祝80歳!!!エリー・アーメリング(Elly Ameling)
1933年2月8日ロッテルダムに生まれたソプラノのエリー・アーメリング(Elly Ameling)が本日80歳を迎えた。
アーメリングのファン歴30年の私にはただただ感慨深い。
先日記事にした80歳記念の5枚組CDはいずれ日本からでも入手できるようになるだろうし、彼女とファンへの一番の贈り物だろう。
だが、彼女の膨大な過去の名録音も眠ったままである。
引退して15年以上経ってもあまり復活する気配がないのは、寂しいとしか言いようがない。
CD会社の状況も厳しいのだろうから無理は言えないが、せめて今年のような記念の機会には1、2枚ぐらい過去の埋もれた録音を復活してもよいのではないか。
特にかつてのPhilips(今ならDECCAか)から出ていた「ドイツ・ロマンティック歌曲集」と、CBSから出ていたフォーレ&ドビュッシー歌曲集、EMIのシューマン歌曲集などは再発の価値は充分にあるのではないだろうか。
故国オランダのラジオ局Radio4がConcerthuisという配信サイト内でアーメリングの80歳を記念して過去のライヴ録音をストリーミング配信しているのは嬉しい。
アーウィン・ゲイジとの1975年の録音は、これまでにも何度も繰り返し配信を繰り返してきたし、過去に記事にもしたので、ここでは触れない。
もう1つのドルトン・ボールドウィンとのシューベルト・リサイタルは、Concerthuis内では初お目見えではないだろうか。
数日前に見つけて大喜びした私であった。
次のリンク先の"Omroeparchief: Sopraan Elly Ameling en pianist Dalton Baldwin"の再生ボタンを押せば最初から聴けるし、好きな曲を選択すれば、その曲から聴くことも出来る。
こちら
内容の詳細は以下のとおり。
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Omroeparchief(放送アーカイヴ): Sopraan Elly Ameling en pianist Dalton Baldwin
録音:1978年4月14日, Concertgebouw te Amsterdam (live)
Elly Ameling(エリー・アーメリング)(soprano)
Dalton Baldwin(ドルトン・ボールドウィン)(piano)
Schubert(シューベルト)作曲
1. Ellens Gesang nr.1 (エレンの歌Ⅰ“憩いなさい、兵士よ”D837) (8:32)
2. Ellens Gesang nr.2 (エレンの歌Ⅱ“狩人よ、休みなさい”D838) (3:03)
3. Ellens Gesang nr.3 (エレンの歌Ⅲ“アヴェ・マリア”D839) (6:54)
4. Rosamunde, Fürstin von Zypern D.797: Romanze "Der Vollmond strahlt" (「キプロスの女王ロザムンデ」D797より~ロマンツェ“満月は輝き”) (3:33)
5. Amalia (アマーリアD195) (3:35)
6. Das Mädchen (娘D652) (2:40)
7. Refrainlieder: Die Männer sind méchant (「4つのリフレイン歌曲」より~男はみんなこんなものD866-3) (2:47)
8. Suleika I (ズライカⅠD720) (5:55)
9. Der König in Thule (トゥーレの王D367) (3:00)
10.Gretchens Bitte (グレートヒェンの祈りD564) (4:24)
11.Gretchen am Spinnrade (糸を紡ぐグレートヒェンD118) (4:37)
12.Claudine von Villa Bella: "Liebe schwärmt auf allen Wegen" (「ヴィラ・ベラのクラウディーネ」D239より“愛はいたるところに”) (1:25)
13.Die Liebende schreibt (恋する娘が手紙を書くD673) (2:49)
14.Nähe des Geliebten (恋人のそばD162) (3:22)
15.Liebhaber in allen Gestalten (あらゆる姿をとる恋人D558) (3:57)
16.Heidenröslein (野ばらD257) (3:44)
17.Der Schmetterling (蝶々D633) (2:45)
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このライヴでの選曲はアーメリングのスタジオ録音でも聴けるものばかりだが、「アマーリア」と「愛はいたるところに」に関してはスタジオ録音ではボールドウィンではなく、ゲイジとデームスが共演者だったので、この2曲はこのライヴ音源ならではの組み合わせということになる。
おそらくさまざまな女性主人公の心情という共通項で集めたプログラミングと思われるが、喜怒哀楽の幅も彼女なりに広く、そこに彼女の安定した解釈と見事な語り口が聴き手を心地よいシューベルト体験へと誘ってくれる。
アーメリングは伸び伸びとした美声を維持しており、さらに経験を積んだ内容的な細やかさも加味されて、実に爽やかで気持ちよいリーダーアーベントを満喫することが出来た。
ただ明るいだけではなく、表現を内側へも向けようとしている彼女の意欲が感じられるだろう。
7曲目の「男はみんなこんなもの」は、彼氏の浮気現場を目撃した悲しみを母親に訴えるという内容で、スタジオ録音よりもかなり切迫感が増した聴きものになっている。
16と17は女心とは異なるが、これらは拍手の感じからしておそらくアンコールであろう。
ピアノのボールドウィンは最初から最後まで各曲を知り尽くした絶妙な演奏である。
9の「トゥーレの王」など古風な和音の響きの連続を単なる和音の羅列に終わらさず、歌の起伏をなぞり、盛り上げ、沈み込ませる。
伴奏の専門家だからこそ味わえる妙味と言えるのではないか。
次は85歳記念をお祝いできることを楽しみにしていたい。
Van harte gefeliciteerd met je verjaardag, Elly Ameling!
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コメント
ご無沙汰しています。
私は決してアーメリングのよい聴き手ではありません。
手元にある彼女の声を聞けるCDはシューベルト歌曲全集(ハイペリオン)のものだけですし、若いころには彼女の声は、バッハのカンタータのLPでしか知りませんでした。
でも、その表面は甘いようでも何かしら確たるものを持って歌っているなあ、という印象を持ったものでしたし、その印象は今も変わりません。
そうですか。80歳を迎えられましたか。私も陰ながらお祝いしたいと思うと同時に、彼女の様々な録音が世に出ればと、思います。
投稿: Zu-Simolin | 2013年2月11日 (月曜日) 17時34分
Zu-Simolinさん、お久しぶりです。
コメントありがとうございます!
ハイペリオンのシューベルトをお持ちなのですね。
あの録音は深さでは一番だと思います。「ミノーナ」という長大なバラードは、彼女の語り口の巧みさによってようやく蘇ったといえるでしょうし、「イーダより(Von Ida)」の各節最後の減衰していく響きのなんという存在感!
という具合に私はアーメリングおたくなので、つい熱く語ってしまいますが、「甘いようで確たるものをもって」いるというのはアーメリングの本質をとらえていると思いますよ。
よろしければ、ラジオの録音なども気晴らしにお聴きになってみてください。3か月ぐらいは聴けるようです。
投稿: フランツ | 2013年2月11日 (月曜日) 18時06分