ドビュッシー対訳歌曲詩集
先日久しぶりに三省堂書店に出かけて音楽書のコーナーをぶらついていたら、こんな本に出会った。
「ドビュッシー・ソング・ブック 対訳歌曲詩集」
山田兼士訳
2013年3月3日 澪標発行
従来もシューマンやブラームス、ムソルクスキーやチャイコフスキーなどの全歌曲対訳集は発売されていたことがあったが、私の知る限り、フランス歌曲の個人の全対訳集は、書籍としてはなかったのではないか(もちろんCD付属のブックレットの形ではあったわけだが)。
ドビュッシーの歌曲というのは全部で60曲強ぐらいなのだそうだ。
だが、訳者の山田氏によると、ドビュッシーが「歌曲制作にあたって選んだ詩作品がいずれも今日高い評価を得ている名作であ」り、「それ自体ひとつの優れたフランス詩選集(アンソロジー)」であるという。
従って、この対訳全集は詩集として読まれることも念頭に置かれているとのこと。
私はフランス語の文法はほとんど勉強しないまま現在にいたっているが、フランス語の発音には興味があり、例えばピエール・ルイスの詩による「ビリティスの歌」3編などを下手な発音で朗読してみると、不思議とドビュッシーの歌曲がより身近に感じられるようになる。
以前、ボドレール歌曲集の「瞑想(Recueillement)」のテキストを見ていた時、鼻母音が連続して出てくる行があり、そこはドビュッシーもその鼻母音が美しく際立つような音楽を付けていて、テキストの読み取りがいかに音楽を理解するうえで大切かを感じたことを思い出した。
歌曲にとって詩と音楽は切り離すことの不可能なものであり、その両方を味わってこそ、真の喜びが得られるのだろう。
そういう意味ではただの歌曲好きの私は、まだまだ表面的な聴き方しかしていないケースがほとんどである。
だが、この労作のような文献が手元にあると、歌曲への理解がより深まり、楽しみも増えるに違いない。
ドビュッシー歌曲に興味にある方にはぜひお勧めいたします。
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