クリスチャン・ツィメルマン/ピアノ・リサイタル(2012年11月27日 川口リリア メインホール)
クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル
2012年11月27日(火)19:00 川口リリア メインホール(1階13列13番)
クリスチャン・ツィメルマン(Krystian Zimerman)(Piano)
ドビュッシー(Debussy)/版画(Estampes)
1.パゴダ(Pagodes)
2.グラナダの夕べ(La soirée dans Grenade)
3.雨の庭(Jardins sous la pluie)
ドビュッシー/前奏曲集 第1集より(Préludes 1 (Selection))
2.帆(Voiles)
12.吟遊詩人(Minstrels)
6.雪の上の足跡(Des pas sur la neige)
8.亜麻色の髪の乙女(La fille aux cheveux de lin)
10.沈める寺(La cathédrale engloutie)
7.西風の見たもの(Ce qu'a vu le vent d'ouest)
~休憩~
シマノフスキ(Szymanowski)/3つの前奏曲(3 Preludes from op.1)(「9つの前奏曲 作品1」より)
第1番 ロ短調
第2番 ニ短調
第8番 変ホ短調
ショパン(Chopin)/ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 作品58(Sonata No. 3 in B minor op.58)
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川口でクリスチャン・ツィメルマンのリサイタルを聴いてきた。
ツィメルマンの実演を聴くのは2回目。
会場に着いたもののリハーサルの為中に入れず、開演時間の7時になっても外でお客さんは待たされたまま。
結局リハーサルと調律が終わって、中に入ることを許されたのは7時2,3分ごろ。
リサイタルは7時15分ごろのスタートとなったが、こういうことは初めての経験だった。
遅れた理由についてもう少し説明があっても良かったのではないだろうか。
館内放送とパンフレットの文章によると、ツィメルマンのライヴをこっそり録音して某動画サイトにアップした人とレコード会社との間でかつて訴訟問題にまで発展したとのこと。
ツィメルマンからのお願いとあえて放送して、演奏の録音やネット上へのアップをしないようにとの注意があった。
前半はドビュッシーの「版画」全3曲と、「前奏曲集 第1集」からの6曲抜粋が演奏された。
ツィメルマンのドビュッシーはクールで知的な印象で、まさに精巧な職人技を感じさせる。
「雪の上の足跡」や「沈める寺」などでは、たっぷりと遅めのテンポを保ちながら緊張感が一切途切れず素晴らしかった。
後半最初はシマノフスキーの若い時の作品「9つの前奏曲 作品1」からの3曲。
メランコリックな曲調が魅力的だが、ツィメルマンは噛んで含めるような思い入れたっぷりな演奏に終始し、止まりそうなぎりぎりのテンポ設定は、作曲家の若い勢いを削ぐ結果にもなったのではないか。
少なくとも私の好みでは、もっと流れるように演奏した時にこれらの美しさが際立つように思った。
後半のショパンのソナタ第3番はピアノのリサイタルであまりにも頻繁に耳にする為、正直新鮮味は薄いものの(ツィメルマンの前回の来日公演でも演奏された)、どこまでもコントロールの行き届いた構築感とメロディを浮き立たせる歌が両立していてさすがと感じさせられた。
ツィメルマンは風邪気味だったようで、楽章間で自ら咳をしてみせて客席に視線を送るなど、客との言葉のないコミュニケーションをとりたがっているようにも思えた。
だが、アンコールも無く、サイン会も無く(それら自体は別に悪いことではないのだが)、一方でリハーサルを長引かせたり、放送でアナウンスを読ませたり、客の反応をうかがったり、楽譜を置いて演奏したり、ユニークなこだわりのある方なのかなという印象も受けた。
聴衆に媚びないピアニストなのかもしれず、またそれが許されるだけの豊かな音楽を聴かせてくれたことは紛れもない事実である。
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