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藤村実穂子&ヴォルフラム・リーガー/リーダー・アーベントⅢ(2012年11月22日 紀尾井ホール)

紀尾井の声楽 2012
藤村実穂子 リーダー・アーベントⅢ

2012年11月22日(木)19:00 紀尾井ホール(1階2列5番)

藤村実穂子(Mihoko Fujimura)(mezzo soprano)
ヴォルフラム・リーガー(Wolfram Rieger)(piano)

シューベルト(Schubert)作曲
湖で(Am See) D746
水面で歌う(Auf dem Wasser zu singen) D774
ゴンドラの船頭(Gondelfahrer) D808
湖上にて(Auf dem See) D543b
流れ(Der Fluss) D693

マーラー(Mahler)作曲
「亡き子をしのぶ歌(Kindertotenlieder)」
 1.今太陽が眩く昇ろうとしている(Nun will die Sonn' so hell aufgeh'n)
 2.なぜそんなに暗い炎を(Nun seh' ich wohl, warum so dunkle Flammen)
 3.母さんが扉から(Wenn dein Mütterlein)
 4.よく思う、子供達は出掛けただけと(Oft denk' ich, sie sind nur ausgegangen)
 5.こんな天気に(In diesem Wetter)

~休憩~

ヴォルフ(Wolf)作曲
ミニョンの歌Ⅰ(Mignon I)「語れと命じないで(Heiß mich nicht reden)」
ミニョンの歌Ⅱ(Mignon II)「ただ憧れを知る人だけが(Nur wer die Sehnsucht kennt)」
ミニョンの歌Ⅲ(Mignon III)「このままでいさせて(So laßt mich scheinen)」
ミニョン(Mignon)「知ってる、レモンの花が咲くあの国を(Kennst du das Land)」

R.シュトラウス(Strauss)作曲
献呈(Zueignung) Op.10-1
何も(Nichts) Op.10-2
夜(Die Nacht) Op.10-3
もの言わぬものたち(Die Verschwiegenen) Op.10-6
イヌサフラン(Die Zeitlose) Op.10-7
万霊節(Allerseelen) Op.10-8

~アンコール~
R.シュトラウス/あなたの黒髪を私の頭に広げてください(2.Breit' über mein Haupt dein schwarzes Haar) Op.19-2
R.シュトラウス/ツェツィーリエ(Cäcilie) Op.27-2
R.シュトラウス/幸せがいっぱい(Glückes genug) Op.37-1

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メゾソプラノ歌手、藤村実穂子の紀尾井ホールでのリサイタルも今年で3回目となる。
そして、今宵、彼女がリート歌手としてもますます深化していることを目の当たりにすることが出来たのである。
共演のピアニストは前回と同じヴォルフラム・リーガー。
ハンプソンやファスベンダーなどの信頼あつい共演者として知られ、最近ではアネッテ・ダッシュとも来日した名手である。

今回彼女はいつものワインレッドのドレスではなく、ブルーの美しいドレスに身を包んで登場した。
そして、シューベルトの水に因んだ作品で始め、マーラーの「亡き子をしのぶ歌」へと進み、最後にシュトラウスの「万霊節」で締めくくるというプログラミングは、もしかすると彼女の震災への思いが反映されていると想像できないだろうか。
だが、アンコールの最後はシュトラウスの「幸せがいっぱい」であり、未来への希望を託した選曲といってもいいのではないだろうか。

そんな思いの詰まった彼女の歌唱、最初のシューベルトですでに私の胸を打つ。
いかに作品ひとつひとつに丁寧に取り組み、深く掘り下げられているのかが、発声の美しさだけでなく、言葉の語りの響きや表情からも感じられる。
マーラーでも一語一語から厳しい苦悩が滲み出る。
ヴォルフのミニョン歌曲集では、作曲家の書いた音を丁寧に紡ぎ、若き乙女の苦悩をあぶり出してみせる。第3曲の最後の締めは見事なまでに制御されたデクレッシェンドで強く訴えかけてきた。
最後のシュトラウス歌曲からは若き日のOp.10からの抜粋で、直截的で演奏効果の高い作品たちが藤村さんの丁寧で誠実な歌からほのかに匂い立つ響きがなんとも心地よい。

ピアノのヴォルフラム・リーガーは完全に歌手の歌を把握して、細やか、かつ積極的な音の綾を響かせる。
伴奏者という専門職に徹した者のみが達成できるであろう高みに達した名演だったと感銘を受けた。

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