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大塚恵美子&坂下忠弘Joint Concert~Dalton Baldwin氏を迎えて~(2012年11月15日 ルーテル市ヶ谷センターホール)

大塚恵美子&坂下忠弘Joint Concert~Dalton Baldwin氏を迎えて~
2012年11月15日(木)18:30 ルーテル市ヶ谷センターホール(全自由席)

大塚恵美子(Emiko Otsuka)(ソプラノ)
坂下忠弘(Tadahiro Sakashita)(バリトン)
ダルトン・ボールドウィン(Dalton Baldwin)(ピアノ)

~フォーレとシューマンの夕べ~

シューマン(R.Schumann)作曲(大塚&ボールドウィン)
献呈(Widmung)作品25-1
くるみの木(Der Nußbaum)作品25-3
わたしのばら(Meine Rose)作品90-2
レクイエム(Requiem)作品90-7

フォーレ(G.Fauré)作曲(坂下&ボールドウィン)
夜明け(Aurore)
ひめごと(Le secret)
流れのほとりにて(Au bord l'eau)
漁夫の歌(La chanson de pêcheur)

シューマン(R.Schumann)作曲(大塚&ボールドウィン)
夕暮れの歌(Abendlied)作品107-6
月の夜(Mondnacht)作品39-5
羊飼いの別れ(Des Sennen Abschied)作品79-23
もう春だ(Er ist's)作品79-24

フォーレ(G.Fauré)作曲(坂下&ボールドウィン)
月の光(Clair de lune)
ひそやかに(En sourdine)
憂うつ(Spleen)
マンドリン(Mandoline)

シューマン(R.Schumann)作曲(大塚&ボールドウィン)
ミニョンの歌(4 Mignon Lieder)
語らずともよい(Heiss mich nicht reden)作品98a-5
ただ憧れを知る者だけが(Nur wer die Sehnsucht kennt)作品98a-3
もうしばらくこのままの姿でいさせてください(So lasst mich scheinen)作品98a-9
ご存知ですか、レモンの花の咲く国を(Kennst du das Land)作品98a-1(作品79-29)

シューマン(R.Schumann)作曲(大塚&坂下&ボールドウィン)
夜に(In der Nacht)作品74-4

フォーレ(G.Fauré)作曲(坂下&ボールドウィン)
夕暮れ(Soir)
アルペジオ(Arpège)
ゆりかご(Les berceaux)
いつの日も(Toujours)

フォーレ(G.Fauré)作曲(大塚&坂下&ボールドウィン)
金の涙(Pleurs d'or)

~アンコール~
フォーレ/金の涙(Pleurs d'or)(大塚&坂下&ボールドウィン)

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歌曲ピアニストの名手として著名なダルトン・ボールドウィンが今年も秋に来日して、数人の日本人歌手たちと演奏会を開いた。
現在80歳のピアニストのここ数年の演奏を聴いた者としては、今年はパスした方がいいのだろうかなどと迷いもしたが、結局聴いてよかったと思うことが出来た。

数年ぶりに出掛けたルーテル市ヶ谷センターホールは、東京メトロ「市ヶ谷」駅5番出口から1、2分という便利な場所にある。

ソプラノの大塚恵美子がシューマンの独唱曲、バリトンの坂下忠弘がフォーレの独唱曲、そして各作曲家の二重唱曲を1曲ずつ2人で歌うという構成であった。
ソプラノとバリトンが数曲ずつ交互に歌っては袖に下がり、ボールドウィンは交替の間もピアノの前に座って次の歌手を待つという形で進められた。

楽譜を見ながらピアノの蓋を開けて演奏したボールドウィンは、今宵も確かにミスは散見された。
ペダルで響かせた和音が濁っていることも少なくない。
ただ、興味深いのが、どれほど行方不明になりそうになりながらも、演奏が決して止まらないのである。
年齢からくる記憶力の衰えはあるにしても、止まってもう一度やり直すということには全くならなかった。
それは長年舞台で積み重ねてきた様々な対処法が今も役立っているということではないだろうか。

「危なっかしい演奏は受け付けない」という人には現在のボールドウィンの実演はお勧めできないが、それを脇に置いて、彼の音楽そのものを聴いていると、ますます自在にピアノで歌って、今だからこそ聴ける豊かな音楽が確実にここにはあった。
歌とピアノが対決しているわけでもないのだが、いい意味で歌に遠慮がないのである。
もちろん配慮はいたるところに感じられるが、「控え目」という言葉は今のボールドウィンには当てはまらない。
歌とピアノが対等に二重唱を奏でているのである。
今宵のボールドウィンの演奏が聴けてこれほどうれしく感じたのはきっと私だけではないだろう。
技に頼れなくなった時に、音楽性でどれだけ聴衆を魅了できるかというのは多くの演奏家にとって切実な問題ではないだろうか。
そうした時にボールドウィンの演奏は、一つのヒントを与えてくれるのではないだろうか。

なお、若手歌手のお2人は、この日はじめて聴いたが、どちらも豊かな才能をもった人たちであった。

ソプラノの大塚恵美子はとても澄んだ美しい声をしていた。
最初のうちこそ若干固さも感じられたが、徐々にシューマンの世界を素直にのびのびと表現して、気持ちよい歌を聴かせてくれた。

バリトンの坂下忠弘は、ノーブルでどこまでも安定した豊かな響きをもち、時折スゼーを思わせるほどであった。
スゼーのよきパートナーであったボールドウィンが「フォーレを歌うための声を持って生まれてきた」と坂下氏を称賛したというのもうなずけるほど素晴らしい逸材と感じた。
フランス語の響きもとても美しく、今後の歌曲における活躍を大いに期待したい。

若い歌手の発掘という意味でもボールドウィンの毎年秋の来日はやはり意義深いことだと感じた。

なお全プログラムが休憩なしで演奏され、1時間半ぐらいのコンサートであった。

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