないようにするところなど、見事なものだった(もちろん間違えないに越したことはないが、ライヴでは大抵歌詞のミスは避けられないものだ)。

お二人とも声を張った時にホールを満たす響きが魅力的で、堂々たる男女の駆け引きを聴かせてくれた。
ほとんど演技は付かなかったが、オペラではないので、歌の表情でこれほどの情景を描き出せれば何の不足もない。

さて、忘れてならないのが、ピアノの小木曽美津子さんの素晴らしさ!
細身の体から実に雄弁な音楽が生み出される。
テクニックも非常に安定していて、作品ごとの曲調の違いなどものの見事に描き分ける。
ヴォルフの複雑な書法を演奏するのに全く見事なめりはりのある演奏を披露していて、拍手を贈りたい。
彼女の柔軟かつ雄弁な音楽があってこその名演だったといえるのではないか。

途中休憩15分ほどをはさみ、9時前には終了したが、本当にこのヴォルフの歌曲集は楽しい。
時の流れを忘れてしまうほどだ。

なお、今回ステージ後ろにスクリーンがあり、演奏と同時進行で歌詞対訳が映されていたのは、作品を理解する大きな助けになっただろう(途中機械の故障か映らなくなってしまった時があったが)。
対訳はどこかで見た覚えがあるなぁと思っていたが、どうやら「詩と音楽」サイトに掲載されている私が訳した対訳が使われていたようだった。
この歌曲集を訳していた時はあれこれ思い切った言葉をひねくり回して本当に楽しかったことを思い出す。
そういう意味でも印象深いコンサートとなった。
またこのメンバーによる演奏をいつか聴いてみたいものである。

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