久しぶりに「歌曲」について投稿します。
シューベルトのあまたの歌曲の中で最も美しい作品のひとつ「水の上で歌う」を聴き比べようと思います。
シューベルトよりも50年近く前に生まれたシュトルベルク伯爵が32歳の時に作ったテキストに、シューベルトは1823年に作曲しました。
シュトルベルク伯爵によるオリジナルのタイトルは「水の上で歌う歌(Lied auf dem Wasser zu singen)」で、シューベルトは最初の「歌(Lied)」を曲名から省いたのでした。
ピアノパートの隣り合った音をこまかく下降させたピアノパートは、水に照り映える夕日のきらめきを思わせ、自然の営みと時の流れをリンクさせた詩の内容をきわめてデリケートな響きの有節歌曲としたのでした。
詩の内容は次のとおりです。
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Auf dem Wasser zu singen
水の上で歌う
Mitten im Schimmer der spiegelnden Wellen
Gleitet, wie Schwäne, der wankende Kahn;
Ach, auf der Freude sanftschimmernden Wellen
Gleitet die Seele dahin wie der Kahn;
Denn von dem Himmel herab auf die Wellen
Tanzet das Abendrot rund um den Kahn.
照り返す波の微光のただなかを
白鳥のように、揺れる小舟がすべり行く。
ああ、喜びの穏やかにきらめく波の上を
魂は、小舟のようにすべり行く。
なぜなら、空から波へと照りそそぐ
夕日が、小舟のまわりで踊っているから。
Über den Wipfeln des westlichen Haines,
Winket uns freundlich der rötliche Schein;
Unter den Zweigen des östlichen Haines
Säuselt der Kalmus im rötlichen Schein;
Freude des Himmels und Ruhe des Haines
Atmet die Seel' im errötenden Schein.
西の林の梢の上で
我らに親しげに、赤い光が合図を送ってくる。
東の林の枝の下で
菖蒲が、赤い光の中でざわざわ音を立てている。
空の喜びと林の静けさを
魂は、赤くなった光の中で吸い込むのだ。
Ach, es entschwindet mit tauigem Flügel
Mir auf den wiegenden Wellen die Zeit.
Morgen entschwinde mit schimmerndem Flügel
Wieder wie gestern und heute die Zeit,
Bis ich auf höherem strahlendem Flügel
Selber entschwinde der wechselnden Zeit.
ああ、露に濡れた翼で、
揺れる波の上を、わが時は過ぎ去っていく。
明日もまた、ほのかに光る翼で、
昨日や今日と同じく、時よ、過ぎ去るのだ。
私が、より大きな輝く翼にのって、
みずから、移り行く時から消え去るまで。
詩:Friedrich Leopold, Graf zu Stolberg-Stolberg (1750.11.7, Bramstedt, Holstein - 1819.12.5, Gut Sondermühlen)
フリードリヒ・レオポルト・グラーフ・ツー・シュトルベルク
音楽:Franz Peter Schubert (1797.1.31, Himmelpfortgrund in Wien - 1828.11.19, Wien)
フランツ・ペーター・シューベルト
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