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髙橋節子&田代和久&平島誠也/ヴォルフ「イタリア歌曲集」(2013年3月6日 日暮里サニーホール コンサートサロン)

ヴォルフ(Hugo Wolf)/イタリア歌曲集(Italienisches Liederbuch)

2013年3月6日(水)19:00 日暮里サニーホール コンサートサロン(全席自由)
髙橋 節子(Setsuko TAKAHASHI)(ソプラノ)
田代 和久(Kazuhisa TASHIRO)(バリトン)
平島 誠也(Seiya HIRASHIMA)(ピアノ)

第一巻
 1. 小さくてもうっとりさせるものがあるわ(S)
 2. 遠くへ旅立つと聞かされたの(S)
 3. 君は世にも稀なる美しさだ(Br)
 4. 祝福あらんことを、この世を創造された方に(Br)
 5. 目の見えないものは幸せである(Br)
 6. 一体誰があなたを呼んだの?(S)
 7. 月はやるせなき悲嘆にくれ(Br)
 8. もう、講和条約を結ぼう、最愛の人よ(Br)
 9. 君の魅力すべてが絵に描かれて(Br)
 10. あなたはたった一本の細い糸で私を捕まえて(S)
 11. どれほど長い間待ち望んでいたことでしょう(S)
 12. 駄目よ、お若い方、そんなことをしては本当に(S)
 13. 高慢ちきだな、別嬪さんよ(Br)
 14. 相棒よ、修道服にでもくるまってみるか(Br)
 15. 私の恋人はこんなに小さくてかわいいの(S)
 16. 戦場に向かわれるお若い方々(S)
 17. 君の恋人が身罷るのを見たいのならば(Br)
 18. ブロンドの頭を上げなさい、眠ってはいけないよ(Br)
 19. 私たちは二人とも長いこと押し黙っていた(S)
 20. 私の恋人が月明かりの注ぐ家の前で歌っているわ(S)
 21. あなたのお母さんが望んでいないらしいわね(S)
 22. 皆様方へセレナーデを持参いたしました(Br)

~休憩~

第二巻
 23. 君にどんな歌を歌ってあげたらいいのか(Br)
 24. もう固くなったパンを食べることはありません(S)
 25. 恋人が私を食事に招いてくれたの(S)
 26. 私が聞かされた噂によると(S)
 27. 疲れ切ってベッドに横たわったのに(Br)
 28. 公爵夫人じゃないだろうって、私に言うけど(S)
 29. 賤しからぬあなたの御身分はよく存じ上げております(S)
 30. 好きにさせておけ、お高くとまった女なんて(Br)
 31. 陽気になんてしていられるものですか(S)
 32. 一体何をそんなに怒っているの?大切な人(S)
 33. 僕が死んだら花で体を覆ってほしい(Br)
 34. 君が朝早くベッドから起きて(Br)
 35. 幸せなる母君に祝福を(Br)
 36. 愛する人、あなたが天に召されるとき(S)
 37. 君を愛しすぎて多くの時間を失ってしまった(Br)
 38. 君は僕をちらりと見てほほえむ(Br)
 39. 緑と緑色をまとう人に幸がありますように!(S)
 40. ああ、あなたの家がガラスのように透きとおっていたらいいのに(S)
 41. 昨夜僕は真夜中に起き上った(Br)
 42. 僕はもうこれ以上歌えない、だって風が(Br)
 43. ちょっと黙りなさい、そこの不愉快なお喋り男!(S)
 44. ああ、君はわかっているのか、君のためにどれほど(Br)
 45. 深淵が恋人の小屋を飲み込んでしまうがいい(S)
 46. 私、ペンナに住んでる恋人がいるの(S)

~アンコール~
ヴォルフ/「イタリア歌曲集」より~幸せなる母君に祝福を(S & Br)

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ヴォルフの「イタリア歌曲集」はイタリアの男女の恋唄をパウル・ハイゼが独訳したものをテキストにしている。
従って、「イタリア」と銘打っていても「ドイツ」の香りの漂う作品群である。
各曲は1~2分のものがほとんどで、全46曲演奏しても80分弱ほど。
男女の恋をテーマにしているだけあって、惚れたはれただけで済むはずはなく、恋の駆け引きや、激しい痴話げんか、修羅場も登場する。
それらが短い各曲にぎゅっと濃縮されているだけあって、各曲のインパクトは強い。
それらをドイツものに定評のある演奏者たちが演奏するのだから、これは楽しい一夜となった。
とはいえバリトンの田代和久氏を聴くのは私の記憶ではこれが初めて。
ソプラノの髙橋さんと同じ古楽集団に属しているそうだが、実際に聴いてみて、むらのないスタイリッシュな歌唱は確かに古楽で力を発揮していると思わせるものがあった。
だが、それ以上に田代さんの強みは声そのものの美しさだろう。
なんともノーブルで甘美な美声が聴く者を酔わす。
「イタリア歌曲集」にはまさにうってつけの声と歌であった。
ステージ上では歌手たちのための椅子が右端に置かれ、歌う方は中央に立ち、もう一人は椅子に座る。
従って、オペラのような二人の駆け引きがステージ上で見られるわけではないのだが、音楽だけですでに立派な駆け引きになっているのだから、無理して演技することもないだろう。
田代さんの歌唱では「ブロンドの頭を上げなさい、眠ってはいけないよ」や33~35曲目のゆるやかなタイプの曲が出色の出来だった。
一方の髙橋さんはドイツリートの優れた歌手として、すでに何度もその名演に接してきたが、今回はかなり曲に合わせて感情の起伏を大きくとった歌唱が見事だった。
「私の恋人が月明かりの注ぐ家の前で歌っているわ」での会いたいけれど会えない複雑な心境の表現など素晴らしいものだった。
そして、女版ドン・ジョヴァンニともいえる終曲「私、ペンナに住んでる恋人がいるの」では高々と歌いあげ、締めには高笑いまで響かせて、人物になりきった素晴らしい歌唱だった。
そして、この46もの難曲を一人で演奏したピアノの平島誠也氏はいつにも増して張り切っていた(ように感じた)。
大変な思いをしつつもご本人も楽しんで弾いているようにすら感じられたのである。
下手っぴなヴァイオリニストを描写する「どれほど長い間待ち望んでいたことでしょう」では、カチカチに固まったトリルを聴かせる前に、充分な「間」をとって、聴き手をさらにじらす。
そこに平島さんのほくそ笑みが感じられたのである。
どの曲でも安定した技術の裏付けがあるからこそ、ヴォルフの万華鏡のような各曲の感情をこまやかに描き出すことが可能なのだろう。

今回はヴォルフの出版したとおりの順序で演奏され、それももちろん自然な流れになるようになっているので、何の問題もないが、次には、さらに順序を入れ替えた版でもこの3人の演奏を聴いてみたい気がする。
その際にはどのような流れにするかで、演奏者の恋愛観までうかがえるかもしれないのである。

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