《二期会創立60周年記念公演》
東京二期会オペラ劇場
マクベス
オペラ全4幕《新制作》
日本語字幕付き原語(イタリア語)上演
台本:フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ
(原作:ウィリアム・シェイクスピア「マクベス」)
作曲:ジュゼッペ・ヴェルディ
2013年5月3日(金・祝)14:00 東京文化会館 大ホール(3階L3列7番)
マクベス:小森輝彦
マクベス夫人:板波利加
マクダフ:井ノ上了吏
バンコー:ジョン ハオ
マルコム:村上公太
マクベス夫人の侍女:野口知香
伝令/暗殺者/医者:伊藤 純
ダンカン:加賀清孝
第1の魔女:近藤京子
第2の魔女:河口祐貴子
第3の魔女:北原瑠美
フリーアンス:池袋遥輝
合唱:二期会合唱団
管弦楽:東京交響楽団
指揮:アレクサンドル・ヴェデルニコフ
演出:ペーター・コンヴィチュニー
装置:ヨルク・コスドルフ
衣裳:ミヒャエラ・マイヤー=ミヒナイ
照明:喜多村 貴
演出補:ハイデ・シュトック
合唱指揮:佐藤 宏
演出助手:太田麻衣子
舞台監督:幸泉浩司
公演監督:多田羅迪夫
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二期会のヴェルディ「マクベス」を聴いた。
コンヴィチュニー演出を見るのは、昨年の「サロメ」に続き2回目。
なかなか大胆な演出を作品から引き出す人のようで、今年も期待したが、空席の多さにまず驚いた。
コンヴィチュニーの演出は、「マクベス」の台本にキーパーソンのように出てくる「魔女」たちに重きを置いたもの。
社会に虐げられてきた存在である魔女たちが、ドラマの全体にわたり、血なまぐさい権力抗争を嬉々として手助けする。
それぞれ現代風のカラフルな服を着て(魔女らしいところは鉤鼻を付けているぐらいか)、台所で女子会よろしく騒いでいる場面で始まり、ラストの場面でも再度台所に集合する。
そして、マクベスを倒して新たな王が誕生した後にオケの音から魔女たちの取り囲むラジオから流れる録音音声に変わり、そのまま幕が下りる。
つまり生演奏を最後の最後に録音にすり替えて、聴衆をけむに巻いてお開きとなる。
これはブーイングが出たが、コンヴィチュニーの思惑どおりだろう。
魔女たちの冷めた視点をラジオを聴くという形で表現しようとしたのかもしれないが、生演奏のまま、ラジオを聴く演技というのでも良かったような気がするが、それではコンヴィチュニーらしくないということか。
細かい所でもいろいろ細工がされていたようだが(死人が出るたびに魔女がチョークで書き足したという黒板は、3階左脇の私の席からは全く見えなかった)、ファンタジックで決して深刻にならず、時にコミカルですらあるところは、男性優位社会への皮肉がこめられているようだ(プログラムに彼の解説あり)。
歌は粒ぞろいで、皆大健闘ではないか。
普段はドイツものを得意とする小森らしい細やかな情感のこもった主役と、板波の強靭でエネルギッシュな恐妻っぷりは見事。
それだけでなく、マクダフの井ノ上、バンコーのジョン ハオもいい声で聞き惚れたし、出番の少ない医者や侍女、マルコムまで、皆そろって上手い。
演出家の求める演技をしつつ、これだけいい歌唱が聴ければ大満足である。
ヴェデルニコフ指揮のオケも丁寧で、必要なドラマもあり、良かった。
だが、最後の録音使用については聴衆に大きな問題提起を突き付けた。
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